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食べ物はすべてを解決する!?

「だから俺は助けただけだって!!」


 女の子のアッパーで吹っ飛ばされた俺だが、何とか誤解を解かないといけないと思い必死に説明している。

 だけど、獣人の女の子は両手で自分の身体を抱きながら俺の事をジト目で見て物凄く警戒している。


「……信じられません」


 しかし、女の子は信じられないの一点張りだ。

 傷が治っている事から、俺が助けたのは分かってくれているみたいだけど、その前に俺に下心があると思っているのか、意識が覚める前に何かしようとしてたんじゃないかと思われているようで、警戒したままで誤解が解けない。


「本当だって!! 本当、助けただけ!! それに破れていた服も直してあげたんだから!!」


「服……?」


 俺の言葉に女の子は服へと視線を落とす。

 そうだ、俺は傷だけじゃなくて、リペアで服まで直した親切な男なんだからな。

 これで誤解がーー。


「信じられません!! 意識を失ってる間に服を脱がせるなんて!!」


「えっ!?」


 獣人の女の子は、自分の服を見て叫ぶと、どこからか双剣を出して構えた。


「いや、俺は魔法で直しただけだって!!」


「この後に及んでそんな嘘を!! どこの世界に服を直す魔法なんてあるんですか!!」


 しまった!!

 俺の中で修復魔法は常識になってたけど、修復魔法って常識外のものだった!?


「ちょ、ちょっと話を聞いてくれ!!」


「乙女を汚した罪、あの世で懺悔して聞いてもらってください!!」


 しかし、獣人の女の子は俺の話を聞いてくれず、俺に双剣を振るってくる。

 その腕前はなかなかのものだけど、能力をリメイクした俺にとっては問題ない。


「落ち着けって!! とりあえず話を!!」


「落ち着いてますし、聞く話はありません!!」


 俺は双剣を躱しながら、何とか話を聞いてもらおうとするが、全然聞く耳を持ってくれない。


 こうなったら!!


 俺は双剣を躱しながら、自分の服の袖を破る。

 そして、大きく後方へ飛び、距離を取る。


「分かった!! 嘘じゃないって証明するから!!」


 そう言って俺は手を前に出して、女の子を制する。

 すると、女の子は怪訝そうな顔をしながらも、止まってくれた。


 よし、でもうかうかしてられない。

 すぐに無実を証明しないと!


「リペア!!」


「えっ!?」


 誤解を解く為に、リペアを唱えると、俺の服の袖は修復された。

 そして、それを見た獣人の女の子は驚愕している。


 よし、誤解を解くのはここしかない!


「ほらな! こうやって魔法で直したんだって!!」


 俺はここぞとばかりに説得する。


「……次はどんな手を使って誤魔化したんですか!? 詐欺師ですね!?」


「なんでそうなる!?」


 説得出来たかと思いきや、さらに怒って襲いかかってくる。

 俺はそれを避けて、どうして誤解を解こうかと思ったその時……


「グゥ〜」


「……えっ?」


 突如、お腹の鳴る音がして、俺と獣人の女の子の動きは止まる。

 俺はちゃんと昼ごはんも食べたし、お腹も減っていない。

 だとしたら……。


「……これ食べるか?」


 俺でないとしたら、この子しかいない。

 俺は買っておいた、保存の効く乾パンと、干し肉を獣人の子に差し出す。

 すると、獣人の子は「うぅ〜……」と顔を赤くしながら唸って、その後無言でさっと俺の手から乾パンと干し肉を奪った。


◇◆◇◆◇◆


「いや〜やっぱりお兄さんは良い人ですね! 食べ物をくれる人に悪い人はいないです!」


 あの後、俺は無言で乾パンと干し肉を食べる獣人の子に今までの事を説明した。

 最初はあまり聞いてくれなかったけど、よほどお腹が空いていたのか、食べ終わった後も物足りなさそうにしていたので、追加を出すと無言で奪って食べた。


 その間に、何度も話すと話を聞いてくれて、何とか誤解が解けた。

 

「……あぁ、とりあえず誤解が解けたみたいで何よりだ」


 でも、俺の話が通じたのか、食べ物の効果か分からないところが何とも言えないけど……。


「私は炎狼族のミーア! ありがとうございました! 君の名前は?」


 そう言って炎狼族のミーアと名乗った子は頭を下げてからニコッと笑いながら言う。

 さっきまでは可愛いけど、面倒な子だと思ったが、深くにも可愛いと思い、ドキッとしてしまった。


「……俺はタクト」


 俺は少し目線を反らしながら答える。


「タクト君ですか! 良い名前ですね! 助けてくれてありがとうございました!」


 そう言ってミーアは俺の手を取って握手して手を上下させる。

 俺は突然の事で動揺して何も言えなかった。


「そう言えばタクト君はなんでこんなところに?」


 俺ご言葉を返せないところにミーアが聞いてくる。



「あ、あぁ、冒険者になったから、王都に向かおうと思って……」


「王都!? 冒険者!? 私と一緒ですね!! 冒険者ランクは?」



 どうやら、ミーアも冒険者で王都に向かってるところみたいで、物凄く驚きながら俺の冒険者ランクを聞いてくる。


「いや、まだ冒険者にはなりたてで、Fランク……」


「Fランクですか!? じゃあミーアの方が先輩ですね!! じゃあ食べ物をくれたお礼にミーアが王都まで護衛しましょう!!」


 俺はまだ冒険者にらなりたてで、一番最初のFランクだが、どうやらミーアの方が冒険者ランクが上みたいで、胸を張って先輩面している。

 でも、俺はミーアが冒険者の先輩ってのより、その胸に目を奪われた。


「……タクト君、どこ見ているんですか?」


 気づくと、さっきとは一転、ミーアが冷たい目で俺を見ている。


「い、いや、これは不可効力で……」


「タクト君のケダモノ!! やっぱり男の人はみんな獣なんですね!?」


「ち、違うこれは自然現象だ!!」


「自然現象ってなんですか!! 自然になる訳ないでしょう!?」


 そう言ってミーアは双剣を取り出し構える。


「お、落ち着け!!」


「ケダモノの言うの事は聞きませんっ!!」


 ミーアは俺の言葉を流して襲いかかろうとした。

 その時……


「グゥー」


「「…………」」


 俺とミーアの間にまたしてもお腹の鳴る音が聞こえる。

 でも、俺はお腹が空いていない。

 って、事は……?


「……食べるか?」


 俺はミーアにもう一度乾パンと干し肉を差し出す。

 すると、ミーアは無言で俺の手から乾パンと干し肉を奪って反対を向いて食べ出した。


 俺は何も考えず、無心でその背中を見守った。


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