第56話 氾濫
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第56話になります。宜しくお願いします。
氾濫の日が来た。昨晩の前夜祭では、他のクランも士気を高め合っていたようだ。
今日、冒険者たちは戦いに備え、武器の手入れと道具の最終確認をしている。集合は9時だが俺達のパーティはリーダーであるため30分早く行く予定となっていた。
そして朝、最終調整として全員、俺たちの部屋に集まっていた。
レアは腰に2本剣を差し、片足のみニーソックスを履いている。スカートに見える紺色のパンツに、肩の出たオフショルダーのシャツを着ている。レアは胸当てを止めた。ない方が動きやすいそうだ。さらに小さな鞄を背中側の腰に付けている。中には魔法薬や状態異常対策の薬がある。
アリスは黒のブーツに黒タイツ、黒の膝上スカート、白のシャツにフード付きの黒ローブだ。この黒ローブは町で購入し、物理防御力が高く刃を通しにくくなっている。腰には黒のポーチをつけている。ベルトには昨日購入した投げナイフが装備されていた。
フリーはいつもの着流しだが、腰には刀を2本差し、着流しの裏地に縫い付けられたポケットには魔法薬がセットされている。早く新しい刀で斬ってみたいのか、たまに刀を眺めている。
俺はというと、黒のパンツに白のカットソー、黒のコートを上から羽織り、コルトで買ったブーツを履いている。空間魔法には大量の回復薬に、ジャンから借りた剣アイギス、それにあの黒刀も持っている。
全員フル装備だ。
「調子はどうだ?」
「問題ないわ」
ローブのフードを下ろした状態のアリスが答える。
実際昨日の前夜祭は2時間ほどで終了した。さすがに朝まで飲む馬鹿はいないようだ。
「あとは準備の最終確認だね」
「ああ、足りないものがないか確認しとけよ?それと重たいものとかは俺の空間魔法に入れておく。ただ、乱戦になったらいつも近くにいるとは限らないから、最低限の回復薬とかは自分で持っておいてくれ」
「うん。大丈夫」
「よし、じゃあ朝食食ったら行くか」
◆◆
朝食を終え、防壁へ向かう。
行く途中、まだ集合には大分早い時間だと言うのに、ギルド前の大通りに出ると、忙しなく動く冒険者たちをちらほらと見かけた。なかには痛いのか頭を押さえている者もいる。
「あいつらまさか、昨日飲み潰れたんじゃないだろうな…………?」
「あり得るわね…………」
アリスの冷たい視線を感じた冒険者がひっ!と悲鳴を上げていた。
防壁へ近付くと、冒険者でない町の人たちが増えてきた。
「何だろうね?」
レアが呟く。
「さあ?」
町の出口の前には大勢の町の住民たちがおり、冒険者たちに個人的に激励の言葉を送ったり、普通に談笑する姿が見られた。中には買い忘れた道具の補充にと小さなお店を広げる人もいる。冒険者と一般の人との繋がりが強いこの町ならではの光景だ。皆一丸となって危機を乗り越えようとしている。
俺らが通ると、すでにリーダーの1人として話が通っているのか、一斉に皆が駆け寄ってきた。
腰の曲がったおばあちゃんからはすがるように手を握られ、飲食店の店主からは背中をバシバシ叩かれ、子どもたちからはお菓子を山ほどもらった。町の人達が応援してくれている。その温かさがこの町が好きな理由だ。
ただ、こういう送り出され方はどうも得意ではない。
「あははは……」
笑って町の人たちに答えようとするも、終始顔がひきつっていた。
「あなたねぇ、なんでもっと自然に振る舞えないの?堂々としなさいよ」
アリスがじろっと見てくる。
「いや、なんかこう英雄みたいなのはキャラじゃないんだよな。期待を背負って戦うってやりにくいじゃん?」
「はぁ、皆そういうのでモチベーションを上げるものだと思うわよ?」
「魔物の脅威から守りたいとは思うが、俺はもっとこう自分勝手にやりたい。皆を率いて町を守るなんて、荷が重い」
俺のこういうところは子供だなと感じるが、まぁこれも自分だ。というかあれだけ期待されて少し緊張してきた。
「良いじゃん英雄。私は好きだよ?」
レアは好きそうだよな。
「うーん…………どのへんが良いんだ?」
フリーがケタケタ笑っていた。
◆◆
町を出るとすぐ防壁が見えてきた。
「こ、こりゃまたすごいのを作ったねぇ…………」
「すごいよユウ。これならどんな魔物が来ても大丈夫だよ!」
「ちょ…………どこにこれを破れる魔物がいるのよ」
無骨に黒光りする重厚感溢れる防壁を呆れたように見上げる3人。だが、これを見て安心する冒険者たちも多いそうだ。それは良かった。ちなみに、防壁の裏には簡易テントが設営されている。朝早くからギルドが動いてくれていたようだ。中には治癒士がスタンバイし、怪我人をすぐに治療できるようになっている。
防壁に到着すると、先にアリスたちには持ち場に向かってもらい、俺は真ん中の塔の上へと中の階段を上る。上には、すでにガランと他3人のリーダーたちは着いていた。ジャンももちろんいる。
「ユウ。よく来てくれたね」
いつも通りのジャンだ。ただ、昨日の祭りでリフレッシュできたのかツヤツヤしている。ジャンは前に見たミスリル製のタワーシールドに長剣を装備し、ピカピカ白色の全身鎧を着ている。これだけ見たら騎士団みたいだ。
「どうだい調子は?」
「バッチリだ。ジャンはどうだ?よく眠れたか?」
「うん、昨晩のおかげでね。祭りを提案してくれたのはユウらしいじゃないか。ありがとうね」
ジャンが嬉しそうに言う。
「まぁ、したっちゃしたことになる……のかな?」
冗談のつもりだったとは今さら言えない。
「あはは。なんだいそれ」
カラカラと笑う。
「あぁ、それでだ」
ジャンを引っ張ってガランたちから離れた塔の隅っこに連れていく。
「ウルの様子はどうだ?」
小声でジャンに聞く。
「大丈夫。それが人が変わったように大人しく町に居るって言うんだよ。ユウが何か助言してくれたのかい?」
「いや、心当たりがないな。何か心変わりすることが…………?」
なぜだ?ジャンと一緒に戦うことにあれだけこだわってたのに。さすがにあきらめたか。
「いや、まぁあの年頃の子どもは何に影響を受けるかわからないからね」
ジャンは肩をすくめてジェスチャーをしながら答えた。
「そういうもんか」
あと、ついでに言っておこう。ジャンのことだから心配だ。
「それとジャン、ウルがお前がいなくなるんじゃないかって心配してたこと忘れるなよ?親として頼りにされてんだからよ」
肩を突っつきながら釘を刺す。
そう言うと一瞬きょとんとしてから笑って答えた。
「もちろん」
「おう。だから今の立場に責任を感じて無茶をするのはナシだ。なんのためにウルが今回我慢してくれたかわからんくなるだろ?」
「あはは。わかってるよ。僕はあの子が大人になるまで成長を見守っていくつもりだからね」
「そう考えてるなら心配いらないと思うが、あいつが大人になるまでって大変だぞ?」
「承知の上だよ。あ、それとユウ。ウルと仲の良い君にお願いがあるんだけど…………」
「いや別にそんなに仲が良いわけでもないんだけど…………」
今避けられてるところだし。
「うううん。聞いて? あの子だって子どもなんだから過ちくらい犯すんだってことをわかっていてほしいんだ。何があってもそれはあの子が悪いんじゃない。ちゃんと見て上げられない親の責任なんだよ」
過ち…………?
「ん? そりゃ町の屋台で果物を盗んでたことか?それとも大聖堂を寝床にしていることとか?」
いろいろと思い浮かぶんだが…………。
「あはは。……そうだね。どんなことがあっても許して導いてあげるのが、あの子を見守り支えてあげる僕とユウの役割だよ」
「おいおい。なんでさらっと俺も入ってんだよ」
子どもの面倒なんて、自分が子どもなのに見れるわけがない。
「だってあの子のこと、よく見てくれるじゃないか。あの子だっておじさんくらいには思ってくれてると思うよ。約束してくれるかい?」
ジャンは拳をぐっと突き出した。
「…………わかった」
俺が返事すると、ジャンはニコッと笑った。
「ああ、話しすぎたね。ダンジョンの方だけど、まだ動きはないよ。リーダーたちが揃ったら今日の作戦を振り返りたい。しばらく待っててくれるかい?」
「りょーかい」
それから10分もせず俺を含めた11人のリーダーたちが出揃った。ジャンがダンジョンに背を向け、リーダーたちの方を向いて話し始める。
「よし、皆揃ったね。いいかい?今日が正念場だよ。まず、ダンジョンから魔物が溢れだしたら、ダンジョンの方から赤い色の狼煙が上がる。狼煙が上がったら、最初の魔物がこちらに到着するまで20分もないからすぐに戦闘体勢にはいること。
それと、ユウがこの通り昨日さらに3棟の塔を建ててくれている。戦況を確認したくなったら登るもよし、塔を利用して攻撃を加えてもいい。そこは各自で頼む。ただ、初めの魔術士たちによる一斉攻撃は狙いやすさと射程を伸ばすために塔の上から行う。
そのあとは完全な籠城戦だ。ここの防壁を上手く利用して戦ってくれ。質問は?」
「1ついい?」
少年魔術士のミゲルが手をあげた。
「今さら言うのもなんだけど、ヒュドラ以外は大雑把な作戦ばかりだよね?大丈夫なの? ただ守るだけって…………」
「ああ。それも考えたんだけど、急ごしらえのクランだからね。そんな連携がとれるとも思わない。行き当たりばったりの作戦より、普段から連携のとれているパーティ単位である程度自由に戦ってもらった方が融通もきくし、いいと判断したんだよ」
それは俺も同意見だ。
「なるほど。それもそうだね」
「魔物なんか力でねじ伏せればいいんだ。ひょろひょろの身体しやがって。小僧が」
モーガンだ。背にはいつぞや俺が片手で止めた大剣を背負っている。
「力ばかりでいけるのはせいぜいBランクまでだよ?おじさん」
「んだと!?」
モーガンがミゲルに掴みかかろうとする。
「おいおい、いい年した大人が子供相手にムキになるなって!」
俺が間に入って言うと、モーガンはフンッと鼻をならして手を止めた。俺の後ろでミゲルがモーガンを煽っている。
「ミゲル?」
「はい、ユウ様」
ミゲルがしょんぼりと下を向いた。
「まぁまぁ、2人とも落ち着いて。こんな調子じゃ、連携なんてはなから無理だろう?そういうことさ」
「ああ、ホント」
まさにその通りだな。
「まぁ、状況に応じて指示は送るからその通りに動いてもらうよ。それじゃ、狼煙が上がって、魔物たちがあそこの壁で止まるのを確認したら、私の合図で一斉に魔法を放つからそれまで準備しといてくれ」
リーダーたちは頷いた。すると、塔の下防壁がガヤガヤと賑やかになってきた。ジャンがその様子を覗き込んで言う。
「他の皆も来たみたいだね。それじゃ、ご武運を」
そうして、作戦会議は終了した。
それから各自持ち場に着いた。防壁の上に立ち、ダンジョンの方を眺める。俺の千里眼でもまだ動きがないのが見える。
俺たちの位置からダンジョンの方を向くと、左側がガランのクランでその後ろに塔、右側はヒラリー、強く凛々しい女性がリーダーのクランだ。
ぼちぼちうちのクランも人が増え出した。皆、引き締まったいい顔をしている。昨日、羽根を伸ばしたのが良かったのだろうか。
そして防壁の上、クランの担当範囲を歩きながらレアたちと共に皆に呼び掛ける。
「到着したパーティからを準備を始めといてくれ。リーダーはパーティ到着の連絡を宜しく」
うちのクランは全部で22パーティだ。しばらくして、すべてのパーティが到着した。一度全員を集め、軽く説明をする。
「よし、今日は誰一人かけることなく、よく集まってくれた」
それからジャンに聞いた作戦を冒険者たちに説明した。
「先に聞いておきたいことはあるか?」
「大丈夫っす!」
ブルートが元気よく答える。
「はい。またダンジョンの狼煙が見えたら魔術士の攻撃を待て。動くのはそれからだ。ではその場で全員待機」
待機中、クランの者はパーティで雑談したり、集中するために全員で瞑想したり、飯を食ったりと様々だ。弁当を持ってきている奴、何故荷物増やしてきたんだ。
◆◆
それから1時間が経過した。現在10時。防壁に腰掛けて足をぶらぶらさせながらダンジョンをぼーっと眺めていると、賢者さんから連絡があった。
【賢者】ユウ様!ダンジョンから魔物が現れています!
なに!?
急いで立ち上がる。
「ユウ、何事?」
皆が俺に注目した。
ダンジョンの方を千里眼で見るとダンジョンそばの小屋で張っていたギルド職員が後ろからレッサーデーモンに食い殺されるシーンだった。護衛に着いていた冒険者も不意打ちでやられていっている。そしてダンジョンを見ると続々と魔物が溢れだしている。
これはまずい。塔の上を見上げて呼ぶ。
「ジャン!!!!」
俺の緊迫した声は、たまに笑い声さえ聞こえてくる緩んでいた空気によく通った。
「ダンジョンで見張りの冒険者がやられてる!狼煙は上がらない!すでにこっちに魔物が向かって来てるぞ!!」
ジャンが塔の上から身を乗り出してきた。
「なんだって!? ここからなんて見えるわけ…………いや、それは確かかい!?」
「ああ、この目で見た!」
ジャンは黙って俺を見つめる。
「魔術士たちは準備を!初撃は大事だよ!皆意識を切り替えて!」
そして一気に場が慌ただしく動き始めた。すぐに切り替えた冒険者たちは、全員防壁のダンジョン側に寄り、今か今かと遠くを見つめている。
「兄貴、まだ何も見えません!ほんとに魔物が?」
「ああ、じきに見える」
ダンジョンからはどんどんと魔物が溢れ、もう500体に届きそうだ。
「お前ら、準備してろ」
俺はジャンがいる塔の階段をかけ上がる。
「ジャン!」
塔の上には魔術士たちが勢揃いしていた。ミゲルもいる。
「近いかい?」
「ああ、もうすぐ目視できる範囲に入る。いや、それより魔物は500体を超えた。馬鹿げた数になりそうだ」
ジャンは一瞬目を見開くも、
「わかった」
とだけ答えた。
そして、これからついに戦いが始まる。ウルの奴、ちゃんと大人しくしてるのかな。少し気掛かりだ。
俺が持ち場に戻ると魔物が目視出来るようになってきたようだ。
まず見えてきたのは空に舞い上がる土ぼこり。そして大勢の魔物による地響きだ。
「来たぞーーーー!!!!」
冒険者が叫んだ。もうすぐ足止め用の第2防壁へたどり着く。そうなれば魔術士達の出番だ。うちのクランからもニコルを含めた10人以上の魔術士が参加している。
さて、気付けしとくか。
並んでいる冒険者たちの前、防壁のフチを歩き、皆の真ん中で向き直った。
「よしおまえら、町を守って英雄になれ!準備はいいか!?」
「「「「「「おおおおおおおおお!!!!!!!!」」」」」」
クランの皆が武器を掲げながら返事をする。
俺ほんとこういう役苦手だ。
先頭の犬の魔物が第2防壁にぶつかり足を止めた。それからどんどんと魔物がたまっていく。
「よし、詠唱開始!準備を始めろ!」
後ろの塔を見上げると、魔術士達が詠唱し、魔力を練っている。もういつでも撃てる状態だ。
「おっ」
ついに壁に穴が空いたようだ。そこから少しずつ魔物が漏れ出していく。うん、魔物の発生に気づくのは遅れたが、作戦は上手くいってる。そろそろだな。
「放てーーーーーーーー!!!!!!!!」
塔の上からジャンが叫んだ。
そして総勢150人の魔術師たちから魔法が次々と飛び、魔物たちの密集地点へと着弾する。
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッッッッォォン!!!!!!
火炎が直撃したかと思えば、風雷が吹き荒れ、凍りついては岩石群が降り注ぐ。
舞い上がった土埃が俺達がいるところまで届き、皆が目を細める。それが落ち着いた後、数えきれないほどの魔法を受けた魔物の軍勢は壊滅状態になっていた。およそ4分の3が死に絶えたようだ。生き残った魔物たちも怪我を負い、満足に動ける状態ではない。
「「「よっしゃああ!!」」」
「さすがは魔術士たちだ!」
冒険者たちからも歓声が上がる。その成果に喜びながらもすぐに魔術士達は自分のパーティに戻っていく。
懸念があるとすれば…………。
「なぁ、今やられたあいつらDランクの魔物ばかりだったんじゃないか?ユウお前、見えてるんだろ?」
気になったのか、こちらまで来たガランが目を細めて遠くを見つめながら話しかけてきた。
「ああ、そうだ。俺も変に思った。弱すぎる。もしかしたら本隊は別にあるかもしれない」
「ああ、おそらくな」
部隊を分ける頭があるってことは、これもしかして向こうも多少なりとも指揮系統があるってことじゃないか? 氾濫ってこんななのか?まぁ、今はそれどころじゃない。
「魔物の500体を先行部隊か…………。はぁ、一体どれだけの規模になるのか」
「心配しても無駄だ。来るもんは来る。お前の腕、期待してるぞ?」
「その点は問題ない。任せとけ。一番手柄をあげてやる」
「がはは、とんだルーキーだ」
ガランはのしのしと自分のクランに戻っていった。さすがは歴戦の冒険者と言うべきか、こんな状況でも堂々としてやがる。
◆◆
しばらくすると、その向こうに先程の5倍以上の魔物の大集団が見えた。
「やっぱりか」
「ユウどういうこと?」
俺がダンジョン方向を見つめながら呟くと、ひょっこり真横に来たレアが気になったのか聞いてきた。
「さっきの大群は様子見だ。こちらが大魔法を連発できないことを見越して、本隊を後ろに隠してやがった」
「嘘…………!!」
魔物の大軍勢が砂煙を巻き上げ、先程の魔物達の死骸をぐちゃぐちゃと踏み潰しながらこちらへ進んでくる。
『各クランへ通達!魔物の数およそ3000!こちらへ向かって進行中!!』
ちょうどギルド職員が防壁上を忙しなく走っていった。
「さ、3000!?」
「無茶だ…………!!」
3000という数を聞いて冒険者たちがざわめく。
やはりこちらが本隊か。Cランクと、Bランクまでいる。予想より遥かに数が多い。
ドドドドドドドドドドドドドドドド…………!!!!
地鳴りが聞こえ始め、誰もがじっ……と防壁の上からダンジョンの方角をかじりついて見つめる。
「おいお前ら!もう気づいてると思うが、これから来るのが本隊だ。見たところ3000体!俺らは1000人!1人当たりたった3体殺せば終わりだ!!」
あきらかに動揺の色が見える。もともと魔物のランク付けは同じランクの冒険者がパーティで挑んだ場合を想定している。俺たちの絶対数に対してあまりにも過剰な魔物数。先程の魔物を殲滅できたことにより緩んでいた空気に一気に緊張感が増す。
「おいおい、ガーゴイルもいるぞ!」
へクターたちですら慌てふためいている。まぁあの数じゃあ無理もない。
「あ、兄貴っ!あれ、あの数!大丈夫っすか!?」
ブルートたちも心配になったのか聞いてくる。
「お前ら落ち着け。こっちは籠城戦。あれくらい問題ない」
静かにそう言うと皆が一旦黙ったが、さすがの大群に不安そうに俺に向かう視線もある。
魔物の足音がどんどん近づき、地面が振動する。周囲の石がカタカタと振動し、動くレベルだ。
残り300メートルほどに近づいた。
よく見ると、レア達がダンジョンで倒した燃える犬ベンガルや、巨大スライム、ガーゴイルや大蛇の魔物、レッサーデーモンまで、さらには亜竜も混じっている。中でも全長10メートルを越すような岩石系の亜竜も数体混ざっているようだ。そいつらが敵意むき出しにして、こちらめがけて荒野を突っ切ってきていた。その迫力と圧迫感と言えば、凄まじいものがある。
いやはや、これは…………こいつらには厳しいか?
「は、はは。こんなの無理に決まってるだろ?」
誰かがそう言ってるのが聞こえてきた。
「怯えるな!僕らの後ろにはワーグナーがある!」
ジャンが塔の上から声を張り上げる。
いや、それでもキツそうだ。いつもダンジョンで見る魔物とは一段階レベルが違う魔物に、さすがに皆弱気になっている。フロアボスクラスがごろごろといるんじゃあ仕方がない。このままでは、戦う前に心が折れてしまう。
「ユウ、大丈夫なの?」
アリスが士気の下がり具合を心配している。レアとフリーも俺を見た。
「そうだな…………」
景気付けに俺が一発かましておこう。
「ジャン!」
「なんだい!?」
真ん中の塔の上から再び身を乗り出し、こちらを見て返事をする。
「思ったより多い!ちょっと減らしとく!」
声が聞こえたのか、皆が俺に何を言ってるんだこの人は? という視線を向けてくる。防壁の手すりの上にダンッ!とわざと目立つように立つと、魔力を練る。
イメージするは単純に巨大な圧力。何者も立つことの出来ない圧倒的重力。これだけの魔物だ。適当に放ったところで当たる。小細工はいらん。魔力を練っていくと俺の回りの空間が暗くなっていく。そして両手を掲げた。そして魔力を解き放つ!!
「ほい」
ズッ…………………………………………!
ワーグナーを目指し走る魔物たちは異変に気がついた。突然襲い来る重圧に足を止め、抗おうとする。だがそれも一瞬、どの魔物もひしゃげ、折れる自分の骨の音を聞き、最後の視界は物凄い勢いで迫り来る地面だった。
ズッ………………………………………………………………ゥン!!!!
魔物のいる地面が直径100メートルほどの円形に重力で深さ数十メートル陥没した。ここから見えるのは戦場に突如現れた黒い巨大な穴だ。今もガラガラとフチの岩石が崩れ落ちていく。範囲に入っていた魔物は声を発することなく重力魔法に押し潰され、穴の底の染みとなった。後続の魔物がボロボロと穴に落っこちていくのが見える。
ただ単純に上から押し潰すだけの魔法だけに強力だ。今のでかなりレベルアップした。
壁の上にいる俺を除いた1000人の冒険者たち。その開いた口が塞がらなかった。
「う、嘘…………だろ?」
1人の冒険者のその声が全員の心を代弁していた。魔物が埋め尽くす眼下に突如ポッカリと生まれた巨大な穴。静まり返る戦場、敵も味方すら、その光景に手を止めていた。
「ぼ、僕はユウの実力を見誤っていたかもしれない…………!」
ジャンが塔の上で期待以上の俺の実力に嬉しさ混じりの顔をひきつらせながら手汗を握り締めた。
「ユ、ユウ様こんなの…………もはや災害です」
ミゲルが同じ魔術士として信じられない思いでそう呟く。
「あやつは……本当にヒト、なのか?」
タロンが突如現れた大穴を目の当たりにし、長年生きてきた中、記憶にない初めての光景に言葉をこぼした。
「さ、さすが…………桁が違うわね」
アリスですらビビっていた。
「やべぇ…………やべぇよ兄貴は!」
ブルートが興奮して叫び出した。皆も騒ぎ始める。
「これ、もう兄貴がいれば勝てるんじゃねぇか!?」
「「「兄貴っ!兄貴っ!兄貴っ!兄貴っ!」」」
他のクランの奴らも巻き込んでの大合唱。しかも楽しそうにレアたちも参加していた。
もう止めて?
賢者さん、今のでどれくらい死んだ?
【賢者】865体です。
了解。
あとは2200体くらいか。かなりレベルが上がった。さらに上の大魔法で消し飛ばしてもいいが、他の奴らに魔力を残しとかないといけないような気がする。それに問題はヒュドラだ。それにこいつらは作戦を持って攻めてきた。これだけじゃないはずだ。
しばらくして魔物たちが出来た大穴を迂回して進み始めた。
【賢者】今の魔法は味方の士気を上げるのには効果的ですが、コストパフォーマンスは良い方ではありません。
了解。ならこっからは狙い撃ちだな。賢者さんも頼む。
【賢者】かしこまりました。
俺の背後上空に突如広がる。複数の円。
これは俺の魔鼓だ。今や、100個以上の同時発動が可能。狙いはBランク以上で厄介そうな魔物。
「いけ」
ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!!!
撃ち出された超高熱の弾丸は、炎の軌跡を引きながら魔物の大群に向かって飛ぶ。一頭の分厚い岩石のような体表に覆われた頭の小さい亜竜が、反応すらできない速度で肩口に衝突すると、その岩のような皮膚を溶かし、その柔らかい体の内部を血を蒸発させ、肉を焼き切りながら掘り進む。そして、体内奥から大爆発した。亜竜は足だけを残し、体は四散する。
その弾丸が賢者さんの補助を受け、百発百中の精度で一秒間に20発の連射性能で発射される。3秒ほどだったが、600匹近い魔物が悲鳴を上げながら肉片を散らし死亡した。大小様々なクレーターと大穴が地形を変えた。
バレットのコスパが良いとは言ってもこれだけ撃てば少しは魔力が減る。さっきの重力魔法と合わせて2割は魔力を消費した。ヒュドラに残す分も考えて、ここからは回復に努めよう。ただ、俺の魔力は『魔力高速回復』のおかげで6時間もあれば0からの全快が可能だ。
「ホント…………味方で良かったぜ」
「ははっ、とんでもないのをジャンは連れてきたんじゃないかい?」
ヒラリーたちは横目で隣のクランの先頭に立ち、今しがた魔法を放ったユウを見た。
このままいけば、それほど苦労しなさそうだと思えば、まだ後続に追加の魔物集団が来ているのが目についた。
「げ…………そう簡単にはいかないか」
そして、遂に俺に狙われなかった他の魔物が防壁の側へと到着しそうだ。
「来るぞ!!気合い入れろ!」
「「「うおおおおお!!!!」」」
クランの皆は武器を掲げ、気合い十分だ。そして、残った魔物が防壁目の前まで迫って来た…………!
ついに先頭のベルガルが堀を飛び越えジャンプしてきた。ガランのところの真下だ。
ガァンッ!!
3メートルの体長を持ったベルガルが防壁に衝突した。そして、表面に爪をガッ!と突き立てるがびくともしない。
「ガルルルァ!!」
口から唾液を飛ばし、上をにらみながら壁をガリガリと引っ掻くが高硬度の壁はベルガルの爪さえ引っ掛からず、下に落ちていく。落ちていくにつれ、鳴き声が遠くなる。
……………………ドスッ!
クゥーン、クゥーン…………。
最後にはかすかな弱々しい鳴き声が聞こえ、静かになった。
うまいこと穴底の剣に刺さったな。
それから防壁に飛び掛かった魔物が壁に弾かれ穴底に落ちていく、そんな光景が次々と防壁の至るところで起き出した。最前列の魔物たちは落ちると危険であることを理解したが、後ろから来る魔物に押され、バラバラとどんどんと堀に落ちていく。
さらに壁に近付く魔物に対し、冒険者たちが弓を放っている。雨のように降り注ぐ矢に対し、密集した魔物たちは避けようがなく、弓をくらっていく。魔術士達も次々と魔法を放ち魔物を沈めていく。
順調だな。
【賢者】ユウ様、上空に気をつけてください。
ん?
突如俺の探知に反応が、そして影が横切った。
「なんだ?」
一匹、体長7メートルほどのワイバーンが空中からへクターのパーティに迫っていた。ワイバーンは亜竜に属し、腕は翼と一体化した首の長い竜だ。
でかい!これはへクターたちの手に余る相手だ!!
「へクタアアアアアアア!!」
俺が叫ぶとへクターがワイバーンに気付いた。
だが、その間に俺の目の前にも、突如真下から防壁に沿うように急上昇しワイバーンが現れ、フチにその鋭い爪で掴まった。
「兄貴ぃ!」
突然のワイバーンと言う大物の登場に、慌てる冒険者たち。
俺の真上から丸飲みにしようと、細い牙だらけの口を開けて迫ってくる。それを見て、必死の形相で俺を助けようと腕を振りながら駆け寄ってくるブルートのパーティ。
余計なお世話だ。
俺を狙うワイバーンはどうでもいい。ここからヘクターを襲うワイバーンを始末しようするが、俺を助けようと走ってくる冒険者たちで射線が確保できない。
「くそっ!」
予想以上にこの防壁の上は人で動きがとりにくい。それにどうやら他のクランも同時にワイバーンによる襲撃を受けているようだ。
そして、俺にかぶり付こうとしたワイバーンの息の生臭いが鼻をくすぐる。
「うっとおしい!」
パァンッ!
「ゴガガガ…………ガ……!」
ワイバーンは脳天をノールックで俺に撃ち抜かれ絶命。脳漿を弾け飛ばすと、壁から堀の底へと回転しながら落下していった。ポカンとするブルートたち。
その間にへクターたちのパーティと他の冒険者たちはワイバーンと戦闘に入る。
「ワイバーンだ!射て!射ちまくれ!!」
へクターは仲間に弓を射たせ、へクターが槍を、あと1人が剣を構える。ワイバーンは空中数メートルでホバリングし、ワイバーンが爪で冒険者を狙う。ワイバーンの翼に引き起こされる強風になかなか回りの冒険者たちは援護ができない。反対にへクターの仲間から放たれた矢がワイバーンの左脚太ももに突き刺さり、紫色の血を流させるが致命傷には程遠い。
「魔術士!へクターを援護しろ!」
「はい!」
ニコルの雷魔法がワイバーンの翼をかすめると、一度強く羽ばたき後に飛ぶと、そこから旋回し距離をとった。だが、正面に目を向けるとダンジョン方向からさらにワイバーンの第2陣に当たる大群が押し寄せてきていた。
「おいおいおい!」
「「「ワイバーンの大群だぁ!!!!」」」
先程のワイバーンの対処に慌てる中、さらに恐怖が拡散され、現場はパニックとなる。
【賢者】気を付けてください。あれは普通のワイバーンではありません。
====================
デミワイバーン
Lv.58
HP :700
MP :380
力 :635
防御:290
敏捷:768
魔力:650
運 :6
【スキル】
・ヘヴィブレスLv.4
・亜竜鎧Lv.3
・毒爪Lv.5
====================
今防壁を襲っているワイバーンとは違う。紺や灰色に近い体色をしている。それらがおよそ50体!
こんなのが50体も住んでたなんて、あのダンジョンどんだけ広いんだよ!
そして、一斉に防壁手前で並んでホバリングしたかと思うと胸部を膨らませ、首を後ろに反らせた。そして思い出した。
「ヘヴィブレスって、あれか!」
ダンジョンの中でデモンドラゴンが放ったブレスだ。見た目よりも遥かに厄介だった。重力属性を持ち、途轍もない重量のブレスがゆっくりと進み、触れた対象を破壊する。
魔術士たちの援護もすでに先行のワイバーンにかき回されているため追い付かない!
それでも不幸中の幸い、デミワイバーンの群れがブレスで狙ったのは右手からヒラリー、俺、真ん中のガラン、魔術士ミゲル、モーガンの5人のクランのみだった。
「結界!!!!!!」
限界までズラッと結界を広げ、ブレスの直撃する部分をカバーする。それを3重に重ねて防壁の前に展開した。
そして、およそ50頭ものデミワイバーンたちは口を大きく広げ、灰色の煙のようなブレスを吐き出した。
ヘヴィブレスは山なり放物線を描きながら防壁目掛けて直撃する。
ズズ…………ズン……………………!!!!!!
「ぐぅっ…………おおっ!」
1頭1頭はデモンドラゴンには遥かに及ばないが、50頭という数の暴力が結界を遥かな圧力で押し潰し破壊しようとする。目の前は灰色のブレスに覆われ何も見えない。
このブレスは盾じゃ防ぐのが難しい。もし破られれば多数の冒険者たちが死ぬことになる…………!
「ユウ!」
「頑張れ兄貴!」
結界を知らない冒険者たちは何が起きているのかわからないが、俺が防いでいることはわかるようだ。誰しもがどうすることもできずに固唾を呑んで破られないことを祈る。
パキンッ!
1枚目の結界は粉々に砕かれ、消え去った。そして2枚目へとヒビが走る。
「レアアアア! 風で吹き飛ばせえええええええ!」
「がってん! おりゃああああああ!!」
言わずもがな用意していたレアの魔法が、発動する。豪風が吹き荒れ、灰色のブレスを力業でゆっくりと左右に散らしていく。散ったブレスに直撃された魔物は骨は砕け、押し潰され、内臓を撒き散らした。
「はぁ、はぁ…………はぁ……!」
ブレスの脅威は去った。まさかこれほどの規模を結界で防御することになるとは思わず、肩で息をする。
まだ空を見上げると、ブレスを防がれたデミワイバーンたちが第2射を放とうと魔力を込めていた。
またか…………!
隣を見ると、アリスがいない。
「ははっ」
思わず笑った。さすがは判断が早い。もう大丈夫だ。
「何度も同じ手が通用すると思わないで」
いつの間にかアリスが塔の上、ジャンの真横に来ていた。
「アリスさん!?」
ジャンが驚くのを無視してアリスが両手を前に突き出して魔法を発動、魔力を解放した。
冷たい風が吹き荒れる。空をホバリングするデミワイバーンたちはブレスを放とうとする体勢のまま、瞬間冷凍される。全身を霜で覆われ、その凍った身体から冷気すら流れ出すデミワイバーンたちは落下。
ガシャアアン…………!!
次々と地面に衝突すると粉々に砕け散っていく。それを見て安心した。
助かったアリス。
「何とか…………なったか?」
他に残っていないか周囲を見渡す。
いや、まだだ!ヘクターを襲おうとしていたワイバーンがアリスの魔法を逃れ再びヘクターへと迫っている。
しかし、距離が遠い!誰か近くにいないのか!?
「フリー!」
フリーはすでにヘクターに向け走っていた。
だが、ワイバーンはすぐにへクターたち目掛け、空中から突撃していく!
ヘクターたちも決死の覚悟で迎え撃つ!
「行くぞ!!」
衝突の瞬間、へクターがワイバーンの心臓めがけ、槍を突き込む!!
だが、槍はワイバーンの体表を切り裂くだけで、刺さるところまでいかなかった。ワイバーンはその突進の余波でへクターたちをぶっ飛ばしながら、防壁の上に着地する。
「ぐぅっ!」
へクターはワイバーンに突進の余波で防壁のヘリに衝突し、一時的に意識を飛ばした。他の冒険者たちが、助けに駆け寄ろうとするも周囲には生憎近接戦闘が得意なBランクパーティがいない。
「ぐっ、あああ!」
助けに行った数人の剣士は、ワイバーンの広げた巨大な翼に弾き飛ばされる。
「へっ?」
へクターが意識を取り戻した時、ちょうど視界に影が差し、見上げるとワイバーンの大きく開き、唾液で糸の引いた顎があった。
「ひっ、ぎゃああああああああああ!!!!!!」
「フリー!急げ!」
ワイバーンはヘクターの肩までを口内に収めると、そのまま持ち上げ頭を上に向ける。頭を飲まれたまま足をバタつかせているヘクターの手から、槍が落下しカランッと音を立てた。
そして、ワイバーンは上を向いたまま何度かアゴと喉を開き、まるで鳥が魚を飲み込む時のように丸飲みにしていく。喉元がへクターで膨らみ、ズルルと通っていくのがわかる。隣にいた剣士にはその光景が地獄にしか思えず、剣を下ろし、ただ見ていることしかできなかった。
その時、ようやくワイバーンの足元に潜り込んだ影があった。フリーだ。
スパンッ……………………!!
一瞬、刀が光ったかと思えば、ワイバーンの首は根本からきれいに切断され落下した。体も遅れてドスンと崩れ落ちる。
「ヘッ、へクター!!」
仲間の2人が慌ててワイバーンの食道から粘液だらけのへクターを引っ張り出した。俺もへクターの元へたどり着き、様子を見るも意識を失っているようだが外傷はない。
へクターに水をぶっかけ、目を覚まさせる。
「…………っぶはぁっ!! げほっ!げほっ! ひゅぅ…はぁ、はぁ、はぁ!」
へクターが意識を取り戻した。
「フリー、良くやった!」
そう言うと、フリーは黙って親指を立てた。
こいつしゃべらんかったらカッコいいな。しゃべったら変態だが。
ヘクターは死を覚悟していたようだが、周りを見て助かったことに気付いたようだ。
「…………すまん。た、助かった」
へクターは立ち上がろうと膝を立て、力を入れるが震えて全く力が入らない。
普通そうだ、丸飲みにされた直後に戦える奴なんか普通の精神じゃない。
「助けたのはフリーだ」
「そうか。すまない」
仲間に肩を借り立ち上がるヘクター。その様子を見て言った。
「へクター、お前ら一度下がれ」
「待て!俺らはまだ行ける!」
ヘクターはショックを顔に隠しきれずに言った。力になりたいのだろう。良い奴だ。
「わかってる。でも今直ぐには無理だろ。調子が戻ったら、ここまで上がってこい。それまで待ってる」
「…………わかった」
仲間に支えられ階段を下りていくへクターを見ながら考える。今のような魔物がこれば、俺たちでなけりゃ対応は難しいかもしれん。上空からの魔物、特にワイバーンは注意が必要だ。
「飛行する魔物に気を付けろ!!壁を越えてくるぞ!!」
「「「「了解!」」」」
皆気合いを入れ直した。
読んでいただき有難うございました。
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