ちゃんとしているかもしれない後日談 12
皇帝陛下は、畳みかけるようにして言う。
「無論、貴様の方で上手くことを運べば、さらに追加報酬として、新種の『呪い』についての事例も同数提供してやる」
──さあ、どうする?
彼は、視線でそう一番目の妃に投げかけるのだった。
「そ、それは真でございましょうか……? まさか、その全てが出鱈目だったりとかは……?」
「出鱈目を百も考えられるものか。実際に私の方で全て確認したものだ。まあ、当然どれも国に登録されたものではないため、保有者の情報については伏せさせてもらうがな」
「わ、分かりました……。しかし、何故皇帝陛下が、そのようなことをご存知なのでございましょうか……?」
「……とある人間を探していた時があってな。それで昔から積極的にいろいろな他者と交流してきたんだが……まあ、これはその際の副産物だ」
そう言った後、彼は、私をちらりと見る。
目が血走っていた。
──あっ、探し人って、私のことだ……。絶対そうだ。
そう、すぐに察してしまう。
おそらく彼は、ずっと私を探して探して……けれど見つからなくて、今日まできたのだ。
彼は、私の名前も顔も分からなかったはず。そのような状況から私を探すのであれば、片っ端から他者の『祝福』と『呪い』を確認する以外方法はない。
そして彼は、律儀にそれを今まで行っていき──結果的に他者が有する珍しい二つの力を数多く知ることになったのだと思う。
多分、その際に無茶な要求もされていそうだ。
けれど彼は私のループによって無理やりそれを成し遂げることが出来てしまった。
だから、それを思い出したがために、こうして目をぎらぎらにして私を見つめているのだと、すぐに理解出来てしまうのだった。
彼の傍にいると、どんどん自分が罪深い女であることが判明していく。
果たして、ここまでの悪女は、歴史を遡ったとしても存在するのだろうか……。
そして、私は強く頭を悩ませることになる。
――これ、どうやって償えばいいのだろう……?
と。
正直、もう分からなかった。
「――おい、今度は貴様の番だ。さっさと決めろ。私は即座に決めたぞ。あまり、この私を待たせるなよ?」
彼は、目の前の彼女を急かす。
いつの間にか、形勢が逆転していた。
彼女は、何度も目を泳がせることになるのだった。
「ええと、実はここまで美味しいお話があるとは思っておらず、確実に罠だという認識で現在いるのですが……」
「なら、この話を蹴るか? 私としては構わんぞ」
「それは、その……流石に勿体ないといいますか……」
「おい、どちらだ? 早く決めろ」
彼は、悩む彼女を見て、若干苛つきながら言った。
「なら、こちらで選択肢を減らしてやる。――私の話を蹴った場合、貴様を全力で潰す。たとえ、中立の立場を取ろうと、関係ない。ここまで譲歩した私を虚仮にしたのだ。絶対に貴様を許すことなどないと知れ」
彼は、「これでどうだ?」と、彼女に問いかける。
そう、完全なる脅迫であった。
――え、えぇ……? 皇帝陛下……。
思わず、引いてしまう。
そこまで言われたら、流石に彼女も決断するしかない。
慌てた様子で、「大変申し訳ございません! お受けいたします!」と、声を上げるのだった。
「他の妃たちの動きを、私の方で全て抑えさせていただきます! それと、皇帝陛下が行おうとしていたと思われる最上位の妃たちの懐柔もこちらで推し進めさせていただきますので、皇帝陛下はどうぞ後宮入りした妃たち以外のことで存分にお悩みくださいませ!!」
「よし、それでいい」
彼は、満足そうに頷くのだった。
あれ……? 何だかよく分からないうちに、事態が解決の方へと向かってる……。話が早くない……? どうなっているの……?
私は、二人の会話を聞いて、そう呆気に取られることになるのだった。




