初めてのデート-互いの距離-
護と潔子が待ち合わせの約束の時間に、護の家に集まり、ショッピングモールへと二人は向かっていった。
その頃……光と明の姉弟はというと……
「玉砕覚悟になっちゃったわねー案の定。」
「…潔子さん、泣いていたんでしょ?しかもその後、行方不明で会えずじまいで。」
うん、と光は言葉を返した。
「まぁ、メールを送ったら無事に自分の家に帰っていたみたいだからよかったわ。」
「慰めたりしないの?今日は休日だし、二人で好きなデザートを食べに行ったりとか。」
「いやー…だってねぇ。彼女がいることを黙っていた訳だし、気まずいわよ。これ以上仲が険悪になったら、どうするのよ。」
「…それは姉ちゃんの責任だろうに。護はどうしてんだろうなー。」
明からすればただの、素朴な言葉だったがすぐさま光から言葉が出た。
「ねぇ、その事なんだけどさ。同級生の子が、護と潔子が一緒に歩いて、帰っていたのをみたらしいのよ。あの告白した日に。」
「ってことは事の顛末を聞いているってことだよな…俺も護に会わせる顔がねぇ…」
「お互い様ねぇ…」
二人はほぼ同時にため息を吐き、明日からの顔合わせに不安を抱くしかなかったのであった。
その頃、護たち二人は、無事にショッピングモールについて2Fのゲームソフトが販売しているコーナーにいた。
そこには36インチの巨大なモニターのような画面に、護が予約した限定版のゲームのPVが再生されていた。
タイミングよく、潔子が好きなレンカーという男性キャラクターの活躍するシーンが描かれている場面だった。
「うはー!やっぱり、レンカー様ってカッコイイわー」
まるで子供がヒーローショーをみるかのような歓声を上げると、護はこう言い返した。
「ライバルキャラで強い上に、主人公の邪魔さえしなきゃ良いキャラなのになぁ…」
「は?レンカー様が仲間になっていたら、強すぎてゲームクリアなんてあっという間よ。敵だから良いんじゃない。」
(まー確かに、アイツが最初から仲間にいたら中盤から終盤まで難易度が温くなるからなぁ・・・)
二人がPVの映像を眺めながら、感嘆していると、3作目の主人公がモンスターとの戦闘シーンへと切り替わった。
「ほら、あんたの好きな3作目の主人公よ。地味なの好きよねー」
3作目の主人公、というのは1・2作目が英雄達の末裔であったのに対し、例外的に小さな村にすむ自警団の一人であった。地味な主人公と発売当初は揶揄されたが、声優の名演技もあって、好評だった。
「まぁ、英雄の末裔とかのお堅いじゃなくてさ。こういう、どこにでもいるような人間が、主人公になるって憧れるよな。お姫様気質の、潔子じゃわからないかもしれないけど。」
「何よそれー地味、とは言ったけれど嫌いじゃないわよ?ヒロインの告白シーンとか、度胸あるキャラクターだと思うわよ。レンカー様には及ばないけれどね。」
「はいはい、レンカーが好きなのは何十時間も聞いたから。そこらへんで。」
少し、ムスッとした表情で潔子は護を見るものの、それ以外の感情は抱かずに、PVを鑑賞していた。