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落ちこぼれ騎士の学園反逆記  作者: あねものまなぶ
最低教室のカヴァリエーレ
8/11

08

ナイフを両手に構えるメディック。


次の瞬間。

目の前に現れるローレット。


「んっぐぅぅ...」

「最初に潰すべきは、お前だもんなぁ、メディック」

その細腕のどこからそんな力が出るのか。

ナイフ2本に対して、木刀一つ。

辛うじて、防いではいるモノのじりじりと踏ん張りが利かなくなっている。


その時。


「戦場で真っ先に狙われるのは、回復が出来る奴...だもんなぁ」

右手を銃の形にして、構えていたリース。

そのまま、指先に拳大の魔力の塊を素早く形成し撃ちだす。


こめかみに照準を合わせて撃ちだされる凶弾を、上体を反らすことで回避。

たなびく長い銀髪が数本、宙に舞う。


「行け、ホウント」

リースの掛け声とともに、既に拳に黒い靄を纏った状態のホウントが飛び出す。


「っらぁ!」

上体を反らすことで、重心が後ろに行き、無防備となったローレットの腹めがけて雄たけびと共に拳を叩き込む。


腹筋の力の身で上体を上げ、重心を左足に移動。そのまま腰を捻ることで右足を蹴りだす。

凄まじい速さの蹴りがホウントの拳と衝突。

空気が炸裂する音と共に、両者とも衝撃により大きく後退する。

束の間に起きた攻防。高く舞う土煙、えぐれた地面が戦闘の激しさを物語る。


メディックが、ホウントの拳を癒し、先程のダメージをリセットする。

2人の前に立ち、照準を合わせるリース。


「おやおや、いつの間にかそんな連携が出来るようになったんだ? メディックは潰そうと思っていたんだが...」

その表情は、驚きと思わぬ収穫に遭遇した嬉しさが浮かんでいた。


「先生の狙いは分かっていたからなぁ。そこに合わせに行っただけだ。面倒なことは手早く終わらせるに限る」

指先に魔力を集中させる。

先程とは違い、威力に重きを置いた特大の弾。大気を震わせバチバチと炸裂音を発生させる。


「リース。私の事を舐めているのか?そんな鈍足弾、当たる訳ないだろう?」

片膝を付きながらも余裕の笑み。彼女にとって先程の戦闘は唯の肩慣らしに過ぎない。

この場にいる全員がそう理解している。


「先生こそ、忘れてんじゃないすか? 俺らは5人いるんですぜ?」

その言葉にリースの考えが読めた。

即座に、周囲を警戒し立ち上がる。


右後方からの殺気を感じ取り、右方向に大きく飛び込み回避行動に出る。

その一瞬後、先程迄、ローレットが居た場所、ちょうど、腹部当りの位置に一瞬、赤い閃光が通過した。


閃光の方向に眼をやろうとした瞬間に、高速の一撃がローレットを捉える。


「っ! ....ここで大和か...」

ローレットの回避行動に合わせ、着地の瞬間を狙った居合。

枷を一段階はずした状態での高速に一撃。

ヴァルキュリャの5割の力と渡り合った力。

その全てを一撃に集中させた白刃。居合が防がれたその瞬間、刀を翻し追撃の兜割。


これには、余裕の表情が無くなり、押させるローレット。

(このままでは、持たない。体勢を立て直すしか....)

メディックを押していた状況が、まさか自分が体験するとは思わなかったローレット。

じりじりと、後退していく。


「やってくれるな...大和っ!」

「これが私の仕事なのでぇっ!!」

更に力を籠め、ローレットを押しやる。


「合わせろ、エドガール」

意識の外から声が上がる。


「しまったっ!」

意識をリースと姿見えぬスナイパー、エドガールに割く。

全てを回避行動に注げば、難なく事が済だろう。

それえを阻止するのが、大和。

意識をリース達に向けた瞬間、大和の刀がローレットを捉える。


「そらよ...」

ローレットの一瞬の判断のスキを狙い、黒の凶弾がローレットの左蟀谷目掛け。赤い閃光がローレットの右後方から、腹部を目掛けてほぼ同時に放たれた。

3方向からの同時の攻撃。


(..不味いっ!! 前方、後方は無理だ...大和がいる。左右はリースの射線。何処に回避してもエドガールの射線が阻む。それに....)

リースの方向に視線をやると、メディック、ホウントの姿がない。


(上も、下も、あらゆる方向を想定して、2人が待ち構えているだろう...これは無理だな)

スキのない戦いの構成に、回避を諦め素直な称賛を送る。


(だが....この先の段階を魅せなくちゃぁ、なぁぁぁ!!)

穏やかな笑みから、歯を食いしばり犬歯を剥き出しに口角を釣り上げる。


2つの凶弾がローレットを捉えたその時、眩い光と共に、突風が吹き荒れ地下室全体を包み込む。

その中心にはローレット。


着弾寸前の2つは衝撃で書き消える。

ローレットの一番近くにいた大和は勿論、すべての物が突風により、押し戻される。

体勢を立て直すために、リースの周囲に固まる一同。

その中には、姿を観なかったエドガールの姿も確認できる。


光と突風が収まり、高く土煙がローレットの姿を書き消す。


「いやぁ、結構いい感じだと思ったんだがなぁ...」

「えぇ、ローレット先生の裏をかいたつもりだったんですが...」

リースとエドガールが振り返る。


その時。


「いやいや、お見事。素直に驚いたぞ」

拍手と共に、土煙の中に人影が浮かぶ。


「リースの凶弾、大和の接近戦。それらを軸に、回避行動の先に待ち構える、メディック、ホウント、エドガール。特に、エドガールには驚かされた。お前は射撃なんぞ出来たのか?」

「嗜む程度ですがね、私が召喚できるのは、何も彼女だけではありませんから」

「そうか、嗜む程度であの攻撃か。やっぱり、底が見えないな、お前は。いや、お前らは」

視界を覆う、土煙が晴れた。

そこから姿を見せたのは要所に土を付け汚れたローレットだった。

しかし、その姿を観て、一同驚愕する。


「先生....いったい、貴方は何者ですか?」

大和が驚きの余りに息をのむ。脳の情報処理能力が追いついていないのか、たどたどしく言葉が紡がれる。


「いやぁなぁ、本当はさっきの一撃で負けてやっても良いと思ったんだが、気が変わったんだ...」

申し訳なさそうに右手で頭を掻く。


「お前らには....次のステージを魅せてやろうとなぁぁっ!!!」

何時にもまして釣り上がった目。

犬歯剥き出しの笑み。


そして、なにより目を引くのが。

風景に同化するようにうっすらと見えている透明な物。


「なぁ、先生。アンタのそれ....」

リースが指さすのは、ローレットの肩付近。


「おとぎ話は信じちゃいないがぁ...アンタは、"龍"なんですかい?」

ローレットの背中には、確かに視認しずらいが確かに翼があった。


ローレットからの返答はない。

翼の羽ばたきによる突風が何よりの答えになるだろう。


第二ラウンドが始まった。

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