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Cafe Shelly

Cafe Shelly 出会いの方程式

作者: 日向ひなた

「ねぇねぇ、誰かと待ち合わせ? もし時間あったらそこで一緒にお茶しない?」

「あ、いえ、結構です」

 そう言って女の子は早足で去っていった。ちっ、今日は勝率悪いなぁ。

 土曜日の昼下がり、仕事が休みのオレは今日も街に出ている。目的はナンパ。自分で言うのもなんだが、顔は結構イケてる方。背も高くスタイルも悪くないし、ファッションだってバッチリ。特に予定が入っていない休日は、こうやって街に繰り出し気に入った女性に声をかけている。オレのナンパ成功率はわりと高い。こうやって声をかけ続けていれば、一日に一人か二人は引っ掛かってくれる。時間が早いと喫茶店だけで終わってしまう事もあるが、時間帯によっては一緒に飲みに行く事も。そのあとはカラオケ、そしてうまくいけばホテル。お決まりのコースだ。

 ナンパには極意がある。それは、女性がつかまるまで声をかけまくること。これはオレの先輩から教わった事だ。ちなみにその先輩は、ナンパで知り合った女性とゴールイン。まぁオレも半分はそういった出会いを求めているようなものだが。今は女性と遊ぶのが楽しくてナンパをやっている。しっかし今日はなかなかいい女性が見つからないなぁ。オレがキョロキョロしていると、向こうから見慣れた顔が。

「よぉ、芳男じゃねぇか。あいかわらずオタクしてんなぁ」

 オレと同期で会社に入った芳男だ。そのファッションといったら「ダサイ」の一言に尽きる。わかりやすく言えばアキバ系。メガネをかけ、リュックを背負い、ちょっと猫背でおたおたした態度。

「あぁ、アキラか」

 そう言って芳男は伏し目がちにオレの前を通り過ぎようとしていた。

「なんだよ、それだけかよ」

 ったく、暗いやつだな。しかし芳男の態度はちょっと気になるぞ。急いでどこかに行こうという感じだ。

「おい、芳男。おまえ今からどこに行くんだよ」

「え、お、おまえには関係ないだろう」

 まぁオタクの行動には別に興味はないが。だがオレは女性に対しての嗅覚は鋭い。なぜかこのオタクの芳男からステキな女性につながる臭いがする。

「ちょっと待てよ、おまえ、今から行くところにかわいい女性がいるだろう?」

 オレはなれなれしく後ろから芳男の両肩にもたれかけ、耳元でそうささやいた。芳男はドキッとした態度。

「そ、そんなのおまえに関係ないだろう」

「なぁ、オレもそこに連れてけよ」

「や、やだよ」

 あ、やっぱ図星だ。こうなるとオレはしつこいぞ。

「なぁに、おまえがどこに行こうが関係ねぇや。オレが勝手についていくだけだけどね」

「そ、そんなぁ」

 こりゃ相当いい女がいるようだ。オレによほど知られたくないらしい。芳男は観念したのか、それともオレを無視しようとしたのか。とぼとぼと歩き始めた。オレは芳男の三歩あとをついて歩いていった。そのうち芳男はある路地へ曲がった。そこはカラフルなタイルに敷き詰められた道。

「へぇ、こんな通りがあったのか」

 道幅は車一台が通る程度。その道の両側にはいろんな店が並んでいる。芳男はその店の一つに入っていこうとした。

「この店にいるのか」

 入り口におしゃれな黒板でメニューが掲げてある。

「CafeShelly…カフェ・シェリーか」

 オレは看板の下に書いてある店の名前らしい文字を読み上げた。ふと見ると、芳男は二階に上がっていた。

「よぉし、芳男が夢中になっている女をおがみに行くか」

 オレの中では勝手に芳男があこがれの女性に会いに行っている光景ができあがっていた。そしてその女をオレが喰う。これこそがナンパの醍醐味というものだ。オレは足取りも軽く階段を駆け上がり、元気よく店の扉を開いた。

カラン、コロン、カラン

「いらっしゃいませ」

 心地よい女性の声。そして目の前には…ビンゴ! オレ好みのかわいい、いやきれいな女の子だ。髪が長く、目もぱっちり。スタイルも申し分ない。

「お好きなお席にどうぞ」

 オレはその女性に誘われるようにカウンター席へ。ここの方が間違いなくこの子をみつめる時間が多いとふんだのだ。だが困った事に、四つしかないカウンター席にはすでに一人の男性が陣取っている。芳男だ。オレは芳男と一つ席を空けて座った。まぁいいか、オレが相手にしなければいいだけなんだから。とりあえず席に座り、改めて店を見回す。窓際には半円の大きなテーブル。ここには四つほどイスが置いてある。その他には三人掛けの丸テーブルが一つ。十人もお客が入ればいっぱいになる小さなお店だ。店内はなんとなく甘い香りがする。ホッと落ち着く隠れ家的な場所だな。

「ご注文がお決まりになりましたらお知らせ下さいね」

 さっきの女性がお冷やとメニューを持ってきた。このとき改めて間近でその顔を見る。うわぁ~、こりゃむっちゃかわいい。芳男が夢中になるのもわかるわ。しかしどう考えてもこの子と芳男が釣り合うとは思えない。この子に釣り合うのはこのオレだ。こりゃナンパ師としての腕がなるぞ。

「じゃぁブルーマウンテン、いただこうかな」

 オレは少しでも彼女に自分の事を印象づけようと、この店でも高価なブルーマウンテンを注文した。このとき芳男がオレをバカにしたような笑いをしたのを見逃さなかった。なんだよ、と思わず突っかかりそうになったがここは無視。あえて芳男とは他人のふりをしておかないと。こんなダサイやつと知り合いだなんて思われたくないからな。

「はい、芳男くん。シェリー・ブレンドできたよ」

「あ、マスターありがとう。う~ん、これこれ、この香りだ」

「どうぞ召し上がれ。今日はどんな味がするのかな?」

 隣では芳男とマスターが親しげに話をしている。どうやら芳男はこの店の常連になっているようだ。ってことはこのウェイトレスの子とも…その予感は的中した。

「芳男さん、この前借りた本おもしろかったよ」

「わぁ、マイさんにそう言ってもらえるとうれしいな。だと思って今日もこのシリーズをもう一冊持ってきたんだ」

「ホント、うれしい!」

 この子、マイさんっていうのか。それにしても本を貸し借りするほどの仲だとは。けれどそれ以上の進展はなさそうだ。よぉし、それならばオレにもチャンスはある。

「本、お好きなんですか?」

 オレは思いきってマイさんに声をかけてみた。

「はい、お客さんも本は読まれるんですか?」

 おっ、のってきたぞ。といいつつも、オレは本なんかそんなに読まない。しかし流行の知識だけは豊富だからこれでなんとか切り抜けよう。

「最近話題になった小説、ほら、実体験を元にした恋愛のヤツ。あれ、映画化されるらしいですね」

「あ、ごめんなさい。私そういうのはちょっとうとくて…」

 あら、なんか調子狂ったぞ。ふと見ると芳男がクスクス笑っている。

「なんだよ、何がおかしいんだよ」

 オレは芳男のその態度を見て、ついムキになってしまった。

「さすがのアキラもマイさん相手は難しいと思うぞ」

「あらぁ、お二人って知り合いだったんですか」

 あちゃ、しまった。こんなヤツと知り合いだなんて思われたくなかったのに。

「えぇ、まぁ」

 適当にお茶を濁そうかと思ったのだが、芳男の方が積極的に話しをしだした。

「こいつ、アキラっていうんです。ボクと同期で入社した仲で。見た目はちゃらちゃらしてるけど、結構いいヤツですよ」

と勝手にオレの事を紹介し始めた。

「アキラさんかぁ。私マイっていいます。芳男さんには時々こうやって本を借りているの。とても助かっているんですよ」

 マイさんがそう言って見せてくれた本は見た事もないタイトルだった。

「今はね、オグ・マンディーノにちょっと凝ってるの。マスターも何冊かは持っているけど、芳男さんは全部持っているっていうから借りてるのよ。それとスピリチュアル系の本も私が知らないのを持っているから」

「は、はぁ」

 言っている意味が途中からよくわからなかった。オレがあっけにとられていると、芳男はクスクス笑っている。

「はい、ブルーマウンテンです」

 ここでマスターがカウンター越しにオレが注文したコーヒーを差し出してくれた。オレは何も言わずにコーヒーを一口。

「ゆっくりしていってね」

 マイさんはオレにそう言うとカウンターの奥へ。

「だから言ったろう。マイさんってそんじょそこらの女性とはちょっと違うんだから。おまえが相手にできるような人じゃないよ」

 芳男が小声でオレにそうささやいた。

「うるせぇ」

 芳男の勝ち誇ったような態度が気に入らない。

「こうなりゃ意地でもマイさんにオレの方を振り向かせてやる」

 オレは芳男にそう宣言した。

「無理無理、絶対に無理だよ」

「よぉし、じゃぁ賭けてみるか」

「賭けるって、どうやって?」

 このとき、オレの頭脳は一つのストーリーを描いた。あと十日もすればバレンタインデーだ。マイさんの気持ちをゲットした証として、バレンタインチョコをもらうというのはどうだろう。しかし義理チョコとの区別が必要。そのため、他の人とは格が異なるチョコレートをもらう、というのを条件としてみよう。オレは小声でそのことを芳男に伝えた。

「なるほどね、おもしろい。じゃぁボクは無理だという方に賭けようじゃないか。ところで何を賭けるんだ?」

「そうだなぁ。マイさんをゲットできたら、マイさんを豪華ディナーにでも招待しよう。そのときの費用をおまえがもつ」

「じゃぁボクが勝ったら?」

「そんときゃおまえの好きなものをおごってやるよ」

 芳男はにやりと笑って首を縦に振った。交渉成立。こうなったときのオレは半端じゃなくすごいぞ。

「なぁに二人で話てんの?」

 突然マイさんが会話に割って入った。

「あ、いや、男同士の話だよ」

 さすがのオレもビックリしたが、ここは冷静にふるまう。

「ところでマイさん、とてもかわいらしいエプロンしているんですね。ピンクの色がマイさんにはぴったりお似合いだ」

「え、ありがとう」

 マイさんはまんざらでもない微笑みを浮かべた。まずは軽く先制ジャブ。こういった言葉の繰り返しが肝心だ。

「アキラさんもファッションきまってますよね。その指輪とか派手でもなく、男らしさが見えてますよ」

「あ、ありがとう」

 この言葉にはビックリ。今まで女性を褒めまくった事はあっても、女性から褒められたなんてことはほとんど無い。しかも褒め言葉が鋭い。オレはさらにマイさんという女性に興味を持った。これは賭けとか関係なく、意地でもマイさんをオレのものにしてやる。

とりあえずこの日はマイさんと軽いおしゃべりで終了。

「マスター、コーヒーおいしかったですよ。オレ、ここ気に入りました。また来ますね」

「ありがとう。じゃぁまた待ってるよ」

 オレはマイさんだけでなくマスターにもしっかりと印象づけるように言葉をかけて店を出て行った。将を射んとすればまずは馬から。周りの印象もじわじわといいものにしていくことで、本人が不在の時も話題に上るように仕向けるのだ。

 女性を落とすための出会いの方程式。オレは幾度と無くこの方程式を使って女性をものにしてきた。さぁて、明日からナンパ師としての腕がなるぞ。なにしろ期限まではあと十日しかない。自信があるとはいえ、できる限りの手を打たないと。


「こんちはっ」

 翌日からオレのカフェ・シェリー通いが始まった。といってもオレも一応仕事を持つ身。しかも日中は会社から抜け出す事などできない身分。だから仕事が終わる午後五時半になると、猛ダッシュでカフェ・シェリーへ向かう。なにしろこの店の閉店時間は午後七時。オレが店にいられるのは最大でも一時間ほどしかない。しかしこれは逆にマイさんに印象を深める事にもつながる。

 人間というのは、ものごとの最初か最後というのが一番心に残るもの。だから合コンに行ったときにあいさつをするときには、最初か最後の順番で行う事にしている。これも出会いのテクニックの一つだ。さらにオレが休日のときには、カフェ・シェリーには開店してすぐに足を運んだ。そしてマイさんに何か言葉をかけるわけでもなく、一日中そこにいる。マイさんが言っていたオグ・マンディーノとかいう人の本を図書館で借りて、わざわざそこで読んでいるのだ。すると、客足が遠のいたときにはマイさんは自然とオレに話しかけてくる。これも出会いのテクニック。こちらから攻めずに相手から攻めてもらう状況をつくり出すのだ。

「へぇ、十二番目の天使か。これ、最後の方は結構泣けるんですよねぇ」

「あ、まだ終わりの話はしないでね。今読んでいる最中だから」

 オレはそう言って再び本へ目を向ける。

「ごめんごめん」

 そう言ってマイさんはオレに謝ってくる。実はこれも出会いのテクニック。どんな小さな事でもいいから、心に貸しを作っておくのだ。そしてそれを積み重ねていく事。そうすることで徐々にオレに対して「申し訳ないから今度何かをしてあげなきゃ」という気持ちを作っていくのだ。またオレの服装もこの店の雰囲気に合わせるように工夫をしている。最初はシブカジ系のちょっとチャラチャラした格好をしていた。が、このお店にこの服装は似合わない。この店の雰囲気を色で例えると「ブラウン」。チョイ渋い感じだが、暗いわけではない。ところどころにあるパステル色や窓からの光が店の感じを明るいものにしてくれる。いい感じの調和だ。だからオレもちょっと大人の雰囲気がする、黒や茶色といったものをベースとした服を着ている。それにちょっとしたアクセサリーを身に付けているのだ。服装のTPOも出会いには必要不可欠。フォーマルパーティーにジーンズは目立ちはするがドン引きされるだけだからな。

「はい、アキラくん。ブルーマウンテンできたよ」

「マスター、ありがとう」

 オレはちょっとかっこつけてカウンター越しにコーヒーを受け取る。

「アキラくん、このところ毎日来てくれているけど。この店気に入ってくれたかな?」

「えぇ、なんだか雰囲気もいいし落ち着くし。マスターやマイさんに会いに来るのが楽しみですよ」

 楽しみなのはマイさんの顔を見る事だけなんだが。

「そうか、それはうれしいね。ところでアキラくんは彼女はいるのかな?」

 マスターが突然そんなことを聞いてきたのでオレはあわててしまい、おもわずコーヒーを吹き出しそうになった。

「え、な、なんでまたそんなことを?」

「ほら、もうすぐバレンタインデーだろ。アキラくんみたいにかっこよくて誠実な男性だったら、チョコレートをたくさんもらえるんじゃないかなって思ってね。世の中の女性が黙っちゃいないだろう?」

「いやぁ、そんなことはないですよ。女性の友達はいますけど彼女と呼べる人はいないですよ」

 これは本当だ。今までナンパした女性は数あれど、そのままずっとつき合おうと思った女性は一人もいない。何人か彼女気取りで連絡をするヤツはいたけれど、オレの方が適当にあしらっていたので勝手に離れてくれた。ま、その方が助かるけどね。

「ところで芳男くんは元気にしてるかな? 彼、休みの日になると来てくれるんだけど」

「あ、そうなんですか。芳男とは同期だけど部署が違うから。オレもたまにしか会わないんですよ」

 実は芳男だけでなく、男とはあまり遊ぶ事はない。友達はいるがそれは会社以外のナンパ友達。女性との出会いはたくさんあるが、男とはそんなに出会おうとは思っていない。ま、オレの中では男なんてどうでもいいんだけどね。

「そうなんだ」

 突然マイさんが横から話に加わった。

「この前一緒に来たときは仲がいいんだなって思ったんだけど」

「あ、あれは一緒に来たわけじゃないんですよ。たまたま一緒になって…」

 まさか女の匂いがするから後をつけてきた、なんてことは言えない。

「ふぅん。でもおかげでこうやってアキラさんと知り合いになれたんだから。芳男さんに感謝しなきゃね」

 おっ、マイさんから初めてオレに対しての印象を告げる言葉が聞けたぞ。こりゃいい感じで脈有りとみた。よし、そろそろ次のステップに進んでみるとするか。

 次のステップ、それはマイさんのプライベートに踏み込む事だ。バレンタインデーまであと五日。それまでになんとかマイさんにオレのことを知ってもらわないと。

「マイさんって読書以外にどんな趣味をもっているんですか?」

 オレはさりげなく質問してみた。

「え、私? そうねぇ、映画とかも見に行くし。あと子どもの頃から日本舞踊もやってるの」

「なるほど、どうりで立ち振る舞いがしなやかだと思った」

「えー、そうかな?」

 そう言いながらも顔はほころんでいるマイさん。よし、ここでもう一押ししてみるか。

「じゃぁお休みの日とか何しているんですか?」

「そうねぇ。これといった事はやってないけど。たまに温泉に行ったり、お買い物に出たりってとこかな」

「へぇ、温泉かぁ。オレもたまにはゆっくりと温泉にでも行ってみたいな。マイさんとならもっと最高なんだけどなぁ」

 さりげなくデートの匂いをアピール。いきなりデートに誘っても成功率は低い。けれど、会話の中でオレと一緒にいるイメージを相手に植え付けてしまうと、意外にもすんなりとOKが出ることが多い。

「あはは、私とじゃつまんないよ」

 あらら、さりげなく拒否られたか。まぁデートについてはまだまだゆっくりと攻めればいい。それよりも今度はこっちのことを知ってもらわないと。しかしこちらから自分のことをアピールしても相手には聞き入れてはもらえない。どうやってマイさんからオレのことについて質問させるか。ここが腕の見せ所だ。

「そういえばマイさんは今どんな本を読んでいるんですか?」

「えっとね、心理学系の本が多いかな。アキラさんはどんな本を読むの?」

 ほらきた! この質問返しを待っていたんだ。これでマイさんはオレの言葉に聞く耳を開いてくれる。あとはしつこくならない程度に自分のことを話す。

「オレは最近流行の本が多いかな。ほら、この前芥川賞をとった女流作家のヤツとか。あとはドラマになったやつの原作本とかが多いかな。でもこういった本にも目覚めたってとこ」

 そう言ってオレは今手にしている十二番目の天使を見せた。

「こういった感動作品もなかなかいいよね。こんなのが原作になった映画とかがあるといいのにな。オレも時間があるときなら映画とかによく行くよ。マイさんとも映画に行ってみたいなぁ」

 ここでもさりげなくデートをアピール。しっかし相手に合わせた会話ってのも考えて行わないとな。オレは流行の本はパラパラとめくる程度は読んでいる。今回手にした本は正直ほとんど頭には入っていない。ポーズで読んでいるだけ。映画も内容は二の次。女性とその空間を共有できることの方が大事。

「アキラさんってさびしんぼうだね」

「え、どういうこと?」

 突然マイさんがそんなことを言ってきた。オレはどういう事かわけがわからない。結局この日はカフェ・シェリーも閉店となりタイムオーバー。マイさんの最後の言葉が頭に引っ掛かりながらもオレは店を出る事になった。

 それからも毎日カフェ・シェリーに通い続けたが、マイさんとはこれといった進展を見せていない。ただし、オレも常連客の一人という位置づけになったのだろう。マスターもマイさんもオレが来ると気楽に話しかけてくれる。そして今日はいよいよバレンタインデー。会社でめずらしく芳男からにやにやしながら声をかけてきた。

「アキラ、賭けの方はどうだい? マイさんから特別なチョコレートをもらえそうかい?」

「なぁに、オレ様に今まで落とせなかった女性はいないんだ。今回も楽勝だよ」

 口ではそういいつつも、マイさんが今まで出会った女性とはちょっと違うということは感じていた。

「おうおう、強がり言って。賭けを降りるなら今のうちだぞ」

「何言ってやがんだよ。まぁ見てろって。今日はおまえもカフェ・シェリーにくるんだろ?」

「あぁ、そのつもりだ。なにしろバレンタインデーだからな」

「バレンタインデーだから? なんだよ、ひょっとしてマイさんの義理チョコ狙いか?」

「まぁ行けばわかるよ」

 今日に限ってやたらと強気の芳男。マイさんの性格からすれば、今日来たお客さんにチョコレートを配るくらいのことはやってあたりまえだろう。ふだんからチョコレートなどもらえない芳男にとっては貴重な一個になるに違いない。

 そうして終業後、オレは芳男と一緒にカフェ・シェリーに行くのは嫌だし、気持ち的に余裕を見せたいためにいつもより少し遅めに足を運んだ。

カラン、コロン、カラン

 心地よいカウベルの音と共にドアを開く。いつものコーヒーの香りとは別に、店の中がなぜだか熱気に包まれている。ふと見ると今日はほぼ満員。しかも男性客ばかりだ。

「あ、アキラさんいらっしゃい」

「マイさん、今日は一体…?」

 オレは目の前に広がる状況にビックリ。

「よぉ、アキラ、遅かったな」

 一足先に芳男がカウンター席を陣取っている。

「アキラくん、今日は満席なんでこっちの補助イスを使ってくれるかな?」

 マスターが申し訳なさそうにしゃれた折りたたみのイスを出してくれた。

「今日はバレンタインデーだろ。毎年この日はマイが特製チョコを作ってくれるから」

 マスターはそう言ってあわただしく注文されたコーヒーを入れ始めた。

「はい、じゃぁこれは私からのお礼です」

 マイさんはお客さんにチョコレートを配っている。透明のセロファンに包まれたそれには、チョコチップのクッキーが二枚、そして丸い形のチョコレートが二つ入っている。

「はい、芳男さんどうぞ」

「お、ありがとう」

 ふと見ると芳男のはさっき他のお客に配っていたものとは少し違う。おまけとして違う種類のクッキーがもう三枚追加されている。

「芳男さんにはいつも本を借りてるからね。感謝の気持ちを込めてちょっとだけお・ま・け♪」

 このとき、オレは芳男が強気に出ていた理由がわかった。マイさんの性格を把握しきって、今まで本を貸したりしていたのか。芳男はオレの方を向いて勝ち誇ったようにニヤリと笑った。

「あ、アキラさん」

「は、はいっ」

 マイさんにそう言われてつい声が裏返ってしまった。何を焦っているんだよ、オレは。

「あのね、お願いがあるの」

 おっ、きたきた! バレンタインデーにお願いなんて。オレは冷静さを取り戻し、クールにこう答えた。

「いいよ、マイさんのお願いならどんなことでもきいてあげるよ」

「わぁ、よかった。あのね、今日はね…」

 オレはマイさんからのお願いをドキドキしながら待った。

「今日はここにいるみんなシェリー・ブレンドを注文してくれているの。アキラさんはいつもブルーマウンテンだけど、今日だけはよかったらシェリー・ブレンドを注文くれないかなぁ」

「え、アキラまだシェリー・ブレンドを飲んだ事なかったのかよ」

 芳男があきれ顔でオレにそう言った。

「おまえ、この店でシェリー・ブレンドを飲まないなんてもぐりだぞ」

 芳男にそう言われてオレは半分ムッとして言い返そうとした。が、そのとき店中の視線がオレに集まっている事に気づいた。その視線からは「信じられない」といった意味が読みとれた。この店でシェリー・ブレンドを飲むというのはそれほど意味のあることなのか。

「あ、わかりました。じゃあお願いします」

 オレはマイさんに頼まれてというよりも、周りの視線に耐えかねてシェリー・ブレンドを注文した。

「アキラくん悪いねぇ。でもアキラくんにもぜひ一度シェリー・ブレンドを飲んでもらいたかったからね」

 マスターは笑いながらそう言ってくれた。

「あ、そうそう。はい、アキラさんこれどうぞ」

 おっ、待ってました! いよいよ賭けの勝敗が決定する時がきた。マイさんが手に持ったそれは、一目で他のものとは異なることがわかる。それは小さな紙袋に入っている。他の人は透明のセロファンの袋。よし、勝った。オレは心の中で小さくガッツポーズ。さらに芳男に勝ち誇った表情で合図を送った。

「マイさん、ありがとう。開けていいかな?」

「うん、もちろん」

 オレは嬉々として紙袋を開いた。が、中味は他のそれと大差ない。

「ごめんねぇ。ちょうどみんなと同じ袋が切れちゃって。でもこの袋もかわいいでしょ」

「あ、あぁ、そうなんだ」

 なんだ、特別なチョコじゃないのか。オレの気持ちは一気に天国から地獄へ。

「はい、アキラくん。シェリー・ブレンドできたよ。これと一緒にマイのクッキーを食べるとおいしいぞ」

 オレの気持ちを知ってか知らずか、マスターがコーヒーを差し出してくれた。

「あ、どうも」

 オレは気のない返事をしつつコーヒーに手を伸ばした。

「んっ!?」

 コーヒーを口に含んだ瞬間、オレの頭の中で何かが横切った。なんだろう、これは。懐かしさのような温かさのような。それを確認するためにもう一度コーヒーを口にする。今度は注意深くその何かを確かめた。

「アキラくん、どうだい。始めてのシェリー・ブレンドの味は」

「これ、コーヒーなんですか? あ、いや、確かにコーヒーだ。でも不思議な味だなぁ」

「シェリー・ブレンドは今おまえが欲しがっているものの味がするんだよ」

 芳男がそう説明した。

「まさか」

 思わずそう言ってしまった。

「ううん、本当よ。それがシェリー・ブレンドなの」

 今度はマイさんの言葉。芳男の言う事は素直に聞く気にはなれないが、マイさんの言う事なら間違いない。となると今オレが感じた感覚。それをオレが欲しがっている、と。

「ね、どんな味がしたの?」

 マイさんの言葉にオレは引きずられるように口を開いた。

「なんだか温かさというか懐かしさというか。この感覚、小さい頃に味わったような記憶が…」

「お母さんのぬくもりってとこかな」

「そう、それだ。マイさんの言う通りかもしれない」

 言ってからしまったと思った。こんなにクールにかっこよく決めているオレが、お母さんのぬくもりを欲しがっているなんてかっこわるいじゃないか。でもどうして?

「そんなバカな。別におふくろが恋しいわけじゃないし。まぁ一人暮らしをしているから、家庭のぬくもりってのはありがたいだろうけどなぁ」

 それを否定しつつも、自分の口から新たな真実が飛び出した事に気づいた。

「家庭のぬくもりかぁ」

 自分でそう言っておいてその言葉が出た事にあらためて驚いた。

「アキラくんはそれを求めているんだね」

「えぇ、このナンパ師が?」

 芳男が余計なことを口にした。

「ナンパかぁ。私も遠い昔に…」

「やりたかった、でしょ。マスターにそんなことできっこないって」

 マイさんの言葉に場が和んだ。

「ナンパであっても、人とたくさんふれあうっていうのは大事なことだと私は思うよ。その中から何かを見つけ出すことができるだろうからね。しかし何が目的なのかを持たないまま人との出会いを求めるのはもったいないだろうな」

 マスターのこの言葉にオレはズキンと胸を打たれた。オレがナンパで女性との出会いを求めていたその理由は何だったんだろう? ただ女性と遊びたいから。じゃぁ遊んだらどうするんだ? そのときの快楽を追う事だけが目的なのか? いや、本当に欲しかったものがあるはずだ。

 オレの先輩がナンパした女性とゴールインしたと聞いたとき、そこへのあこがれが芽生えてきた事を思い出した。

「マスター、こんなナンパ師でも結婚ってできるんですかね?」

 オレはぼそりとそうつぶやいた。

「大丈夫だよ。ちゃんとした出会いの方程式を持っていればね」

「ちゃんとした出会いの方程式?」

 マスターの言う「出会いの方程式」という言葉に反応した。オレはオレなりの出会いの方程式を持っている。しかし「ちゃんとした」というのは一体どういう事なのだろう。

「マスター、それ教えてくれませんか?」

「なぁに、簡単なことだよ。三つのことを守っていれば、その人には最良の出会いが用意されているんだ」

 三つのこととは何だろう。オレは身を乗り出してマスターの言葉を待った。

「まず一つ目はルールを守る。約束の時間を守るとか、相手にとって嫌なことは言わないとか。当たり前のことだけどこれができていないから人の信頼は崩れていくんだよ」

 言われてドキッとした。オレは自分から言ったことは守るが、相手から言われたことは面倒になることが多い。特に相手の女性から二回目のデートを約束されたときはほとんどすっぽかす。それよりももっといい人がいないかを探してまわる方が楽しいからだ。

「ルールを守れない人には誰も寄りつかなくなるよ。だから次々に新しい人を求めなきゃいけなくなってしまう。これは男女だけでなく社会的なルールだということも忘れないようにね」

「あ、はい」

 ちょっと小声で返事するオレだった。

「次に二つ目」

 オレは少しも聞き漏らしのないようにマスターをしっかりと見つめた。

「相手の言葉をしっかりと認めることだな。ほら、アキラくんも記憶にあるだろう。自分の思った様な答えが相手から返ってこなかったらつい反論してしまうってこと」

 そう言われて、ついこの前のことを思い出した。

 ナンパして一緒に飲みに行った女性。話がはずんで好きな音楽の話になった。そしたら相手がオレの嫌いなロックグループの名前を出したので、つい

「えーっ、そんなのが好きなの。オレは奴らの音楽性がよくわかんねーから好きじゃねーな」

と言ってしまった。そこで話がこじれて、彼女は怒って出て行ってしまった。

「アキラくん、どうした?」

「あ、いや、ちょっと思い出したことがあって。でも相手の答えが気に入らないって事もありますよね。そんなときはどうするんですか?」

「難しく考えることはないよ。あーそうか、君はそう考えているんだね、と相手の言ったことを一度飲み込めばいい。その後に自分はこう考えているんだよ、と伝えればいい。こうすることでお互いの考え方を知ることができるだろう。気の合う人だと思っていても、考え方が違うということを知っておかないとね」

「あ、はい、わかりました」

と口では言ったものの、それがオレにできるのかは不安だ。その不安なのが表情に出ていたのだろうか。マスターがすかさずこう言ってくれた。

「一つ目と二つ目はどちらかというと出会ってから仲良くなるまでの方程式だな。でも三つ目は出会いそのものを引き寄せる方程式だよ」

「え、それ教えて下さい!」

 オレはつい身を乗り出してしまった。

「じゃぁ教えるね。三つ目の方程式、それは芯から自分のことを好きになることだよ」

「芯から? オレは自分にそれなりに自信を持っているし、自分のことは好きですけどね」

「口ではそう言う人は多いよ。けれどどこかにコンプレックスや引け目を感じているだろう。実はそこを隠そうとして虚勢を張っていることがあるんだよ。けれどそれは本当の自分じゃないからね」

「本当の出会いって、本当の自分を見てもらえたときにこそ現れるって私思うのよね」

 マイさんがそう口をはさんだ。マイさんはひょっとしたらオレの思惑を全てわかっているんじゃないか。オレがいままで女性に気に入られようとポーズをとっていたことを見抜いていたんじゃないのか。そう思わずにはいられなかった。

「芯から自分を好きになる、か」

オレはそうつぶやいて、カップに残ったシェリー・ブレンドを口に含んだ。

「んっ?」

「アキラ、どうした? ひょっとしたらシェリー・ブレンドの味が変わったんじゃないのか?」

 芳男がいう通りだった。さっきとは全く違う味がする。

「アキラさん、今度はどんな味?」

 マイさんがオレをのぞき込みながらそう聞いてきた。

「なんて言えばいいんだろう。例え方がよくわからないけれど、飲んだときにオレの中から何かがこみ上げてくるって感じがしたんだ」

「それは自分自身じゃないかな。アキラくんが今まで気がつかなかった自分というものが表に出たがっているんだよ」

 マスターの言葉に、オレはもう一度オレというものを見つめ直してみようという気持ちになってきた。

「マスター、マイさん、ありがとうございます。今日はここにきてよかった。今までとは違う自分の道を見つけられそうな気がしますよ」

「そうか、それはよかった」

「オイオイ、こっちにお礼はないのかよ」

 芳男がそう言ってきた。

「お礼って、おまえに何かしてもらったわけじゃないだろう」

「なぁに言ってんだよ。あのときおまえがついてこなかったら、この店には縁がなかったんだろうが」

 やたら強気の芳男であった。

「おまえ、今日はなんか違うな…」

 そのとき、心地よいカウベルの音が鳴り響いた。

「ごめんごめん、待った?」

 見ると一人のかわいらしい女性がそこに立っている。待った、って誰に言っているんだ? すると信じられない光景がオレの前で展開された。

「大丈夫だよ。じゃぁ行こうか」

 そう言って立ち上がったのは芳男であった。あのオタクの芳男にこんな彼女がいたとは。それで今日は強気なわけだ。

「てなことだ。ま、賭けはオレの勝ちってことでいいよな。じゃぁマスター、ごちそうさま」

 そういって芳男はニコニコ顔でカフェ・シェリーを後にした。

「芳男さんね、さっきマスターが言っていた出会いの方程式を聞いてから心がけていたら、このお店の常連さんと仲良くなっちゃって。今日は今から食事に行くんだって」

 マイさんはそんな事を言っていたが、オレは半分意識が遠のいていた。まさか芳男に先を越されるとは。呆然としているオレにマスターがこんな言葉をかけてくれた。

「アキラくん、大丈夫だよ。君ももう少ししたら必ずいい人が現れるよ。そういう人って案外身近にいたりするものだしね」

 身近。そうだ、オレはもともとマイさん狙いだったんだ。ここでやっと正気に戻った。よし、この瞬間から生まれ変わってみるか。今までオレが求めてきた出会いとは違うものを見つけに行こう。

「おっ、アキラくん。なんだか急に変わったな。なんだかやる気がみなぎって、なかなかいい顔つきになったじゃないか」

「え、そうですか」

「うん、私にもそう見えるわ」

 このマイさんの言葉にオレは後押しされた。よし、今の自信をこの勢いでぶつけてみよう。

「マイさん、ちょっといいですか?」

「え、なに?」

 オレはあらためてマイさんに面と向かい、自分の心の内をぶつける事にした。

「オレ、マイさんを初めて見たときからこの人しかいないって思いました。だから毎日ここに通いました。マイさんの事をもっと知りたくて、そしてもっとオレの事を知ってもらいたくて。だからマイさんに振り向いてもらおうと思って一生懸命でした。けれど今日、マスターの言う出会いの方程式を聞いてそんな事じゃダメだって気づきました。もう一度再スタートです。だから、だから…」

 マイさんはオレの言葉を真剣な目で聞いてくれている。よし、思いっきり言うぞ。

「だから少しずつでいいです。オレとつきあってくれませんか?」

 そしてオレは頭を下げて両手をマイさんに差し出した。

「ありがとう。その気持ち、とてもうれしい」

「じゃ、じゃぁ…」

「でもごめんなさい。私ね、もう誰ともおつきあいできないの」

「え、それってどういうこと? 両親がそういうことに厳しいとか」

「ううん、そうじゃないの。だって私…」

 マイさんはそう言ってカウンターからマスターを引っ張り出した。

「紹介するね、私のダーリン♪」

 オレは目が点になった。

「ダーリンって…」

「あはは、アキラくんごめんね。私とマイは結婚しているんだよ」

 ハンマーで頭をなぐられたような衝撃だった。

「見ての通り、年の差カップルなんだよ」

「そ、そうだったんですか…」

 オレは冷静を装いながらも手が震えていた。まさか人妻にアタックしようとしていたとは。

「でもマイさんって人妻には見えないですよね」

 何を言っているんだ、オレは。

「あは、ありがとう。マスター、アキラさんにシェリー・ブレンドをおごってもいいかな?」

 そうしてもう一杯のシェリー・ブレンドが目の前に。オレはこいつを一気にグッと飲み干した。きっと涙の味がするだろう。が、予想は外れた。

「ん、なんだこのさわやかさは」

 このとき、カウベルの音と共に元気な女性の声が。

「マスター、シェリー・ブレンドよろしく!」

 この女性、店内をぐるっと見回してオレの隣に座った。というよりもオレの隣しか席が空いていないのだ。

「あれ、めぐみさん今日はめずらしい時間だね」

 マイさんが女性にそう声をかけた。どうやら常連さんのようだ。

「そうなのよ~。ったく、今日に限って予約のお客さんが多くて。バレンタインデーだからって勝負をかけようって女性が多いんだわ」

「そうなんだ。ネイルアーティストってのも大変だね」

 この女性、ボーイッシュでさばさばしている。けれど身のこなしや服装などは女性特有の繊細さを感じる。

「で、めぐみさんはチョコレート渡す人は?」

「そんなのいないよ。それに今は仕事が恋人」

 オレはこのめぐみさんの横顔をじっと眺めていた。なんだろう、このこみ上げてくる感情は。オレは自分に従う従順な子が好きだが、彼女はそんなタイプではない。なのに、どうして?

「はい、シェリー・ブレンドおまたせ」

「マスター、ありがとう」

 彼女はシェリー・ブレンドを一口含んだ。そして妙な顔をした。

「え、何これ?」

 このとき、オレと目があった。そしてオレは気がついた。さっき味わったシェリー・ブレンドの味がそこにあることに。

 これがオレの新しい出会いの幕開けとなった。


<出会いの方程式 完>

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