80話
心臓が止まるかと思いました。ダンさんも私の事が好き…?本当に?
今までそんな素振りがあった様には思はなかったのですが。
「本当ですか…?」
「本当だ。
でも、ミーナは伯爵家に連なる人だから身分違いだと知っていたから告白するつもりは無かった。
ヴァグナーク隊長とシルバは俺の気持ちを知ってたけどな。」
「私、全然気が付きませんでした。」
「気付かれない様に、いい兄貴分でいようとしてたからな。この気持ちは一生言うつもりは無かったんだが…。」
「身分違いだからですか?」
「あぁ。身分違いの恋は悲劇しか起こさないだろ?全部が全部悲劇になるとは流石に俺も思ってはいないけど、それでミーナが傷つくのは見たくなかったし、ミーナみたいな素敵な子が俺を好きになるとも思っていないし。」
「私もダンさんの事が好きです。私も一目惚れでした。
ダンさんが私を妹扱いなのは知っていましたが、私はダンさんを諦めるつもりはありませんでした。成人してからダンさんに告白しようとずっと考えていました。
…私の力が分かるまでですが。力が分かった途端にパトリック陛下の婚約者にさせられたので、諦めるしかないと思っていました。」
ダンさんに好きだと言われて舞い上がってしまい、勢いで私まで告白してしまいました。どうしましょう。顔が熱いです。
混乱によって収まっていた赤面がまたぶり返してしまった様です。
恥ずかしくて、ダンさんから視線を逸らし下を向いて、赤面が収まるのを待ちましょう。
「2人とも今告白大会されても…。
それで、選択肢としては1つ目ので進めてもいいかな?
2人のダミーの死体を作らないといけないから、決断を早くしてもらいたいんだけど。」
そうでした。まだ選択をしていませんでした。
顔を上げダンさんの顔を見ます。ダンさんも私の方を見つめていたので、目が合い、さらに赤面しそうです。今はそれ所で無い事は百も承知ですが、暫くこの余韻に浸っていたいです。
「ミーナと2人で相談させてもらってもいいですか?
今後を決める大切なことだから、ちゃんと話し合って決めないと後悔するので。」
「分かったよ。でも、そんなに時間的に余裕がある訳では無いよ?
君たちの後を追って、シルバ・ヴァグナークとロイ・ヴァグナークが来ているからね。」
どうやって状況を監視しているのでしょうか?疑問に思いましたが、時間が無いと言う事であれば、早く決めなくてはいけませんね。
ダンさんが目で合図をしてきたので、リガーフェルから少し離れた所で向かい合って座ります。
「ミーナは1つ目の選択肢を選びたくない様だけど、家族と離れる事が辛いんだよな?」
「はい。それに、ダンさんにも家族を捨てさせるのは忍び無いです。」
「そうか。確かに2度と家族に会えないのは寂しいけど、騎士をしているから、いつ死んでも心残りが無い様に家族とは過ごしてきてる。
俺は死んだと思って、忘れる事にするよ。」
「…ダンさんは強いですね。まるで……まさかっ!?」
「ミーナ…?」
「いえ、ダンさんの前世がもしかしたら私の知っている人かもしれません。」
「ミーナは前世でその人の事が好きだったんだな。
例え、俺の前世がミーナの好きだった人だったとしても、今の俺には何の関係も無いけどな。」
「そうですね。話を元に戻しましょう。
ダンさんは1つ目の選択肢で良いと言う事で間違いありませんか?」
「あぁ。でもミーナはそれは嫌なんだよな?
そしたら2つ目か3つ目かになるけど、ミーナはどちらを選択したい?」
「私は……3つ目はダンさんが危険に曝されるのが嫌です。それに、これ以上力に注目を集めるのも、セシルやアンナにも危険が及びそうなので嫌です。」
「と言う事は2つ目の選択肢を選ぶと言う事だな?」
「………はい。ダンさんと幸せな未来を描けないのは辛いですが、今までの様にシルバ兄様の友達として会う事が出来れば……十分です。」
「……俺は…2つ目の選択肢になった場合は、ミーナの前から姿を消すつもりだ。」
「!!?どうしてですか?」
「ミーナが他の男と結婚しても、幸せを祈ってるつもりでいたけど、壮行会の会場で他の男の隣で笑っているミーナを見て、嫉妬してたんだ。そんな状態でいつまでもミーナの側にいる訳にはいかない。
それに、パトリック陛下は俺の気持ちを知っているから側にいるのは心穏やかではないだろ。」
「そんな………。」
「それで、ミーナはどうしたい?
俺の事は気にしないでくれ。この選択で優先されるのはミーナの気持ちだから。ミーナが後悔しない選択をして欲しい。」
私はどうしたいのか。
ダンさんは私が後悔しない選択をして欲しいと言っています。きっとどの選択をしてもダンさんは受け入れてくれるのでしょう。
私の選択は………。
「ダンさん。私がどうしたいか決めました。
リガーフェルと一緒に聞いてもらってもいいですか?」
「分かった。それじゃあ戻ろう。」
立ち上がり、リガーフェルの元へ向かいます。やっとかと言う顔で出迎えられました。
「ようやくどうするか決めたみたいだね。
それで?」
「その前に聞きたいのですが、私の力は使っている内に無くなってしまう様なものなのでしょうか?
普通の魔力とは違うのですよね?」
「確かに通常の魔力とは違うけど、まずなくなる事は無いだろうね。魂に刻まれた力だから。」
「分かりました。私は4つ目の選択肢を選択します。」
お読み頂きありがとうございます。
お分かりの方もいたと思いますが、ダンさんの前世は和田君です。




