第42話 フリーとの繋がり
こんにちは。いつもありがとうございます。
減らそうとしたのですが、結局文字数が多くなってしまいました。読みにくかったらすみません。
宜しくお願いします。
町からは馬車で10分ほどでダンジョンの前に着いた。ダンジョンは黄土色で岩がむき出しの地面に、下向きにぽっかりと開いた洞窟のようだ。穴の大きさは直径5メートルほど。冒険者たちが蟻のようにひっきりなしに出入りし、周囲には屋台もチラホラ開かれている。
「さて、どれが受付だ?」
「あれじゃないかな?」
レアが指差す先に、ポツンと建つログハウスのような小さな小屋があった。10人ほどが並んでおり、そこへ向かう。
「こんにちは。ダンジョンへ行きたいんだけど」
小屋には中から直接外の冒険者と応対できるカウンターがあり、そこで手続きができるようだ。受付をやっている若い男のギルド職員が返事した。
「はい、でしたらここにメンバーと滞在予定期間を書いて。字は書けますか?」
「ああ」
賢者さんが俺の頭に浮かべてくれた文字をインクのついた筆でなぞりながら、後ろの皆に聞く。
「滞在期間は、まぁ今日は様子見だから半日でいいか?」
「そうだね。いいんじゃない?」
レアが応えた。アリスは先ほど泣いてしまった手前恥ずかしいのか黙っている。書き終えた紙を職員に渡した。
「ありがとうございます。地図はいりますか? 26階層までになりますが」
まだ踏破されてないのか?
「そうだな。頼む。とりあえず5階層で」
「はい。じゃ5000コルになります」
「……高くない?」
思わずギルド職員の前で言ってしまった。職員の笑顔が一瞬固まる。そこにフリーが小声で補足してくれた。
「ユウ、ユウ! ダンジョンの地図は高いんだよ。それだけ冒険者が命をかけて作ったからね」
「なるほど。すみません。それで頼みます」
空間魔法からコルを取り出し、ギルド職員の手に乗せる。こういうのがギルドの収入になっているんだろな。
感謝の気持ちで羊皮紙でできた地図を5枚受け取った。
そんな初心者丸出しの俺らを周囲の冒険者たちは温かい眼差しで見ていた。やっぱり町の名物は自慢なんだろうか。
「さて、いくか」
◆◆
ダンジョンの入り口は階段になっていたが、中は天然の鍾乳洞のようだった。通路は一定の太さではなく、広かったり、天井が極端に低かったりと入り組んでいる。壁が濡れてテカっており、湿った濡れた空気にカツカツと足音が良く響く。
特に自然の洞窟と変わりはない。強いて言うなら、多数の冒険者と魔物の反応があることくらいだろうか。
1階層の初めの通路は、幅6メートルくらいで他の冒険者たちとも余裕をもってすれ違うことができる。そして、外の光は届かないはずなのに壁が淡い黄緑色にぼんやりと光っていた。場所によっては青白かったり、オレンジ色をしていたりと様々だ。
「きれいだな……これ明かりはどうなってるんだ?」
「これは、壁に生えているヒカリゴケのおかげなの。色は種類によって違うらしいわ」
良く見ると確かにモサモサの苔が発光しているようだ。そして、久しぶりにアリスが喋った。
「お、アリスが復活した」
「なによ」
アリスがじろっと睨んできた。泣いたことが恥ずかしかったのか、先程までは全く喋ってくれなかった。
「ははは、アリスはやっぱそうじゃないとな」
アリスは咳払いをすると、歩きながら続けた。
「いい? ここは『悪魔の庭』って呼ばれるように、悪魔系モンスターの巣窟よ。1階層はE~Dランクだけど、深く潜るとどんどん敵は強くなる。Bランクダンジョンってのは、あくまで予想であって、もっと奥の深層まで踏破されればダンジョンの危険度が上がることもあり得るわ」
アリスが人差し指を立てて強調した。
「でも、ただの洞窟と変わらんだろ?」
するとアリスは首を横に振った。
「違うわ。凶悪な罠だってあるから、下調べなしで深く潜ろうとすると危険よ。それに、ダンジョンには『ダンジョンコア』と呼ばれるエネルギー源があって、それを守る『ダンジョンボス』がいるの」
「ダンジョンボス?」
本当にゲームのようだ。
「ええ。ボスはある程度の知能がある魔物で、ダンジョンコアを使ってダンジョンそのものを進化させるわ」
「ボスがダンジョンをコントロールしてるのか?」
「まぁそうね。それにダンジョンコアはダンジョン内の魔物が人間を殺せば殺すほど力を増していくわ。だからダンジョンを弱体化させるには魔物を減らすのが一番で、定期的に魔物を間引く必要があるの」
「へぇ」
【賢者】補足するならダンジョン内で死んだ冒険者の存在値をダンジョンコアは一度吸収し増幅します。それを魔物へと還元しています。そのため、ダンジョンの魔物は一般的な魔物よりも強くなります。
なるほど。
「さすがアリスちゃん、詳しいね」
「うん、一度来てみたかったの。だってダンジョンと言えば、強力な武器やアクセサリーが有名だもの。夢があるじゃない?」
レアが褒めると、アリスはワクワクした子供のように言った。
「なら1つくらい見つけて帰るか」
「そうね」
アリスが嬉しそうに返事をする中、前衛のレアとフリーが前に並んでテクテクと進んでいく。あちらはあちらで何か雑談をしているようだ。
「なぁ、さっき町で小耳に挟んだんだけど氾濫ってのは?」
「氾濫は魔物が増えてダンジョンの外に溢れ出すことを言うわ」
「ダンジョンの外にねぇ……だから管理しないとヤバいのか」
しゃべりながら進んでいると、俺らのいる通路の正面からこちらに向かってくる気配がある。
「来たな」
グラックルと呼ばれるコウモリのような翼を生やした狼の魔物だ。いきなり3匹現れ、走ってきた。
「まずはあたしたちで!」
そうアリスが言うと、3人がザッと前に出た。
「初ダンジョンの初魔物だよ!」
そう言いながらレアが魔物に向かって素早く軽やかに走り出す。
まず飛び掛かってきた1匹目をレアが躱しながら、すれ違い様に下から上へと剣を振り上げ慣れた手つきで首を落とす。
「ほっ!」
スパンッ……!
グラックルは大して防御力も高くないようだ。
続いて一番奥にいた魔物の口がにじみ出るように赤く光ったかと思うと、
「バウッ!」
炎の塊を吐き出した。20センチほどの炎塊は豪速球のようにレアめがけて飛んでいく。
今度はアリスが動いた。
「これくらい2人には大げさだろうけどっ……!」
そう言いつつ後衛のアリスが2人の前に水の柱を作り出す。
バシュゥッ…………!
それに衝突すると炎の塊は呆気なく散った。フリーは水柱の影から走りよると、残りの2匹を横薙ぎに1振りで背中と腹に斬り分けた。
「順調ね」
横たわる魔物の残骸を見ながらアリスが言った。
「ダンジョンとは言え、こんなもんかねぇ」
フリーが刀をしまいつつ、もの足りなさそうに言った。
「まぁここは1階層だからね。これからよ」
それからさらに進み始めた。
レアとフリーが2人で先頭、真ん中にアリスで俺が最後尾だ。もし3人で対処できない敵が現れたら俺が相手する。まだ1階層目だからか、他のパーティもよく探知にかかる。
「あ、みんな、ここなんか嫌な感じするから踏まないでね」
獣人の勘だろうか。罠の場所がなんとなくわかるようだ。よく見ると確かに色がうすく、そこだけ色の違う石だ。
『悪魔の庭』ではあるが序盤は、オークや、ゴブリンの上位版ゴブリンソルジャーたちと言った通常の魔物も現れる。
アリスも後衛だけでなく、フィルに作ってもらったブルーボアの牙からできたアイスエッジを使って、どんどん魔物を切り裂く。倒した魔物の核はひたすら俺の空間魔法に収納していくが、まだまだ戦闘で俺が出る幕はなさそうだ。
◆◆
ーーーー2時間が経過した時だった。
右手の壁が振動している。
「なにか来るぞ! 伏せろ!!」
そう言った瞬間
ボゴオオオオオオオオ…………ンンンン!!
進行方向右側の壁を突き破り、丸太ほど太い暗緑色の腕が現れた。壁を突き破った勢いのまま、レアを掴もうとする。
だが、
「ゴアアアア!?」
魔物が悲鳴をあげた。その魔物の腕は細切れになり、地面にバラバラに落ちていた。魔物は肘から先を失い、血が滴り落ちている。
「もうっ、危ないじゃんか!」
レアが捕まれる瞬間斬っていた。すごい反射神経だ。
魔物が開けた穴から魔物の顔が見えた。体長5メートルはあるような暗緑色の皮膚をしたオークのような生き物、あれはいわゆるトロールだろうか?
「僕がやるよ」
フリーが刀を抜き、斬撃が壁ごと向こうの魔物を斬り裂く。
「ブッギャアア…………!!」
ピシッ…………ガラガラガラ。
壁の向こう側には大きく腹を切り開かれたトロールの死体があった。
「壁ごとかよ」
さすが剣の達人だ。
「あれ? この部屋…………なんだろう?」
そこは鍾乳洞とは違う、暗緑色した石が敷き詰められた部屋へと来た。キチンと壁と床、天井までも石が組まれており、壁には松明がつけられている。いかにも人工的でまだこの先も続いているようだ。
「さっきまでとは雰囲気が違うな」
「隠し部屋かしら? それとも罠か。わからないわ」
「進むべきか、止めとくべきか…………」
「ねぇねぇ! こんなところにこそお宝は眠ってるんだよ!」
野生の勘か、レアが目を輝かせて言った。
「確かにな」
皆は瓦礫を踏み越え、石造りの通路へと進みだした。だが、すぐに違和感が来た。
なんだろう体が重い?
進むにつれて徐々に重く感じるようになった。
「ねぇ」
アリスが少し辛そうに言った。
「わかってる。重いな」
「そうだねぇ。体重が増えたか、重力が強くなったみたいだよ。戻るかい?」
「いや、ちょうどここで行き止まりのようだ」
通路の先は扇状地のように三角形に広がっており、かなりの広さがある。
「あいつは…………?」
奥には湯船2杯分くらいの巨大なスライムがいた。透明に近い薄い水色だが、中にボーリングの玉のような黒い玉が4つ浮かんでいる。
=======================
プロテスデモンスライム
種族:スライム
Lv.81
HP:5
MP:900
力:305
防御:808
敏捷:490
魔力:950
運:1
【スキル】
・並列思考Lv.4
・隠密Lv.2
・消化Lv.6
【魔法】
・重力魔法Lv.6
=======================
聞いたことないスライムだな。
ん?
「フリー避けろっ!」
フリーの背後から後頭部目掛けて何かが飛び掛かった。
「へっ…………?」
ブオン…………!!
「おわぁ!?」
何かが風を斬る音とともに、フリーがしゃがんでそれをかわした。
「あれは?」
黒い塊は、そのままスライムの元へと飛んでいくと、ペチャッと中に入った。そして、他の玉と一緒に内部でふよふよと浮いている。
【賢者】あれはプロテスデモンスライムの核です。頑強で重量のある自身の核を重量魔法で操って攻撃し、弱らせた敵に覆い被さって消化しようとする珍しいスライムです。
自分の核で攻撃って、弱点だろそれ。
ドッ、ドッ、ドッ!
スライムから3つの玉が射出された。それらは放物線を描いて上右左の3方向から先頭のフリーへ迫る。
「あの玉が弱点らしい。フリー斬れ!」
「斬れったってねぇ! 体が重くて…………!!」
フリーは大きくバックステップをして3つすべてを避ける。だが、スライムの核は円を描いて再びフリーへと向かっていく。
「仕方ないねぇ」
フリーは刀を正面に構えたまま、目を閉じて集中した。
「……アレをやる気か」
フリーだってこの数週間で成長した。魔力操作を取得し、身体強化は問題なくできるようになっている。
身体強化が完了したのか、フリーは目を開く。この重力の大きい部屋の中、フリーは普段以上の速度で刀を振った。
「せっ!」
正面からの玉を前に大きく一歩踏み出しながら縦斬りにし、フリーがいた空間を空振りする左右2つの玉を、後ろから追い付き上下に斬って分けた。
「さっすが」
その間にレアもスライムの中にある核に剣を突き刺していた。核を斬られ、スライムはぶよぶよと痙攣すると、粘度を失ったように流れ落ちた。
「どうよっ!」
レアがニッと剣を突き立てながらピースしてくる。
「よくやった」
やっぱりレアは魔力操作の練度が2人よりも高い。
「んへへ。あれ? 軽くなったね?」
レアが肩をぐるぐると回す。
「体が重く感じた原因もこいつの重力魔法だったんだろ」
そう言いつつ、スライムの死体を見ると、
「…………あれは?」
水晶のような短刀がスライムの亡骸の中に転がっていた。水魔法でスライムのぶよぶよを落としてキレイにする。
「おや、これはダンジョンのお宝だね」
「キレイ…………これどんな武器なのかしら?」
アリスが手にとってまじまじと見つめている。
「ちょっと待って」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コールドエッジ
ランク:A
属性:氷
〈氷属性の魔力を吸収し、氷で刀身を伸ばすことができる。また斬った相手を凍らせる〉
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おお、Aランクだ!
こんな一層目にあるとは、よく今まで見つからなかったものだ。
「ほお、見た目は短刀だが、氷属性の魔力を注げば刀身が伸びるんだと」
まるでフィルに作ってもらったアイスエッジの上位互換だ。
「へ~、そうなの」
アリスが透き通る刀身に見とれて、ものすごく欲しそうだ。というか属性からしてアリスに向いた武器だろう。
「それアリスが持つのはどうだ? 相性も良いだろうし」
そう言ってレアとフリーを見ると、うんうんと頷いていた。
「え、いいの!?」
アリスが子供みたいに嬉しそうな表情をしている。珍しい。余程気に入ったんだな。
「うん、というかアリスちゃんにしか使えないしね!」
「だねぇ」
「やった! ありがとう!」
アリスは嬉しそうにコールドエッジを腰のベルトに差した。
「さて、今日はこのくらいにしておこう。大体のダンジョンのイメージはわかったし、ちょうど良いだろ」
「そうだね! アリスちゃんにも良い武器が手に入ったし!」
◆◆
それから夕焼け空に照らされる町に戻ってきた。
「とにかく宿屋を探そう」
そう、若干焦りながら言った。なぜなら、泊まる場所を確保し忘れていたからだ。
町自体はそこまで大きくないが、冒険者に向けた宿屋は多くあった。その中でどれにしようか皆で見て回っていると、最近聞いたことのある声が聴こえてきた。
「アニキ!」
その声に振り向くと4人の男たちがいた。
「その呼び方はやめろってんだろ? というか、お前誰だっけ」
「いやいやいや……! アニキにコテンパンにやられたブルートっすよ!」
ギルドにいたモヒカンだった。
「いたなそんなやつ。で、何の用で?」
「アニキ! 弟子にしてください!」
と、4人揃ってお願いされた。
また弟子かよ! なんでお前らすぐ弟子入りする?
「はぁ……ブルート、ランクは?」
「Bランクっす!」
「俺はCランクだからお前らの方が上。だから無理。それじゃ」
手を振りお別れを言って進もうとする。
「待ってくださいっす! 何か困ってるんですか?」
「別に困って…………ん?」
フリーに腰をつつかれた。
「ユウ、こいつらこの町に詳しいじゃない?」
フリーが言ってくる。
「ん~、まぁそうか」
それは言えてるな。
「あー、実は宿を探してるんだ。どこか良いところはあるか?」
断った手前、申し訳なく頭をかきながら言う。
「ああ! それでしたら知る人ぞ知る名宿があるんっす。こちらっす!」
ブルートが案内してくれるらしい。張り切って案内し始めた。
「ところで、さっき聞きましたけどアニキはダンジョンを攻略に来たんすか?」
「攻略というか、まぁ修業だな」
「あれだけの強さを持ちながらなんて志の高い……!!」
くぅ~と涙を流すブルート。仲間たちも一緒になっている。
出会い方は最悪だったが、そこまで悪いやつらでもないのかもしれない。
そうしているうちに宿へ到着した。
宿は確かに知る人ぞ知る感じだ。細い路地を進んでいくと、突如開けた広場が現れ、それの正面に位置する部屋数の少ない屋敷のような宿だった。
「ここは接客も丁寧な上に、値段も手頃でしかも、飯が旨いんっす!」
ブルートは両手を広げて自信満々に紹介した。
「本当だろうな? 違ったら次は口から内臓が溢れるまで潰すからな」
ブルートがぎょっとした顔で
「アニキまじ怖いっす! 本気でやりそう…………で、でもここは絶対大丈夫っすから!」
そう言いながらもブルートたちは宿に向かって手を合わせて祈りだした。
「冗談だって」
「冗談か、わかんないっすよ!」
ブルートは懇願するようにツッコんだ。
まぁ、実際ブルートは一度潰してるもんな。
「すまん世話になったな。今度何か礼をしよう」
「いいっすよそんな! それじゃ、俺らはここで!」
そう言ってブルートたちは帰っていった。
「ユウ、あなた舎弟が増えたわね」
「……」
◆◆
宿はブルートの言うとおり、申し分のないレベルの高さだった。アンティークで落ち着いたロビーがあり、飯も旨く、ベッドもふかふかだ。家族経営のようでスタッフ皆が愛想よく、隠れ家的な要素が気に入った。今度誉めてあげよう。
晩ごはんの後は全員俺の部屋で今後について作戦会議だ。別室の女子2人もこっちの部屋に集まってきた。俺はフリーのベッドに腰掛け、レアとアリスは人のベッドにちょこんと座っている。
というかレアのパジャマが可愛い。フワフワのホットパンツとパーカーだ。
いつ買ったんだろうと、チラリと横を見ると、フリーがニヤリとした。
「さぁさぁワンダーランドの作戦会議始めるよー」
各々自由に過ごし始めそうなので、集めるために適当に言う。
「はーい」
ものすごくダラダラと集まってきた。
「じゃあまず、目標はダンジョンでレベルを上げて力を蓄えるでいいよな?」
3人とも納得したように頷いた。
「そこでだ。具体的には種族レベルのレベルアップを目標にしたいと思う」
そう言うと、皆の表情が変わった。
「無理だとは思わない。そのためには…………」
「わかってるわ。必要なのは格上と戦って勝つことよね。つまり、このダンジョンで言うならボスよ」
目がランランと輝くアリスさん。やる気満々だ。
「そうだね。ボスってどれくらいなの?」
レアが聞く。
「ん~、BランクとされてるここならダンジョンボスならおそらくAランクよ」
「ということだ。今のお前らなら大丈夫だし、いざとなれば俺が助ける」
そう、俺が手を出したら意味がない。
「そうだねぇ。次はあのバケモノの時みたいに無様なことにはならないよう頑張るよ」
「私も魔力をもっと上手く使えるようになるよ!」
「よし、それじゃ明日からはダンジョンの新しい階層目指して進もう。そのためにも情報収集をしっかりして、食料も買い込まないとな」
「ねぇ、それなら役割分担しないかい?」
とフリーが言い出した。
「確かに……それじゃ俺は空間魔法があるから食料調達をしよう。大量に買い込んどくよ。ダンジョン攻略を目指すくらいだから、とりあえず1ヶ月分とかでどうだ?」
「うん、それくらいあれば大丈夫そうだね。じゃあ僕とレアちゃんで情報収集。ユウとアリスちゃんで食料買出しでどう? 適材適所でしょ?」
「そうだな。俺がギルドに行ったらめんどくさそうだ」
また騒がれたらかなわん。
そうして、皆アリスとレアは適当にたむろしてから部屋にと戻っていった。
ちなみに隣がレアとアリスの部屋だ。やたら楽しそうな声が聞こえてくる。アリスもレアと仲良くやれてるようで良かった。
フリーは…………もう寝る体制でベッドに横になっている。俺もそろそろ寝ようか。明日は準備頑張ろう。
ーーーー
明かりを消してスプリングの良くきいたベッドに横になる。眠気が襲ってきて、ぼんやりとまぶたが重たくなってきた時
「ユウ、起きてるかい?」
珍しくフリーから話しかけてきた。
「……なに? 起きてるが」
「いや、久しぶりにきちんとした宿に落ち着いたからね。前から聞きたかったんだけど、ユウのことでね」
ん、まじめな話しのようだ。
「ああ」
「記憶喪失ってのは本当かい?」
そう言えばフリーにはきちんと話したことなかったな。
「ああ、本当だ。俺はここ数ヵ月間ほどの記憶しかない」
「ふーん、謎だね。一番古い記憶は?」
真っ暗の部屋にフリーの声が聞こえる。
「草原だ。草原の中、大きな湖のある町の近くで目覚めた」
そう言って久しぶりに思い出した。目が覚めたら、草の中に仰向けに寝てたんだよな。
「ん…………? そんな町、この辺りにあるのかい?」
「いや、あるよりもあった…………というのが正しいな。もうなくなったんだ」
「なくなった?」
フリーがこちらを見るために体勢を変えたのか、ベッドがきしむ音がした。
「ゴブリンに襲撃されて滅んだんだ」
今でも鮮明に思い出せる。燃え盛る本棚にもたれ掛かり、自らの小さな胸にナイフを突き立てるエル、俺の背中で力が抜けていくデリック、そして湖に映った燃えるアラオザルの町。
思い出せば出すほど…………後悔が込み上げてくる。
「…………? そんなはずないよねぇ」
フリーの声に現実に引き戻される。
「ん?」
「今時そこらのゴブリンにやられるような町はないし、最近町が潰されたことも聞いたことない。それ、本当なのかい?」
「疑ってるのか?」
「いや、ユウのことは信用してるよ。でもあまりに荒唐無稽な話だから」
それもそうか。俺がフリーだったとしても疑うかもしれない。
「お前みたいに胡散臭い奴に言われたくねぇよ」
「ははっ、何だろうね? よく言われるよ。そんなつもりないのにねぇ」
少し拗ねたような声がする。そして、まじめなトーンに切り替わった。
「なら、その町があったのはどこなんだい?」
「どこ、か……まぁ簡単には行けないし、行けば命の保証もできないんだが」
「命の保証? どういう……?」
「俺が目覚めたそこはアーカムだったんだ」
「アーカム…………?」
フリーが聞いたことのある言葉に、なんだったか思い出そうとしている。
「アーカムって…………え、嘘でしょ?」
フリーが起き上がりこちらを見た。
「なら今、その町の人たちは?」
「当然、死んだよ。俺以外を除いてな。あの人たちは、あの魔物に囲まれた土地で静かに暮らしていたんだよ」
あまり大勢と関わることはできなかったが、俺が生きていられたのはデリックやミラさん、エルがいたおかげだ。
「ゴブリン王に人間の国が滅ぼされた3000年前、魔物を寄せ付けない不思議な湖があった。当時、人間界へ逃げられずに生き残った人たちが身を寄せあって築いた町がアラオザルだ」
そう説明しながら俺も体を起こした。
「そんなまさか…………3000年間も続いていたというのかい!?」
フリーも驚きを隠せないようだ。
「そういうこと。俺だって最初は信じられなかった。でも目の前にゴブリンの大軍が迫っていれば信じられずにはいられなかった」
いや、初めにそのことを理解したのは俺だ。むしろ、町の人たちはわかっていながらも目の前の光景を信じようとしなかった。
「嘘じゃないみたいだねぇ…………」
フリーはベッドにバタッと倒れ込み、天井を見ながら言った。
「信じるかどうかはフリー次第だ」
「信じるよ。ぼくも、いつかその町があった場所に行ってみたいねぇ」
ふふっと、フリーは笑いながら言った。
「ああ、キレイな町だった。湖も信じられないくらい澄んでた」
町が滅んでも今も変わることなくキラキラと陽光を反射する湖が目に浮かぶ。
「俺はその町で、ある人に最後まで命懸けで助けられた。そのおかげで俺は生きてる」
「そりゃ大恩人だねぇ。ユウはその町にどのくらいいたんだい?」
「少し、1週間くらいだったかな。右も左もわからない俺をあそこの人たちは温かく迎えてくれた」
「でも、ユウ以外は皆、その…………亡くなったんだよね? その恩人もかい?」
「そうだ。そう言えば、あいつも元コルトの町の冒険者だと言ってたな」
「え、コルトの冒険者だったのかい?」
フリーが跳ね起きると、座って俺に向き直る。
「ああ、だが彼だけな。数年前に偶然たどりついたらしい」
空気が変わった。そして、ブツブツとフリーは呟いた。
「数年前……数年前にいなくなったコルトの冒険者だって? もしかして…………いや、まさか」
フリーのこの反応……そうか。フリーはコルトで冒険者をして長い。なんで気付かなかったんだろう。
そしてフリーは聞いてきた。
「ねぇユウ。その人の名は…………?」
「デリックだ」
フリーは、ハッと息を吸い込んだ。
「嘘だ…………!!」
突然フリーが小さく呟くように叫んだ。
「……知り合いか?」
いつものんびりとしたフリーからは想像もつかないほど、動揺している。
「その人の特徴は?」
フリーは立ち上がり、俺の肩を掴んで聞いてきた。
小刻みに揺れるフリーの瞳からは、明らかな動揺が見てとれた。
「左目の下に縦に傷があった。40歳代くらいで髪の毛は灰色だ」
「まさか、生きてた!?」
フリーは泣き出しそうに口がへの字に曲がっていた。
「今…………その人は?」
フリーが泣きそうな目で俺を見た。
「死んだよ。俺を町から逃がしてな」
「…………そっ…………か……」
フリーは遠い目をして、力が抜けたようにドサッとベッドに座り込んだ。
「ねぇユウ」
「ん?」
「こないだ僕に剣の師匠がいたって言ったよね?」
「ああ。まさか、その人がデリックか」
「そうだよ」
空元気のように笑うと、フリーは語りだした。
「僕が幼い頃、両親は行商人をしていたんだ。色んな村や町を回っては商品を仕入れては、それを王都で売ってた。僕も一緒に馬車に乗って王国中の町を回ってた。
でも、事件が起きた。よくある話さ。王都からコルトへ向かう途中、僕を連れた両親の馬車が盗賊に襲われたんだよ。護衛の冒険者たちは殺され、僕だけでも逃がそうとした両親も殺された。そして、その時に通りがかって助けてくれたのが、デリックおじさんさ」
「ったく、いろんなとこで人助けてるんだな」
彼らしくて笑みが溢れそうになった。どうしてか誇らしく感じた。
「しかも独り身になって行く宛のない僕の面倒を見るって言ってくれたんだよねぇ。じゃなかったら、僕は町でのたれ死んでたよ」
デリックは誰よりも苦しんでたはずなのに、なんでそこまで優しくなれるんだろう。
あの陽気な笑顔がまぶたの裏に浮かぶようだ。
「それから僕はおじさんに引き取られたんだけど、あの頃、それはもうひどくて、ぶっちゃけ僕は壊れてしまってたんだよねぇ。ショックで何も感じなくなっちゃったんだよ。味覚も聴覚も、痛みさえ」
幼い頃に目の前で両親を失った苦しみは計り知れない。でも今のフリーにそんな面影はこれっぽっちもなかった。
「今は?」
「もうとっくに治ったよ。おじさんのおかげさ。初めの頃はものすごく迷惑をかけたねぇ」
「まぁ、デリックのことだから迷惑だなんて思っちゃいないだろうけどな」
「かもね」
フリーはふふっと笑った。
「というのも、そんな僕を見かねてか剣を教えてくれてね。最初は興味がなかったんだけど、ある時おじさんの剣を見ていて思ったんだ。ただ、そう…………一心不乱に打ち込めるおじさんが羨ましいなって」
「その時か」
「だねぇ。それからはおじさんに教えを乞うて剣の腕を磨いたよ。そうするととても楽しくて、気付けば僕の病気は良くなってた。病気が治った頃、おじさんは急にいなくなったんだよ」
その頃か、デリックが自分の限界に気付いたのは。フリーの才に気付かされたのかもしれないな。
「おじさんは僕の師匠であり、1人の父親だった」
「いなくなって、辛くなかったか?」
「置いてかれたとか、そんなショックはなかったよ。むしろよく今まで面倒を見てくれたなと思った。だから、いなくなる前に何か恩返しをしたかった。せめて理由くらい、教えてほしかった…………」
絞り出すようにフリーが言った。
「…………出ていった理由、多分知ってるぞ」
「え?」
フリーが俺を見つめてきた。
「デリックは過去に魔物に家族を殺されていた。あいつが冒険者になったのは力をつけるため。いなくなったのは自分の力に限界を感じ、やけを起こしてアーカムへの復讐に踏み切ったからだ」
フリーの病気も良くなり、もう大丈夫だと思ったんだろう。フリーの存在がストッパーとなっていたのかもしれない。
でも、結果的におかげで俺はデリックと出会い、助けられた。
「ほんとなのかい!? それは!」
フリーが詰め寄ってくる。
「ああ。デリックが死ぬ間際、涙を流しながら語ってくれた。また前と同じように自分の町が滅ぼされてしまった……と。あいつがどれほど悔しかったか、想像もできない」
「ああ…………なんで言ってくれないのかねぇ」
フリーが天井を見上げて言った。
「巻き込みたくなかったんだろうよ。お前は関係がなかったからな」
「……最期は見届けたのかい?」
「化け物みたいな強さの甲冑を着たゴブリンに襲われて、デリックは瀕死の重症を負った。それでも俺たちはなんとかその場を逃げ出したんだ。でもデリックは俺の背中で息絶えた……」
「そうか、まったく、知らないところで死ぬんじゃないよ…………」
フリーが空笑いをし、目尻から1滴こぼれ落ちた。
「なぁフリー、このパーティの目的を知ってるか?」
「…………ん、平和な世の中を創ることだったっけ? はは、まったく夢物語だねぇ」
フリーは今更だとでも言うかのように笑った。
「夢物語か、だからワンダーランドって言うんだ。ちなみにその夢はな? 死ぬ間際に吐き出したデリックの最後の願いだ」
月空の下、あの時、俺の背中で泣きながら語ったデリックの言葉を思い出した。
『ユウ、おまえ……こんな、罪もない人間が、苦しみ殺される。こんな世界が正しいと思うか?』
『俺の代わりにっ、世界を……変えてくれ。俺を救ってくれ!!!!』
『でないと俺は死んでも死にきれんっ!!!!』
「デリックは彼が生きた人生で、苦しむ人々に自分も重ねて見てきたんだ。俺はデリックの最後の言葉に、夢を叶えることを約束した」
「なるほどね…………そう繋がるのか。まさか、このパーティの目的がおじさんの願いを叶えるためだったなんてね」
「俺はもっと強くなったら、再びあの町へ行って、デリックと友人をきちんと埋葬してやりたい」
時が来て行動するならまずそれだ。なんとしてもあの人たちにお礼を言わなくてはダメだ。
「…………」
フリーが黙りこんだ。
「おじさんは命をかけてユウを守ったんだねぇ……」
「ああ。おかげで今の俺がある。ほんとに陽気で人の良い奴だった」
「復讐の鬼になっても、すべてを諦めても、そこは変わらなかったんだねぇ…………ありがとうねぇ。…………そっか、決めたよ」
フリーは立ち上がると、はっきり俺を見た。
「僕はユウと一緒に、おじさんに恩返しをする。僕は、君についていくよ」
そうして、右手を差し出し、付け加えた。
「それにユウは心の友だからね」
「ははは、あぁ宜しく頼む」
俺は、フリーの手をがっしりと握った。そして、俺たちはニヤッと笑った。
◆◆
朝起きると、フリーはもういつも通りだった。
今日は買い出しの日。フリーはレアとダンジョンの情報収集に、アリスと俺は買い物に向かった。
この町ワーグナーにも、屋台が連なる通りがる。どうやらギルドからダンジョンに向かう冒険者を狙ってこの通りが出来たようで、道の両脇にはギッチリと食べ物屋や鍛冶屋などの屋台が並んでいる。
買った食料はどんどん俺の収納に入れていった。
「しかしあなたの空間魔法どこまで大きいのよ」
アリスが屋台で買った串焼きがどんどんと消えていくのを見ながら言った。
「さぁ、知らねぇ」
「把握しといた方がいいんじゃない? いざという時もう入りませんじゃ困るでしょ」
「ぐっ…………」
実際、自分で俺の空間魔法の中に入って確認したんだが、広すぎてわからなかった。
「ん、あれは?」
見ると、人1人が隠れられるほど大きな藍色の盾と大剣を背負ったギルド長ジャンが前から歩いてきた。その横には、仲間とみられる男たちが3人並んでいる。
「おーいジャン!」
「あ、ジャンだ!」
「ジャンこれ食べてくれ! 頑張ってこいよ!」
町の人々がジャンに声をかけていく。
屋台のおっちゃんたちは自分の店の売り物をあげれば、ジャンは頭を下げてお礼を言うと受けとっている。
「あの人、人気ね」
アリスはつまらなさそうに言う。
「だな。この町、実質まとめてんのはあいつだろ? すごい奴なのな」
「見て。あの装備、多分ダンジョンに行く気よ? ギルド長が留守にしていいのかしら」
「言われてみれば、確かにそうだな」
ジャンがこちらに気付いた。鎧をガシャガシャ言わせながら走り寄ってきた。
「こんにちは、ユウさん。アリスさん。昨日はすみませんでした」
見かけたらきちんと挨拶に来るなんて、なんて人間ができてるんだ。社会人みたいだ。
「いいって。な、アリス」
「元々そんなに気にしてないわよ」
アリスは逆に不服そうに言った。
「だそうだ。これからダンジョンか?」
「そうだね。最近ダンジョンの氾濫が迫っていて、それの調査も兼ねてるんだよ」
「お前がギルドを離れても大丈夫なのか?」
そう聞くとあははと笑った。
「ほんとは良くないんだけど、深層まで潜れるパーティは限られてるからね。それに、元々僕がギルドを空けることが多かったから、職員たちは慣れてるんだよ」
「なるほどな。まぁ確かにあんたなら深部までいけそうだ」
こいつは多分、レベル2に至っている。存在感を抑えてはいるが、秘めてる力は巨大だ。そんな気がする。
「うん、オーランドが居ればまだ良かったんだけど……」
「ああ、オーランドね」
聞いていたアリスが反応した。
「あ、あいつな」
王都へ向かう途中、氷の矢で俺達の馬車ごと凍らそうとした野郎だ。ということは、やっぱりこの町からも伯爵に引き抜かれたということか。
「知ってるのかい?」
「まぁ有名だから」
いきなり殺しに来たことは言わないでおいた。
「あ、そうだ。ユウたちはこの町来たばかりだから伝えておくと、最近ちょっと物騒なんだ」
ジャンが眉を潜め、疲れた顔をした。
「物騒?」
「うん、こないだ殺人事件があってね?」
「「殺人!?」」
まさか、ここでも辺境伯と同じような事件が? いやでも、これだけケンカが頻繁に起きてりゃ殺人も起きるか。
「いや、殺人かどうかわからないんだけど、武器屋の店主が朝起きたら店の倉庫で血塗れで死んでる男を見つけたそうなんだ。でも、町の人たちは誰も男のことを知らない。それに店の店主も身に覚えがないときた」
「なんだそりゃ、謎だらけだな」
「ホントだよ」
ジャンは困ったようにため息をついた。
「店主は刀が男を殺したっての一辺倒だけど、そんなことあるわけないからね」
「刀がね…………」
面白そうだな。調べてみよう。
「ユウ、あなたほしいとか思ってるんじゃないでしょうね?」
「ま、まままさか!」
アリスがじっと見つめてきたので、さっ、とジャンに目線をそらした。
「ま、それはそうとして、今日は俺らもダンジョンへ潜るつもりだから中で会ったら宜しくな」
とジャンに言うと、ジャンが閃いたようだ。
「ほんとかい!? 君らなら深部まで行けると思う! もしなにか異常を見つけたら教えてくれないか!?」
「いや、あのね。俺らダンジョン入るのまだ2回目なんだけど?」
そんなの比較できるかっての。
「何か気付いたことでもいいんだ。報酬は弾むよ」
弾むのか。まぁ俺だけじゃないし、皆も賢者さんもいればわかるか。
「んー、わかった」
◆◆
2人で片っ端から料理や食材を買いまくり、再びギルド前に集合した。
「買い出し班はバッチリだ。そっちはどうだった?」
「こっちは…………なぜか僕たちも兄貴、姉御って呼ばれちゃってね。まぁおかげでなんでも教えてもらえたけど」
フリーはまんざらでもない様子で言った。
「まず、階層のモンスターは、5階層毎のボスを経て、強力になっていくらしい」
「今は25階層のボスをなんとか倒したんだけど、その先からはモンスターが強くて進めない状態なんだって。それに時間が空いたせいでまた25層のボスが復活したから手詰まり状態らしいよ」
「階層のボスモンスターって復活するのか?」
「復活するらしいよ」
「へぇ、それは楽しみだな」
「で、このダンジョンは下に潜っていくにつれ、フロアは狭くなるらしい。一階層は6キロメートル四方はあるみたいだねぇ」
「6キロ!? そりゃ広いな。探索に時間がかかるわけだ。じゃあ魔物は?」
レアも答えたかったのか、はりきって言った。
「魔物は始めこそ、色んなザコモンスターだけど、進むにつれ強力な悪魔系モンスターになっていくんだって。特に状態異常攻撃も増えてくるから注意が必要ってことだったので、キュアポーション買っておいたよ!」
「おお助かるレア。それは各自持っておこう。いざという時のためにな」
「えへへ~!」
まぁ俺がいれば大丈夫だと思うが、念のためだ。
「あと罠は何でもあるそうだねぇ」
「おいおい…………」
「水責め、火あぶり、毒沼、落とし穴等々…………とにかくあやしいところは避けろ。らしい」
「無茶言うなぁ」
まぁ、レアと賢者さんがいればある程度は大丈夫だろう。
「そんなとこだねぇ。細かいところはダンジョンの中で説明するよ。他に大した情報は手に入らなかったねぇ」
「おう、ありがとう」
「ユウたちは何かあったの?」
「俺らの方は、ジャンにダンジョンに異常があったら教えてほしいって頼まれたくらいだな」
「僕たち、ダンジョン初心者なんだけどねぇ」
フリーがきょとんとして言った。
「まぁな。でも俺らくらいしか深層まで潜れそうな奴らがいないんだと」
「ギルドも人手不足なのよ」
アリスがしんみりと言った。
どこの業界も同じだなぁ。
「そんじゃまぁ、ぼちぼち行くか」
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