表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
129/130

100話

私は今、プリースダント司祭様達と同じ馬車に乗っています。

と言うのも、リガーフェルをダンさんが打ち取ったあの日に帝国からの降伏宣告がなされ、帝国からも正式な書類で降伏がなされた旨が王城に届けられたそうです。

その書状を受け正式に前線の武装が解かれる事が決定し、その伝達やら撤退準備やらで、あの日から1か月後の今日、王都に出発する運びになりました。

完全に国境の武装を解除する訳ではありませんが、極少数の騎士と魔法士を残し、後方支援部隊や本隊が少しずつ王都に向かいます。

今後の帝国と接している国境の警備は、第4騎士隊と第4魔法隊の仕事になるようです。


この1か月の間、帝国からの戦闘は一切ありませんでした。しかしあのドラゴンを操っていた男が居るのに何故帝国は降伏をしたのでしょう?

帝国の降伏したタイミングは、リガーフェルの死と同じタイミングです。と言う事は、帝国にとっての最後の頼みの綱がリガーフェルだったと言う事でしょうか?

そうだとすると、あの男は何処にいったのでしょう?王城に戻れば何か情報が分かるでしょうか?

私は、いえ、私とダンさんはあの男を殺さなければいけないのですから、何も知らないままではいられません。ですが、私ではどこまで情報を手に入れられるのでしょう?パディ様との婚約も破棄するのですし…。

そう言えば、あの男を私とダンさんとで殺さなければいけないと言う話をダンさんにしていませんでした。王都に戻って落ち着いたら話さなければいけませんね。

もしかしたら、あの男の情報をリガーフェ…、リックス・フェルドが何か情報を掴んでいるかもしれません。リックス・フェルドからの連絡があればいいのですが。


馬車の中で、外を眺めながらそんな事を考えていると、休憩の為か馬車が止まりました。

馬車から降りる前に、再度外の景色を見ると、騎士様達が何やら慌ただしく動いています。休憩する時の様子とは違います。何かが起こったのでしょうか?


「司祭様方。お急ぎ避難ください。

異形なモノが襲って来ました。」


外から、騎士様が警告をされました。異形なモノ…帝国が降伏を取り下げて仕掛けて来たのでしょうか?それとも野良になった、脱走した異形なモノでしょうか?

私が最初に馬車から降り、剣を抜き周囲を警戒します。

当然、私達には護衛騎士がいるのですが、武に長けている私が司祭様達をお守りする為に剣を抜くのは当然と思っていたのですが、騎士様からは苦笑いが漏れています。

そんなに私の行動はおかしいでしょうか?


護衛騎士に誘導され、馬車や戦闘地点から離れ、他の非戦闘員(後方支援部隊)の方達と合流をして戦闘が終わるのを待ちます。

その間にもたらされた情報によると、今回襲って来ている異形なモノは野良になったモノ達の様です。

撤退の情報と一緒に、帝国から逃げ出し野良で生きて人々や家畜、野生の動物を異形なモノが襲っているとの情報が有った為、今回の襲撃は野良の異形なモノの仕業で帝国は無関係と判断したそうです。


戦闘が始まってから、四半時程で戦闘地点から、数人の騎士様がこちらに向かってきました。

野良の異形なモノもそれなりの集団で襲って来たので少し時間が掛かったのでしょう。


「異形なモノの殲滅が終わりましたので、移動を再開します。それぞれの隊列に戻って下さい。」


私は他の司祭様と一緒に元の馬車に戻りましたが、手には抜身の剣を持ったままです。少なくとも、馬車に乗る直前までは剣を持ったままでいるつもりです。

私のその姿を見て、護衛をしてくれていたダンさんが苦笑いを浮かべています。


「ミーナ、俺達が居るから少しは気を抜いた方がいい。そうじゃないと、王都までキツイぞ。」


ダンさんがそう言えば、他の護衛の騎士様達も頷いています。私もダンさんの言っている事は分かるのですが、あのドラゴンの男の存在を思うと、どうしても気が抜けません。


「馬車の中ではそれなりに気を抜いているので、大丈夫ですよ。」

「ミーナのそれは当てにならないな。見て見ろ司祭様達の呆れた顔を。」


私としては、身動きが取れない馬車の中ではそれなりに気を抜いているつもりだったのですが、違った様です。でも、これ以上どうやって気を抜けばいいのでしょう?

馬車の中には気軽に話せる相手もいませんし。というよりも、この軍行の中で気軽に話せる相手は、極少数に限られているのですからどうしようも無いのですが。


「シュテルネン司祭に戦場で張ってしまった気を緩めてもらう為に、馬車の中では説法や司祭の仕事、各国の教会の話をしましょう。

別の気が張ってしまうかもしれませんが、まぁ、多少はマシでしょう。」


プリースダント司祭様がそう仰って、他の司祭様達も頷いています。唯一若手の司祭の方だけが引き気味でした。


その後も度々、野良になった異形なモノの襲撃を受け受けながらだった為に行きよりも少し時間が掛かり、国境を出発してから3週間程で王都に到着しました。

お読み頂きありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ