18話
本日2話目です。
森へ行ってから1ヶ月経ちましたが、あの後外出する事が、出来ませんでした。
予定されていた魔法士団の訪問は、今王国中で発生し、蔓延している流行病により中止になりました。
騎士団や魔法士団でも病に罹り倒れる者が後を絶たない状況で、父様は3週間近く、休み無く働いています。
兄様たちは、学院が先週までは開講していたので、通っていたのですが、今は事態終息まで休講になって家にいます。
学院が休講になってからは、朝食後のこの時間は庭で訓練をしているのですが、今日は伯父様に呼ばれて、シュテルネンのお屋敷に行ってます。
兄様達を見送って、いつも通り洗濯を始めますか。
洗濯を終えても、食器を洗ってた母様が現れません。
食器を割ってしまったのでしょうか?それにしても時間が掛かっているような…取り敢えず、洗濯物を干してしまいましょう。
やっぱり、母様が現れません。どうしたのでしょう。
キッチンを覗いてみますか。
「っ母様!!」
母様がキッチンとダイニングの間で倒れていました。
急いで、駆け寄り揺すろうと手を掛けると体がとても熱いです。
まさか、流行病!?
取り敢えず、ソファに運びましょう。
8歳児の体では、いくら訓練していても成人女性を2階のベッドまで運ぶのは無理です。
ソファに寝かせて、冷たい水で濡らしたタオルを、額と首の後ろと脇と足の付け根に当てて体温を下げるようにします。
確か、流行病は高熱と嘔吐が1〜2週間程続いて、回復せずに亡くなる場合が多かったはずです。
今は高熱しか出ていませんが、素人判断は駄目です。
急いで、お医者様か薬師様に見て頂かなければ。
特殊眼鏡とお金を持って家を出ます。
伯父様に伝言をする為の手紙も忘れずに持ち、誰かに伯父様の家に行ってもらえる様に依頼をしましょう。
母様を冷やしているタオルを新しくして、もし嘔吐しても良いように、体を横向きにします。そうすれば、吐瀉物を気管に詰まらせないですからね。
家の鍵が何処に在るのかはわからないので、不用心ですが鍵を開けたまま出ます。
お医者様か薬師様は何処に行けばいるのでしょうか。今世では初めて1人で家から出ましたし、私も含めて家族全員、病気知らずだったので検討が付きません。
どうしたらいいのでしょうか。
このままでは母様が……。
「大丈夫?お母さんと逸れた?」
栗色の髪と群青色の瞳をした、シルバ兄様ぐらいの歳の男の子に声を掛けられました。そして男の子にハンカチを差し出されました。
どうやら泣いてしまっていた様です。
ハンカチを受取り、眼鏡がズレない様に涙を拭き、深呼吸をして落ち着けます。
「お医者様か薬師様を探しています。何処に行けば会えますか?」
「誰か、怪我か病気したの?
俺の知ってる薬師で良ければ、案内するけど…この時分だから店にいるかな。」
「お願いします。
母様が高熱を出していて、父様は仕事に行かれてて、兄様達も伯父様に用があって不在で、家に誰も居なくて…。」
「落ち着いて大丈夫だよ、深呼吸して。
それじゃあ、一緒に行こうか。
俺はダン、ダン・フォスキー。君の名前は?」
「私はミーナ・ヴァグナークです。
ダンさん、ありがとうございます。」
どうやら、まだ落ち着けていなかったようです。そして、ダンさんにいつの間にか手を引かれていました。
「そういえば、ミーナはヴァグナークなんだよな?
て事は、シルバの妹?
あいつに妹が居るらしいって噂があるけど、誰も見た事ないから幻扱いされてるぞ。
学院に入ったら騒がれて大変になるな。」
どうしましょう。何て返したらいいのか分かりません。
私の存在は秘密だし、学院に通えるかも分かりません。
「…あー、まぁ人には色々有るだろうから答えなくていいぞ。俺の独り言だ。
っと、ここだ。こんちはー。」
言い淀んでいると、聞かなかった事にしてくれました。
私ってチョロいんですね。
見ず知らずの泣いてる子供に声を掛けたりハンカチを渡してくれる優しさや、流行病が蔓延している中で事情をしっても助けてくれようとする誠実さ、空気を読み気遣いできる様に、こんな時だというのに恋に落ちてしまいました。
お読み頂きありがとうございます。




