第116話 軍事会議
お久しぶりです。
長らくお待たせして申し訳ありません。連載を再開します。
実際まだ考案中の部分もあるので、後で少し変更するかもしれません。みきり発車でごさいます。
のんびり更新していきますので、お楽しみいただけると幸いです。
マードックの反乱、国王の死、そして帝国の宣戦布告。
国民は大混乱に陥った。食料を買い込む者、家族を連れ王都を逃げ出す者、武器を売りに来る者。
混乱は王宮も同じことであった。何より、迅速に次期国王を即位させ、戦争への対応が必要だ。
「では、宜しいですかなオーウェン王子」
陽光が差し込む王の間、大臣が王族に受け継がれる王冠を持ち上げ、そう申し上げると
「はい」
オーウェンは目を伏せて返事をし、頭を少し下げた。そして、王冠がオーウェンに被せられる。王冠が陽光を受け、黄金色に輝いた。
クーデターより2週間後、正式に第一王子のオーウェンは国王として即位し、今後の王国を引っ張っていくこととなる。
その知らせを聞き、国民たちは両手を上げて歓喜した。
オーウェンは正統なる王族の証拠に『王の威厳』、『神聖魔法』の2つを持ち合わせており、学園で生徒会長を務めた手腕、そして個人の戦闘力においても申し分のない実力を兼ね備えていた。
まだ若いことが不安視されるが、彼ならばこの戦争をのりこえてくれる。そう民たちは信じることで、混乱を希望で塗り替えた。
◆◆
オーウェン即位の翌日、王都では華やかな新国王即位のお祝いパレードが行われる中、俺は前国王の死について真相を伝えたいとギルマスに呼ばれていた。
「お入りください」
受付嬢に案内されたのは、いつものギルマスの部屋ではなく、4階の会議室であった。
こんなにギルドの会議室に呼ばれる冒険者は俺くらいだろうな……。
そう思いつつ扉を開くと、そこには4人が鎮座していた。
・ギルドマスター『アレック・ギネス』
・レムリア学園長『ブレイトン・スウェイツ』
・レムリア騎士団団長『ダリル・オールドマン』
・レッドウィング団長『マシュー』
今までのどのギルドよりも広い40人は円卓にかけられそうな会議室に自由気ままに陣取る4人。彼らがこの国の最高戦力だ。
「良く来た」
俺を見てギルマスが緊張感なくヒラヒラと手を上げた。いつも思うが、彼は常に自信に満ち溢れた顔をしており、皆の不安を払拭させてくれる。
でも騎士団長とマシューはわかるが、なんで学園長まで…………?
そんな疑問を感じつつ、俺は空いた一番端の席に腰かける。すると秘書が緊張の面持ちで飲み物を配り始める。緊張するのも無理はない。ここにいるのは中程度の国ですら簡単に滅ぼせる5人だ。
「さっそく始めよう。まずは国王の死についてだ」
ギルマスがまじめなトーンで話し始めると、全員が真剣に耳を傾けた。こういう時のギルマスの声は子供の身体とは思えない落ち着きがある。
「既知の通り、前国王は半年前に亡くなっていた。ありとあらゆる調査と検査をしたが、あの死体が本人であることは間違いない」
「ふむ…………死亡時期は正しいのか?」
学園長が腕組みをしながらいぶかしげな表情で聞く。
「ああ。遺体はミイラ化。一部分は白骨化までしていた」
「我々騎士団も調査に同行し、確認したが間違いない」
騎士団長が補足した。
「なんとも不可思議な話だ」
マシューも配られた飲み物を口にしながら相づちを打った。
不可思議か…………それはそうだが、似たようなことが前にあったのを覚えてる。あれは確かコルトでの出来事だったか。
【賢者】はい、およそ半年前のコルトでの事件に状況が酷似しています。
そうだよな。
ギルマスが話を続ける。
「先日まで我々と会話していた国王は誰だったのか。半年間も成り代わったまま国政を行い、さらには家族にすら気付かれない。そんなことが果たして可能なのか……」
「そこがわからないと…………?」
マシューが体育会系のテンションを抑えて静かに問う。
「ああ」
ギルマスは困ったように返事をした。
「いや……心当たりがある」
無意識に声が出ていた。目線を上げると、皆の視線が集まっていた。ギルマスの目には若干の驚きと楽しさが見え隠れしている。
そうだ。いる。姿を本人そっくりにし、おそらくは性格まで真似できる奴が1人だけいる。
「ユウ、それは誰だ?」
ギルマスが机に身を乗り出して問う。
「…………偽コリンズ、だ」
奴しかいない。半年前だというなら奴が王都に到着した時期とも一致する。
そこで俺はコルトでのジーク辺境伯殺害未遂事件について詳しく語った。
◆◆
「なるほど…………確かにそいつならあり得る話だ」
数秒の沈黙の後、ギルマスが頷いた。
「相当頭がキレるな。厄介だ」
「ふむ……しかし、だとすれば偽コリンズにはそれほど戦闘能力はないのかもしれないな」
騎士団長は三つ編みのあご髭を撫でながら考え込むように言った。
「なぜだ? 軽視するのは危険だと思うが」
というのも俺個人が思うに、偽コリンズの纏う雰囲気は異質なもので、ただ者ではなかった。
「いや、奴が強ければ前国王様を殺害する時に王族全員を暗殺できたはずだ。半年も王宮にいたのならなおさらな」
皆が納得したように相づちを打つ。
そして騎士団長は言いづらそうにアゴ髭の三つ編みを撫でながらこう付け加える。
「こう言うのもなんだが、前国王様に戦闘力は皆無だった。それもその辺の農民にすら負けるほどに」
「なるほど」
確かに、言われてみればそうだ。
「ならもうとっくにその偽コリンズは逃げ出してるだろうな」
「だろうな」
他人に成り済ませられる奴なら、追いかけるのすら困難だ。
「わからないのは目的だ。国王暗殺を企てるマードックへ肩入れしながらすでに国王を殺していたとなると、行動が矛盾している」
「いや、反乱で王国の戦力は激減し国内は混乱した。反乱の本当の目的が我が国を弱らせることだとしたら?」
マシューの言う通りかもしれない。核心を突いたような気がした。
「マードックはそのために利用されただけ。それなら納得できる」
「全てはこの戦争のためか…………」
「奴らはマードックが反乱で勝とうが負けようがどちらでもよかったんだろう。してやられたな」
話がまとまり、皆が苦い顔をしながらも一度ふうっと肩を落ち着けた。
「つまり、とにかく問題は戦争だな。我々はこの疲弊した王国を帝国の侵略から防がなければならない。俺らが集められたのはそれもあるんだろう?」
マシューがギルマスを問いただす。
「ああ。もちろんそれがメインだ。それで、戦争についてだが、実はもう1人呼んである」
ギルマスが会議室の扉に向かって「入れ」と言うと、ドカンと乱暴にドアが開いた。
「ちっ、めんどくせぇ……」
ポリポリとダルそうに首をかきながら入ってきたのは、如何にも不良というような風貌の20歳くらいの男だ。短い金髪のサイドを刈り上げ、左こめかみには交差する2本の剃り込みが入っている。身長は190センチほど。細身でありながらしっかりと筋肉がついている。そして、首もとまで見えている刺青。恐らく全身に入っているだろう。
「ガラわるっ…………」
それが俺の第一印象だ。
「こいつはレオンの息子。スカーフィールド・サラザールだ」
れ、れれれれレオンの息子!?
ギルマスに紹介されるなり、ギルマスの隣の席へドカッと座ると、机の上に足を上げた。
「こいつにはベニスの町を任せていたが、大方片付いたので呼び戻した」
ギルマスは親指を立ててスカーフィールドを指しながら話した。
ベニスの町を? そういやそんな話を前に聞いたな。
そしてギルマスは再び改まって話し始めた。
「君らに……来てもらったのは王国軍の指揮官の役についてほしいからだ。特にユウを除いたSSランク『ダリル騎士団長』、『マシュー』、『ブレイトン』、『スカーフィールド』の4人には各自大将となり、軍を率いてもらいたい」
ん? なんだ、俺は除かれるのか………良かった。
正直ホッとした。そういうのは苦手だ。
「おいおい、冒険者を戦争に導入するのかよ!」
スカーフィールドが机を拳で叩いて早速キレた。円卓が木目に沿って紙のようにビリッと裂けるが、それにビクつくような奴はここにはいない。
割れた机は床に寝たまま、スカーフィールドの問いにギルマスが答える。
「そうだ。王国は先日の反乱で騎士団の半数を失い、貴族側も戦力を低下させることとなった」
「そりゃ、騎士団が雑魚の集まりだったからじゃねぇのかよ」
空気が凍る。
こいつは言ってはならないことを言った。
スカーフィールドは反省する気もなく、煽るように騎士団長に目線を送った。騎士団長は反論せずに腕を組んで目をつむっている。痛いところだが、ボロボロに負けてしまったのは事実だ。
聞いてて気が気じゃないんだが…………。
騎士団長がその言葉を受け流してくれたおかげで話が進みそうだ。ピリピリとした空気を早く変えてほしい。だが、
「黙れスカーフィールド。あの場にいなかったお前が言えることじゃない」
マシューが立ち上がり、言ってしまった。
ああああああああ! この脳筋んんんん!
「あ? 偽善者がなんか言ったか?」
スカーフィールドも立ち上がると、おでこをグリグリとくっつけて超至近距離でメンチを切り合う2人。
「偽善者だと……!?」
民のためのクランを作ったマシューとしては許せないひと言だ。
「お前ら落ち着け。……………………な?」
笑顔のギルマスの放った殺気にゾッとした。
まるで全身の神経をブチブチと芋づる式に引きずり出され、木の板に痛覚神経を釘で打ち付けられる。ショック死レベルの想像を絶する痛みを、ただ待つだけ。
そんな、絶対に逃れられない絶望的な結果を享受するだけの立場に陥ったように感じた。目線すら動かせば死んでしまうような感覚に襲われる。
恐らくはこの場にいる全員が。
「滝のような汗」というが、まさに身体の水分が全て出るかのような冷や汗。止まらぬ震え。ただの殺気が精神攻撃のような威力を持っている。
その殺気で、王都中の鳥が異変を感じて一斉にバタバタと逃げるように飛び立ち、地下道のげっ歯類などは巣に引きこもった。直接向けられたわけではないのにギルド内の冒険者たちは一瞬にして話すのを止め、息をひそめた。ギルド近くを歩く、動物的な感覚に疎いはずの人間たちですら原因不明の寒気を感じていた。
「「「「「…………っ!」」」」」
目をつぶって腕を組んだまま座る騎士団長は身動きせずにゴクリと唾を飲み込む。学園長も平静を装っているが、背中が汗でびっしょりになっている。ギルマスの秘書はいつの間にか床に崩れていた。
直接その殺気を受けたスカーフィールドとマシューの2人は言わずもがな。肺に残った僅かな空気を絞り出すように声を出す。
「……………………わ、悪かった」
「…………す、まん」
掠れた声でそれだけ言うと、さっきの怒りはどこへ行ったのか、よたよたと席に戻ると、まるで膝が砕けたかのようにガクンと椅子に座った。倒れなかったのは2人の意地だろう。まさに大人と赤ん坊のような実力差。
そしてギルマスは何事もなかったかのように続けて話す。
「いいか。これは新国王オーウェン様からの願いだ」
オ、オーウェン?
その名を聞いて頭が追い付いてきた。
そうか、あの生徒会長、いや国王は早速動き始めたのか。
国王の名が出て、別の意味でピリリと締まりが出た。皆が背筋を伸ばして座り直した。
「お、俺は問題ない。むしろ俺たちのクランは民衆を護るためにある。是非とも協力させてもらう」
「当然、だ」
マシューと騎士団長はまだ先程の恐怖が抜けぬまま、弱々しく快諾した。
まぁ、軍の上官とかになるのは面倒だが、俺もこの国には世話になってるしな。
【ベル】まさか今さら戦争があるなら他国に逃げるとか言い出さないわよね?
当たり前だろ。ブラウンを救うためだ。もちろん俺も参加する。
【賢者】はい。偽コリンズや『混沌の理』に繋がる手がかりを得るためには、戦争への参加が必要だと思われます。
ああ。
「俺も出るよ」
俺がそう言うと、ギルマスは満足そうに頷いた。
「感謝する。ユウお前は今回の功績もあって、Cランクから一気にSランク冒険者に格上げさせてもらった。仲間たちは全員Aランクだ。特例だぞ?」
「え、本当か?」
予想外の吉報で顔がにやけた。
「ああ」
ギルマスが軽く笑った。
よしっこれで念願のSランク。馬鹿にされることもなくなる!
「その代わりお前には大将の1つ下、他のSランクの者と共に将軍の役職に就いてもらうがな」
ギルマスがボソッと付け加えた。
「え? おいそれってどういう…………」
俺が聞く前にギルマスが話を被せてきた。
「ああそれでユウがガードナーを殺したおかげでこの国のSSSランクがいなくなった」
いや、それ俺のせいか?
俺の抗議のアイコンタクトを無視し、ギルマスは続けた。
「というわけで、俺も冒険者として復帰する」
ギルマスがやれやれとさらっと言った。
「え?」
「…………まじ?」
「ん?」
「はぁ!?」
「なんだと!?」
((((お前が出るなら、もう俺ら必要ないんじゃ?))))
そう全員が心の中で思った。
まじか…………ギルマスはそれだけ無敵伝説が多い怪物。先程の殺気は俺らへ上下関係を教えるためもあったのかもしれないが、効果は抜群だ。誰もギルマスに逆らおうとは思わない。おそらくここにいる5人全員でかかってもこの人には勝てない。というか、勝てる人物が俺の想像力では浮かばない。
「本来なら騎士団長のダリルがやるべきだろうが、現在騎士団は半壊状態。そこで国王直々に俺に総大将を頼まれた」
「異論はない」
騎士団長は静かに答えた。
異論など、あるわけがない。
「いいか?」
ギルマスは机の上で両手を組んで、身を乗り出し力強く話す。緩んだ雰囲気を改めてピシッと締める。
「帝国も冒険者を大量に投入してくる。相手も十分怪物揃いだ。少しでも有能な奴がほしい」
ギルマスがそう言いながら、まだ参加の有無を答えていなかった学園長へ目線を送った。
「はぁ、お前が復帰するなら俺がしないわけにはいかんな」
ため息をつきながら学園長は言うと、さらに続けた。
「ああ、ついでに1つ、この場で伝えたいことがある」
学園長はそう言って全員の注意を引いた。
「俺の予知では、ここ王都があるレムリア山が吹き飛んでいる光景が見えた。反乱によるものではなかったということは、この戦争が原因だとしか考えられん。帝国の奴らを王都に近付けさせてはならん。でなければあの光景は現実のものとなる」
学園長は睨みを効かせた。
「「「レムリア山が…………?」」」
初耳だった人たちが驚きの反応を見せた。そしてギルマスが話す。
「このジジイの予知はよく当たる。無視できん精度だ。なんとしてもそれだけは阻止しなければならん」
ギルマスが苦い顔で言った。
よく当たるって…………どれくらい?
【賢者】確認できた記録によると、学園長ブレイトン・スウェイツの予知の的中率は100%です。外れたことがありません。
100%って、冗談だろ?
「不幸中の幸いというのか、その手段についてはある程度予想できる。帝国の『人間爆弾』だ。おい資料を」
ギルマスが秘書に合図して、紙の資料を全員に配らせる。そして、全員が資料に目を通してから話し始めた。
「見ての通り、それはワーグナーで実際に使われた。Bランク冒険者3人の魔力で町が吹き飛ぶ威力を出せる自爆兵器だ」
そこには俺が爆発を抑えたと記載がある。
「ユウって言うと、お前が被害を抑えたのか」
スカーフィールドが資料をめくりながら俺を見る。
「そうだ」
返事をすると皆が俺に注目した。そして続けて話す。
「爆弾になったのがSランクやもっと上の冒険者だったなら、確かにこのレムリア山だって吹き飛ぶだろう」
俺が当初より懸念してきたことを伝えた。
「厄介だな。王都にその自爆兵を入れた時点で敗北が確定する」
「まぁそう悲観することもない。そんなもの爆発させれば味方も巻き込むことになるから戦場で使われることはないだろう」
「なるほどな。なら、帝国兵を王都に入れさえしなければいいのか」
「ああ」
ある程度話がまとまり、少し呼吸の間が空いたところでマシューが問う。
「おい、お前だけ返事がまだだスカーフィールド。引き受けるのか? 引き受けないのか?」
「嫌なこった。めんどくせぇ…………」
スカーフィールドは眉間にシワを寄せながら自分のひざに頬杖をついていた。
こいつ、まだごねるのか……。ギルマスの前で度胸あんな。
その発言にマシューと騎士団長からも敵意が向けられる。すぐさまその怪訝な雰囲気を察したギルマスが遮るように話した。
「敵将にはあのアイゼンも出る。お前は幾度となく殺し合った仲だろう?」
スカーフィールドはピクッと片眉を持ち上げて反応する。
因縁の相手なのか。スカーフィールドはイライラしたようにちっと舌打ちした。
「わかったよ。やってやる。その代わり俺があいつと当たるよう調整しろよ」
「了解だ」
なんだかよくわからんが、とりあえずこれで全員参加の確認がとれた。
「将となったからには万の兵を率いてもらうことになる。心しておけ。今回は以上で解散だ」
ギルマスの言葉で今日の会議はお開きとなった。
まとまって良かったが、結局俺は将軍になるらしい。
ただ、自分で言うのもなんだが、SSSランクのガードナーを倒したのに大将をやらなくてよかったのにはホッとした。
【ベル】これは戦争よ。大将の知名度は味方の士気にも関わってくる。まだ生まれたばかりで知名度の低いルーキーについて行こうなんて兵がそうそういるわけないでしょ。
言い方ひどくない…………?
ベルと話しながら俺も帰ろうと席を立つと、ちょいちょいと手招きされ、ギルマスに呼び止められた。
「ユウ、ベニスの状況について伝えておきたい」
「ベニスか。あれからどうなったんだ?」
「あの町はスカーフィールドが完全に封じ込めてくれた。簡単に言えば、ローグが決して越えることのできない壁をスカーフィールドの力で建設した」
「壁を? なるほど。町を囲んだわけだ」
「そうだ。奴らの進化速度からしても戦争が終わるまではもつだろう」
土魔法か、ユニークスキルを使ったか。おそらく後者。しかし進化したローグたちを封じ込めるとは。心配だったスカーフィールドの実力は確かなようだ。不安は残るが、ひとまずローグの心配がいらないのは良いことだ。
そして、ギルマスに意見を求めた。
この人なら何か掴んでるかもしれない。そう期待して。
「実際、どうなんだ? ローグにされた人たちはもとに戻るのか?」
珍しくギルマスの表情が曇る。
「…………それは、わからない。黒魔力を作り出した帝国に聞かないことにはな」
ギルマスはそう締めくくった。
ギルドを出て、アリスたちの待つ裏手の宿へと歩きながら1人で考えをまとめる。戦争よりも先にまず浮かんだのはローグにされたブラウンのことだ。今はまだ騎士団が保護しているようだ。
あいつは俺の友達だった。
友達か…………。
また、救えなかったな…………。
エル、デリック、ジャン…………俺はまた繰り返すのか?
いや…………違う! まだわからない! ブラウンをローグに変えた黒魔力のことが分かれば、なんとかなるかもしれない。
何としても手掛かりを掴み、ブラウンを必ず人間に戻してやる……っ!! いつかの、あの楽しかった時間を取り戻す!
だからまずは、
帝国を…………ぶっ潰す!!!!
読んでいただき、有難うございました。
これから徐々に物語は盛り上がっていきます。
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