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重力魔術士の異世界事変  作者: かじ
第4章 王都
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第86話 オズとブラウン

こんにちは。

ブックマークや評価をいただいた方、有難うございます。とても励みになります。

第86話、昨日の続きです。何卒宜しくお願いします。


 クロム先生と一緒にブラームスの町まで戻ると、ブラウンたちは先に宿のハンナ先生の部屋に集合していた。

 

「ユウ、フリー!」


 部屋に入ると俺らを見るなりマリジア、シャロン、ブラウンが泣きそうな顔でバタバタと駆け寄ってきた。


「おう」


「やほぉ」


 俺らがへらへらと手を上げて答えると、


「無茶して、この馬鹿っ!」


 会うなり、そう言いながらマリジアは右手を振りかぶった。


「へ?」


 パパシンッ!


 左頬に走る衝撃。


「いっ!?」


「あいたっ!」


 俺とフリーはマリジアに頬をひっぱたかれた。


「それで許したげる」


 顔を赤くしてプンスカそう言うと、腕を組んで引き下がった。


「あははは…………」


 マリジアの後ろについてきていたシャロンとブラウンは苦笑いだ。2人とも俺たちに言う言葉をなくしたようだ。


 マリジアってオカンみたいだな…………。


「お前ら無事だったんだな」


 オズはマリジアという嵐が去っていくのを見計らって、俺のところへ来た。


「いや、無事じゃねぇけど…………?」


 頬に真っ赤な手形がついた。


「タラテクト種が出たんだろ?」


「ああ、まぁな」


「しかしあのSランクの怪物相手によく…………奇跡でも起きたか?」


「いや…………助かったのはクロム先生のおかげだ。あの人めちゃくちゃ強ええ」


「へぇ、どのくらい?」


 オズが興味本位で聞いてくる。


「学園長と、同じくらいかもしれん」


「は? 嘘だろ…………?」


 オズが信じられないと、今もダルそうにハンナ先生と今後について話をするクロムを見る。とても強そうには見えない。


「人は見た目によらないってことか」


 とそこでめんどくさい奴らまで絡んできた。


「ふん、まさかあの災害相手に生きて帰るとは、いささか悪運が強いようですねぇ」


 ガストンたちだ。いかにも大袈裟な身振りで残念そうに言う。


「お前らも無事逃げ帰ったようで何よりで」


「ふん、手足の1本でももげていれば良かったものの…………」


 憎々しげに俺を睨み付ける。


「そりゃ残念。それともその態度は俺が無事だったことへの安堵の裏返しか? もしかして俺のこと好き?」


「なんだと…………!」



 パスん。



「あいてっ」


 振り返るとクロム先生が俺の頭を持っている書類の束で叩いていた。先生たちの打ち合わせがちょうど終わったようだ。


「はい。お前ら全員無事だな。明日王都に帰る。以上」


「そうじゃないでしょ、ちゃんと説明してくださいよもう!」


 真面目なハンナ先生が突っ込んだあと、補足し始める。


「イレギュラーが起きましたので、これで実習は終了です。これから町で休んだあと、明日朝王都へ向けて出発です」


「あ、あの…………タラテクト種はどうしてあんなところに?」


 マリジアが手を上げて質問した。


「知らん」


「それは不明です。これからギルドが調査します。推測での情報は混乱を招くので口外禁止とさせていただきます。これはギルドよりの通達です」


 有無を言わせぬ口調でハンナ先生は言った。


「ということだ。お前らわかったか?」



「「「「「はーい」」」」」



 タラテクト種が現れた原因について考えてみたが、情報が少なくわからなかった。ただ、ガストンたちがタラテクト種を呼ぶのは無理だろうという点では、賢者さんとも意見が合致した。考えられるのは地下に大規模な巣があるかもしれないということだ。


 その日夜、俺たちの部屋にはフリーとブラウンに加えて、なんとマリジアとシャロンまでもが遊びに来た。


「フリー、学園に来て良かったな…………」


「うん、これが青春なんだねぇ…………」


 フリーと俺は女の子が来たことに幸せを噛み締めていた。ちなみに2人はさすがにネグリジェではないが、部屋着にはかわりない。

 というか、マリジアとシャロンは昨日今日と立て続けに起きた事件について不安になり、誰かと喋りたかったらしい。


「本当、あんたたちはアレの相手してよく無事だったわよね。タラテクト種よ? なんでそんな飄々と生きてられるのよ」


 マリジアがベッドに腰掛けて膝に頬杖をつき、ジト目で言った。


「生きてちゃ悪いのかよ」


 ムッとした顔で答える。


 ちなみに俺とブラウンは女子に遠慮してもう片方のベッドに座り、オズは相変わらずそこが好きなのか机の上に膝を立てて座っている。フリーは部屋の片隅に腕を組んで壁にもたれている。フリーは多分カッコつけてるだけだ。


「もう2人に会えないのかと思った…………」


 泣きそうになっているシャロンはマリジアの隣に座っている。


「ま、まぁ、すぐにクロム先生が来てくれたしな」


「そうそう。僕らもそんなに危険じゃなかったしねぇ」


 シャロンの涙目に慌てる俺とフリー。そして急いで話題を変えた。


「でも先生、あれは強すぎだろ……」


「ねぇ、まさかタラテクト種すら圧倒するなんてねぇ」


 今思い出してもあの強さはおかしい。Aランク、もしくはSランクの魔物をノールックで瞬殺できるなんて、SSランクは間違いなくある。なんで教師なんてしてるんだ?


「そんなに凄かったのね」


「うーん、でもあの先生なら納得しちゃうね」


 シャロンはどこか不思議にそう感じてたようだ。


「ぶっきらぼうに見えるだけで本当はすげぇ人なのかも」


「そうね。まぁでも、実力の底が見えないのはあなたたちも同じよ?」


 マリジアが俺とフリーを指差した。


「俺?」


「僕もかい?」


 マリジアの言葉に俺らは思わず苦笑いする。


 困ったな…………。


「そうよ。一体何者なの?」


 マリジアは真面目な話をしたいようだ。


「それは俺も興味がある」


 オズまでのっかってきた。ナイフを布で磨いているが、意識は完全にこっちを向いている。


「ただの平民じゃないわよね? じゃなきゃタラテクト種相手に無傷で時間稼ぎができるわけがない」


「…………」


 鋭いな。


「ねぇ、本当はすごい冒険者なんじゃないの?」


 マリジアは顔を近づけて観察するようにグイッと詰め寄ってくる。


 ま、それくらいなら答えても問題ないか。


「いやまぁ、Cランクの普通の冒険者だ」


 俺はポリポリと頭をかきながら言う。


 間違っては、ないしな。


「Cランク…………? 本当に?」


 Cランクということに驚きを隠せないようだ。


「ああ、ほらな」


 俺はギルドカードを取り出してマリジアに見せた。


「ほんとね…………。だったら冒険者がどうして学園になんか来たの?」


「いいだろ別に。冒険者が学園で学んだらダメなのか?」


 ギルドカードをポケットに戻しながら聞く。Sランクとかならまだしも、Cランクなら学園に来ていても不自然ではないはずだ。


「ダメってことはないけれど…………冒険者は命を担保に高い報酬を狙うでしょ?」


「ああ」


「対して学園は高額な学費を払うことで安全に訓練して、高い実力を身につけるところだもの」


「おいおい。そりゃ貴族様はお金があるだろうが、平民には厳しいぞ?」


「実際そういう仕組みなのよ。だからあんたたちが多額の学費を払ってまで来てるのが疑問だったの。だってこのクラスに入れるくらいなら冒険者でもすでにある程度はやっていけてるはずでしょ?」


「うーん、そりゃあ…………魔法や魔物について学べば、もっと高いランクになれると思ったからな」


「ふぅん、案外普通の答えね」


 納得したのかしてないのか、マリジアは口を尖らせてそう言った。


 これは元から考えてた答えだ。変に捻るよか、普通の冒険者を装ってそれっぽく答えた方がボロが出ないし、押し通せる。


「…………本当にそうなのか?」


 オズが机から降りて立ち上がり言った。


「俺はユウに魔法を学ぶ意味があるとは思えない」


「あ? 大有りだぞ。俺の魔法自己流だしよ」


 嘘は言っていない。


「いや、ずっとお前のことを観察してたが、学園で学ぶ魔法よりも、お前の魔法こそ正しいように思える」


「…………どういうこと?」


「俺は、物心ついた時から魔力や詠唱の仕組みについても研究し、オリジナルの魔法を設計してきた」


「魔法の設計…………!?」


 マリジアたちは息を呑んで驚いている。


 へぇ、よくわからんけどすげぇな。


【賢者】それは凄いことです。私もすべての詠唱の解読に1時間はかかったのですから。


 それはオズが不憫だから止めてやれ。


【賢者】詠唱とは、魔力を制御し変換するものです。使用する魔力の量を決め、枠組みを作り、属性を指定することで魔力を魔法として変換しています。詠唱の言葉の羅列を1から組み上げるのは相当な労力です。


 プログラミングのようなものか。魔力操作の方が百倍いいな。


「それでずっと疑問に感じてたことがある。詠唱魔法は不完全だ。つまり100%の魔力を100%の魔法に還元できていない。ロスが発生している」


【賢者】その通りです。詠唱には処理途中、様々なところでロスが発生しています。


 へぇ。さすがは天才と呼ばれるだけはあるのかな。


「だが、ユウとフリーだけは違った」


 オズは俺たちを見て言った。


「そう、かもしれない」


 シャロンが口元に手を当て、考えるように話し始める。


「私、魔力感知があるから魔力が見えるんだけど、ユウが魔法を使うときは皆と違う。スムーズに魔力が流れて変換されている。本当の理想の魔法を使えてる、そんな感じがするの」


 こいつらすごいな。今までそこに気付いた奴なんていなかった。いやそうか。ここはSクラス、天才の集まりだった。



「「「いったいどういうこと(だ)?」」」



 3人がぐいっと前のめりになって聞いてきた。


 うげ…………困ったな。



「……言わない」



「え?」


「これは俺の開発したやり方だし、お前らに教える義理はない。フリーに聞いても無駄な」


 フリーにも釘を刺しておく。フリーならシャロンの色仕掛けに陥落する可能性が大いにある。


「ぐ……確かにそうね」


「わかった。でもいつか必ず秘密をあばいてやる」


 オズはその前髪の奥にギラギラとした目をのぞかせながら言った。


「そりゃご自由に」


 ま、別に難しいことじゃない。スキルさえあれば誰にだってできるしな。


「満足したか? だったら俺からもある。お前ら、ガストンとサイファーをどう思う?」


 皆が眉をひそめた。


「最低の奴らね」


 マリジアが言葉をためながら『最低』を強調して言った。


「彼らはまるで他者を見下すために生まれてきたような人間よ」


「僕もそう思うよ。あいつらは…………貴族の風上にもおけないやつらだ」


 それまで黙っていたブラウンが珍しく憤って話し出した。


「貴族ねぇ……」


 俺の貴族のイメージと言えば、あいつらでピッタリなんだが。むしろ、ブラウンやマリジアたちが異質だと思う。


「あいつらは偉そうに威張ることが貴族だって思ってる! でも、本当の貴族はそうじゃない。貴族には貴族の義務があるんだよ」


 ああ、なるほど。


「要するに、大きな財産や権力の保持には社会的義務があるってことか」


 ノブレス・オブリージュってやつだな。学園の仕組みからしても、貴族が力をつけて民を守るように出来てるんだろう。


「そう。僕はジーク辺境伯って人の生き方を見てそれを学んだんだ」


 久しぶりに聞く名前だ。ジークのこと知ってるのか。


「へぇ?」


「でもその人は、西の辺境、コルトって町で領主をやってたんだけど、ついこないだ、暗殺されてしまって…………」


 ブラウンは下を向き、悲しそうに眉をひそめる。


 いや、まぁ本当は生きてるんだけどな。


「だから今度は僕が彼みたいな貴族になろうって誓ったんだ。あの人は僕のあこがれの人だよ」


 ブラウンは拳を握りしめて言った。


 おお、あの人の死(嘘)が思わぬところで火を付けてたようだ。


「ジーク辺境伯ね。あたしも知ってるわ」


「そもそもジーク辺境伯なら、王都じゃ知らん奴の方が少ないぞ?」


 オズが呆れたように言った。


「なんでだ?」


「あの人がやった政策として、スラム地区への孤児院の設立や学園の学費軽減、リフトの建設、王都周辺の街道整備等、皆あの人の恩恵を受けている。民衆の支持を一身に受けた分、他の貴族に良く思われなかったようだがな」


 そしてオズは少し言いにくそうに続ける。


「その結果、反乱を企てた疑いをかけられ、コルトへとばされた」


「うん、でもあれは…………」


 ブラウンがボソボソと言い淀む。


 やはり何か知っているのかもしれない。ジークの執事はブラウンの父親マードックの虚言が原因で左遷されたと言っていた。そして、おそらくジークの父親を殺害したのもマードックだ。


「だがまぁ、素晴らしい人だったのは確かだ。今でもあの人を好み称える者は多い」


 オズがそう締めくくった。 


「そうか…………それは残念だったな」


 表向きは死んだことになってるからな。


「つまり、あんな人もいれば、ガストンたちのような貴族もいるのよ。むしろほとんどがそう」


 マリジアが怒ったように言った。それに賛同するようにオズも話す。


「確かにこの国の貴族たちは腐っている。自分のことしか考えない愚か者ばかりだ。だからこそ、もっと王族がしっかりしなければこの国自体が腐ってしまう…………!!」


 オズはギリッと歯を噛み締めた。


 オズは、余程今の貴族の状態をよく思ってないようだ。前から思うが国王の息子たちは良き人格者が多い。オズとて素直ではないが国のことを常に思っているようだ。


「それで、話は戻るが昨夜な…………」


 そして俺は、昨晩マリジアたちの部屋に襲撃があったことをオズたちにも話した。



◆◆



「それはもう我慢ならないね」


「…………嫌がらせにも限度ってものがある」


 ブラウンとオズが憤る。


「依頼者はガストンたちなのか?」


「うーん、十中八九そうだとは思うんだが…………ちょっと違うような気もするんだよなぁ」


 まぁその感覚も単に、嫌がらせの度合いが酷くなったということだけなんだが…………。


「そいつらを拷問して吐かせりゃ良かっただろ?」


 当たり前のようにさらっとオズが言った。


「おいおい、そんなことしたくねぇよ」


 なんて王子だよ。ちょっとオズの感覚に焦る。


 どうやらそれほどオズは頭にきているようだ。さっきの貴族への憤りと言い、やっぱりオズはこの国の貴族を酷く嫌っている。


「どうせあいつらだろう。自分ら以外を見下すのは連中が好きなことだ。そもそもガストンとサイファーはあいつらの親からしてもそうだ。親がそうだと子も同じことだ」


 オズが珍しく奴らをああいう連中をいかに嫌っているか語る。オズはやはり何か悩んでいるのかもしれない。


 そしてその切っ先は、突如ブラウンを向いた。


「…………おいブラウン。そういやお前の家と、ガストンとサイファーのとこの両家は仲がよかったよな?」


 そう言ってオズがブラウンを威圧した。


 い…………!?


「そうだけど…………え、えっ…………!?」


 ブラウンは肩を縮こまらせて、ブルブルと震え怯えた。


「ど、どういうこと…………?」


 不安そうにブラウンはオズに聞く。


「止めなさいよオズ!」


 マリジアが止めようとするがオズは止まらない。シャロンもどうしていいかわからずに2人を交互に見ている。


「そのまんまだ。お前の父親マードックはこの国で有数の大貴族だが、特に良い噂を聞かない。それで考えてみれば、お前だけあいつらに何もされてねぇ。お前、親づたいであいつらと実は仲良いんじゃねぇのか? 陰じゃ、俺らのこと一緒に笑ってんじゃねぇのか?」


 そうきたか。威張り散らす貴族が嫌いなオズが、ブラウンと一緒にいるのも不思議だったが、やはり思うところはあったようだ。それに事実、反乱を企ててるのはブラウンの父親だしな。


 やば…………止めないと。


「ちっ、違う! 僕はあいつらの仲間じゃない!」


 ブラウンが悲しそうに叫んだ。


「へぇ、だったら証拠はあるのか…………?」


 オズが立ち上がってブラウンを見下ろす。


「そんな…………」


 その時のブラウンの顔には、友達にそう思われていたことへの絶望感がにじみ出ていた。


「止めろオズ。さっきのブラウンの話聞いてたか? ブラウンはジークのような貴族になるって言ったんだ。ガストンたちとは違う! それとも、あれが演技だと思えるのか?」


 俺の問いに静まり返った。


「ぐっ…………」


 そして、オズが固まった。


「そうよ。ブラウンはあいつらとは違うわ」


 情に厚いマリジアがブラウンをかばってオズの前に立ちふさがった。


「オズ、ブラウンは他者を見下すような貴族じゃない。それは、ガストンたちと同類であることよりも明白なことじゃないのか?」


 沈黙が流れる。そしてオズが口を開いた。


「そうだな…………。すまん、悪かった」


 大人しくオズがブラウンに頭を下げた。


「う、うん」


 どちらが悪いわけではない、2人の立場がオズにそう思わせただけだ。

 だが、王子が頭を下げるとは思わなかった。オズ自身も自分の否を認められる良き人間だ。


「まぁ、ブラウンに人を傷付けるのは無理そうだからねぇ」


 場が落ち着いたところでフリーがのほほんと言う。


「うん、そうだよ。ブラウンは誰にだって優しいもの」


 シャロンが柔らかい笑みで言った。


「ブラウン、俺らはお前を信じてる。だから大丈夫だ」


 すると、




 …………ずびっ、ずびっ!!




「ん…………?」


 鼻水をすする音がすると思うと、ブラウンが目と鼻から液体を垂れ流していた。


「ちょ、ちょっと、なんで泣いてるのよブラウン!」


 急に泣き出したブラウンにマリジアが慌てる。


「だ、だって…………ぼ、僕、家でも、外でも、居場所がなくて、初めて僕のこと本気で信じてくれた…………!」


 そうか。家ではあんな扱いを受け、外ではマードックの家の者として嫌われてきたんだもんな。


 そりゃ、辛いよな…………。


「当たり前だろブラウン。俺たちはお前の味方だ」


「う、うん。皆、ありがどう…………!!!!」


「悪かったブラウン。許されることだとは思わんが…………」


 申し訳なさそうにオズは言う。


「うううん。オズもとっくに僕の友達だよ」


 ブラウンはオズのことを笑って許した。


「ふん、ありがとうよ」


 オズもまんざらでもなく嬉しそうだ。


 始めはマードックの情報を聞き出すためだけだと思ってたが、今ブラウンのことを信じているのは本当だ。


 それに、ここにいるメンバーに悪人はいない。そうだろベル?


【ベル】ちょっと、こういう時だけ私を使わないでよ。


 いいだろ。悪意を感じられるのはお前だけだ。協力してくれよ。


【ベル】ふん。しょうがないわね。ええ、ここに敵はいないわ。


 そうか。ありがとう。


「とにかくな。俺が言いたいのは、ガストンとサイファーには用心しろってことだ。昨晩だって2人が凶悪なほど強くなけりゃ、大変なことに…………」


 マリジアが枕でボスンボスン殴ってきた。


「いたっ、痛いですマリジアさん」


「あんたねぇ? 女の子はか弱いものなんだから」


「いや、悪かった。凶悪だったのはシャロンの胸だけ……!」


 シャロンが能面のような表情でスッと立ち上がった。そして、壁に立て掛けてあるメイスに向かって歩いていく。



「いや、ちょっと待って!? メイスは本当にダメ! ダメだって!! シャロンさん! シャロンさんんんんんん!?」



読んでいただき、有難うございました。

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