魔物と決意
長くなりました。
「あはははははははははっ いいねぇぇ!!ほらほらぁもっと速く逃げないとひき肉になっちゃうぜぇぇぇぇぇぇ!!」
「ハァ、ハァッ、クソ!嫌だ、死にたくない!」
俺は今とても楽しい鬼ごっこの最中だ。やっぱこの力は最高だよ!弱いゴミを一方的にいたぶれるこの力はねぇ。この世界の神よ!私を人間でなくしてくれてありがとうございます!! 本当にさ人間なんかだったらこの快楽は味わえない。
「ハァ、ハァッ、ハァ、ハァッ、なんでだ!なんでこんなところに魔人が!?」
目の前の討伐者はヤケクソになったのか自身の剣を取り出し俺の方に構えた。こいつは滑稽すぎる。力の差が分かっているのにも関わらず無謀にも挑んでくる姿は実に滑稽だよ。
なぜ、こんなことになったのか。
玉座の間へと到着した照魔一行はその大きな扉の前で待たされていた。
「ねぇ勇気 、私たち無事に帰れるのかな?」
艶やかな黒髪を肩の辺りまでのばし、綺麗な顔をしたこの女性の名前は西条美希という。しかし今は綺麗な顔を歪ませて不安な表情と声で幼馴染の勇気にすがっている。
「大丈夫だよ、美希。何かあったら俺が守るから」
「勇気・・・!!」
2人の間に誰も寄せ付けない空間が広がる。
「ごほん!ちょっと2人とも!今はいちゃいちゃしてる場合じゃないでしょ」
綺麗な茶色の髪をツインテールにした背が低くて、気が強そうなこの女性を高宮凛という。ただしその胸は凶悪だ。ロリ巨乳である。
「今は凛ちゃんのいう通りですわ。全くなんて羨ま・・・」
太陽のような金色の髪を縦ロールにした、高貴で上品なこの女性を貴音ローラという。イギリスとのハーフでお嬢様である。男を惑わす凛より大きな胸は表すなら禁断の果実である。
「・・・・勇気がいうなら大丈夫ね」
黒髪をサイドテールにしたこの綺麗で口数の少ないな女性を早苗理穂という。残酷なことに胸はぺたんこである。
いずれにしも、勇気の周りには美少女が集まっておりハーレムを形成しているのである。
「皆様方。大変お待たせしました。では、前へ進んでください」
ドレスの女性がそう言うのと同時に目の前の扉が開いた。照魔は緊張していた。自分が勇者じゃないと国王が知ったら俺はどうなるのだろう。その気持ちで胸がいっぱいだった。
逆に勇気はワクワクしていた。ゲームの世界でしかなれない勇者が今現実の世界で自分がなることができる。興奮とちょっとの不安が今の気持ちだ。
美希、凛、ローラ、理穂は自分の好きな男が守ってくれると信じておりちょっと安心している。
そして、玉座に座ってる鋭い眼をした金髪の年老いた威厳たっぷりの男がこの国の国王ウィリアムである。
場が重い空気に支配される。今この場にいるのは、国王、照魔一行、ドレスの女性だけである。そしてようやく国王が口を開いた。
「まずはヨハンナよ、勇者召喚の儀ご苦労。そして召喚された勇者たちよ、すまない・・・この世界の事情に巻き込んでしまって」
国王が深く頭を下げた。
本当だよ。このゴミが。すまないで済むんだったら警察はいらねぇんだよ。照魔は心の中で罵倒した。
「いいえ、顔をお上げくださいウィリアム国王陛下。よければこちらの世界の事情をお聞かせくださいませんか?」
勇気のお人好しスキルが発動した。
「光の勇者よ、感謝する。まずこの世界には魔物と呼ばれる存在がいる。魔物は人間を襲い人間の魂を喰らい進化を遂げるのだ。人間を殺せば殺すほど魔物は強くなる。魔物は腹に埋め込まれている魔結晶が大きいほど強い。そして我々はその魔結晶の大きさで魔物をランクで分けている。
E、D、C、B、BB、A、AA このようにな。
しかし例外がいる。それは魔物の究極形。人間の魂を最大限まで得て、人間と同等の知能を持つ魔人と呼ばれる者たちだ。魔物であるが人間の姿をしており見分けがつかない。しかし、軽く人間の身体能力を凌駕する怪物だ。さらにそいつらしか使えない纏呪法と言う能力を持つ。魔人の場合勇者3、4人じゃないと対処出来ない。ランクはSと定めておる。現在確認されている魔人は13人。魔物の説明は以上だ」
国王の説明を聞いて一刻も早く元の世界に帰りたいと思った。
なんだよ魔物って!人間の魂を食べるのか。死ぬことより恐ろしくね。それに魔人とか絶対俺たち勝てないだろ!あ、そもそも俺勇者じゃなかった。
隣のクラスメイトたちを見てみると顔を青くさせて怯えていた。やっぱりそうだよね。怖いよね。俺たちの気持ちを知る由も無いまま国王の説明は続く。
「次に勇者だ。勇者とは魔装と呼ばれる強力な武器を使えるものたちのことだ。勇者は才能ある者にしかなれない。そのためすごく数が少ないのだ。しかし、次元を飛び越えて来たものたちは確実に魔装が使えることが勇者召喚の儀で分かった。それにより今は数が増えており、なんとかして魔物による蹂躙を防いでいる。勇者1人で騎士100人分の力があるからな。魔装は勇者1人1人違う。この世界の中心に勇者と魔物の戦いの最前線の一番大きい大陸がある。そなたらには修行を積んだあとそこに行って来てほしい。勇者の使命とは魔物の絶滅だ。どうかよろしく頼む。」
と国王は頭を下げた。場が静寂に包まれる。は?行くわけないだろこいつらが。今までただの学生として生きてきた奴らがいきなり命賭けて戦えと言われても無理に決まっている。俺はチラリと横を見た。 なんだと・・なんでそんな決意したような顔になっているんだよ。
「国王陛下、みんなと相談していいですか?」
「構わない。待とう」
「みんな、俺はこの世界の人たちのために戦っていいと思っている。幸い俺たちには戦う力がある。たくさんの人が困っているのに手を差し伸べない理由なんてないだろ。俺についてきてくれるか?みんな!!」勇気がそう言いだした。
「はぁ〜〜いつもの勇気のお人好しが発動したよ。分かったよ私はついて行くよ。危なっかしいしね」
凛が賛同した。
「それが勇気さんですわ。私も勇気さんについて行きますわ」
ローラも賛同した。
「・・・勇気が行くなら私も行く」
理恵も賛同。
「勇気くんは1人じゃないよ私たちが勇気くんのことを支え合うから無理しないでね!もちろん私も行くよ」
美希も決心した。
「みんな・・ありがとう 誰も死なせない。命に賭けて誓う。 国王陛下決まりました。俺たちは戦う。この世界のために」
「勇者たちよ本当にありがとう。ではさっそく・・・」
俺はすかさず声をあげた。
「あの、国王陛下。僕はパスでお願いします。僕は勇者ではないので」
まだ主人公はマシです。