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91話

「1人目はミーナちゃんの義兄であり従兄でもある、アルノー・シュテルネン騎士文官殿です。

彼は戦闘が始まった直後、怪我を負ったツヴォーシルト公爵を医療部隊の天幕へ連れて来られて、そこで医療部隊を狙った戦闘に巻き込まれて、医療部隊の隊員を庇って亡くなりました。」

「アルノー兄様が…。

アルノー兄様が助けられた隊員の方はご無事ですか?」

「えぇ。先程ミーナちゃんが起きた所を発見した者です。

この丸3日、昼夜を問わず彼が殆どミーナちゃんの状態を見ていました。

少しでも、アルノー殿にご恩をお返しするんだと。アルノー様は死に際にミーナちゃんの事をとても心配されていたそうです。

ですから、ミーナちゃんが目覚めてとても喜んでいましたよ。」

「そ、うです、か…。」


私の目から涙が一滴落ちてしまいました。

話を最後まで聞き届けるまでは我慢しようと思っていたのですが、呆気なく流れ落ちてしまいました。

これでは先が思いやられます。


「…ミーナちゃん、辛いとは思うけど話を続けるね。

2人目は、ミーナちゃんも知っての通り、次兄であるロイ・ヴァグナーク殿。

彼のご遺体は、一部の遺髪と遺品を残して、荼毘に付されました。

彼だけではなく、アルノー殿や他の戦死者でご遺体が残って居た者に関しては荼毘にふされているよ。」


私は、きっと青い顔をしているのでしょう。ギルさんが心配そうに顔を覗き込みながら、ロイ兄様のその後を教えてくれています。

ロイ兄様とアルノー兄様…、あと1人は誰なのでしょうか?

シルバ兄様?

でも、シルバ兄様は医療部隊に運ばれている筈。そこで治療の甲斐なく亡くなったのでしょうか?

それとも、あの男と対峙していた父様かお祖父様が?


「最後の1人は、……アーノルド・シュテルネン魔法士団団長です。」

「お、祖父様が…。

どうして、あんなに強い方だったのに。

私、剣でも魔法でも一度も勝てた事が無いのに。私より強いお祖父様が亡くなったなんて信じられない!」

「信じられない気持ちは分かります。未だに誰も信じられない思いだから。

あの英雄であり、最強と言われてた魔法士団団長がって。でもご遺体があるから、信じるしかないんです。」


私は、ギルさんが遺体があると言っても信じたくありません。

そんなのは嘘だと、頭を横に振って違うと言う事しかできません。

そんな私を宥めようと、ギルさんは私の背を撫でようとしてくれましたが、私はその手を払いのけて泣きじゃくってしまいました。

ギルさんが途方に暮れているのを感じますが、今の私にはどうでもいいことです。

どうしてお祖父様の事を過去形で語るのですか。


どれくらい時間が経ったのでしょうか?

少しの様な気もしますし、一時以上経った気もします。

その間もギルさんはずっと私の傍に居て、何度手を払いのけられても、私の背を撫でてくれていました。

ようやく涙も落ち着いた、と言うより、枯れたのでしょう。涙が流れなくなったところで、ギルさんから水を渡されました。


「一度水を飲んで落ち着いて。辛いのは重々承知しているけど、後でご遺体に会ってあげて欲しい。

魔法士団団長のご遺体は荼毘に付さずに、魔法を使って王都まで運ぶことが決定しているから、今の内に会ってあげてね。」


私が再度首を横に振って、イヤイヤをしていますが、ギルさんは話を進める事に決めたようで話し続けます。


「それと、ミーナちゃんのお父さんと長兄のシルバ殿の事です。

お父さんのヴァグナーク隊長は怪我こそ負っていますが軽傷です。

さすがに魔法士団団長が亡くなられた直後は、茫然自失とされ疲労困憊でもありましたが、現在は特に問題もなく、戦闘に参加されています。

そしてシルバ殿ですが、彼は左目を完全に失明し、右目も殆ど見えない状態となっています。

今はこの医療部隊の天幕で休まれていますが、王都への帰還する為の準備が出来次第、王都へ立つ事が決定しています。」

「…まだ、戦闘が続いているのですか?」


ギルさんの話を呆然としながらも、父様とシルバ兄様の事だったのでしっかり聞こうと思い質問をします。それに、今の状況も分からないと駄目ですし。


「この場を放棄しての退却する為の戦闘が続いています。

その戦闘には、ダンも参加しています。」

「ダンさんは片腕を失っていましたよね?それでも戦闘に参加しないといけない程、戦況が悪いのですか?」

「帝国側は、今の内に追い打ちを掛けて、こちらへの打撃を大きくしたいのでしょう。それなりに激しい戦闘になっています。

ですが、異形なモノがなりを潜め、さらにクリーガ騎士団団長やルダート騎士団副団長、マーグナ魔法士団副団長が帝国兵相手に相当暴れているので、激しさの割にこちら側の被害は少数です。

ダンが参加しているのは、片腕でもクリーガ団長に引けを取らない、いえそれ以上の力を発揮したので、前線に出ている状態ですね。」


ダンさんがクリーガ団長以上の力を片腕で発揮したって、どういう事でしょうか?

すでに、リガーフェルが現れて戦ったのでしょうか?


あぁ、その事がとても気になるのにどんどん意識が遠のいていきます。

ギルさんが落ち着いた態度でいるのを意識が遠のく中で分かったので、鎮静剤か睡眠剤が先程の水に混ぜられていたのですね。

お読み頂きありがとうございます。

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