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【100万PV突破!!】重力魔術士の異世界事変  作者: かじ
第5章 戦争
148/159

第148話 終戦と

こんにちは。お待たせしてすみません。

ブックマークや評価をいただいた方、有難うございます。とても励みになります。

第148話です。宜しくお願いします。

 

 極大魔法を放つため、超巨大な魔力を身体の底から釣り上げるように持ち上げる。地面に根を張る大木の1つをボゴッと引っこ抜くような感覚があった。

 そして両手を広げて、魔法の対象地域をイメージする。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ…………!


 ビリビリと王都全体が振動を始め、辺りの小石が空へ向かって浮き上がると、数秒後には地震のような継続的な揺れに見舞われた。




「「「「ぇ…………」」」」




 地図を書き換える天災級魔力に、王国軍の兵士たちはポケーと思考停止する。


 ヒトの言葉を失い、ガァガァと吠えるだけになったローグたちを俺は空から見下ろした。


「可哀想にな…………」


 だからこそ、ここで消しておかなければ。


 初めて放つ天災級の魔法。俺とて、緊張しないわけではない。加減を間違えれば余計な町を巻き込む可能性だってある。だとしても、この場のローグは1匹足りとも逃がすわけにはいかない。


「魔力に重力属性を付与」


 魔力が深淵の真っ黒に染まりながら、ズオオッと渦を巻く。


 身体の小さなローグたちは数メートルほど宙に浮き上がり初め、目をパチクリ口をパクパクさせている。


 とその時、ベルが俺のなかで声をかけてきた。


【ベル】ねぇ、皆殺しにするつもり?


 ん、どういう意味だ?


【ベル】だってあなた、友達は殺さなかったじゃない。


 ブラウンか。そりゃだってあいつは、あいつは……………………。


 考えるため、魔法を放とうとする手を一時止めた。


 いつもの生意気そうなベルの雰囲気とは違う。まるで弟を諭すような姉、大人の女性のようだ。


【ベル】聞いて。あなたはもはや最強の一角。下手すれば将来『理』にもなれるかもしれない。だからこそ人格者であってほしいの。


 言わんとすることはわかるが、別に今からすることは恨み辛みでやろうとしたわけじゃない。必要だからだ。


【ベル】ええ。それは分かるわ。


 ならこいつらが人類にとって危険なことも分かるだろ。


【賢者】私も同意見です。止める理由が分かりません。


【ベル】待ちなさいあなたたち。それじゃ、あなたの友人が人間に戻った時、後悔することになるわ。この人たちも救えたのにってね。


 ああ、なるほど…………それはうん……………………確かにそうかも、しれん。


【ベル】それでもいいの? 


 …………わかったよ。彼らにも普通に家族がいたはずだ。今の俺なら殺さずに捕らえることもできるだろう。ここで殺すのは可哀想か。


【ベル】……良かった。


 ベルが俺の中で柔らかく笑った気がした。


 賢者さんもそれでいいか?


【賢者】はい、私はユウ様のお気持ちを考えることが得意ではありません。ベル様に感謝申し上げます。


【ベル】あはは、そんなのいいのに。


 よし、そうと決まれば…………賢者さん!


【賢者】はい。

 

 魔力属性を変更する! 重力属性から氷属性へ!


【賢者】承知しました。


 俺が両手で抱える黒い渦のような魔力は徐々に白く、青く、変化していく。


 さらに魔力の出力を限界まで上げてくれ。


【賢者】ユウ様、そうなれば王都どころか複数の町が氷に覆われることになります。


 いや、範囲をこの平原に限定し、魔力を無理矢理凝縮して詰め込む。


【賢者】それは可能ですが、失敗し余計な破壊を生むリスクもあります。


 構わない。どんな結果になろうとも、王都は俺が結界で絶対に護るから心配いらない。


【ベル】私も制御を手伝うわ。


【賢者】承知しました。


 大きく広げた俺の両手の間では、深い蒼色をした透明で綺麗な魔力の塊が目を開けていられないほど眩く光輝いている。まるで想像もつかない年月をかけて固まった氷山の蒼色のようだ。


【ベル】ね、ねぇ、これどうなるの?


 今さらビビるな! やってみたらわかる!


「いくぞ…………!!」


 パンッ!


 両手の間にあった魔力の塊をサイドから潰すように手を叩いた。

 魔力が解放されると共に、濃厚で深く蒼い光が俺の両手で潰されたように広がり、ローグたちの顔を照らした。


 そして、














ーーーー時が止まった、かのようだった。














 戦争が始まってから訪れた、久々の静寂。


 ローグたちはそのままの姿で、蒼い氷に包まれた。



 口を広げ、5枚の舌をベロリと外に出したままの者


 跳び上がった空中で氷の中に閉じ込められている者


 地面を這いながら王都を睨む者


 王国軍の弓矢に刺さりながら凍っている者



 氷に閉じ込められたその範囲は東京23区の面積に匹敵する。だが、俺の放った魔力はまだ半分以上残っていた。


【ベル】やりすぎよ!


 やばっ、多すぎたか!


【賢者】余った魔力を処理します!


 賢者さんが、機転を効かして魔力を上へと向けた。凍ったローグたちの上に、どんどんと氷が伸びていく


 バキッ、バキバキ、パキパキパキパキパキパキパキパキパキパキパキパキパキパキパキパキパキパキバキバキバキバキバキバキパキパキパキパキパキパキ!!!!


 そうして、ローグたちが土台となった、そびえ立つ氷山が現れた。


 すまん、助かった。


【賢者】いえ、ユウ様の魔力が素晴らしかったためです。


 レムリア山の隣に、レムリア山と同じくらいの氷山が現れた。氷山の中は、趣味の悪い怪物のオブジェが閉じ込められたテーマパークのようになっている。

 この氷山を中心に気候が変わり、王都の気温までもが肌寒くなっている。


「成功…………か?」


【賢者】はい、問題ありません。王都にも被害はないようです。


【ベル】なんなの、この氷の色……。


 なんなんだろうな。


【ベル】なんであんたもわからないの………………。


【賢者】魔蒼氷と呼ばれるものです。通常の氷とは違い、濃密な魔力がこもっており今後数年は溶けることがありません。自然界の魔力が濃い場所では稀に生成されることがあるそうですが…………。



「ゆ、ユウ! 説明してくれ! これはどういうことだ!」



 下から見上げて俺の答えを待っているのは、現国王オーウェンだ。明らかに困惑し、よくわからない表情になっている。


 まずいか? …………よく考えれば、王都西側の気候を初冬にしてしまったかもしれない。あの氷山は俺の魔力が尽きるまでは冷気を垂れ流すだろうし。


「あとで説明する!」


 困り顔のオーウェンを他所に、そのまま俺は王都南側にある帝国軍の駐屯地へと飛んだ。


 後で怒られるだろうなー。



◆◆



「あ? なんだこりゃ…………」


 俺が帝国軍の軍の駐屯地へ到着した頃、そこはほとんど壊滅した状態だった。

 ひっくり返った馬車、武器を捨てて逃げ出した兵士、地面にはいくつも抉れたような跡が残っている。絨毯爆撃を幾度も受けたかのような惨状。どうやら彼らはここを捨ててさらに後方へ退去したようだ。


 瓦礫の間を歩いて駐屯地を見回していると、元気な足音が聴こえてきた。


「やっぱり! この匂いはユウだよね!」


 声がした方を振り返れば、そこにはレアがいた。ブンブンブンブンと激しく手を振りながら嬉しそうに耳をピコピコと動かしている。


「てことは、この惨状は…………」


「あたしたちに決まってるじゃない」


 レアの後ろから、後ろで手を組んだままヒョコッと現れたのはアリスだった。


「やっぱりか。元気そうだな」


「アイツがいないなら、こんな奴らあたしらの敵じゃないわよ」


 アリスはショートカットの髪を払いながら自信たっぷりに言いきった。


「やぁやぁ、ユウがここにいるってことは…………アレに勝ったのかい?」


 刀を肩に乗せてテントの陰から出てきたのはフリーだった。


「もちろんだ」


「あは、はははー」


 信じられないと苦笑いをしながら天を仰ぐフリー。


「さすがです」


 気付けば定位置のごとく、クロエが俺の3歩後ろに行儀良く立っていた。


「良かった。クロエも無事か。ウルはどこだ?」

 

 煙の上がる駐屯地を見回す。


「俺ならここにいるぜ?」


 声がしたテントの中を覗けば、将軍らしい人物のアゴ下から頭部にかけて背後から抱きつくようにナイフを突き刺しているウルがいた。ナイフが刺さった人物は口が開きっぱなしだ。


「おっす」


 そう言いながらウルが血濡れのナイフを引き抜くと、将軍は血を噴出させながらドサリとうつ伏せに倒れた。


「お、おう…………はは、全員無事か…………」


 ホッとした。それはもう、言葉にできないほど。


 なんだか、顔が弛んだ。多分、だらしない、人に見せられる顔じゃなかったと思う。でも1ヶ月も仲間の安否を気にしていた分、反動も凄まじかった。


「は、ははは……………………ほんと、本当に、どうなるかと…………この1ヶ月どんな目に遭ってるか、し、心配で…………良かったなぁ……」


 安心したとたん目の前がウルウルと揺れる。ここ1年の戦争による緊張の糸が切れたような気がした。


 こいつらの前で泣くとか、恥ずかし過ぎる。


 レアは顔をグシャグシャにして、堪えられてないけど泣くのを我慢している顔だ。


「あはは、レアの顔……」


「泣いてないよぉ」


 ぐしぐしと泥々に汚れた服の袖で目を擦るレア。


 レアが泣いてるのを見ると涙を堪えられそうだ。


「ユウ、ごめん。心配かけたわね」


 アリスが俺の頭を自分の胸に引き寄せると、抱き締めてくれた。


 普段のアリスなら絶対にしない。でもそんなこと、気にする余裕もないほど安心したし、嬉しかった。


 俺の頬に、少し上から涙が落ちてきた。それを感じて、耐えられていたはずの俺の涙腺が決壊した。


「相棒、僕らが簡単に死ぬわけないよねぇ」


 肩に慣れた感触があり、フリーがバンバンと肩を組んでいた。


「お、お前、俺がどれだけ心配したと…………!」


 そう俺が言おうとすると、


「ユウウウウウウ!! うぇえええええええええん!!!!」


 限界を迎えたレアの泣き声が聴こえ、俺たちに抱きついた。


「ユウの馬鹿野郎おおお! うぇえええええええええん!!!!」


 俺とレアの服の裾を摘まみながら、つられたように空を見ながら泣きじゃくるウル。


 クロエは少し離れてこの光景を見守りながら、目尻に浮かんだ涙を人差し指でぬぐっている。


「お前ら、子どもだなぁ」


 皆で笑い合った。






 俺たちは誰1人欠けることなく、この戦争を生き残った。





 

◆◆◆◆



「どういうことだ…………!」


 その男の声には怒気が宿っていた。


 ここはいつかの円卓が置かれた空間。真っ白の床には水深2センチほどの水が満たされている。数時間前は複数人いたが、今はこの男ともう1人、白衣を着た人物だけだ。


「どうしました?」


 白衣の人物が顔を上げると男に問う。



 

「『暴虐のギルガメッシュ』が死んだ」


 


 ギョッとした表情を見せ、狼狽する白衣の人物。


「…………こっ、混沌者に至ったギルガメッシュが? …………な、何故だ。設計にミスが? 細胞が崩壊したのか?」


 彼の脳内では、設計の障害箇所をグルグルと超高速で探してはブツブツと独り言を声に出している。だが、そんな彼の思考を遮るように男は言った。


「違う。殺されたようだ」

 

 その言葉が研究者の彼にとって衝撃だった。


「ば、馬鹿な! 混沌者になったギルガメッシュを殺せる者がいるわけが……!」


「事実だ。こんなことなら奴を殺しておくべきだった」


 その男は、頭を抱えるように額に手のひらを当てた。


「相手をご存知で…………?」


「ああ、だがあの時は気にするまでもないと思っていた。…………ちっ、やってくれたな小僧! この落とし前はつけさせてもらうぞ……!」 




◆◆◆◆




 終戦から2日後の昼。




『ユウ、そなたはカルコサ王国の歴史に残る素晴らしい働きをした。此度の働きを賞し、貴殿に辺境伯の爵位を与える!』




 こんなことを言われそうだったので、王宮からの呼び出しには応じず、俺は仲間と共に学園の寮に隠れていた。

 宿屋にいれば、王宮の兵士に見つかるが、ここまでは探しにこれない。一応、戦後に挨拶したついでにブレイトン学園長の許可は取ってある。


 昨日は昨日で他の拠点にいる兵士たちに勝利報告をしたり、俺たちの戦闘の余波で怪我をした人々の治療を行ったりして慌ただしかった。


 街中、勝利に酔いしれる声やラッパや太鼓の音で溢れかえっているが、空元気で気持ちだけでも国を盛り上げようとしているように感じる。それだけ戦争で王国が失ったものは大きかった。


 今も王宮の方で黒魔力に関する情報を集めようとしているが、しばらくは復興が優先だろう。避難していた王都民たちはここから1年近くかけて戻ってくるそうだ。王都自体にほとんど被害がなかったのが救いだ。


「へぇ、案外快適そうじゃない」


 アリスはベランダ側から俺が住んでいた寮の部屋を眺めていた。まだ俺とオズのベッドや家具は残されたままだ。レアはスンスンと鼻を動かしている。


「懐かしいねぇ」


 フリーはブラウンと過ごした自分の部屋を見ていたのか、隣のベランダからこっちのベランダにやってきた。


「げ、とんでもなく硬いベッドだな」


 ウルはベッドに寝転んで文句を言っていた。


「うるせぇよ」


 お前はいつも人のベッドの感触を確かめるのな。

 

「ねぇユウ、これからどうするの?」


 部屋の中からレアが聞いた。


「そうだなぁ」


 長い期間空けてしまったが、俺が目覚めた町『アラオザル』に戻ろうと思う。今の俺ならあのバケモノだらけの森と平原を抜け、再びあの町にたどり着くことができるはずだ。

 デリックやレア、ミアさんをきちんと埋葬してやりたい。


「王都で世話になった人たちに礼を言ったら、まずはコルトの町を目指すつもりだ。ガブローシュたちやオズも心配だしな。お前らは…………」


 じっと、この狭い部屋の中にいる5人を見回した。


「そうだな…………半年ほど休暇にするか? お前らも戦争で疲れただろ?」


 俺がそう言うと


「ユウ、それは違うよ!」


 レアが少し怒ったように口を尖らせた。


「へ?」


 なんだその反応?


「あなたが行くならあたしたちも行くに決まってるでしょ」


 当然と、ベランダで風に吹かれながらアリスは流し目で俺を見た。


「当然です」


 クロエは扉のそばで目を伏せたままビシッと言った。


「あぁ、マリジアとシャロンは元気なのかねぇ」


 フリーはもうコルトにいる彼らの心配をしている。いや違う。シャロンの胸を思い出してか、両手で揉むような動作をしながらにやけていた。


「フリー、それ止めて。気持ち悪いわ」


 アリスが人が死にそうな軽蔑した目でフリーを見た。


「おう、ついでにワーグナーが無事かも見とかねぇとな」


 そうか、ウルは故郷の皆が気になっているよな。


「お前ら、すでに着いてくる気満々かよ…………」


 そう言うと全員が俺を見て、コクンと頷いた。


 可愛い奴らだ。


 (ありがとうな)


 自然と顔が緩む。


「…………じゃあ、皆は西門の外に馬車を待機させておいてくれ」


「ちょっと待って。あっちには、あなた製作の氷山があるじゃない」


 アリスが西門の方角を指差しながら言った。確かにその方向には氷の壁が見えている。


「あ…………じゃあ氷山を越えた向こうで待っててくれ。俺は世話になった人に挨拶だけ済ませてくる」


 ベランダの柵に足をかけて飛んだ俺の背に、元気な返答が帰ってきた。



「「「「了解!」」」」



 仲間って良いな。



◆◆



 数分後、俺はギルド本部、ギルマスの部屋にまで来ていた。


「はっはっはっは! やっぱりサボってやがったか!」


 顔を見せるなりバンバンと机を叩いて笑うギネス。


「授与式とか、堅苦しいし、めんどくさいし、疲れるし。それに…………西門前のローグ氷山をなんとかしろって言われそうで」


「っ、ひーっ、ひひひっ…………! 違いねぇ。まぁサボったことは大丈夫だろ。大臣どもは知らねぇが、あの国王はハナからお前が来るとは思ってねぇよ」


 涙を滲ませながら爆笑できるってことはギネスは元気だ。


 そして、一番気になっていたことを聞いた。


「で、ジャベールはどうだ?」


「ああ、あいつな、とっくに目を覚まして…………どっかで見回りでもしてんだろ」


 ギネスは鼻をほじるような動作とともに無関心を装って答えた。


「はぁ!? もうかよ!!」


 もう仕事をしてるとは驚きだ。


「まぁそういう奴だ」


 あの時、ギルガメッシュから生まれたジャークを西門に向かわせた後、俺は急いでジャベールの元へと向かった。


 俺が到着した時、ジャベールは手足が燃え尽き、胴体と頭だけの木炭のような状態だった。手遅れかと思ったが、分厚い筋肉と骨に守られた心臓だけはしっかりと動いていた。あれでも死なないとか、ジャベールを殺すには苦労しそうだ。

 その場で炭化した手足を復元し、全身の傷を修復したが、ダメージが大きすぎたか意識までは戻らなかった。

 

「いや、この時間ならジャベールは貴族たちに呼ばれてる頃だな」


「貴族って…………何の用事だ?」


「まぁ、おそらく戦争で家のどこかが壊れたとか、うちの領地での被害がなんだとか、大層壮大に言うが要はしょうもない苦情だろうな」


 特に気にする様子もなく淡々とギネスは話す。別に珍しくないようだ。


「この期に及んでまじかよ。民衆たちはそれどころじゃないってのに…………いつか痛い目に合えば良い」


 想像を超える馬鹿ってのは見ていて面白いものだ。


「まぁその辺はもう諦めろ。世の中、どうやったってそんな奴らは一定数現れるもんだ」


 と、話が途切れたところでギネスが言った。


「よしそんじゃ、とりあえずジャベールんとこ行くか。お前も顔くらい見たいだろ」


 ギネスはニッと歯を見せた。



◆◆



ーーーー30分後、貴族地区。



「お、元気そうだな」


「…………ああ、貴様には世話になった」


 ぶっきらぼうに目をそらして礼を言うジャベール。2日経っても未だに生きていることが不思議なのか、俺と話しながら手を握ったり開いたりを繰り返している。


「で、なんでこんなとこにいんだ?」


 貴族地区を探せば、ジャベールがいたのは王宮区への門の前だった。


 今は話をするため、貴族たちの集うお洒落なカフェ街にまで来ていた。石畳の道をのんびりと馬車が走れば、道沿いには手入れされた色とりどりの花が咲く花壇が並んでいる。

 俺たちはその一角のカフェテラスのテーブルに座っていた。


 無論、俺もギネスもここへの立ち入りは許可されている。周りはお高く止まった貴族たちだらけ。ここも戦勝ムード一色だ。


 その明るい雰囲気のカフェのテラスにて、ジャベールはその重い口をゆっくりと開いた。


「俺、は……………………」


 仏頂面がこの時に限っては3倍増しになっている。低いガラガラ声が紡ぐのは意外な言葉だった。




「レムリア騎士団の団長を任されることになった」




 そう言い切ってジャベールは口を閉じた。



ーーーー流れる沈黙。



「「お前が!?」」



 俺とギネスも脳内でジャベールの言葉を繰り返した後、同時にテーブルに身を乗り出していた。そして矢継ぎ早に言葉が出る。


「向いてねぇーーーー!」


「おいおい、それは俺も初耳だぜ? まぁあのレベルの敵から国を守れるのはお前くらいか」


「こんなギャングみたいに愛想の悪い騎士団いるか?」


「しょっぴくぞ貴様。まぁ要は俺の名を借りたいそうだ。憲兵は続けるつもりだ」


 バツが悪そうに話すジャベール。


「なるほどな…………」

 

 俺とギネスはドカッと再び椅子に座り直した。


 



 ーーーー。


 ーーーー。


 ーーーー。


 ーーーー。





 そこからのんびりと1時間は戦争での出来事について語り合っただろうか。


「ーーーーそうか。レッドウィングのクランごと、マシューはローグに…………」


 良い奴だった。だが、確かにマシューの性格なら国を襲うローグを見過ごすことはできなかっただろう。


「貴様が作った邪魔な氷山の中にいるかもしれんし、そうでないかもしれん」


 ジャベールはその髭を触りながら言う。


「どういうことだ?」


「あの時集まっていたのは全てのローグじゃない。他にもローグはこの国のどこかで群れを作って生きている」


「おいおい…………」


 ショックだった。あの場に全てのローグが集まって来ていたのだと思っていた。つまりまだ危険は残っている。


「そうだ。戦いはまだ終わっていない」


 ギネスは呟いた。


「現在、助かった町は防壁をさらに高くしてローグに襲われないように籠城中だ。だが食料には限界がある。奴らをできる限り早く駆除する必要がある」


「なるほど。しかし奴らに有効な属性を使えるのが王族だけってのが辛いな、王族をローグの前に立たせるわけにもいかんし」


 俺がふと思ったことを続けて言うと、俺を見ているギネスと目があった。そしてニヤッと笑う。


「てことは良かったなユウ。しばらくは仕事がありそうだぞ」


 ギネスはそんなことを言って俺の肩をポンポンと叩く。


「…………はぁ!? 俺は一旦地元に帰るつもりなんだが?」


「まぁ待てよ」


 ギネスが俺の肩をガチッと掴んでいた。


「待たねぇよ!!」


 そう言えば、すでに仲間を待たせているのを忘れていた。


「地元? 貴様の地元って言うと西の辺境コルトか?」


 ジャベールが俺の目を見ては聞いてきた。


「まぁそんなとこだ。途中の町くらいなら見といてやるが…………で、敗戦を期した帝国の動きはどうだ?」


 仕事を振られそうなので、無理矢理に話題を変える。この2人がいれば国内のローグもなんとかできるはずだ。


「いや、まぁギルガメッシュが死亡したんだ。帝国の敗北は決定的だが、他国は手を緩める気がないらしい」


 ギネスは真顔で両手を組みながら言った。


「と言うと?」


 真面目そうな話題だ。きちんと向き直って聞く。


「3つの大国があるだろ? 北の大国『ケアンズ教国』、南の大国『エスクィントラ王国』、帝国の東にある島々の『ゴールウェイ連邦』だ」


 ギネスは1本ずつ、計3本の指を立てながら話す。俺が頷いたのを確認してからさらに続けた。


「この3つの大国に、その他小国を含めた53ヵ国が手を組み、連合国を結成した。これらは人間界のほとんどの国だ。帝国は徹底的にすりつぶされるだろう」


「まじかよ……」


 国家間の戦争ってだけで大事だが、その規模は俺の予想以上。世界大戦にまで波及していた。


「それだけ帝国を危険視したわけだ。俺が八百年生きてきた中でも最も大きな事件になるかもな」

     

 そう言ってギネスは一気にグラスに入ったドリンクを煽った。


「ギネス、一応聞くが、連合国は帝国に負けないよな?」


「うーん…………」


 俺の問いにグラスを置くと、空を見上げて真面目に考えを巡らせるギネス。そして明るく答えた。


「大丈夫じゃないか? 聞いた話によると連合国側のSSSランクは全員で13人出陣するそうだしな」


「13…………そんなにか」


「おい、今回の件で思ったが…………SSSランクと言っても幅がありすぎるぞ。まずその区分けを考え直せ。でなきゃ数に入れられるかもわからん」


 ジャベールは不服そうにテーブルに頬杖をつく。


 確かに、ジャベールもSSSランクだが、ガードナーみたいなのもSSSランクだ。それは一理ある。


「それは言えてるかもな」


「まぁまぁ、それは今度にしよう。とにかく連合国は本気で帝国を地図から消すつもりだ。帝国はすでに公国を滅ぼしているし、情状酌量の余地はない」


「だとしても追い詰められた帝国は何をするかわからねぇぞ…………特にあの非人道的兵器や、手段を選ばないやり方は油断できない。ローグに国の内側から滅ぼされることもあり得る」


「ああ、その辺も王国から復興援助と交換で情報提供が他国へ行っている」


「なるほどな」


 と、そこまで話していた時、



 カンカンカンカン!


 カンカンカンカン!


 カンカンカンカン!



 ゴンドラに取り付けられた鐘がけたたましく鳴りながら、西門から貴族地区へと張られたロープに沿って、リフトが走ってくるのが見えた。


「号外! 号外です!」


 ゴンドラの荷台からは、新聞が花びらのようにバラまかれていく。何事かと街ゆく人々、カフェのお客、店員までもが上を見上げた。


「今さら何事だ?」


 その号外を1枚、ギネスが魔力を操作して掴まえた。


 それをテーブルの真ん中に広げ、3人で覗き込む。





「「「なっ…………!?」」」





 ギネス、ジャベールまでもが目を丸くしては息を飲んだ。


 そこにはデカデカとこう書かれていた。





『ゴールウェイ連邦 消滅か!?


 クルス帝国より東、千以上の島から成り立つゴールウェイ連邦。今朝、かの国のどの島とも一切連絡がとれなくなったとの報告が入りました。

 

 連合国の調査によると、人間界規模で海水面の上昇が確認されたと同時に、本島があった場所が跡形もなく海になっているとの報告があったそうです。

 当局では原因と詳細を調査中ですがーーーー。


 ーーーーーーーー。


 ーーーーーーーー。』





 号外の上に置いていたギネスの手に力が入り、シワが寄った。3人とも黙って内容を吟味する。



「…………ふむ、消されるのは連合国の方か?」



 ジャベールが沈黙を破るように呟いた。皮肉が込められている。


「いや、待て待て待て。よく考えろ。こんなこと不可能だ!」


 今の俺ですら無理なのだから。


「あの国の本島は王国の5分の1の面積がある。加えて多数の島もだろ? どうやってそんな規模を消滅させられる…………!?」


 ギネスは右手で、くしゃっと髪の毛ごと頭を抱えた。


「ギネスにもできないか?」


「できるかアホ」


 ジロッとツッコミを入れるギネス。


 そこまで話したところで、他のカフェのお客たちも号外に目を通したところだったのだろう。


「お、おいおい、冗談キツい、ぃ、な……」


 そうどもり気味で大声で笑うのは、貴族地区だというのにボロボロのカーキ色のローブをまとったこの場に似つかわしくない格好の男。


「はっはっは! ジョークにしては微妙だが、少しはウケるぞ」


「言えてますね。今日は号外すらハメをはずしているようです!」


 この場にいた貴族たちも本気にはしていないようだ。優雅にお茶を続けている。


 まぁ祝勝ムードでこんな話題は誰も本気にしない。神妙な雰囲気になったのは俺たちだけのようだ。


「さすがに荒唐無稽な話か」


 ジャベールが周囲に目を向けながら呟いた。


「確かにこれ自体がウソの可能性があるな。何が目的でこんなこと……」


 俺がギネスとジャベールに話しかけようと顔を上げた時



「ユウ!!」



 ギネスが鋭く叫んだ。同時に椅子を蹴飛ばすような勢いで立ち上がる。


 だが彼は俺には背を向けたまま、ビリビリとひりつくような気配を発しており、まるでギルガメッシュを相手にしたような戦闘体勢に入っている。


「ああ、用事ができたな……」


 ガタンと席を立つと、そう言い残し、ジャベールは王宮へ向かって消えるような速度で走っていた。


 そして、賢者さんとベルの叫び声が同時に頭の中で鳴った。



【賢者】お逃げください!!


【ベル】逃げなさい!!



 待て待て、どうしたお前ら?


【ベル】馬鹿! いいから早く!


【賢者】危険です! 結界と防御の準備をします!


 

「おいユウ!」



 ギネスは緊迫した様子で再度俺の名を呼んでいた。俺だけ置いていかれてるような気分だ。辺りを見回しても呑気にお茶を楽しむ貴族たちだけだ。


「どうしたって……」





「『(ことわり)』だ。『()』が現れた…………!」





 震えるギネスの言葉を理解するのに一瞬遅れた。


 心臓が爆発するんじゃないかと大きく音を立て、全身に硬直するように力が入った。まるで液体窒素を血液中に流し込まれたようだ。


「い、いやおかしいだろ。『理』は戦争に介入できないんじゃ…………」


「できないんじゃない! しないというただの()()()だ! それを破った奴がいる!!」


 そう言われて、ハッと気がついた。


 『理』なら、大陸を吹き飛ばすことすらできる『理』なら……ゴールウェイ連邦を消すこともできる。先程の号外の記事が本当なのだとしたら…………!


「あいつか…………!」


 ギネスが睨んでいる相手、それが『理』なのだろうか。肌感覚では、何の危険も感じない。それどころか、目視してようやく認知できるレベルだ。

 だが、今になってそのことがむしろ異常なのだということに気付いた。


【賢者】『理』はこの世における上位の存在です。それゆえに存在自体を認知することが難しいのです。


【ベル】何としても逃げるの! 戦ってはダメよ!


 いや、でもギネスは…………!


「おい、ユウ。絶対に俺の前に出るんじゃねぇぞ!」


 そう言いつつギネスは俺の前に立っていた。


 その小さくも大きな背中は、いつかの姿と重なった。



 これはデジャヴだ。まるで、いつかのデリッ…………。



 その時、『理』が口を開いた。


 

「わた、しは、弓のぉ、こ、こと、わり…………」



 目が虚ろで、半開きの口からは唾液が流れている。よく見れば先ほど号外を拾ったカーキ色のローブをまとった男だった。



「俺は、ギネス。ギルドマスターだ」



 ギネスは前に1歩大きく出た。それだけでミシッと石畳が割れ、建物が軋む。

 だが彼は今剣を持っていない。


「逃げるぞギネス!」


 下がらせようとギネスの肩を掴む。


「お前が逃げろ! 普通にやっても逃げられん!」


 振り払われた。


【賢者】良い判断です。この者を囮にして逃げてください。


 おい…………ふざけんなよ?


【ベル】賢者の言うとおりよ。



 うるせぇ…………俺は、もう、二度とあんな思いをするのは嫌だ!



 賢者とベルの声を頭の隅に追いやった。


「ギネス、一緒にやるぞ」


 隣に立ち、アイギスを空間魔法から引きずり出してはギネスに手渡した。


「はっ、一丁前に言いやがって若造が……」


 ギネスはどこか苦しそうに笑うと、アイギスを受け取った。そして俺は黒刀を構える。


 正面から見つめてわかる。『弓の理』は手ぶらで、身体が半分透けているように見える。


「本気か…………」


 ギネスが顔をしかめた。


 何も持っていないはずの『理』。だが左腕を俺たちの方へ向けて伸ばすと、胸を張り右手を引いていく。

 あまりに自然な動作ゆえ、そこに本当にあるかのように思えた。そしてそのつがえられた矢の先端はどうイメージしても俺を向いている。


「だが弓がないぞ」


 俺が奴の動作の意味を考えようとした時、ギネスが苦い顔で「ちっ…………」と小さく舌打ちしたのが聴こえた。



 トンッ…………。



 俺は後ろに突き飛ばされた。尻餅をつくほどではなく、3歩後退しただけだ。


 初め、『理』から見えない攻撃を受けたのかと思った。

 だがあまりに軽い衝撃。瞬時にギネスが魔力で俺を後ろに弾いたのだとわかった。

 そしてギネスは右手を前に突き出し、俺に向かっていた何かを、まるで受け止めたかのようにたまま立っていた。


 さすがギネスだ。俺を庇いながら『理』の矢ですら例のユニークスキルで受け止めていた。勝てはしないものの、この場から逃げきることくらいは出来るかもしれない。


「ははっ」


 大丈夫……なんとかなる!


 俺がそう思った時、ギネスは突然フッと力を抜き、威圧感までも解いた。つまり、戦闘の意志がなくなったということだ。


 なぜだ?


「ギネ、ス?」


 違和感を感じ、声をかけるとギネスは振り向いた。あの、『弓の理』に背を向けてまでだ。


 ギネスはこちらへゆっくり歩いてくると俺の肩に両手を添え、ニッと消え入りそうな笑顔を作った。




「ユウ…………悪い」

 



「え?」


 俺に触れていたギネスの指先がサラサラと風に舞いながら崩れ始めた。


「は? お、おい、ギネス?」


 ギネスは首を横に振ると再び、声を発することなく笑った。そして、俺の目の前で全身が粒子のようにファサッと風で散っていく。


「待て、待ってくれギネェェェス!!」


 俺はギネスの身体を掴まえようと手を伸ばすも、俺の指は崩れたギネスの粒子をすり抜けるだけだった。そして粒子は風にのってバラバラに飛んでいく。足が消え、最後は首だけとなり、口元が動いた。





『あとは、頼む』





 そう最後に彼の唇が動いた。




ーーーーギネスは死んだ。




 信じられないほど呆気なく。


「ま、また……俺は…………!」


 溢れようとする涙が腹立たしく、気持ちを奮い立たせる。今はまだその時ではない。


「お前を殺す…………!!!!」


 前を向いて『弓の理』を睨み付けた時、背後から落ち着いた静かな声が聴こえた。


 


「受け止められるわけがないだろう。それは『理』ぞ」




 振り返ると黒い髪を短く刈り込み、見た目は30歳前後。黒いローブを着た男がいた。


「まさかと思って来てみれば、なんだこの状況は……」

 

 ブツブツと独り言を話す男。


 俺はこいつを知っている。王宮でクーデターが起きた時に一度だけ見た。



 こいつは王国の抱える『()()()』だ。



 先程のこいつの言葉がどこまでも理不尽に思え、俺は子どものようにわめいた。


「だ、だがギネスは過去に、理の攻撃を相殺して防いだことがあった!」


「馬鹿か。本気の理の攻撃ならば、例えその小僧だろうとヒトごときに止められることはない」


 そう言う『斬の理』は、これまた何もないのに背中に右手を持っていき、剣を抜くような動作を行った。こいつも、身体が半透明に透けている。まるで霊体のように。


「『弓の理』の矢は必中。避けられん。だからそいつは身体で受け止めたのじゃろう」


「そんな…………いや、だったらあんただって……」


 俺程度ではどうしようもない理不尽な存在たちに、子どもに戻ってしまったかのような不安に襲われた。


「相手がヒトならな。『理』は、より概念に近いもの、そして意思力によって優劣が決まる」


 そう話しながら『斬の理』は『弓の理』へ向かって歩いていく。何も持っていないのに、その右手には剣があるような感覚がする。


「今は逃げろ。お前にはどの理よりもデカい器がある」


「それはどういう…………」


 『斬の理』が俺に手のひらを向けた瞬間、




 パッ。


 


 視界が急に切り替わり、気付けば俺は、()()()()()()()



「…………え?」


 

 見回せば斜め下には王都のあるレムリア山が見える。美しい都市だ。山肌を覆う建物が人類文化の素晴らしさを表している。


 次の瞬間、




 カッッッッ……………………!




 王都の俺が先程までいた貴族地区の辺りで激しい光が瞬いた。



 それは球体に広がりながら王都を包み込む。



 ドッ…………………………………………。



 エネルギーをできる限り空へと逃がすかのように、ドデカイ光の柱が撃ち上がった。






ーーーー形容しがたい美しい光。






 人智を越えた『理』同士の戦闘。







 それは、あまりに現実感がなく、感覚にしては一瞬の出来事だった。

























 






ーーーー人神歴3051年、王都レムリアは消滅した。 




読んでいただき有難うございました。

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また区切りがよいので、少しばかり過去話を修正する期間に入ろうと思います。今読み返せばかなり酷かったので。。。

またまた最新話の更新はお時間をいただくかもしれませんが、できるだけ早く上げるようにします。

それまでは過去話をお楽しみください。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここから物語が大きく動きそうな予感がして、楽しみすぎて夜しか眠れません!
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