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重力魔術士の異世界事変  作者: かじ
第3章 ダンジョンの町ワーグナー
68/159

第68話 レベルアップ

こんにちは。

ブックマークや評価、感想をいただいた方、有難うございました。

第68話になります。何卒宜しくお願いします。


 ウルを連れ、ギルドを出た。


 もう深夜1時をまわり、あたりは静まり返っている。魔石灯も消え、深夜までやっている居酒屋からもれだすボンヤリとした明かりと、真上から見下ろす巨大な月の青白い明かりだけが夜道を照らしていた。


 ウルは黙ったまま、俺に手を引かれついてきている。下を向いてとぼとぼと歩くウルの姿はまるで、迷子の子猫のよう。手を離せばこのままどこかへ消えていきそうだ。

 

 ギルド職員によれば、ギルドのベッドがいっぱいだったので、命の危険がない軽症のレアたちは宿屋の部屋に運び込まれているそうだ。


 はぁ、疲れた………。


 長い1日だった。


 俺とて1日中戦い続けた疲労と心労が限界に達していた。重い頭とまぶたをこらえながらフラフラと宿屋へ向けて歩き出すと突然ベルが話しかけてきた。


【ベル】ユウ、ねぇユウ! 


 ん、どうした?


【ベル】実はあの病室にいた人間の中に、動揺を隠していた者がいたわよ。


 本当か!?


【ベル】ええ。上手く表情には出していなかったようだけど、種族柄、私達は感情を感じることに敏感だから。


 本当にあの場にいた奴なんだな?


【ベル】え、ええ。そうだって言ってるじゃない。


「はぁ…………」


 辛ぇ…………。皆、仲間だと思ってたんだがな…………。


 一緒に戦った中に、あそこまで非道なことをする奴がいたとは思いたくない。少なくとも背中を預けた仲間だ。


【ベル】ごめんなさい。後にする?


 いいや、今言ってくれ。


【ベル】うん。名前はわからないんだけど、…………した人よ。


 ベルの発言に一瞬だけ頭が真っ白になった。





 …………は? いや、嘘だろ?





【ベル】なによ。私が嘘付いてるって言うの?


 あいつは……! がさつだが仲間思いで、今回のようなことをする奴じゃない。むしろこんなことを嫌う性格だ。そう思っていた。


【ベル】でも嘘じゃないのよ。そりゃ、まだ…………私の方が信用できないのはわかるけど。信じてよ!


【賢者】ユウ様、確かに状況的にあの者ならばナイフを隠すことも可能でした。それに、町の人間にも詳しいと思われます。


【ベル】ほらね?


 賢者さんまで……。


 すまん。そんな奴にはとても思えなかったから、すぐには信じられなかった。


【ベル】いいのよ。


 …………つまりは、そういうことなんだな。


【ベル】ええ。


【賢者】可能性は高いです。


 所詮、短い付き合いで人間の何がわかるのか。あいつの言葉や行動は全てが偽物で演技だったのか。

 …………いや、犯人と確定するにはまだ早いし、あいつを最後まで信じたい。それも含めてアリスたちに相談しよう。


「はぁ…………」


 ため息が止まらん。ほんとに、なんてこった…………。


【ベル】あんまり気負わないようにね?


 ああ。ありがとう。


 切り替えよう。こういうところでも強くならんとダメだ。とりあえず、明日奴から目を離さないようにしよう。


 

 レアたち、もう起きてるだろうか。



◆◆



 宿屋の部屋へ入った。俺たちの部屋にベッドを1つ追加で運び込んで1つの病室として使っているようだ。部屋の扉の前にはギルド職員が1人、警備兼看護士として立ってくれていた。


「ユウ様ですね。アリス様、フリー様、レア様はこちらです」


「ああ、もう大丈夫だ。ありがとう」


「いえ、こちらこそ。町を救っていただきありがとうございました」


 そう言って頭を下げると職員はチラリとウルに目をやるが、何も言わずに帰っていった。


「大丈夫。お前のせいじゃない」


 ウルは俺の後ろに隠れていた。


「ああ。あり、がとう」

 

 ウルはボソッと小さな声で礼を言った。


「ふわぁ…………」


 あくびをしながらドアを開くとまだ3人ともすやすやと寝ていた。


 ああ、俺も寝たいがまだ寝るわけにはいかない。


 ウルは部屋に入ると窓際の隅っこに座り込んで、顔を伏せると動かなくなった。


「仕方ないよな…………」


 ゆっくり休めよ。そう思いながら座り込むウルに毛布をかける。すると、ベルが話しかけてきた。ベルの部下に勝った奴らだ。紹介しておこう。


【ベル】この3人があなたの仲間?


 そうだ。この猫耳がレア、黒髪ショートがアリスで、糸目の野郎がフリーだ。皆いい奴で、俺に着いてきてくれてる。


【ベル】ふぅん。この子たちにノエルたちは負けたのね。


 そういうことだ。お前……怒ったりはしないのか?


【ベル】しないわよ。身内だからね、死んだと思った時はさすがに怒りもしたけど、生きてるし、元々悪魔も弱肉強食ってところがあるからね。正面からぶつかって負けたならノエルたちが弱かっただけ。むしろ、うちの子たちに勝てたことは誇っていいわよ。


 部下を信頼してんのな。なんにしろ、そりゃ助かる。


 さて、そろそろ起きて知恵を貸してくれ。頼む3人とも…………!


 椅子に座ると、頬を叩いて眠気をこらえる。



◆◆



 5分ほどしてようやくレアが目を覚ました。


「ほよ?」


 猫耳レアが女の子座りで猫のように目を擦っている。たまにレアが獣人であることを忘れそうになる。


「レア、調子はどうだ?」


「なんだか絶好調だよ! 体が軽くなった感じがする!」


 今回で、おそらく3人とも種族レベルが上がったのだろう。


「はは、だろうな。後でステータスを確認してくれ。かなり強くなったはずだ。でもその前に話したいことがある。大事なことだ」


 すると、残る2人も同じようなタイミングで起き出した。


 そして、3人が眠った後の出来事について説明した。





「そんな……ジャンさんが!?」


「ひどいわね。町は助かったっていうのに…………」


「どうもきな臭いねぇ」


 反応は三者三様だ。3人にはとりあえずベルの存在は賢者さん同様伏せてある。


 そして、3人は隅っこにうずくまるウルに目をやった。どうやらウルはまた眠ってしまっているようだ。


「ウルは大丈夫だ。寝かしといてやろう」


 目元を赤く腫らしたウルをそっと担ぐと、もうレアたちには必要ないので俺のベッドに寝かせた。すると、寂しそうに掛け布団を抱き枕代わりに抱き寄せる。


「大変だったね……」


 レアがベッドに腰かけると、ウルの頭を優しく撫でてあげる。


「ウルはほっとけない。しばらく面倒をみたいんだが、いいか?」


「ええ。誰かに襲われるとも限らない。必ず私たちの誰かと一緒に行動するようにしましょう」


 アリスが言った。


「そうだよ。それに…………ジャンさんの娘さんなんだもん」


「だな」


 そう。ジャンの娘だもんな。


 皆、暖かい目でウルを見つめた。


「それでさっきの話だけど、あの人がこの子にナイフを渡したなんてにわかには信じられないし、まず理由がわからないわ」


 アリスがさっそく現状を整理にかかる。


「そこなんだが、もう1つお前らに伝えていなかった情報がある。というか、極秘情報だ。絶対に……誰にも漏らすなよ?」


 念のため風の魔法を使い、盗聴を防ぎながら念押しする。


「ちょっと、この感じはまさかまた……」


 アリスは顔をひきつらせる。


「ユウのことだから…………」


 レアも苦笑いだ。


「また、何か巻き込まれたんじゃないかと思うんだよねぇ」


 レアたちが嫌な予感を感じたようだ。


「お。お前ら察しがいいな」


 3人ともガックリと肩を落とした。


「もういいわよ。あたしたちはどこまでも、あなたに着いていくんだから」


「うん」


「だねぇ」


「そりゃ、嬉しいな」


 そして、俺は3人に顔を寄せて言った。




「ウルはな、王女なんだ」




「「「はぁ!!!!????」」」


【ベル】はぁ!?




 3人が顔を寄せて詰め寄ってきた。ちなみにベルまで。


「しーーー! 声がでかい!」


「ご、ごめん」


【ベル】ごめんなさい。って、そうだったの!?


 そうか。ベルにも言ってなかったな。


 それから、俺がジャンから聞いていた情報や、伯爵の追手の可能性について考えていたことを時間をかけ、すべて伝えた。すると、


「そりゃ、明日葬儀までは時間があるから後をつけてみないかい?」


 フリーの提案だ。確かにこれ以上は本人について調査するのが一番だ。


「そうだね。ノーブルさんたちに依頼を持ちかけたフードの人ってのも、あの人と同一人物なのかもしれないし」


 こういったことが苦手分野であろうレアが、目をつむって必死に頭を巡らせてくれていた。猫耳にも力が入っているのかピンと張っている。


「ええ。でもそうだとすると、ウルが覚えていないってことからも何かスキルか魔法道具を持っているのは確定よ。追うにしても気を付けた方がいいわね」


「ああ。そうだな。そこは全員十分に注意してくれ、少しでも怪しいそぶりを見せたら退却。自分の身の安全を最優先だ」


 レアたちは真剣に頷いた。


「うーん、それを踏まえて僕は聞き込みしたりして、もう少し探ってみるよ」


「私もフリーさんについてくよ」


 フリーとレアは情報を集めてくれるみたいだ。


「あたしももう少し考えてみる。でも…………、どうしてユウはあの人が怪しいってわかったの?」


 アリスだ。鋭い。


「それはーーーー、まぁ色々あんだよ」


「はぁ、あなたのスキルはなんでもアリなわけね」


「ははは。ま、明日調べてみればわかるさ」


 笑って誤魔化した。


「葬儀は明日夕方、広場でだ。でも、それまでは少し休ませてくれ」


「そうだねぇ。ユウは休んでてよ。連戦に次ぐ連戦でしょ? 僕らはたんまりと寝たからさ」


「あはは。そうだね。私たちでウルちゃんを守るよ」


 とそこで、フリーが思い出したように言い出した。


「あ、ユウ。ところで、お願いがあるんだけど?」


 申し訳なさそうにフリーが言い出した。


「なんだ?」


「これ、預かっててくれないかい?」


「何?」


 フリーが腰から外して出したのは、刀だった。放り投げられた刀をガシャンと受けとると、その途端、血の匂いと嫌な感じがした。


「おいおい、これ…………大丈夫なんだろうな?」


「どうも妖刀らしくてねぇ。手元に持っておくと危ないんだよ。だから、しばらく空間魔法で預かってくれないかい? そこなら大丈夫でしょ?」


 フリーが顔の前で両手を合わせてお願いしてくる。


 ああね。そういうことか。


「ああ、わかった」


 空間にヒビを入れて、空間魔法へ刀を放り込む。


【ベル】マタラと戦ったのは彼なのね。見たところ剣士のようだけど、マタラに勝つなんてあなたのパーティはホント粒ぞろいね。


 まぁ、俺が選んだメンバーだからな。


「というかユウ! 今さらだけど、今度はダンジョンボスまで1人で倒しちゃったの!?」


「まぁ成り行きでな。めちゃくちゃ強かったぞ? 1回死んだくらいだ」


「死んだって、しっかり生きてるじゃない。まったく、成り行きでボス討伐するやつどこにいるのよ…………」


【ベル】成り行きで私はやられたの!?


 ベルはちょっと黙ってて。


【ベル】なによう……。


 拗ねるな。子供か。


「すまん。そろそろ寝かしてくれ。さすがに疲れた」


 立って話していたが、もう限界だ。目蓋を支えられず、やけにフラフラとめまいがする。


「お疲れ様…………」


 アリスが肩にポンと手を置いてくれた。


「ユウは休んでてよ…………って、ええっ!?」


 ダメだ。眠気が急激に増し、立っていられなくなった。アリスの慌てる声が聞こえるがもう、気合いでも我慢できない。


 ぐわんと視界が揺れ、目の前に宿屋の床が迫っ…………。


 誰かが枕を床との間に差し込んでくれたのが、最後の視界だった。



◆◆



 目が覚めた。


 目蓋を開けると、視界にアリスの横顔が入った。


「あ、起きたのね」


 アリスがベッドの横に腰掛けて脚を組みながら、本を読んで座っていた。


「どれくらい寝てた?」


 一度窓の外に目を向けて、アリスは答えた。


「そうね…………10時間とちょっとくらいかしら?」


 10時間……多分眠ってしまったのが2時過ぎくらいだったから、まだお昼くらいだ。


「良かった。ジャンの葬儀まではまだ時間がある」


 そう言いつつアリスは本を閉じて立ち上がる。


「ええ、起きなかったらどうしようかと……」


 部屋を見渡せばウルもいない。


「お、おい。ウルはどうした?」


 一瞬焦る。


「ウルはレアとフリーと一緒よ。あの2人が一緒なら大丈夫だから」


 俺が慌てているのに気付いてか、アリスが落ち着くように優しく言ってくれる。


「そうか…………」


 そして、身体の感覚がまた変わってるのに気がついた。とりあえずベッドに腰掛け、ステータスを確認する。


============================

名前ユウ16歳

種族:人間Lv.2→3

Lv :75→1

HP :9250→13500

MP :22700→36900

力 :6230→8900

防御:6690→9400

敏捷:7505→11500

魔力:26510→40700

運 :250→290


【スキル】

・剣術Lv.10→魔剣術Lv.1 NEW!!

・体術Lv.7→8

・高位探知Lv.5

・高位魔力感知Lv.6

・魔力支配Lv.6→7

・隠密Lv.9

・解体Lv.4

・縮地Lv.6

・立体機動Lv.5→6

・千里眼Lv.8

・思考加速Lv.5→6

・予知眼Lv.7→8


【魔法】

・炎熱魔法Lv.1

・水魔法Lv.7

・風魔法Lv.9

・土魔法Lv.10→硬晶魔法Lv.1 NEW!!

・雷魔法Lv.10→破雷魔法Lv.1 NEW!!

・氷魔法Lv.9

・超重斥魔法Lv.2→4

・光魔法Lv.5

・神聖魔法Lv.2→4


【耐性】

・混乱耐性Lv.7

・斬撃耐性Lv.7→8

・打撃耐性Lv.8

・苦痛耐性Lv.9→10

・恐怖耐性Lv.8→9

・死毒耐性Lv.9

・火属性耐性Lv.4

・氷属性耐性Lv.2

・雷属性耐性Lv.2

・重力属性耐性Lv.6→9

・精神魔法耐性Lv.10 NEW!!


【補助スキル】

・再生Lv.2→6

・魔力高速回復Lv.10→魔力吸収Lv.1 NEW!!


【ユニークスキル】

・結界魔法Lv.5→6

・賢者Lv.3→4

・空間把握Lv.4→5

・空間魔法Lv.2→3

・悪魔生成Lv.1 NEW!!

・黒龍重骨Lv.1 NEW!!

・⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛⬛


【加護】

・お詫びの品

・ジズの加護


【称号】

・竜殺し

・悪魔侯爵の主

・SS級ダンジョン踏破者

============================


「おげっ」


 こりゃまたすごいな。


【ベル】おかしいわよこんなの! あなた、何者なの?


 遠い国出身の異邦人ってとこだな。


【ベル】遠い国? 異邦人? 


 てか、お前のおかげか精神魔法耐性得てるみたいだ。


【ベル】あら、本当ね。ありがたく思いなさいよ。


 お、おお。さんきゅ。


【賢者】『硬晶魔法』は土魔法を、『破雷魔法』は雷魔法をジズの加護を用いて進化させたものです。同じくレベル10に達した剣術進化させた『魔剣術』や、新しいユニークスキル『黒龍重骨』についても一度、実践で試した方がよろしいかと思います。


 そうだな。まぁ、ユニークスキルは気になるし、今出してみるよ。


「ほっ」


 

 メキッ、バキバキバキ、バキ…………!!



「へ?」


 急に現れた骨にアリスが驚きの声をあげた。


「なんだこりゃ?」


 背中を見れば、肩甲骨のあたりから黒い骨が生えていた。それはまるで大蛇の背骨のようで、竜の尾の骨太のようでもある。その先端は刃渡り30センチほどの鋭く研がれた刀のようになっている。200個ほどの黒い骨が連なり、その間隔やはっきりとした数は変動するようだ。要するに伸縮自在。


「すごい…………」


 アリスがつぶやきながら、指でツンツンと突っつく。触られた感触もしっかりとあるようだ。


 黒骨は俺の身体の周りを波打ちながらぐるりと取り囲んでいる。頭でイメージしたとおりに動かすことができる。試しに机の上の花瓶を掴んでみる。


 骨は音もなく動き、花瓶をぐるりと一周すると持ち上げた。かなり繊細な動きができる。そしてこの骨から感じるのは重力属性。今まであまり攻撃に直接生かせそうなユニークスキルがなかったがこれはどうだろう。なかなか期待できそうだ。


 しまうことを考えると、出てきたときと同じようにバキバキ音を立てながら、一瞬で俺の背中に吸収された。


【賢者】ユニークスキルの『悪魔生成』については、悪魔を生成できるスキルです。魔力の消費量によって強さは変化しますが、現スキルレベルでは1日にBランクのデーモン1体が限界のようです。レベルが上がれば改善されることでしょう。


 へぇ。でもBランクのデーモンって…………雑魚だな。


【ベル】雑魚ね。


 ベルお前、同族だろうが。


【ベル】雑魚は雑魚なのよ。


 まぁ、毎日作って空間魔法に溜め込んどけば何かに使えるかもしれん。


【賢者】『魔力吸収』は、魔力操作でできる範囲内の対象の魔力を吸収できます。


 それはなかなか使えそうだな。魔力が尽きそうな時、他の奴らから吸収することもできるし、魔術士相手ならかなり優位に立てる。

 もはやスキルだけでもかなりの強さを手に入れてしまった。しかも、称号には『悪魔侯爵の主』、『SS級ダンジョン踏破者』とある。


【賢者】また、私自身もレベルが上がりました。計算能力が前回のさらに10倍、並列思考は256個になります。


 おお! てことはさらに魔法の発動が早くなりそうだな。魔鼓の同時操作も発展しそうだ。何か他に変わったりしたか?


【賢者】大きなことではありませんが、私のスペックが上がったことで空間魔法のレベルを上げることに成功しました。


 空間魔法Lv.3か…………今まではアイテムボックス扱いだったが。どうだ?


【賢者】新たに出来ると言えば、空間へのマークでしょうか。


 マーク?


【賢者】例えば、とある魔物の存在をマークしておけば、視界からはずれたり、かなり距離があいてしまった時も居場所がわかるといったものです。また、視覚にリンクさせれば方角や距離くらいならわかるようにできます。


 それ、めちゃくちゃすごくないか? 見失うことはなくなるということだろ?


【賢者】はい、そのようですが、私のスペックではまだマークできるのは1つのみのようです。


 いや、それでも助かる。そりゃすごい。ありがとうな賢者さん。


【賢者】いえ。


 誰をマークしておくかは重要だな。それはまた考えよう。



「ねぇ、なんとなく察してるのだけど……またレベルアップかしら?」


 アリスの呆れ顔は見飽きてきたな。


「ははは…………」


「まったく、この短期間でレベル3まで上がるなんて異常よ。王国の『理』でさえ、Sランクになるまで3年かかったそうなんだから」


 『理』についてはそんなに興味が湧かない。


「へぇ。で、アリスはどうなんだ?」


 聞かなくてもわかるけどな。前までとは秘めてる魔力が違う。


「もう。私もレベルアップしたわ。レアもフリーもね」


============================

名前 アリス 15歳

種族:人間Lv.1→2

Lv :58→1

HP :750→1480

MP :3430→6900

力 :480→910

防御:420→800

敏捷:880→1950

魔力:3780→7200

運 :19→20


【スキル】

・剣術Lv.3→4

・探知Lv.6

・魔力感知Lv.9

・魔力操作Lv.3→6

・解体Lv.4


【魔法】

・水魔法Lv.5

・風魔法Lv.3

・氷魔法Lv.9


【耐性スキル】

・苦痛耐性Lv.6→7

・恐怖耐性Lv.7

・混乱耐性Lv.4→5

・打撃耐性Lv.2

・氷属性耐性Lv.3 NEW!!

・火属性耐性Lv.3 NEW!!


【補助スキル】

・自然治癒力アップLv.1 NEW!!

・魔力回復速度アップLv.6→8


【ユニークスキル】

・凍龍冷翼Lv.1 NEW!!


【加護】

・氷の加護

============================


 さすがはアリス。魔力値の伸びが半端ない。『氷の加護』も制御できるようになっている。魔力が上がりすぎると制御が難しくなると思ったが、アリスの魔力操作のレベルなら心配いらなさそうだ。


「本当だ。強くなったなアリス。おめでとう」


「あ、ありがとう」


 素直に照れ隠しをしてうつ向いたアリス。


「あ、そうだ。『凍龍冷翼』ってどんなユニークスキルだ?」


「ああ、それね」



 シャラン…………! パキパキ、パキ…………!



 突如、アリスの背中から薄く細かく小さな氷の羽根が形作る大きな一対の翼が現れた。翼の出現と共に、部屋中に小さな氷の羽根が舞い上がる。氷の羽根が日光を反射してキラキラと輝いている。翼の長さは2メートルほどでしなやかで力強い。羽根自体は空気を多く含んでいるのか白く、とても軽い。それでいて、確かな硬度がある。

 そして、氷の翼を生やした透き通るような肌の白い線の細いアリスは、窓から射し込む陽光に照らされ、幻想的かつノスタルジックな雰囲気を醸し出していた。


「すごい…………綺麗だ」


 アリスは満足気に、照れたように笑った。


「でしょ? 私もかなり気に入ってるの」


 アリスがフフンとどや顔をする。


「どんな使い方が出来るんだ? 飛べるのか?」


「どうかな? これから検証していかないとね」


「なるほどなあ。アリスがレベル2か。あの女の悪魔相手によく頑張ったな」


【ベル】ほんと、あのメルサ相手に氷属性で勝つなんてよくやるわね。


 急に誉められたからかアリスが停止する。


 ちょうどいいな。


 そう思って頭をわしわし撫でてやる。


「あわわわ」


 アリスは顔を真っ赤にして顔を伏せた。


 まぁこの辺にしておこう。


「ところでアリス」


「なっ、なによ!?」


 慌てた様子でこちらを向き直る。


「レアたちはどこに?」


「3人はご飯食べてからあの人の動向を探りに行ったわ」


 もうさっそく動いてるみたいだな。てか、ウルも一緒に調査してるのかよ。


「アリス、待っててくれたのか。すまんな、ありがとう」

 

「いいのよこれくらい。まだ夕方までは時間があるわ。とりあえずご飯食べに行く?」


「ああ、行こう」


読んでいただき、有難うございました。

良ければブックマークや評価、感想等宜しくお願いします。


長くなりそうだったので、話を分けました。レアとフリーのステータスは次話になります。



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