もふもふ×もふもふ=2もふもふ。あわせてもふもふ無限大
多分、発端は我が家のドアの前に置かれたこれからだったのだと思う。
『おすそわけです。すきにもふってください』
そうやって小さな子が書いたような文字が添えられて、我が家のドアの前に籠が置いてあった。果物が入ってる様な、あんなやつ。中には茶色い毛玉が一つ。
「なにこれ」
持ち上げると目があった。小さなソフトボール位のサイズのキツネだった。
「こぁぁん」
思わず撫でてみると極上の手触り。気付くと夕方になっていた。
翌日、会社に向かう為に駅へ。手はもふもふから離れない。道行く人々も興味津々だ。満員電車で押し合い圧し合い。そんな中、私のもふもふに触った人の手の中に、キツネが現れた。増えた。それに触った人のところにもキツネ、狐、きつね。
あっという間に拡がったそれは、パンデミックならぬ、もふでみっく。車内は平和になった。
「マジもふい〜」
「うちのもふが至高なんですよ!」
「いやうちのも」
喧嘩になりそうになると、キツネが鳴いて止める。平穏はもふもふと共にあり。
会社でお説教が長い課長にもふもふを渡せば、もはやそれに夢中。営業に来た人ももふもふのとりこ。すごい速さで拡がるもふもふ。
帰宅してテレビをつけたら、放送局までもふもふ。あっという間過ぎた。
一週間もしないで世界に拡がったもふもふは戦争も無くしてしまった。でも新たな火種がここに。
「にゃにゃんがにゃん(我々はもふもふの正義の元に、キツネに戦いを挑むものなり)」
「わふーん(ご主人マジブラッシング下手でさ)」
「キュイキュイ(ジャーキー美味ぇ)」
もふもふ御三家を名乗る、犬・猫・フェネックだった。
宣戦布告を受けて、何故かハワイ島で第一次もふもふ大戦が勃発。集まったキツネ対他の動物たちは、あわや戦闘になる前に、間に人間の盾(飼い主)が入り、和解が成立。ここにもふもふ条約が締結された。
「なんか……すんごいことに……」
「こぁあ」
私はコタツに入りながらニュースを見て、手元はもふもふ。世界は随分とのんびりになった。争いは無くなったし、貧富の差やらなんやらがあらたか解決してしまった。もふもふに占拠された世界はすこぶる平和だった。
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宇宙にて、通りすがりの宇宙人。
「まじかー地球侵略しようとしたら、既に侵略済みやないのー」
「帰ろうぜー」
地球はこっそり救われていた。
おしまい
衝動的に、もふもふしたくなったんです。