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真夏の女子会

前回投稿して約二ヶ月、ようやく7話投稿できました。

いやほんと、何でだろう・・・全然やる気が起きなかったんですよ。どうせ読む人なんてほとんどいないしほぼ自己満で描いてますから、その時の気分なんですよね。待っていた超絶少数派の皆さん、お待たせしました・・・

挿絵(By みてみん)

「彩葉お姉様!こっちです!早く~!!すごい大きいですよ!」

「もう、カレンちゃん、はしゃぎすぎだよ!」

 ある夏の土曜日。彩葉、カレン、ルーシア、リリィはとある目的でとある場所を訪れていた。

「ひっ・・・人が、多いですね・・・」

「まあ街一番の大きさだからね。大丈夫?少し休憩する?」

「いえ、大丈夫です・・」

 見渡せば360度全て人だかり。何かのフェスなのかと勘違いしてしまうほど。うだるような晴天下、今日も今日とてこの街は猛暑に飲み込まれる。吸い込まれそうなほど青い空、容赦なく照りつける真夏の太陽、しかしそれにもかかわらず夏休みが近いこの土曜には多くの人々がこの場所を訪れ、真夏の暑さにも負けないほどの活気で溢れかえっていた。日本人も帝国人も誰もが楽しげな笑顔を浮かべるそこは、幻想街最大のアウトレットモール「シャングリラ」。都市部から少し離れた郊外に建設された巨大な商業施設だ。服や靴などのファッションはもちろん、指輪やネックレスなどの高級アクセサリー、スポーツ用品やアウトドア専用の便利グッズ、レストランやカフェなどのグルメ、多種作用なマニアックな専門店などなど、とにかく1から10まで、AからZまで何でもそろっているのがこの場所なのだ。まさしくここは万人の願いや希望が叶う『理想郷』。何か欲しいものがあればここに来れば大抵見つかるのだ。

 そう言われると、今日もニュースで熱中症警戒情報が報道されているのにたくさんの人が集まるのも理解できるだろう。そしてこれは彩葉率いる生気溌剌トリオガールズも同じだ。この夏の熱気とこの場所の活気が彼女らにエネルギーを与える。約一名、そうでない少女もいるが彼女も彼女で興味はあるのか先ほどからキョロキョロと周りを見回している。もしこの場にあの引きこもりの青年がいれば、きっと彼は卒倒していただろう。まあ無理もない。彼は真逆の人間だから。とはいえ今日はもとより彼を連れてくる予定は彩葉にはなかった。いつもなら渋る彼を引きずりながらでも連れてくる彩葉だが今日だけは別だ。なぜなら今日は女子会という名目で、日曜日――つまり明日に海で着る水着を買いに来たからだ。そう、これは男子禁制の限定イベント。女の子だけでお買い物したりお茶をしたりして会話に華を咲かせるのが女子会なのだ。それに男子が混ざるなんて禁忌に触れるようなもの。だから今日は大和とパドラはお留守番だ。

 この話を彩葉がしたとき、カレンとルーシアは即賛成だった。特に『女子会』という単語に反応して目を輝かせていた。まぁ予想通りの反応だろう。決してブレる事のない彼女らを見てるともはや安心感のような物を感じる。人混みが苦手なリリィも最初こそ戸惑っていたが、なんだかんだでカレンに手を引っ張られてここにやって来た。


 目の前の巨大なゲートをくぐればそこはまるで一つの町だ。木組みの建物と石畳が美しい外観。大通りの中央には小川が流れ、青々とした並木が夏の涼しさを醸し出している。両側には帝国式の建物がずらりと並び、あちこちから人々の楽しげな声や軽やかなリズムのBGMが聞こえ、どこからともなく漂う食欲をすするような匂いが鼻腔をくすぐり、ありとあらゆる五感の情報が彼女たちを埋め尽くす。

「すごいですよ!彩葉お姉様!綺麗で可愛いお店がいっぱいです!」

「つい最近できたからね。いろんな物があるよ」

 元々ここは帝国のある廃村だった。誰も住むことなく壊れた建物が点々と並び、人どころか生き物の気配が一切ないような気味の悪い場所だった。しかし一年半前に帝国のある商業ギルドがこの土地を買い、急ピッチの工事を経てつい数ヶ月前にこのアウトレットモールが完成したのだ。その途端この場所の人気は急上昇。今のこの光景に至るというわけだ。


「あ!ねぇカレンちゃん、あのお洋服屋さん可愛くない!」

「ほんとだ!一緒に行こ!ルーシアちゃん!」

 カレンとルーシアは一直線にその店に走り出す。波長というか思考回路というか、そこら辺が二人は全く同じだ。面白そうな物を見つけたらそこへまっしぐら。周囲の人が奇妙なものを見るような目で彼女たちを見ていたが、当の本人たちはお構いなしだ。

「わぁ・・・この洋服すごく可愛い」

 ガラスのショーウィンドウの中の服を見て高揚するカレン。マネキンに飾られているのは純白のノースリーブワンピースと、華飾りが可憐な白いハット。シンプルだが夏にふさわしい爽やかなデザインだ。

「本当だ!カレンちゃんの金色の髪に似合いそう」

「そう?えへへ・・・」

 褒められてまんざらでもない様子のカレン。

「あ、こっちのブラウスとこのスカート、ルーシアちゃんに似合うんじゃない?」

「確かにこのひらひら可愛いね!」

 店内に入ればいいのに二人はショーウィンドウの前でキャッキャッとはしゃぐ。

「二人とも、今日は水着買いに来たんだからね」

 そこへ彩葉がやって来てそう言うと、カレンは不満そうに頬を膨らませた。

「えー、私新しい服欲しいです!せっかく海行くんだしおしゃれしたいです!彩葉お姉様だって夏服そんなに持ってないじゃないですか」

 彩葉を必死に説得するカレン。グッと背伸びをして彩葉に真剣な眼差しを向ける。

「まぁ・・・確かにそうだけど・・・」

「なら買いましょう!私が彩葉お姉様にバッチリ似合うお洋服を選んであげますよ!」

 彩葉はうつむいてしばらく考える。正直に言うと今日はそんなにたくさんお金を持ってきていない。ここで洋服なんて買ったら完全に予算オーバーだ。しかし、カレンの言うことも一理ある。彩葉は基本制服でいる事が多いので私服はたくさん持ってるとは言えない。ここで夏休みに着る服を選んでおくのも悪くないかもしれない。

「んーまあいいか、せっかくだしね」

 そう思った彩葉はカレンの意見に賛成する事にした。

「やったぁ!」

 跳びはねて喜ぶカレンの尻尾がフリフリと左右に揺れる。こうやって感情が素直に尻尾に現れるあたりとてつもなく可愛らしい。

「だけど、半分はカレンちゃんのお小遣いから出すからね。後からちゃんと返してよ?」

「分かってます!ありがとうございます彩葉お姉様!」

 敷地内には銀行もあるので足りなくなったら貯金から引き落とせばいい。後からお母さんに事情を説明しよう、と彩葉は思った。

「リリィちゃんも何か買ってあげようか?」

 彩葉が話しかけると、リリィはその小さな肩をビクッと震わせた。

「そ、そんな・・・悪いです・・・」

「でもリリィちゃんそれしか持ってないんでしょ?」

 彩葉はリリィの服に目を向ける。彼女が今着ている服は正直地味だ。暗い紺色の無地のワンピース(それも長袖にスカート丈が足首まであるロングタイプ)、物が入ればそれでいいと言わんばかりのシンプルな手提げ袋、明らかに季節外れな秋用のブーツ、とにかくそろってなさすぎるのだ。これは上から下まで全部改善しなければと彩葉は心の中で思う。

「私は、これで大丈夫です・・・」

 リリィはそう言って遠慮しているが、夏らしからぬその格好は見ているこっちが暑くなりそうだ。

「ダメよリリちゃん!」

 と、そこへカレンが急に割り込んできた。もじもじと縮こまるリリィに喝を入れる。その様子はさながら娘を叱る親父のようだ。

「かっ、カレンちゃん!?」

「いい?人前に出る以上、時と場所と場合に合わせて最低限の身だしなみは整えないとダメ!海に行くんだから今の格好なんてもってのほか!ちゃんと爽やかなファッションにしなきゃ!!」

 そう言うとカレンはリリィの手を強引に引っ張り、店内に引きずり込もうとする。が、リリィはすんでのとことで踏みとどまった。リリィとしてはやはり慣れないところにはあまり行きたくないのだろう。

「でっ、でも・・・私おしゃれとか、し、したことないし・・・」

 リリィはそう言うが、カレンはそんな事気にせず彼女の背後に回り込むと、背中をグイグイ押して無理矢理店の中に入れようとする。

「大丈夫よ!私が完璧なコーディネートしてあげるから!まっかせなさい!」

「でもっ、でも私、洋服買うお金なんて、持ってきてないし・・・」

「彩葉お姉様が買ってくれるって言ってるじゃない!遠慮しなくていいんだよ!」

 強気なカレンにリリィは為す術なく押し切られ、そのまま店内へ入っていった。扉が完全に閉まる寸前、リリィが彩葉に助けを求めるような視線を向けたが、彩葉はリリィのためにと思って助けたいという感情をぐっと堪えた。リリィのあの服装は確かに改善が必要だと彩葉も思っていた。しかし逆に言えば、リリィは服装を変えるだけでも可愛くなるはずなのだ。それを見たいがために彩葉はリリィの泣き出しそうな目を見て見ぬふりをした。


「リリィちゃんって普通に可愛いのに自己肯定感が低いからなんかもったいないよねぇ」

 始終ずっと横から二人を見ていたルーシアは苦笑いしながらそう言った。確かにリリィはアメリカ人と日本人とのハーフという事もあり、顔立ちは非常に整っている。また、年齢の割りには落ち着いていて大人びているところからも、同年代の男子からの得点は高いはずなのだ。なのに肝心の本人の過去が過去なだけに、彼女に“自身”という物が全くないのだ。周りから散々否定され続け、自分は全く価値のない人間なんだと無意識に思ってしまっている。そこがリリィの短所だった。

「まぁ大丈夫だよ、少しずつ成長してるみたいだし」

 彩葉はなんとなくそう確信していた。まず人が多いこの場所にパドラ不在で来られたのは彼女にとって大きな進歩だ。桜花祭の時みたいに体調崩さないか心配だったが、今のところそのような気配はない。ここに到着してすぐは若干不安定だったが、今はだいぶ慣れたのか落ち着きを取り戻していた。おそらくリリィは根っこから嫌っているのではなく慣れていないだけなのだろう。幼い頃から周りを気にしていたせいでこういった慣れない事や新しい事になかなか踏み出せないのだ。つまりそこを少しだけサポートしてあげればリリィは普通の女の子として過ごせるのだ。そしてそれを改善するのにカレンがいい仕事をしている。消極的なリリィをカレンがグイグイ引っ張る事でリリィは少しずつ自分の殻から抜け出しつつあるようだった。

(まぁでも、もうちょっと時間はかかるかな?)

 店の中ではカレンが大量の服を持ってきて、鏡の前でリリィの体に合わせてあれこれと試行錯誤している。そしてそのたびにリリィはカレンについていけずに目を回していた。あれはさすがに止めないとリリィが倒れてしまいそうだ。

「よし、私たちも何か買お!そうだ、リリィちゃんの洋服代は私が出すよ。彩葉ちゃん、三人分の服買うのはさすがに大変でしょ?」

「本当!?よかった助かるよ!自分から言ったとはいえちょっと無理があるかもって思ってたんだよね」

 彩葉は苦笑しながらそう言った。

「まぁ新しい服のリリィちゃんには私も興味あるからね。私普段店の手伝いばっかりでお小遣いそんなに使ってないからたくさん貯金あるし」

「ありがとう!それじゃ行こ!」

「うん!」

 そして彩葉とルーシアも賑やかな店の中へと上機嫌に入って行くのだった。






 カレンの服選びは想像以上に長かった。前々からそうだったのだが、カレンはおしゃれに関して人並み以上にこだわりがあった。彼女が貴族の血筋だからだろうか?どちらにしろよく言えば博識で服選びのセンスもあるのだが、悪く言えば口うるさい。そして当然と言えば当然なのだが、被害者(リリィ)は少なくとも前者のように思う事はできなかった。おしゃれの『お』も知らないようなリリィにとってカレンの言うことはまるで異世界の言語のようだっただろう。リリィが目を回してついに倒れ込んだところで洋服選びは終了となった。これはもうしょうがない。リリィの体調が最優先事項だ。


「か、カレンちゃん・・・これ、今着なくても・・・」

 だがカレンのおかげでリリィにぴったりの服が見つかったのは確かだった。

 彼女が悩みに悩んで選んだのは鮮やかな水色のサマードレス。ひらひらのフリルがふんだんに施され、白色の水玉模様が可愛らしいデザインだ。リリィの深い青色の髪とちょうど良いバランスが保たれている。清楚な雰囲気を醸し出しつつ、幼くも可憐な可愛らしさをアピール。足首まであった長いスカート丈も膝より少し上まで上げ、そこから細くて華奢な脚がすらりと覗く。頭にはヒマワリが良いアクセントとなっている麦わら帽子、そして海を連想させる小さなサンダル。先ほどまでのリリィとはまるで別人ではないかと見間違えるほどの大変身を遂げた。

「大丈夫だよリリちゃん!ちゃんと似合ってる!」

「そうよ!もっと自身もっていいわ!」

 一仕事終えたカレンはどこか達成感に満ち満ちた表情だった。ルーシアもそのままリリィを抱きしめそうな表情と勢いでそう言った。


 今は「せっかく買った服だし今から着よう!」とカレンの提案により、全員新しい服に着替えて次の店へと向かっているところだ。カレンは先ほどの白いワンピースだ。他にもいろいろ悩んでいたが、やはりそれが一番お気に入りだったらしい。対してルーシアは薄手のブラウスにショートパンツだ。肩を出したり胸元を少し開いたりなど割と大胆ではあるが、決して清純さを失わないように絶妙なバランスをとっている。雫型のネックレスや水色の鮮やかなブレスレットなど細かいところまで隙がない。三人とも夏らしい爽やかな服装だった。

 彩葉は着替え部屋の空きがなかったため後から合流する事になっている。だいぶ人が並んでいたからもうしばらく時間がかかりそうだった。


「でも、やっぱり・・・は、恥ずかしい・・・」

 対するリリィは頬を赤く染めていた。せっかく可愛らしい服を着ているのに肩を縮めてしまっている。

「リリィちゃん、そんなんじゃもったいないよ。ほらちゃんと胸を張って!」

 ルーシアはリリィの肩をポンポン叩いて励ます。そう、普通にしていればリリィは可愛い女の子なのだ。

「うぅ・・・」

 今にも泣き出しそうなリリィ。そこへカレンが何かいいことを思いついたかのような顔を近づけた。気のせいか、少し顔がにやけているような気がする。

「大丈夫大丈夫!きっとヤマトも可愛いって言ってくれるよ」

 瞬間、リリィの顔がボッと耳まで真っ赤になった。

「なっ、なっ、何でそこで、大和さんが出てくるんですか・・・」

「え~、リリちゃんが一番分かってるでしょ?」

「わっ私には、分からない・・・」

「あら、それは残念」

 ゆでだこのような色になったリリィはそのままうつむいて黙ってしまった。

(ヤマトのこと出せば少しは元気出るかなって思ったけど、逆効果になっちゃった)

 もしカレンがリリィの立場で、「きっとパドラが可愛いって言ってくれるよ」なんて言われたら、早く見せたい!って嬉しい気持ちになるのだが、どうやらそれはリリィには通用しないらしい。リリちゃんって結構難しい性格だなぁと思いながらカレンがリリィを眺めていると・・・

(かっかっ、可愛いって・・・大和さん、言ってくれるかな・・・?)

 リリィはうつむきながらもほんの少しだけ嬉しそうな表情をしていた。もちろん彼女の心の声をカレンが聞く事はできないが、どんなことを思っているのかは非常に分かりやすかった。

(いや、案外簡単かも)

 カレンはそう確信した。


「ごめんおまたせ!」

 と、そこへ着替えに遅れていた彩葉が合流してきた。その途端、三人は彼女の容姿に目を奪われた。彩葉が着ているのはカレンと同じような涼しげなワンピース、だがカレンとは違って身体のラインがより強調されているタイプだ。彩葉は元々のスタイルが良いためその効果が抜群に現れる。アンダーバストを軽くリボンで結ぶことで胸の膨らみが布越しでもしっかり現れ、柔らかな布の生地が彩葉の肌を撫でるようにふんわり包み込む。スカートの部分の脚をなぞるようにできるシワが、その奥にある彼女の健康的な太ももを連想させる。女性としての魅力を直接ではなく、あくまでも間接的に表現している。夏風が吹けばそのさらさらな桜色の髪と共にスカートの裾がふわりと揺れる。頭には鮮やかな夏花が咲く髪留め。それが彩葉の笑顔にとても似合っている。道行く人々の目は老若男女関係なくその美しさに釘付けになっていた。

「どう?この服装、どこか変なところない?」

「わぁ!彩葉お姉様素敵です!!」

「うんうん!めっちゃ可愛い!!」

「そう?ありがとう二人とも!」

 嬉しそうに彩葉は笑う。その時、彩葉はこちらにうっとりと見とれているリリィに気がついた。彩葉が思ったとおり、彼女も彼女で服を新しく変えるだけで見違えるほど可愛らしくなった。そんなリリィに、彩葉はどこか満足感のようなものを感じた。

「リリィちゃんも、とても可愛いわよ!」

「ふえぇ!?あっ・・・ありがとう、ございます・・・」

 声をかけられ我に返ったリリィは慣れない服装の恥ずかしさを思い出したのか、肩を縮めて再びうつむいてしまった。


「んーちょっと予定より遅れちゃったなぁ・・・先にお昼にする?」

 彩葉が腕時計で時刻を確認するとすでに午後1時を過ぎていた。本来なら昼までに水着を買って、昼食を食べていろいろ遊んで帰る予定だったのだが、なんだかんだで彩葉たちも服選びに夢中になっていて時間を忘れてしまっていた。

「そうだね、私お腹すいちゃった」

 ぐぅ~とお腹がなり、ルーシアは少し照れくさそうにそう言う。やはりずっとあのハイテンションだと必要になるエネルギーが人並み以上なのかもしれない。

「でも、お店いっぱいあって・・・迷う・・・」

「はいはい!でしたら私いい店知ってます!」

 するとカレンが勢いよく手を上げた。その手には一枚のメモ紙が握られている。

「実はですね、昨日いんたーねっとで調べたんですよ!お店の外見やメニュー、お客さんのレビューやくちこみ?などの情報を元に『私的(わたしてき)にこの店良さそうランキングTOP3!』を選んで来ました!」

 ばーん!とカレンは決めポーズをとる。その姿に彩葉とルーシアはおぉ!と感嘆の声を上げて拍手した。

「すごい!カレンちゃんインターネット使えるようになったんだ!」

「えへへ、昨日ヤマトのパソコン借りて調べたんです。前にヤマトが使ってるのを見て、とりあえず真似してやってみたんですが案外簡単に見つかりました!」

 彩葉に褒められてカレンはふさふさと尻尾を振った。

「じゃあせっかくだし、ナンバーワンのお店に行こうよ!」

「そうだね、えーと、これはサウスエリアのカフェかな?帝国式のパンケーキが有名なんだって!」

「そうなんです!私も昔よく食べてたんですが、それがもうとても美味しくて!」

「じゃあ、私も・・・そこ、行ってみたい」

「決まりだね!それじゃ行こ!」

 四人は楽しく談笑しながら歩き出すのだった。






「一体なんなんだ・・・これ?」

 正午を過ぎ、腹が減ったので適当にカップ麺をすすりながら、ネットサーフィンでもするかと思いブラウザを開くと、そこには見覚えの無いウェブページが開いていた。見た感じ最近できたアウトレットモールの中にあるカフェのホームページのようだ。

 俺はずるずると麺をすすりながらしばらく考える。昨日は一日中ずっとゲームのイベントに没頭していたためネットは開いていない。一昨日は最難関ミッションの攻略法を調べるためにネットを使ったが、その時にはまずこんなページは開いてなかったはずだ。ってか興味ないし調べるはずがない。

 ということは外部者の可能性しかない。確かに昨日俺は「ばーべきゅーの準備をするから手を貸せ」とのたまうパドラの手伝いをさせられ(もちろん断るつもりだったが、パドラが雷属性魔法で脅してきたから渋々手伝うことになった)、買い出しだの何だのしばらく家を留守にした。その間に誰かが俺の部屋に入ってネットを使ったって事か。彩葉は・・・おそらく違う。留守中(しかも鍵をかけている状態)で部屋に入り込む可能性は確かにあいつが一番高いが、わざわざ俺のパソコンでネットを使う理由が分からない。スマホで調べれば万事解決するはずだ。同様の理由でルーシアもあり得ない。彼女は異世界出身なのになぜか電子端末類を使いこなしているのだ。当然、スマホも持っている。礼儀正しいリリィもないだろう。彼女はそもそも勝手に部屋に入り込むような性格じゃない。パドラは俺と一緒に行動していたからそもそも容疑者ではない。

「消去法でカレンか・・・」

 彩葉と同居している奴なら、彩葉の家のどこかにある俺の部屋の合鍵を見つけ出して持ってくる事もあり得なくはない。

「あいつ、後で頭グリグリの刑だな」

 見られて困るようなものはないから別にどうってことはないのだが、個人のプライバシーを尊重しないその言動にイラッとするのだ。マジで通報してやろうかな、身内だからといって容赦しないぞ俺は。

 それとも異世界ではこんなの普通なのだろうか?

「まぁいいや。それにしても、なんでこんなの調べたんだ・・・?」

 明日は海に行くってのにまだどこか遊びに行くつもりなのか?全く気楽な人生だな。そういえばカレンは貴族出身なんだっけ?やっぱり金持ちで身分が高い方が人生勝ち組なのか。世の中不平等だな。

 そんな事を思いながら、俺はそのページを閉じてネット情報の波に乗ることにした。






「ふぅ、美味しかった!お腹いっぱいで私幸せ」

「ねー、私帝国のパンケーキ初めて食べたけどフルーツいっぱいでとても美味しかった!見たことない物もあったけど、あれ見かけによらず美味しいのね」

「でしょ!私も昔から大好きなんです!ね、どうだったリリちゃん!」

「うん、美味しい・・・でも、ちょっと量が多いかも・・・」

「あ!じゃあ私が食べる!これならいくらでも食べられる!」

「もう、あんまり食べると太っちゃうよルーシアちゃん」

「いいのいいの、たまにはこういう日があってもいいじゃん!」

 そう言いながら、ルーシアはその残り半分をペロリと平らげた。

 夏の昼下がり。気温も徐々に暑くなり、四人は逃げるように店内に入った。帝国の店ではあるがここは二つの世界が交わる町。日本の空調技術も導入されていて中は快適な空間だった。涼しい部屋から臨む夏空と入道雲、そして日の光を浴びる町並みはどこか絵画でも見ているような気分になる。

「それにしても今日は一段と暑いね・・・新しい服が汗まみれだよ」

 パタパタとルーシアは襟の部分を仰ぐ。そのたびに胸元が大きく開くが、周りには女性しかいないからか本人はあまり気にしない。

「帰ったらすぐに洗濯しなきゃね。明日着られなくなっちゃう」

 カレンもハンカチで汗を拭いながら苦笑する。

「でも、そんなにすぐ乾くかな・・・?」

「まあその時はパドラさんの魔法で乾かしてもらえばいいよ。私も一応魔法使えるし、呼んでくれればすぐに行くよ」

 ルーシアは魔法学校の卒業生で人並み以上には魔法が使えるのだ。

「ありがとうルーシアちゃん。せっかくの可愛い服なんだし、大和にも見せたいなぁ」

 そんな彩葉の頬は少し赤みがかっている。暑さのせい・・・ではなさそうだ。

「ふふっ大和どんな反応するかな?可愛いって言ってくれると思う?」

「いやぁ、あの人結構ひねくれてるから、何にも言わないんじゃない?」

「あー、あり得る。大和くんってヘタレそうだしね」

 カレンとルーシアは、当の本人がいないというのをいいことに言いたい放題だ。だが二人の言う事は間違ってはいない気もする。彼は素直じゃないから照れくさくて「可愛いよ」なんて言えないだろう。・・・特に彩葉に対しては。

「えーそんなことないと思うけどなー」

 それでもなお、彩葉は期待を膨らませていた。

 そんな中。

(そっか、そうだよね・・・可愛いって言ってくれるわけ・・・ないよね・・・)

 会話を横から聞いていたリリィはしゅん・・・と肩を落とした。カレンの計らいのおかげで少し自身が付いたリリィだったが、カレン(とルーシア)のせいで元に戻ってしまった。

 そんな負のオーラを感じたのか、カレンが不思議そうな表情をする。

「どうしたの?リリちゃん」

 あくまで本人は無自覚らしい。

「ううん、なんでもない」

「・・・?」

 首をかしげるカレン。彼女に悪気はない事はリリィは理解していたが、その無垢な瞳がまるで「何か私間違った事言いました?」と言っているかのようで、リリィは少なからずショックを受けていた。

「よし!それじゃあ本題の水着を買いに行こ!」

 その時、バン!と彩葉は勢いよく立ち上がった。

「あ、そうだったね、楽しすぎて忘れてたよ」

 ルーシアが照れくささを隠すようにはにかむ。

「私が会計済ませておくから、ルーシアちゃんたちは先に店出てて」

「分かった、後で半分は渡すから!」

「ほら、私たちも行きましょ!リリちゃん!」

「・・・うん、わかった」

 先ほどからリリィの様子がおかしい事を不可解に思いながらも、カレンはリリィの手を引っ張って店を後にした。






 水着売り場にはより多くの人々が集まっていた。なんたって明日は海開き。水着もセールスで安くなっていて、たくさんの人が水着を手に取り、それを着ている自分を想像しながら楽しげな表情を浮かべていた。

 そしてそれは彼女らも例外ではない。

「へぇ、これが水着か~。可愛いのいっぱい!」

「そっか、ルーシアちゃん初水着なんだね」

「そうなの!ずっと水着着て海行くのに憧れてたんだ!」

 ルーシアは目をキラッキラに輝かせていた。「あれもいい!これもいい!どうしよう決められない!」と悩みながらも、その悩んでいる事を楽しんでいるようだった。そんなルーシアを見ていると、彩葉自身も連れてきた甲斐があってなんだか嬉しくなった。

「んー今年はどんな水着にしようかな~」

「え、彩葉ちゃん毎年買ってるの?」

「ううん、去年友達と海行くことになってその時買った水着が家にあったんだけど、この前着たらちょっと小さくなっててさ。こう、胸がちょっと苦しいというか。だからちょっと大きめを買い直そうと思って。これなんてどうかな?・・・よいしょ」

 そう言いながら彩葉は高い場所にかけられてる水着を背伸びしながら取る。同時に、彼女の二つの丘陵がぽよんと大きく跳ねた。服越しであるにもかかわらず伝わる、その柔らかさ。それを見てしまったルーシアは、女性のステータスとして彩葉に完全敗北している事を悟った。

「・・・なんか・・・す、すごいなぁ」

「ん?どうかした?」

「いや、何でもない・・・(そしてそれに無自覚って事もある意味すごいよなぁ)」

「?」

 ルーシアはただただ苦笑いする事しかできなかった。

「そういえば、カレンちゃんとリリィちゃんは?」

 その時、彩葉はそのことに気付いた。

「あ、ほんとだどこ行っちゃったんだろう?」

「探した方がいいかな?」

「んー、二人が一緒にいるなら心配ないと思うけど・・・リリィちゃんが一人だった場合が心配だな・・・」

「そうだね、探しに行こうか」

「うん、多分水着売り場のどこかにいるはずだから」

 だが、水着売り場といってもここは幻想街最大の場所。人もたくさんいて一筋縄ではいかない事は、彩葉もルーシアも感じていた。


 少々時間を遡って一方、あるコーナーでリリィはある水着を手に取っていた。

「水着・・・私には似合わないのばかりだから・・・こういうのがいいかも」

 そしてその水着を持ってレジへ向かおうとした。パドラからお小遣いは十分もらっているからその点に関しては心配ない。商品を店員に渡してお金を払うだけだから私でも大丈夫なはず、リリィがそう思ったその時だった。

「リリちゃ~ん、何やってんのかなぁ?」

「ひぃっ!?」

 ぬっと背後に現れる、狐耳の影。聞き慣れた声だがいつもよりずっと低い。そう、怒っている時のそれだとリリィは確信する。そんな声と同時にガッと肩を掴まれ、リリィは思わず悲鳴を上げた。

「カレンちゃん!?どっ、どうしたの急に?」

「どうしたも何も、今何しようとしてたの?手に持ってる物は何?」

 ジト目でにらむカレン。リリィはそれを隠すようにカレンから距離を取ろうとする。

「なっ、何も持ってないよ?」

「それっ!」

「あ!待って・・・!」

 だがカレンは素早くリリィの目の前に移動すると、彼女が抱えていた物をひょいと取り上げた。身長はカレンが上だ。リリィは取り返す事ができない。

「やっぱり。私知ってるよ。これ、日本の学校用の水着じゃない」

 そう、リリィが海に着ていこうとしていたのはスクール水着だった。なるほど、確かにリリィが選びそうなシンプルに地味な物だ。しかし、これで海なんて行ったら明らかに場違いだろう。

「だっ、だって・・・私に似合う物なんて・・・全然ないから・・・」

「はぁ、まだそんな事言ってんの?」

 カレンは呆れたようにため息をつく。

「・・・それに、カレンちゃん言ったよね・・・大和さんが、その・・・、かっ可愛いって・・・言うわけないって・・・だから、もうおしゃれする理由なんて、ないのかなって・・・」

 リリィがもごもごとしゃべるためカレンは最初彼女は何を伝えたいのか分からなかったが、先ほどカフェでの会話を思い出し、リリィが今どんな気持ちでいるのかをようやく理解した。

「あー、だからさっきからなんか変だったのか。ごめんね、私が全然リリちゃんのこと考えてなかった」

「だ、大丈夫だよ・・・悪気はない事は、分かってるから・・・」

「でもねリリちゃん、それとこれと話は別!海にこれで行くなんてあり得ない!」

 一瞬カレンの表情が少しは和らいだが、再び張り詰めた空気に変わる。

「うっ・・・ごめんなさい・・・」

「まだ分かってないみたいだからこの際はっきり言っとくけど、まだ試してもいないのに『自分に似合う物なんてない』なんてこと言っちゃダメ!リリちゃんは自分の事を低く見過ぎている!」

 するとカレンはリリィの肩を掴んで鏡の前まで誘導した。そして勇気付ける用にぽんと肩を叩く。

「ほらよく見て。リリちゃんはこんなに可愛いんだよ?」

 リリィは顔を上げる。鏡に映るのは可憐な服に身を包む、一人の青髪の少女。刹那、リリィの目にほんの少し光が灯る。

「これが・・・私?」

「そ、可愛いでしょ?だからもっと自身出していいんだよ」

 洋服店ではいろいろとゴタゴタしててしっかりと見る機会がなかったが、こうして見てみるとその代わり映えがリリィにも実感できたらしい。

「それに、可愛いって言って欲しいなら可愛いくならなきゃダメでしょ?言ってもらうんじゃない、言わせなきゃ!恋愛は戦いなの、押して押して押しまくった方が勝つのよ!・・・ってこの前読んだ本に書いてあった。リリちゃん、ヤマトのこと好きなんでしょ?」

「かっ、カレンちゃん!?・・・なっ何を、言って・・・わた、私は・・・」

 「好き」という単語にリリィの体がビクッと震える。先ほどと同じように頬を染め上げ、ぐるぐると目を回し、明らかに動揺しているのが分かる。

「好きなんでしょ?」

「・・・ッ、・・・うん・・・」

「なら頑張らないと!ヤマトが振り向いてくれるように!私がしっかりサポートしてあげるわ!」

 カレンはリリィの手を取り、まっすぐ見つめて言う。

「私は、いつもリリちゃんの味方だよ!」

「カレンちゃん・・・うん、ありがとう。私、頑張ってみる」

 リリィにほんの少しだけ、愛らしい笑顔が灯った。


「というわけで、水着選ぶわよ!いい?次地味なの選んだら本当に怒るからね!」

「でも、私どんなの選べばいいか・・・分からない・・・」

「安心しなさい!ヤマトを完璧に悩殺させるキューティーでセクシィーな水着選んであげるわ!」

「あ、あの・・・あんまり派手過ぎるのはやめて、ね・・・」

 手伝ってくれるのはありがたいが、その言い方のせいかリリィはどことなく不安を感じる。

「大丈夫大丈夫、ちゃんとリリちゃんに似合うやつ選ぶから。それとも少し挑戦してみる?」

「ふ、普通のでお願いします・・・」

 それもそうだろう。今の服だって恥ずかしがっているのに、そんな水着でも着たらそのショックでいよいよどこぞの白髪少年のように引きこもってしまいそうだ。

「オッケー、じゃあこれなんてどう?可愛い花柄だよ」

「え、あ、うん、じゃあそれで・・・」

「んーいや、でもデザインがシンプルすぎるよねぇ。もっとひらひらがついてるのがリリちゃんに似合うかも。ほら、これなんかいいんじゃない?・・・、・・・んーやっぱりちょっと色合いが良くないかなぁ?じゃあこっちに――(以下略)」

 そう言うカレンは二つ三つと次々に新しいのを持ってきてはリリィの体に合わせる。デジャヴ――先ほどの洋服店での光景と全く同じだ。そのことに気付いたリリィは、これもまた長くなりそうだなぁと覚悟を決めざるを得なかった。

「あ、あっち側にもたくさんあるよ!行ってみよ!」

「う、うん・・・」

 でも、さっきとはなんだか違う。よく分からないけど、なんかちょっと楽しいのかも・・・

 リリィはそう思いながら、カレンに手を引かれようについていった。






「あ、見つけた」

 十数分後、彩葉は、いろんな水着を取っては鏡の前で試行錯誤しているカレンとリリィを見つけた。とは言っても一方的にカレンが楽しそうに選んでいるだけだが。相変わらずカレンは容赦ない。リリィは明らかに戸惑っているのに「そんなの知ったことではない」と言わんばかりにリリィのコーディネートをしている。

「そっか、子供用の売り場か。二人ともまだ11と14だもんね」

 なかなか見つからない事に少し焦ってたルーシアだが、二人とも何事もなさそうでほっと胸をなで下ろした。

「私たちも加わってリリィちゃんを助けた方がいいかな?」

 洋服店の事もあって、さすがに可哀想に思い始めた彩葉。

 しかしルーシアは・・・

「いや、そのままでいいんじゃない?ほら見てよリリィちゃんを。ちょっと楽しそうじゃない?」

 確かに状況は洋服店の時とほとんど変わっていなかったが、リリィの表情は先ほどに比べて柔らかくなっていた。やはりカレンの勢いについていけてないようではあるが、それでも彼女なりに水着選びを楽しんでいるようだった。

「何があったかは分からないけど、私たちが出る幕じゃなさそうね」

「・・・そうだね。私たちも選びに戻ろうか」

「うん!」







 夕方、帰りのバスの中で。山の向こう側に沈みゆく日の光を彩葉は車窓からぼんやりと眺めていた。後ろに流れていくのはのどかな田舎風景。シャングリラは都市部から少し離れた場所にあるため、こうして何もないただ田畑が広がる場所を通らなければならない。遠くの前方には、ぽつりぽつりと明かりが灯り始める都市部のビル群。夕暮れ時のその景色はなんとも言い難い美しさがある。また一日が終わりを迎えようとする、だけどまだ楽しんでいたい。まだ今日でありたい。そんな寂しさを助長するかのような・・・

 通路をはさんで反対側の席ではリリィとカレンがお互いに肩を寄せ合いながら小さな寝息を立てている。二人ともたくさん楽しんでいたから疲れたのだろう。特にリリィは相当疲れたはずだ。慣れない場所、初めての経験、リリィにとって今日はだいぶ濃い一日だったのではないだろうか?彼女が今握りしめているのは、カレンとともに選んだ水着が入った紙袋。これはカレンが選んだ物ではなく、最終的にリリィ自身が選んだ物なのだ。そう思うとリリィもだいぶ成長したなとしみじみ感じる。

 流れていく風景とバスの振動が徐々に眠気を誘う。だがそれがなんだか心地よい。

「眠かったら寝てもいいんじゃない?私が起きとくよ?」

「ううん、いいの。ルーシアちゃんも眠たいだろうし」

「私はそんな事ないよ!だって明日が楽しみだし!」

 ルーシアは買い物袋を嬉しそうに覗く。そこには一生懸命悩んでようやく選んだお気に入りの水着が入ってる。

 そう、今日は明日ための準備。本当のお楽しみはこれからなのだ。

「初の海だもんね」

「うん!みんなと一緒に行けて嬉しいよ。いっぱい思い出ができるといいな」

 西日に照らされたルーシアの表情は待ち遠し明日への期待に満ち満ちていた。

「そうね、きっと一生の思い出になるよ」

 運転手がバス停に到着したことをのんびりした口調でしらせ、バスが停車する。数人の乗客が降りて、再びバスは走り出した。

 四人を乗せたバスはやがて都市部へと吸い込まれるように走って行った。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

夏編(前回投稿した後『メモリアル・サマーレコード』と名付けました)の第二部ということで、女性陣のそれぞれのキャラどうしの関係性を書いてみました。まあなんとなく彼女たちがお互いの事をどう思っているのかが少しでも伝わればいいなぁと思います。

というわけで次回、海でみんなでわいわいする回を書いていこうと思います。

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