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1話
「もう誰にするか決めたのか?」
半月の夜、道もないような森の奥深くにある学校の教室で美しい女が少女に問いかける。
少女はふるふるとバツが悪そうに首をふる。
「だって、誰が良いのかなんてわからないもん」
美しい女はため息混じりに返す。
「だけど、もうみんな決めてるぞ?
サナも、ミルアも、ナジェも、みんなだ。
相手を決めた後も準備することは山程あるんだ。
早く決めれば決めるほど有利になる。
お前だって1番になって叶えたい願いがあるんだろう?」
「それはそうだけど…。
どうやって見つければ良いのか分からなくて。
今日もずっと水晶で探してはいたんだけど」
「そういう時は直接見てみるのが良い。
今日は月が綺麗だし、少し飛んできたらどうだ?」
「わかったよ。じゃあ少し行ってくる。
わざわざ声かけてくれてありがとうね。ビジェ先生」
少女は机に立てかけていた箒を手に取り、漆黒のマントを羽織ると窓に向かって歩き出した。
「気をつけてね。シャル」
少女は窓から箒と共に飛び立ち、夜空に消えていった。