17話
今日は、1ヶ月振りの外出です。
行き先は森ですが、家から出られるのは嬉しいです。
森や山に連れて行ってもらえる様になったのは、6歳になる年のリューリンの2月の頭の頃でした。
私が3歳の時に初めて作ったドライフルーツを伯父様が気に入り、良く果物を差し入れてくれる様になりました。その果物でドライフルーツを作っていたら、家族からも自分用のドライフルーツを作って欲しいとなったので、果物を森や山に取りに行こうとなったのです。
その頃は剣捌きも板に着いてきていたので、森や山に父様の護衛付きでなら、果物の収穫しに行ける事になりました。
勿論行く時は、男の子の格好をしてマントのフードを被り、特殊眼鏡を掛けて私の特殊な外見を隠しています。
出発は何時も早朝で、帰りも夕暮れ時にする徹底振りです。
今日ばかりは、早朝の訓練を中止して、訓練を始める時間に家を出発します。
今回は学院の休みと重なったので、シルバ兄様もロイ兄様も来る様です。
森まではプフェートでやく1時間程掛かり、私は父様の前に座りながら今の時期に成っている果物の事を考えます。
今の時期で森で取れる物をだとベーレン・ウィ・トラべ・フェル・ルネあたりでしょうか。
基本的に山に成っている、リーネが有れば是非収穫したいですね。
因みに、地球の果物に当てはめると、ベーレンが苺・ウィがキウイ・トラべが葡萄・フェルが林檎・ルネが梨・リーネがみかんです。
果物の事ばかり考えていたら、あっという間に森の入り口に着きました。
騎乗したまま森の中を進み、泉の近くでプフェートから降ります。
ここでプフェート達を休ませて、私達は果物狩りに出発します。
しばらく歩いていると、ベーレンを発見しました。
取り過ぎない様に注意しながら、色々収穫していきます。
午前中で満足出来る量のベーレンとトラべ・フェルが収穫出来たので、泉に戻り休憩です。
「ミーナ、一杯取れてよかったね。
僕は早くフェルのドライフルーツが食べたいよ。」
「ロイ兄様、フェルのドライフルーツは後3週間は待たないと食べれませんよ。
今日のデザートに出来たばかりのペルズのドライフルーツを持って来ましたから、それで我慢して下さいね。」
「ペルズか、あれは食べ応えがあっていいよな。
最初にペルズを収穫して来た時は、失敗すると思ったな。」
「ペルズの実は渋いかならな。」
ペルズは渋柿です。
干し柿は日本人には馴染み深いですよね。
渋柿の方が甘い柿より干すと、甘くなると言う不思議が魅力的です。
そんな会話しながら、母様の作ってくれたお弁当を食べます。
お弁当とペルズのドライフルーツを食べ終わると、シルバ兄様がおもむろに立ち上がりました。
「ミーナ、食後の腹ごなしをしよう。」
私も立ち上がり、常に身に付けている護身用の三節棍を瞬時に組み立てます。
ここに来た時は、シルバ兄様が何時もこうなので慣れたものです。
「兄上、学院だけで無くてここでもするんですか?しかもミーナ相手に。」
何時もシルバ兄様の服の汚れが酷いのはそのせいですね?
洗濯するこちらの苦労も考えて欲しいものです。
ちょっと何時も以上に頑張りましょうか。
「ーーーーやぁ、ーーーせい、とぉーー!」
=ガシャーン=
シルバ兄様の剣を弾き飛ばし、すかさず首筋に棍を突きつけます。
「まさか、ミーナに負けるとは………。」
「ミーナ、素晴らしい気合が入っていた。その調子でこれからも鍛錬に励みなさい。」
「ミーナ、凄いね。
兄上、5歳も年上なのに情けないですね。それで騎士になれるんですか?」
「くそっ。
次はロイ、お前が相手だ。魔法を何時でも打ち込んで来いよ。」
「大人気ないですね。」
=ドゴン=
=ズザッ、シュ=
「うっ、参りました。
はぁ、僕は近接が苦手だから、近付からると駄目なんだよなー。」
「ロイ、お前も朝の訓練に参加だ。
ミーナと一戦やってみろ。」
父様からの命令ですね。苦手意識があるならやらないとダメですよ。
では、行きますね。
私が構えると、ロイ兄様がすかさずウォーターボールを打ってきました。
横に飛び避ければ、次はウィンドボールですか。
身を沈めて避けます。その姿勢のまま突進して、棍を突き出しましたが、ロイ兄様は私から見て右に避けます。
私はその場に踏みとどまり、腰を捻りながら棍でロイ兄様に追撃します。
ロイ兄様が息を呑むのが分かり、寸止めにします。
「そこまで。
ロイ、お前の問題点がわかったか?」
「魔法が使えるから、それに胡座をかいているところですか。」
「それもあるが、甘い所だ。」
「…っ」
その後は、日暮れ近くまでひたすら訓練をして帰路に着きました。
ああ、もう外出は終わりですね。
早く次の外出がしたいです。
「ミーナ、来週は魔法士団に行く日だから、忘れないように。」
意外と早く外出出来ますね。
お読み頂きありがとうございます。




