旅立ち
周りが静寂に包まれる。
「お前、名を何という?」
国王が物静かな声で問う。緊張で汗が止まらない。だってさ、ここで言わなきゃ恐ろしい化け物との戦いに行かされるからね。仕方ないだろ。
おっと!じっとしている場合じゃないな。
「私は照魔と申します」
「そうか、では照魔よ手の甲を見せて欲しい」
俺は素直に手の甲を見せる。案の定そこには何も変化がない。
「なんと、真であったか!!なるほど・・どうやら勇者召喚に巻き込まれたようだな」
国王が神妙な顔でそう言う。
は?勝手に巻き込むなよ!土下座して謝れよ。
俺は心の中で愚痴をもらした。今の俺には何も力がないからな。クソが、俺に力があればこの生ゴミをぐちゃぐちゃにして生きてることを後悔させたのによ。今は我慢だ。わかってる・・わかってるよぉ!
「照魔よすまなかった」
国王が頭を下げて謝った。
「いいえ、大丈夫です。その代わりに少しのお金をいただけないでしょうか?それで旅に出ます」
みんなが驚いた表情で俺を見る。
いっこくも早くここから出て、力をつけてこの世界を遊び尽くす。俺はそう考えていた。
「照魔君、それは危険だよ!」
勇気が心配そうな顔をして俺に言う。
勇気の周りの女たちも少し心配そうにしている。
キモいな、そういうのさぁ〜
「光の勇者の言う通りだ。外には危険な魔物がたくさんうろついている。国には大型の結界がはられているから安全だ。だから、旅なんてやめてこの国で商売をやればいい。しかしどうしてもと言うなら金と装備をさずけて旅をしても構わない。さぁ、どうする照魔よ?」
国王がそう言う。もちろん答えは決まっている。
「私は旅に出ます。」
「正気かい!?照魔君」
「あぁ、正気だよ。勇気君!この世界のために頑張ってくれよ。僕には力がないからさ、影ながら応援してるよ!」
「ありがとう照魔君!君のぶんも勇者の役目を果たしてみせるさ!」
自分で言ってて吐きそうになってきた。こいつ苦手だよ俺は。
「では今から出発するか?照魔よ」
「はい、よろしくお願いします」
俺は50枚の金貨を貰った。この世界では、銅貨、銀貨、金貨とお金があって金貨一つで一ヶ月は暮らしていけるらしい。大盤振る舞いである。
それと、この世界には魔物と戦う職業として討伐者と言うものがあるらしい。詳しくは討伐者ギルドできけるからそれを目指そうと思う。
そして装備は、ミスリルの剣を貰った。結構良い剣らしい。鎧はいらん!動きづらいからね。
こうして俺はこの城を出た。
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