6話
呼びに来てくれた侍女のエーデルさんーーエーデルさんは伯父様の王都宅の筆頭侍女さんですーーに付いて行くと案内されたのはリビングでした。
エマさんに再度姿をチェックされて、エマさんがエーデルさんに合図を送るとエーデルさんが扉を開いてくれました。
一歩中に入ると父様と母様が庭に出れる窓際に、兄様達が扉の脇にいて手を差し出してます。その光景をルーカス伯父様とアマンダ伯母様が父様と母様の隣で微笑んで見ていました。
えっとこれはシルバ兄様かロイ兄様の手を取らないといけないのでしょうか?
少し固まってると私の正面にルーカス伯父様とアマンダ伯母の長男のカール兄様が現れ、手を差し出されました。
「ミーナ、お手をどうぞ。ハンス叔父上の所までエスコートさせて頂く権利を私に与えて下さい。」
クサイ台詞を言われました。綺麗な金髪に瑠璃色の瞳なので王道的な王子様の様ですね。微笑み方も完璧です。
シルバ兄様もロイ兄様もカール兄様には敵わないので、カール兄様の手を取ります。こうすれば、シルバ兄様とロイ兄様の無駄な喧嘩が起こらなくて済みますし。
「はい、カールにいしゃま。お願いしましゅ。」
カール兄様はシルバ兄様とロイ兄様、そして、料理の側で料理に釘づけになっていたアルノー兄様を見てため息をつきました。
アルノー兄様はカール兄様の弟、つまりルーカス伯父様とアマンダ伯母様の次男になります。兄様達を含めてアルノー兄様が一番子供らしい子供です。
因みに年齢は、カール兄様10歳・シルバ兄様8歳・アルノー兄様7歳・ロイ兄様6歳になります。
ルーカス伯父様は父様の1歳上の兄で今年34歳になり、アマンダ伯母様は29歳です。
父様は33歳、母様は25歳です。母様は25歳で8歳の息子がいるのですね。前世の私からしたら若いとしか言えませんね。まぁ、この世界は結婚適齢期は女性が10代半ば〜20代前半、男性が10代後半〜20代半ばですので若くて当たり前なのですが。
閑話休題
「はぁ、シルバとロイはもう少しスマートにエスコート出来る様にならないとね。手を出しただけじゃ駄目ですよ、言葉にしてお誘いしなくては。
それにアルノー、お前はエスコートする素振りも見せないのはどう言う事ですか?一番駄目ですね。今日はミーナにとって記念すべき3歳の誕生日なんですから。
3人共今から少しずつ練習していかないと、将来婚約者が出来た時に苦労しますよ。」
この世界で子供が3歳の誕生日を迎える事には大切な意味があります。
3歳を迎える前に大病を患うとその後も繰り返し大病を患い、短命になってしまうと言われているからです。その為、大病を患う・元気に過ごせたは関係無しに3歳の誕生日は邪(病)を祓う儀式をします。
王族と上流貴族の儀式は神殿でナディエージ神に祈りを捧げて神官様から祝詞を貰い、その後昼餐会もしくは社交パーティーを開いて、夜に再度神殿を訪れ禊をして終了になります。
下流貴族は神殿の部分を省略して、準貴族と平民は神殿の部分の省略は勿論、昼餐会や社交パーティーの部分を家族でのお祝いにします。
その中で共通して守らなければならないのが、その日1日、3歳になった子供は邪が入り込む隙を与えない為に、全身真っ黒の衣装になり、口にして良いものは動物以外のものとなります。
なので、私も朝から全身真っ黒でお肉や魚・玉子料理は食べさせて貰えてません。
そして、朝からちゃんと真っ黒だったのに再度別の真っ黒の衣装に変わったのでしょうか?しかも上流貴族用の子供ドレスなのでしょうか?
カール兄様にエスコートされ両親の元に向かいながら、考え事をしていたので、突如背後で扉が開く音にビックリしました。
「すまんな、遅くなった。」
お祖父様の登場です。
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