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81話

今回はキリが悪かったので少し長めです。

「4つ目?私が用意した選択肢は3つだけど?」

「分かっています。ただ、3つ目の選択肢を変化させただけです。」

「それで、どんな内容なんだい?」

「大筋は同じで、戦場に戻り私の力を最大限で使います。ただしそれで力が消失した様に偽装して、ミーナ・シュテルネンからミーナ。ヴァグナークに戻ります。

ただ、ダンさんと貴方の闘いをどうするかですが…。」

「戦場に戻るなら、確実に実行するよ。

私が目の前で死ぬ姿を曝さないと、帝国も王国も納得しないだろうからね。」

「死ぬことは決定事項なのですか?」

「誰が好き好んで死ぬんですか?私のダミーを作るだけですよ、20年前の様にね。」

「ちょっと待って下さい。貴方はさっき20年前の事は暴走だったと言っていましたよね?

ダミーなんて作る暇はあったのですか?」

「アーノルドさん達に追い詰められた時までは私本人でしたよ。でもね、私にも役割と言うものがあるので、あそこで死ぬ訳にはいかなかったから、崖から落ちる瞬間にダミーと入れ替わって、崖の途中に隠れてやり過ごしたんですよ。

時間が無くて、不格好なダミーでしたけど、回収が不可能な崖下でしたから問題なかったけどね。」


私はダンさんと顔を見合わせて呆然としてしまいます。

どれだけの身体能力をしていたら、そんな芸当が出来るのでしょうか?

もし私にダミーなるものを作る力があったとしても、そんな切羽詰まった状態でそんな事は出来ないと思います。これも人生経験の差なのでしょうか?

それに身を隠すのに最適な場所が無いのに、どうやってダミーと入れ替わるのでしょうか?まさかオートで動く訳では無いですよね?

2人して呆然としていたからでしょうか、リガーフェルが話を元に戻すために再び話出しました。


「話がそれてしまったね。

でも力を消失した様にするなんて、一体どうやるつもりだい?私はダミーは作れるけど、そんな裏工作は出来ないよ。」

「ロイ兄様が作ってくれた秘薬があるので、それで誤魔化します。

目に点眼をすると、目の色が変化するもので、私が力を発揮する前に、普通の生活が送れるようにと研究をして作ってくれていたんです。

その秘薬を目に点眼すると、一定時間は私の目の色は母様譲りの若竹色に変化します。」

「一定時間ね…。

でもそれだけでは不十分だよ。魔力を調べる【陣】はどうやって誤魔化すつもりだい?」

「それも、服用すると一定時間魔力を放出しなくなる秘薬があるので問題ありません。」

「まさかそんな物を只の一般人が作り上げるとはね。

ロイ・ヴァグナークは只の凡人だった筈なんだけど…。彼も私の部下に欲しいな。」

「貴方の部下になると、20年前の様になるんじゃないんですか?」

「それは勘違いだよ。あれは、私の大切な恋人を可愛がっていた部下達に惨殺されて、キレて全ての見境が無くなってしまっただけだから。

あの者達は私の今言っている部下ではないよ。」

「その言葉だと、他に部下がいるんだな?一体何をさせているんだ?」

「私の本来の役目をする為のサポートだよ。

この世界の安定させる為のね。帝国の開発したキメラ…異形なモノの駆除も私の役目になるね。

今の帝国の領土内には制御に失敗した異形なモノが潜んでいて、善良な市民に被害を出しているんだよ。そして、異形なモノを作ったのはプランツェ王国だと言ってね。」

「そんな…!?」

「それと、この戦争に連れてこられた異形なモノも大量に脱走していてね。恐らく世界中に分散してしまうだろう。

ダミーと入れ替わったら、それの駆除に忙しくなるね。

高性能の繁殖能力がついているから、駆除するまでにどれくらいの年月がかかる事か…。」


あの異形なモノはリガーフェルが作り出したモノでは無かったのですね。それにしても高性能の繁殖能力ですか。それがどれほどのものかは分かりませんが、あれだけの強さを持つリガーフェルがどれくらいの年月がかかるか分からないと言っていると言う事は、相当なものなのでしょう。

今回はある意味助けてもらった様なものなので、お手伝いを申し出た方が良い気がします。

それに、ずっと囲われていたので、外の世界も気になりますし。


「あの…戦争が無事に終結して、私がミーナ・ヴァグナークに戻れたら、微力ながらお手伝いします。」

「勿論そうしてもらうつもりだよ。

言ったじゃないか、部下にしたいと。2人には私の部下になってもらうのは決定事項だから。」

「俺もかよっ!?

俺はプランツェ王国の騎士団に所属しているんだぞ。」

「細かい事を気にしちゃいけないよ。」

「いやいやいや、気にしないと駄目だろ!」


何故か、ダンさんとリガーフェルの漫才が始まってしまいました。時間が無いのでは無かったのでしょうか?


「部下になると、何か面倒な事が起こりますか?」

「特には起こらないよ。やり取りも基本的には私のもう一つの顔である商人からの文のやり取りでする予定だし、拒否権もちゃんとある。

ただ、拒否を続ければお話が必要になるけどね。」


そう言って、またも悪巧みをしている顔でニヤリと笑います。きっとお話しと言うのは肉体言語的な物なのでしょうね。

ダンさんが引き攣っています。私が部下になる事に前向きでいるからでしょうか?


「まぁ、ダンにやらせるとしたらプランツェ王国内で繁殖する異形なモノの駆除が主になるから、騎士の仕事でやる事と変わらないね。

だから、第4騎士隊に所属を変更してもらいたい所だけど、そこは任せるよ。」

「………くそっ。当面は騎士でやる範疇でしかやらないからな。」

「それで十分だよ。さて、そろそろ本当に時間が無いから、計画を実行しようか。次に君たちの前に現れるのは私のダミーだから遠慮はしないで攻撃してくれていいよ。

ちゃんと4つ目の選択肢の通りに行動してもらわないと、こっちも困るから。

それじゃあね。あ、あと私の商人としての名前はリックス・フェルドだから、その名で文が届いたらちゃんと中を確認してね。」


そう言い残すと、瞬時に姿が見えなくなりました。

忍者のような早業です。本物の忍者を知らないのですが。

そして、居なくなったと思ったリガーフェルが再び姿を現し、ダンさんに切りかかりました。

どうやらダミーはオートで動く事が出来る様です。

さて、このダミーのリガーフェルと戦いながら、戦場に戻りましょう。って、私の武器が何一つ返されていないので丸腰なのですが!?


「ミーナ、俺から絶対に離れるなよ。」

お読み頂きありがとうございます。

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