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【100万PV突破!!】重力魔術士の異世界事変  作者: かじ
第4章 王都
102/159

第102話 犯人

こんにちは。

ブックマークや評価いただいた方、有難うございます。とても励みになります。

第102話です。宜しくお願いします。


 翌朝、寮の俺の部屋にギルドから長くて大きな包みが届けられた。


「おいユウなんか届いたぞ」


 玄関で包みを受け取ったオズが持って入ってきた。


「何だそれ」


「さぁ、ギルドからだってよ」


 お、ギルマスに頼んでた武器か。早かったな。


 ワクワクした気持ちでオズとガサガサと包みを剥がして中を見てみると、出てきたのは大きな鎌だった。いびつな形をした濃紫色の刃に、刃渡りは1メートル以上、柄の長さも俺の身長くらいはある。そして、刃と柄の接合部分には黒い宝石がついている。


 なんだかヤバそうな雰囲気がする。


-ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

冥府の大鎌

ランク:SS

属性:なし

特殊:斬りつけた相手を発狂させ、精神を破壊。最悪廃人にする。


〈冥府の死神が使用していたとされる精神を斬る大鎌〉

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 メモも一緒に入っていた。


『親愛なるユウへ

 この武器はその凶悪な特性ゆえ、ギルドですらもて余していた伝説級の武器だ。お前なら使いこなせると信じている』


 うげ…………なんてヤバいもの渡すんだあの人!


「へぇ、すげぇいい大鎌だな」


 オズが色んな角度から鈍色に光る大鎌を見てうらやましそうに言う。


「お、おい、危ねぇから絶対に刃は触るなよ?」


 触る手にも緊張が走る。


「ああ」


 まぁ、百歩譲って相手を無力化するのにはちょうど良いかもしれない。自分を斬ってしまわないか恐いが。


【賢者】そもそもユウ様は精神攻撃に耐性がありますので、影響はないかと思われます。


 あ…………。


 とりあえず怪我をしないうちに空間魔法の武器庫へしまっておく。


 まったく、馬鹿ガキギルドマスターめ。これ、ギルドで扱いきれない武器を処理したかっただけだろ。


 そう思いながらもオズと一緒に寮を出て、教室へと向かう。そして中庭を歩いていると、前から2人の生徒が歩いてくるのが見えた。片方はフードつきのローブを頭まで被っており顔が見えない。


「ん…………?」


 ローブの男も、下に制服を着ているようで学園の生徒には間違いない。俺が変に思ったのはそいつの足取りがおぼつかないからだ。そしてそいつに付き添うように歩いているのはチャドだった。


 俺が見ているのに気付くと、ローブを被った奴もビクリと反応した。


「ふーっ! ふーっ!」


 目は見えなかったが、必死に自分の人差し指を噛み、まるで何かの衝動を抑えているかのようだった。


 なんだあいつ…………?


「こっちを見るな!」


 チャドは噛みつくようにそう俺に向かって叫ぶと、そのままローブの奴を連れて急ぎ足でどこかへと消えていった。


「今の、チャドとグレンか?」


 オズが不思議そうにそう言う。グレンはチャドといつも一緒にいるチャドの弟だ。


「ん、ローブの奴の顔が見えたのか?」


「いや、3位の腕章が見えた。ローブを被ってたのはグレンで間違いねぇよ」


「あ、なるほど」


 なんだったんだ?



◆◆



 教室の自分の席についた。俺とオズがバタバタしていたからか、すでに他の皆は来ていたみたいだ。


「おはよユウ。今日は遅かったね」


「ああ、ちょっと色々あってな」


 そう言いながら隣を見ると、フリーがさっそく机に突っ伏して寝ていた。


「おい、フリー! そろそろ先生来るぞ。起きろよ」


 揺さぶるも聞くはずもなく、すやすやと寝ている。


「昨日は夜遅かったからね」


 そう言うブラウンも目蓋が重そうだ。


「ねぇ、ルーナは大丈夫かな?」


 ブラウンが昨日のことを思い出したのだろう。ルーナの心配をしてる。


「ああ、ギルマスが責任持って保護してくれてる。ギルマスのいるギルド本部なら王国で1番安全だろうよ」


「良かったぁ」


 ブラウンは心底嬉しそうだ。


 俺はブラウンのこういうところがけっこう好きなんだよな。


「ブラウンお前、どうするんだ?」


 オズが眠そうにあくびしながら聞いた。どうするってのは父親のことだろう。


「うん、休みになったら家に戻って父さんと話してみるよ」


「大丈夫か?」


 珍しくオズがブラウンを心配している。


「うん、大丈夫」


 ブラウンはぎゅっと拳を握りしめた。


 いや、待てよ? よく考えたら、マードックは刺客を放ってまでブラウンを殺そうとしてたんだろ? 明らかに足がつきやすい、自分の屋敷でなんて殺したりはしないだろうが…………さすがに心配だ。


「ブラウン、家に帰る時は俺も連れていってくれないか?」


「ユウも?」


 驚いた様子のブラウン。


「ああ、学園の友人としてなら一緒に行けるだろう?」


「うん! そういうことならいいよ」


 学園の友人と聞いてブラウンは一気に嬉しそうな顔をした。そして手を口元に当てると、俺の耳に小声で言う。


「でもどうして? ユウだって父さんと直接顔を合わせるのはリスクが高いんじゃ…………」


「いいから! 絶対に1人で行くんじゃねぇぞ!」


「う、うん。わかったよ」


 俺が強く言うと、ブラウンは戸惑った様子で頷いた。


 ガララ…………!


 そこまで話していると、勢いよく教室扉が開いた。そしてクロム先生が入ってくると、教壇に立って言った。



「前にも言ったが、1週間後に定期試験がある。各自準備を怠らないように。以上!」



 そしてそのまま仕事をやった顔で教室を出て行こうとする。


「いやいやいや…………初耳ですが!?」


 思わず突っ込んだ。


「あ? 昨日言ったろ?」


 足を止めると、ポリポリと頬をかきながらめんどくさそうに言うクロム先生。 


「言ってねぇし、昨日は休日だろ!」


 俺の席の前まで来て、俺を見下ろす先生。


「なんだ文句あんのかユウ」


「あるに決まってるでしょ」


 俺が言うと嫌そうな顔をした後、わざとらしく咳払いをして言った。


「あ、あー、なんだか喉の調子が悪いなぁ。こないだ誰かさんが仕掛けた辛い煙草吸ったせいかもしれん」


「生徒を脅すな!」


「はぁ、しかたねぇな。こいつに免じて仕事してやる。いいかお前ら、感謝してよく聞けよ」


 定期試験というのは、今回筆記試験はなく、すべて実技で行うそうだ。筆記試験はまたのちほど別日に分けて行われるとのこと。


〈試験科目〉

・模擬戦闘

・魔法による標的破壊

・その他


 その他は戦闘向きではない生徒に向けた試験のようだ。ここまでをクロム先生がダルそうな顔で黒板に書きながら説明していく。皆、初めての定期試験で真剣に話を聞いている。


「お前らなら学年トップ以外はとらねぇだろうから、心配はしてねぇ」


「ええええ?」


 いきなりのプレッシャーにブラウンが焦って声を上げる。他のメンバーは自信ありげだ。


 実技だけなら俺だってチャンスがある。


「基本、入学試験と同じだ。あれから半年、どれだけ伸びたか判断するのが目的だからな」


 まぁ授業は戦闘中心だったし、特に魔力操作を覚えた俺たちは伸びてるだろうな。


「ああ、あと言っとくが、ユウとフリー」


 名指しで呼ばれたので何事かと構える。


「なんです?」


 そう聞き返しながら隣でうつ伏せに寝ているフリーを起こそうと小声で話しかけながら揺する。


「フリー、フリー起きろ」


 クロム先生の右手が霞むような速度で動くと、チョークが宙を駆け、寝ていたフリーのデコに直撃した。



 パァンッ…………!!



 あまりの威力にチョークが弾け、粉末と化した。


「あいたぁ」


 衝撃で仰け反りながらもフリーは痛そうにデコをさすさすと撫でる。


「なんで今のが痛いですむのよ…………」


 マリジアがひきつった顔でフリーを見ていた。


「よく聞け。入学試験の時みたいに騎士団長はいねぇ。これは試験だ。間違っても試験官に勝つんじゃねぇぞ?」


「もし勝ってしまった場合は?」


 フリーが手を上げて質問した。


「その時は俺が代わりに相手をしてや…………」


「「気を付けます」」


 フリーとハモった。


 すると、ガストンとサイファーが偉そうに言った。


「そんなもの誰が相手であろうと同じこと。なぁ、ガストン殿」


「そうですな」


 初日にクロム先生にのされたくせに…………。


 あのコンビは相変わらずのようで、ふんぞり返って余裕の表情だ。


「というわけだ。ついでに言うと今は上級生たちが試験中だ。死んでも邪魔すんじゃねぇぞ? じゃ後は宜しく。俺は寝てくる」


 ふぅん、上級生は先に試験を受けてるのか。


 そう言うとそのまま本当に教室を出ていった。


「なぁ、あの先生どんどん授業雑になってね?」


「そう?」


 ブラウンが楽しそうに言った。



◆◆



 そして昼過ぎ、突然事件は起きた。


「なんだか騒がしいわね」


 食堂でマリジアたちを含んだ6人でテーブルを囲みながら昼飯を食べていると、急に生徒たちが慌ただしくなり、教員たちがバタバタと廊下を走っていくのが見えた。


「なんだ?」


 野次馬に向かう生徒たちの集団の中に魔術士専攻のコリィを見つけたので、とっさに魔力操作で襟首を掴んで捕まえる。


「ぐぇ!」


 なんだか喉が詰まって苦しそうだ。そしてそのまま俺らの席まで引っ張って連れてきた。

 

「けほっ、てめぇな」


「すまんすまん。コリィ、何があったんだ?」


「わからねぇが上級生が1人おかしくなってどっかに消えたらしい」



「おかしくなって消えた?」



 俺の声に皆も食事の手を止めてコリィに注目する。


「噂じゃ、そいつの身体が激しく発火して、そのまま壁を突き破って学園外に逃げ出したって話だ。ボオオオオッてな!」


 コリィが大げさに身体が燃えるジェスチャーをする。


「なんだそりゃ?」


 発火ねぇ…………。


「俺だって知らねぇよ! ここだけの話、例の放火魔じゃねぇかって…………!」


 放火魔か…………百聞は一見に如かずだ。



◆◆



「なんだこりゃ?」


 現場は第2闘技場だった。事件が起きたのは上級生の魔法の試験が行われている最中だったらしい。


 生徒たちが事件現場に集まっている。

 そこは、闘技場の分厚い壁が熱で溶けたように変形し、丸く溶解して人1人が通れるくらいの穴が空いていた。そしてそのドロドロに溶解した地面は真っ直ぐ学園の外へと1本の河川のように続いており、ずっと先には学園の外の大通りを走る馬車が見える。


「熱っ」


 コリィが溶けた壁を触ろうとして手を引っ込めた。まだ溶解した箇所からは白い煙が上がっている。


「危険なので近付かないで!」


 教師たちが生徒の立ち入りを禁止を呼び掛けるも、百人以上の見物人が集まってきていた。


「おいおい、どうやったらこうなんだよ!」


 コリィがその溶けた壁を眺めながら騒ぐ。


「戦闘用に丈夫に作られた闘技場の壁を溶かせるなんて…………こんなこと出来る生徒いるの?」


 そう言いながらマリジアはちらりと俺を見た。


「俺じゃねぇよ!?」


「冗談よ」


 マリジアは笑いながら肩をすくめて言った。


「ユウなら出来るでしょうけど、やらないわよね」


 そういう認識なのね…………。


「これ、誰がいなくなったか、もうわかってんじゃねぇのか?」


 これだけ目撃者がいれば難しくないはずだ。


「それが…………グレンらしいねぇ」


 どこかから聞いてきたフリーがひょっこりと現れて言った。


「あいつか」


「目撃者によると、魔法を使おうとしたところ叫び声をあげて苦しみ始めると、突然身体に火が着いたそうだよ」


「苦しみ始めたねぇ…………」


 グレンは今朝すれ違った時、様子がおかしかったよな…………?


【賢者】グレンとチャドはマードックの実験の対象にもなっておりました。黒魔力が関係している可能性があります。


 ああ、だとしたら危険だ。



『緊急連絡。緊急連絡。授業を中止し、今すぐに全校生徒、教員は講堂へ集合してください』



 アナウンスが学園中に響き渡った。



◆◆



 ざわめきの治まることのない生徒たちを目の前に、壇上の学園長は注意することなく言葉を発した。


「ゴッサム殺害の容疑者として、チャド・オルゲン、グレン・オルゲンを王都で指名手配した。皆、ご苦労だった」


 学園長は、ただそれだけを言うと憮然とした態度で壇上を降りようとする。


「え、それで終わり…………?」


 思わず出た俺の呟きが学園長の耳に届いたのか、ピクリと動きが止まった。だが学園長は俺を見ることなくそのまま舞台を降りた。


 説明は他にないのか? それともおおやけにできない内容ということか?


 学園長が舞台を下りて一気に騒がしくなる講堂内。


「犯人探しをやらせといて、説明はあれだけか?」


「俺たち生徒は当事者でもあるんだぞ?」


 学園側に対し、不満が爆発する生徒たち。


 まぁ、学園長に殺されないだけマシか。


 また、チャドとグレンは立場を利用して学園で一番威張り散らし、犯人を他の奴らに押し付けていた奴らだ。その事実に怒り心頭な生徒もいる。


「あいつら許せねぇ…………!」


「ゴッサムはあんな奴らに殺されたのか!」


 そして、困惑しているのは生徒だけではなかった。教員たちも何も知らされていないのか驚きを隠せないでいる。


「説明、少な過ぎるよねぇ」


 フリーも思ったようだ。


「それに、学園長はやけに機嫌が悪そうだったな」


「そうだねぇ。犯人が見つかったのは良いことじゃないの?」


 フリーも首をかしげる。


「わからん。気になることはいくつかあるが、とりあえず指名手配ともなれば、あの2人が捕まるのも時間の問題だろうな」


「どうだろうねぇ。王都はとんでもなく広いから」


 フリーはそう言って眉をひそめた。


 でもこれでマリジアとオズが犯人扱いを受けなくて済むな…………。


 そう思いながらマリジアに目を向けると、


「あいつら、自分たちが犯人なのに私に押し付けようとしていたなんて、どんな神経してるのよ! 許せない…………!」


 マリジアがメラメラとその赤髪が逆立ちそうなほど怒っていた。過去にマリジアを責めた生徒たちはそれを見て後ずさりしている。


「ま、まぁまぁ」


 俺たちが総出でなだめようとするが。


「私も…………私も、一言文句を言わなきゃ気が済まない」


 そう冷たく言ったのはシャロンだ。いつも通りだが、目の奥に怒りの炎が灯っている。親友が犯人扱いされていたことに静かに腹をたてていたようだ。


 そういや、チャドたちに濡れ衣を着せられたのはオズもだったが…………。


 そう思い隣を見ると、あくびをしているオズがいた。


「お前は気にしないのな」


「あんなの所詮小物の戯れ言だろ」


 オズは鼻で笑いながら言った。


 まぁお前は前から気にも止めてなかったよな。マリジアを下げるつもりじゃないが。


「ははは、ほんとにお前は大物だよな」


「ユウ、捜しに行こうよ!」


 いつもはマリジアのストッパーだったシャロンが力を込めて言う。


「ちょ、ちょっと待ってくれ!」


 今の2人はブレーキの壊れた車だ。


「何よ!」


 止めに入ると、マリジアが怒りのままに噛みついてきた。


「すまん。気持ちはわかるがこらえてくれ」


 2人に頭を下げた。


「どうして…………!!」


 シャロンも珍しく俺に反論する


「闘技場をあんなに破壊できる奴だ。普通じゃない。追いかけないでくれ。2人が心配なんだ」


「うっ…………」


 俺がそう言うとマリジアとシャロンはとりあえずは大人しく黙った。


 ま、代わりと言っちゃなんだが俺が行ってやろう。聞きたいこともあるしな。それに…………。


 ちらりと目線を横に向けると、



 ーーーー隣ではガストンとサイファーが青ざめていた。



◆◆



 全校集会が終わり、ガストンの肩に手を置いて声をかける。


「おい、ガストン。ちょっと聞きたいことがあるんだが…………」

 

「な、なんですかな?」


 さっきよりマシだが、まだ顔色が悪い。


「お前ら、チャドとグレ…………」

 

「ひぃっ、や、止めろ! 私は何も知らん!」


 2人の名前を聞くなり、ガストンは無理やり俺の手を振り払うと怯えたように言った。


「お前ら、やっぱり何か知ってやが…………」


「行きましょうガストン殿!」


 サイファーがガストンの手を引いて走り出した。


「おい!」


 必死に逃げる2人の姿は人混みのなかに消えていた。


 どこ行ったんだ? 賢者さん。


【賢者】2人は正門の方へと向かったようです。


 学園からも出るつもりか…………やっぱり何かあるな。


 そして2人を追おうとすると、遠目にクロム先生を見かけた。普段ならどうでもいいことだったが、いつもみたいにやる気のない顔じゃない、少し真剣な顔をしていたのが気になった。


 なんだ…………? どっちを優先すべきだ?


「ブラウン、先に教室に戻っててくれ!」


「どうしたの?」


「いいから」


「わかったよ」


 先に事が起こりそうなクロム先生の後をつけてみる。すると、つかつかと早足で学園長室に入っていった。

 俺は、近くのトイレの個室に入り、悪いと思いながらも空間把握で2人の会話を盗み聞きをする。


「おいブレイトン、なんださっきの説明は!」


 クロム先生が学園長の机を大きい音が鳴るほど強く叩き、問い詰める。


 先生が本気で怒ってる…………?


 あの先生があれほどストレートに感情を表に出していることに驚いた。


 それに、ブレイトン? あ、そうか。クロム先生と学園長は元々同じ冒険者パーティにいたんだったな。


「何がだ」


 椅子に座ったまま憮然とした態度の学園長。


「犯人捜しで生徒たちを巻き込んだんだ。お前には生徒たちにきちんと説明する義務がある!」


「普段適当なくせに、そういうところは相変わらずだな」


「あ?」


 SSランク以上の実力者の2人がにらみ合い、ピキッとガラスにヒビが入り、本棚が軋んだ。


 だが、学園長が肩の力を抜き、話し始めた。


「生徒に言える内容ではない」


「どういうことだ?」


「とにかく、犯人はあの2人で間違いない」


「だったら何が問題なんだ? お前がそんな態度をとる時は何かある」


 学園長は上を向いて息を吐き出した。



「俺は、犯人が見つかったことで王都が滅ぶ未来が、変わると思った」



 その言葉にクロム先生がピクリと反応した。そして珍しく真面目な表情で聞く。


「…………つまり、未来は変わってないんだな?」


「残念ながらな」


 学園長がため息をつく。


 そうか。学園長がユニークスキルで見た未来では王都が滅んでいた。学園長は放火殺人の犯人が見つかったことで王都の未来に何らかの影響があると予想したのだろう。だが未来は変わらなかった。


【ベル】ねぇ、そもそもユウがギルドに屋敷での実験の証拠を提出した時点で未来が良い方に変わるはずじゃないの?


 あ、確かにそうだな。つまり…………マードックの反乱はまだ防げていないということか?


【ベル】多分だけどね。


【賢者】…………。


 2人の話はまだ続いていた。


「なら、どうすりゃいい?」


「とにかく、あの2人を捕まえて話を聞くべきだ。それもジャベールたちに見つかる前にな。憲兵に捕まれば貴族が介入してくるかもしれん。そうなれば厄介だ」


「そうだな。ギルドに憲兵より先に2人を捕まえるよう手を回してもらおう」


「ああ。あの2人が何か手掛かりを握っている」



 どうやらガストン、サイファー、チャド、グレンを急いで見つけ出す必要があるようだ。



読んでいただき、有難うございました。

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