11話
玄関に行くと父様が愛プフェートと既に待っていました。
父様は私を見ると小さく頷いてから抱きかかえてプフェートに横座りになる様に座らせ、その後ろに颯爽と跨りました。
父様が片手で手綱を持ち、もう片方の手を私の腰に回し落ちない様に回してくれます。
プフェートの上は高くて、怖かったので父様の手に落ち着きます。
今世では初の乗馬になり、前世では小学校低学年の時に牧場でポニーの乗ったぐらいなので、とてもドキドキします。
父様がプフェートをゆっくりと進めてくれたので、暫くすると景色を楽しむ事ができました。
城下街の街並みは、石畳みで石造りの家が並んでいます。メインストリートには1階がお店で2・3階に自宅になっている作りのお店が看板を掲げてズラッと建ち並んで圧巻です。
私の家は、中心地より少し離れた郊外にあり、平民街や貴族街を通って王宮へ行くので、色々な街並み・お店が見れて、普段は街に出る事が出来ないのでとっても楽しいです。
父様は私に余裕が出たのを感じたのか、プフェートのスピードを上げました。
ひっ!!父様、いきなりスピードを上げるのは止めて下さい。心臓に悪いです。
スピードが上がったのも慣れた頃に王宮に到着しました。
門の所でプフェートから降りて門番の騎士様の方に顔を向けます。
「ヴァグナーク隊長、おはようございます。
そちらのお嬢さんは…?」
「おはよう。娘のミーナだ。魔法士団のシュテルネン団長に呼ばれていてな、これが通行証だ。
通ってもいいか?」
「はい、承ります。確認と通行印を押しますので通行証をお預かりします。」
「…はい、印を押しましたのでこちらをどうぞ。
ミーナ嬢は城内にいる間は肌身離さずもっていて下さいね。」
門番の騎士様に通行証なるものを渡されたので、ポシェットに仕舞いました。
父様は私の行動を確認してからプフェートの手綱と私の手を引いて歩き始めました。
暫く歩くと厩に着き、父様はプフェートを預けて2、3言葉を交わしてから厩から離れました。
また暫く歩くと前方に独立した建物が見えて来ました。
あれが魔法士団の隊舎ですね。
建物の中に入り奥にある立派な扉の部屋の前に着き、父様が扉をノックし、誰何する声が聞こえました。
「第1騎士隊隊長のヴァグナークです。」
「入れ。」
短いやり取りです。
そして、この部屋は声からしてお祖父様の執務室なのでしょう。仕事中は公私は分けて対応されてるのですね。私もきちんと分けないと駄目ですね、頑張ります。
父様から眼鏡を外して良いと言われたので、ケースに入れてポシェットにしまいます。
部屋に入ると、お祖父様以外に2人の方が既に居ました。
1人は紅海老茶色の短髪と菖蒲色の瞳の強面の男性で、もう1人は蝋色の腰までの髪と瞳の眼鏡をかけた女性です。
「ミーナ、よく来たな。まだあと1人来るんだか来てないからもう少し待っておれ。
待ってる間、ジィジとお茶でも飲んでようか。」
「シュテルネン団長、その前に自己紹介させて下さい。
私は魔法士団副団長のヘレン・マーギナです。
話には聞いてましたが、本当に団長と同じ瞳の色で髪が亜麻色なんですね。」
「俺は騎士団副団長のリッツ・ルダートだ。」
男性の方が騎士団副団長様で、女性の方が魔法士団副団長ですね。
「はじめまして、ミーナ・ヴァグナークでしゅ。
本日はよろしくおねがいしましゅ。」
「団長と比べてとても礼儀正しいお孫様ですね。
ミーナちゃんと呼んでもいいかしら?
今お茶をいれるから、そこのソファに座って待っててね。」
「はい、私もヘレンしゃんとお呼びしてもいいですか?」
にっこり笑って頷いてくれました。
どうやらヘレンさんはお祖父様には毒舌のようです。きっと何かやらかしてるのでしょうね。
そして、まだお若そうなのに副団長とは凄いです。眼鏡を掛けているので、インテリお姉様ですね。萌えます。
ヘレンさんの隣で強面の副団長がウズウズされてます。トイレでも我慢されてるのでしょうか?
「あー、ミーナ。ここには副団長が2人いるから、ルダート副団長の事もリッツさんとお呼びしてはどうだ?」
「?わかりましたが、とうしゃまの上司の方をその様にお呼びしてもいいのでしゅか?」
「あぁ、構わないぞ。
ミーナちゃんはおじさん見ても泣かないんだな。」
「顔が怖いぐらいで泣くミーナでは無いわ。ヴォルの成体に戯れつかれて甘噛みされても笑ってられるぐらいだからな。」
2歳の時にシュヴァルツに飛びかかられた時の事でしょうか。あの後シュヴァルツはロイ兄様にこってり怒られてましたね。
「それは凄いですね。是非大きくなったら騎士団に入団して頂きたいです。女性の騎士もいるべきだと思っていますからね。
遅くなりました。
ミーナちゃん、私は騎士団団長のオルデン・クリーガです。
私の事も名前で呼んで下さいね。」
騎士団長様の登場です。
リッツさんよりさらに強面の方かと思いましたが、フツメンさんで父様と同じぐらいの年齢ーーリッツさんは強面具合を引くと父様の少し上くらいですねーーです。但し、眼力が強いです。眼力だけで人が殺せるのではないでしょうか?
タイプ的には、オルデンさんとリッツさんは逆の立場の方が王道ですが、王道とは難しいですね。
「面子も揃いましたし、個人訓練室に移動しましょう。
ミーナちゃんは私と一緒に移動しましょうね。」
「はい、ヘレンしゃん。」
ヘレンさんの笑顔は素敵です。何故隣でリッツさんが項垂れるのでしょうか?
いよいよですね!
お読み頂きありがとうございます。
次回こそ、魔法の有無の確認になります。
世界や家族の説明が大体終わったので、ミーナの性格が徐々に出てきます。
ミーナは良い子だけど、基本的に微変態(ツンデレ・ヤンデレ・俺様・腹黒いなどの鑑賞好き)でマイペースな子です。




