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ちゃんとしているかもしれない後日談 32

 新手の暗殺者の数は、六人だった。


 そのため、皇帝陛下は駆けながら「半分くれてやる」と、女装した剣士の男性に声をかける。


「殺すなよ! 全員生け捕りにしろ!」

「分かったが、優しすぎるなあんたは!」

「むしろ腹いせのつもりだ! 何せ、一番牢屋にブチ込みたい奴を諸事情のせいでブチ込むことが出来んからな! なら、ブチ込める奴は残らずブチ込むに限る!」

「? いや、ちょっと意味が分からん」


 二人は、声を張り上げながら、暗殺者たちと対峙する。

 すると、剣士の男の姿を見て、暗殺者たちはぎょっとするのだった。


「なっ、お前、裏切ったのか!?」

「嘘だろ!? 血迷ったか!」

「悪いな、あんたら。まあ、存分に恨んでくれて構わない」

「くそっ、知らんぞ! 『姉』貴に歯向かうなど!」

「まあ、なるようになるさ。歯向かったらどうなるか、よく分からんが」


 剣士の男は、暗殺者たちと言葉を交わし、そして、躊躇なく剣を振るった。

 同時に、皇帝陛下も「おい、貴様らの標的はここだぞ。ほら、来い」と、暗殺者に声をかける。


「私を殺せば、どんな褒美がもらえるんだ? 金か? 名誉か? 権力か? 悪いが私はその全てを持っているぞ。ほら、今すぐそれらが欲しいだろう? なら、私を殺してみるといい。やれるものならな」

「くっ、なんだこの皇帝!? 割と陰湿な煽り方をしてくるぞ……!」

「お前たち乗るな! 明らかな挑発だ!」

「いいや、事実だ。そうだろう?」

「くそっ、腹立つぞ、こいつ! なんて話術だ!」


 そして、彼もまた暗殺者たちに肉薄するのであった。


 ――剣士の男は、峰打ちを用いて瞬く間に、三人の暗殺者を戦闘不能にする。


 ――皇帝陛下は、流れるように、敵の攻撃を掻い潜り、敵の急所に体術を用いて次々と一撃を入れるのだった。


 そう、あっという間の出来事だ。


 二人は、六人の暗殺者たちを一瞬のうちに倒してしまったのだった。


 それにより、暗殺者たちは、「フグゥ!」と、変な声を上げて全員が気を失うこととなる。


 それを確認した二人は、大きく息を吐く。

 しかし、すぐに先を急ぐために足を動かし、その後で言葉を交わすのだった。


「まあ、こんなものだろうな。それで、どうだ?」

「そうだな、悪くはない」

「なら、次は俺だけでやらせてくれ。出来る限り、点数稼ぎをしたい。……あと、今思ったが、何で皇帝のあんたが、普通に戦闘に参加しているんだ? 死んだら困るから嬢ちゃんと一緒に下がっていろよ」

「効率の問題だ。後宮に留まっている時間が長い方が、私の死ぬ確率は上がるぞ?」

「確かにそうだが……万が一ということもあるだろう?」

「無いな。この私が、この程度で死ぬわけが無いだろう。パンダとレッサーパンダに勝った私を見くびるなよ」

「? いや、ちょっと意味が分からん」


 二人のそんなやりとりを私は後ろから眺めていた。


 彼らの後を追いながら、私は驚嘆することになる。


 皇帝陛下は、強かった。

 そして、剣士の男性も彼と同じくらい強いように見える。


 二人を前にすれば、どんな敵もきっと倒されてしまうだろう。


 なんと頼もしい二人なのだろうか。


 そう思っていると、ふと客観的に思うことになるのであった。


 二人の現状について。


 ――奇声を上げる皇帝陛下。


 ――女装しながら奇声を上げて剣を振り回す、剣士の男性。


 そう、側から二人を見た場合、ある意味ではかなり不味い現状に見えるのであった。


 今まで、皇帝陛下だけでもあれな感じだった。

 そこに、もっとあれな感じの剣士の男性が加わったのだ。


 ゆえに、さらにあれな感じになってしまったのである。


 どうしよう……。


 一歩間違えれば、不審者扱いされてもおかしくは無い二人を見て、私はどうにか出来ないものかと考えるけれど、残念ながら名案は浮かばない。


 ……二人のために力になりたい。けれど、残念ながら私に出来ることはほとんど無かった。


「せめて二人の変な声が小さくなれば……」と、私は己の無力さを噛み締めながら、二人に対して見て見ぬ振りをすることしか出来ないのであった……。

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― 新着の感想 ―
[一言] 事実で煽るのって一番効くよねw
[良い点] 止めて、冷静にならないでw
[良い点] ライバルと共闘し背中を預けて戦うヒーローたち! ヒロインは無力な自分を嘆きながら勝利を祈るしかないのであった… うん、盛り上がる胸アツシーンなんですよ、多分…
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