表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/23

少しからかいたくなった

「やっぱりタクト君は良い人ですね! でも、次に如何わしい事したら許しませんよ?」


 俺が多めに持って来ていて食料をすべて平らげたミーアは満足気に微笑みながら言ってくる。


 俺から奪った乾パンと干し肉を食べていたミーアだが、食べ終わるとジト目で俺を見て来たので、俺はさらに追加で乾パンと干し肉を差し出した。

 すると、素早く俺の手から奪って食べ、終わると俺をまたジト目で見てくる。


 それをしばらく繰り返したところで、満足して、少しは感謝しているのか、ミーアは俺に対して少し警戒を解いてくれた。


 でも、いろいろ用心して、多めに持って来た食料をすべて平らげるとは、その引き締まっているウエストのどこに入るのか……


「タクト君? 何ですか?」


「い、いや、何でもない!!」


 俺はミーアのお腹にいっていた視線を素早く逸らす。


「そうですか、でも、タクト君は不思議な魔法を使いますね?」


 良かった、どうやら俺が見ていた事は今回はミーアにはバレてなかったようだ。

 そして、俺の修復魔法を嘘扱いしていない。

 それなら、最初から信じてくれたらいいのに。


「あぁ、俺もびっくりしたけど、成人になった時に授かったんだ」


「へぇ〜そうなんですか、人族は不思議ですね」


 この世界にはミーアのような獣人やエルフみたいな種族がいるみたいだけど、そのような人達は神から能力を授からない。

 その変わりに、生まれた時から種族特有の能力を授かるらしい。


 なんでそうなのかは分からないけど、諸説によると人族は他の種族に比べて、知恵はあるけど、能力は低くて生存率が悪く、それに憐れみを感じた神が能力を授けてくれると聞いた事がある。


「仕方ないです、タクト君は少しエッチなところありますけど、食べ物の恩は返さないといけません。だから、王都まで私が護衛してあげましょう!」


 そう言って、ミーアは胸を張る。

 すると、どうしても俺の視線は自然にそこに誘導される訳で……


「……タクト君?」


「あぁ、ゴメン。 ミーアが可愛くて美人だなって思ってつい」


 さっきまではやられっぱなしだった俺だけど、やられっぱなしでいられるかって思ったのと、本当にミーアが可愛いなって思った半分本音を冗談っぽく口にした。

 すると、ミーアは予想外の半分だったのか、一瞬キョトンとしたかと思うと、次の瞬間には顔を赤くして、「も、もう嘘ばっかり言わないでください! 行きますよ!」と言って歩き出した。


 俺はそれを見て、やっぱり可愛いなと思いつつ、からかいがあるかもと思い、後に続いた。

 そして、密かにミーアと出会えて一緒に行動出来きるのを嬉しく思うのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「ほら、ミーアの言う通りしたら無事についたでしょ?」


 俺たちは山から見えた街へと着いた。

 そして、街に着くと自慢気にミーアが胸を張って言う。


「そうだな、魔物にも出会わなかったし」


 あれから魔物にも出会う事なく、順調に街に着いた。

 だから、ミーアの言う通りしたらと言うのは、少し語弊がある。


「むっ!? タクト君、それは私が何もしてないように言ってますね!?」


「そりゃそうだろ、だって魔物に出会う事もなかったんだし」


「違います! それは私が魔物を避けていたからです!」


「……どうやって?」


「えへん! よくぞ聞いてくれました! 炎狼族は嗅覚に優れているんです! だから、魔物の臭い匂いなんてすぐ分かるし、不要な戦闘は避けられるんです!」


 そう言って自慢気にミーアは言う。

 確かに獣人の中には嗅覚が優れている種族や、夜目が効く種族もいるとか聞いた事がある。

 炎狼族はその中で嗅覚が優れているのかもしれない。

 でも……。


「じゃあ、なんでミーアはゴブリン達と一緒に倒れてたんだ?」


 俺がミーアと出会ったのは、ミーアがゴブリン達との戦闘の末、倒れていたからだ。

 嗅覚が優れていたなら、戦闘も避けられるはず。


 ゴブリンってのは、素材にもならず、冒険者なら不要に戦う必要はないはずだ。


 すると、ミーアは痛いところをつかれたのか、ビクッとしてゆっくりとこっちを見る。


「なぁ、なんで何だ?」


 なんとなく予想がつきながらも、俺はミーアをからかう為、追い打ちをかける。


「うっ……そこは企業秘密です」


「そうか、炎狼族は隠し事するような種族なのか」


「炎狼族はそんな事しません!!」


「じゃあ、なんでゴブリン達と一緒に倒れていたか教えてくれよ」


「うっ……」


 俺の誘導尋問にミーアはハマり、どうしようもなくなって悩んでいる。

 そして、しばらく悩んだ挙句、口を開いた。


「……お腹が空いて油断しただけです」


「ん? 何だって?」


 ミーアは悩んだ挙句、自分の恥ずかしい失敗を隠すか、炎狼族のプライドを取るかで、炎狼族のプライドを取って自らの失敗を顔を赤くして明かした。


 その答えは俺の予想通りだったけど、その姿があまりにも可愛くていけずしたくなって、俺は聞こえなかったフリをする。


「もう! 知りません! お腹空きました! 行きますよ!!」


 そう言ってミーアは照れ隠しして歩き出す。

 それもまた可愛いと思ったが、少しからかい過ぎたかなと思い、ご飯くらい奢ってあげようと思って俺は後に続いた。


 そして、歩きながらさっきいっぱい食べてたのにどこに入るんだろうと思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ