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40 魔王は死んだ、そして帝王が蘇った

前書き



 ヤクモが本性出してきた~

 魔銃ギルドは魔弾の作成方法に関する技術を独占している。この秘密を洩らそうとする人間がいた場合、死をもってでも口止めを行うのがこのギルドの掟だった。

 そしてディオナ王国の軍に対しては、魔銃と魔弾を直接納入している。いうなれば軍事企業の複合体のような存在と言っていいだろう。


 そんな物騒極まりないギルドの重鎮であるオトナー老の店が、あろうことにも1人の女によって担保に取られてしまうという珍事が起こった。

 事件を起こした女の名はリズと言い、彼女はオトナー老の店の従業員でしかなかった。


 とはいえ、彼女は店を担保にしたばかりか、オトナー老の保有していた資金まで持ち逃げしてしまった。

 魔銃ギルドにとっては許されざる存在である。行方をくらませた彼女だったが、後日ギルドから送り込まれた暗殺者によって、この世の人でなくなった。


「はあっ、頭の中はともかく、あの胸……あの尻」

 もはやこの世の人でなくなった、かつての従業員のことを思い出すオトナー老。

「爺さん、残念がる点が間違っているんじゃないか?」

 オトナー老のピントがずれている考え方に、呆れるヤクモ。


「ワシだって、リズの体がもったいないから、できれば殺さずにつれ戻せと言ったんじゃよ。でも石頭なルシオラが、それではギルドの掟を破ることになる!と言って反対しおった」


 どこまでいっても、リズの体しか考えていないオトナー老。

 エロ爺なのはもう分かりきっていることだが、ここまでくると重症と言うより、何か大事なものが抜け落ちているようにすら思えてしまう。



 一方でヤクモも、リズのことを思い出した。

 ヤクモが【海港都市ディール】に向かうことを決めた際(出発する時点では王都の方を目指していたが)、ヤクモの後釜として新たに【ガン・ザ・ロック】に雇われた店員だった。

 仕事を引き継ぐ必要があったので、その期間にリズとはいろいろ話したりしていた。


 体目的で採用したオトナー老の基準よろしく、豊満な体をした女性だった。ただし、頭は底抜けに悪かった。

 帳簿をつけることが出来ないどころか、足し算引き算すら危うく感じるほど。店のレジに立てば、確実に商品の金額や釣り銭を間違える頭しかついていなかった。


「馬鹿だったとはいえ、こんな死に方は嫌だよな」

「全くじゃ」

 頭の中で考えていることはともかくとして、彼女の死を無念に感じる点で、2人の意見は合致していた。


 とはいえ、これが魔銃ギルドという組織なのだ。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 さて、オトナー老が【スプリングフィールド】の店長になったことで、この店にあったヤクモの仕事部屋は、現在ではオトナー老の仕事部屋に代わっていた。


 しかしオトナー老がこの街に来る前に、ヤクモは自分の新しい仕事部屋を既に用意していた。

【スプリングフィールド】の隣に5階建ての建物があるのだが、そこを買収した。

 大通りに面してないとはいえ、街中にある【スプリングフィールド】は土地代だけでもかなり値が張る。当然ながらそれに隣接する建物も、土地代だけでかなりの額になったが、現在のヤクモの資産であれば、都市内部の建物を1件購入するぐらい、さほど負担になる額でなかった。


 とはいえ陰でさまざまな事業を展開しているものだから、忙しさのあまり一時期はろくに眠ることすらできずに働きまわっていた。

 それもそろそろ限界と言うことで、ヤクモは5階建ての建物を手に入れると同時に、建物内に様々な分野のスタッフを雇い入れ、自分の手掛けていた仕事を部下たちに分散させて片づけていくことにした。

 おかげで今までの忙しすぎた状況が改善され、夜にゆっくりと寝る時間も確保できるようになった。




 そんな建物の5階にある総帥の仕事部屋。

 様々な事業に手を出したヤクモは、今ではディールの街を中心に、王都内部の経済活動にまで手をだしている。

 そのようなわけで、現在では複数の企業や商会を動かす、総帥となっていた。


 総帥専用の執務室では、椅子に座るヤクモの膝の上で、黒猫になっているヤヌーシャが丸くなっている。経済界の陰の帝王(フィクサー)となったヤクモは、そんなヤヌーシャの体をなでてやる。

 ヤヌーシャとしては、撫でられるのは面白いことでないのだが、黙っている。

 ついでに総帥の部屋には、ペルシャ猫のスピキオもいるが、こちらも丸くなって午後の惰眠を貪っている所だった。


「ゲーテ大公、昨日はひどい目に遭ったようだね」

 そんな中、ヤヌーシャを撫でる手を止めることなく、ヤクモは籠に囚われているネズミのゲーテ大公に話しかけた。


 ――ヂュッ

 いつもより声が濁った感じのゲーテ大公。


 実は昨日、この部屋の中に1匹のネズミが侵入した。

 そのネズミは囚われのゲーテ大公を助けに来た忠臣ネズミ……ではなく、なんと逆にゲーテ大公の命を狙ってきた暗殺者--暗殺ネズミだった。


 あわや暗殺ネズミに殺されそうになったゲーテ大公だが、間一髪のところで部屋にいたスキピオが暗殺ネズミにかじりついた。ネズミはその一撃で事切れてしまったが、スキピオが殺したネズミをむしゃむしゃと目の前で齧り始めたものだから、ゲーテ大公は恐怖のせいでひっくり返ってしまった。



「あの暗殺者……暗殺ネズミと言ったほうがいいかな。あれを差し向けてきたのは、君の叔父さんだったよ」


 ――ヂュッ!

 声が濁っているが、「そんなバカな!」と鳴くゲーテ大公。


 ゲーテ大公の叔父であるシュタイン・ゲーテは、現在【海港都市ディール】にあるネズミの国の統治者であるゲーテ大公に代わって、大公代理となってネズミの国を治めているネズミだった。

 ちなみに代理である理由は単純で、肝心の大公は今ヤクモの部屋の籠に『生きたまま』囚われていて、逃げ出すこともできないからだ。


「君の叔父さんはネズミにしては、かなりの野心家だからな。君がいなくなれば、代理の名が取れて万々歳なんだろう」

「そんな、叔父さんが僕を殺そうとしているなんて……」

 ゲーテ大公はブルリと震えた。


「全く、人間ならいざ知らず、ネズミの世界でさえ陰謀を巡らせるんだから、世の中とは恐ろしいものだな」

 そう言ってヤクモは頭を振った。


 しかしゲーテ大公は、そんなヤクモと考えを同じにしない。

「あなたが僕を捕えたから、叔父さんがおかしくなってしまったんです!」

「なるほど。確かにそうともいえるかもしれない」

 ゲーテ大公の言い分を聞き入れるヤクモ。


「ただし、君がいた頃から叔父さんは機会さえあれば君の命を奪おうと考えていたようだな。ネズミの国の軍隊の多くは、叔父さんに味方していたようだし」

「……」

「全く、食えない叔父さんだ」

 そう言い、ヤクモは立ち上がった。


 膝の上にいた黒猫のヤヌーシャは、その拍子に飛び上る。

「では、俺は用事があるので失礼する。スキピオ、後のことは任せた」


 ――ニャー

 鳴き声で「御意」との意思を伝えて、スキピオは部屋を出て行くヤクモを見送った。



 ゲーテ大公はここにいるスキピオが、自分が逃げ出さないよう監視している猫であることを知っている。だが同時に、昨日はこの猫のおかげで命を助けられた。


「あなたは猫なのに、どうして人間の言うことを聞くのです?」

 そう聞かずにいられなかったゲーテ大公。自分と違って、スキピオは捕えられているわけではないのだ。

「ふん、食料如きが偉そうな口を聞くな」

 だが、スキピオから帰ってきた答えに、ゲーテ大公は質問なんてしんなければよかったと思い直した。


「全く、人間も猫も、叔父さんでさえ恐ろしい」

 誰も信用できる相手がいない。「桑原桑原」とゲーテ大公は1匹で唱えた。




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 その日の夜。

 猫たちが集会所に使っている街のボロ屋。その奥の部屋に、ネズミの国の大公代理、シュタイン・ゲーテが連れてこられた。

 大公代理を務めるほどのネズミでありながら、彼がこの場へ来たのは、自由意思によるものでない。

 現在彼の体は、三又猫のミケーネにくわえられていて、逆らえばひと噛みで殺されてしまう。


「大ボス、ボス、ネズミの国の大公代理、シュタイン・ゲーテを連れてきました」

「ご苦労です、ミケーネ」

 部下の猫の労に答えたのは、黒豹の姿になったヤヌーシャ。

 いつぞやのように大公代理の体は口から解放されたが、直後ミケーネの足で押しつぶされて動きが取れなくなる。


「ヤクモ様、私をお呼びになられるなら、このような手荒な方法でなくとも、お声だけですぐさま参上いたしますが」

 ミケーネに捕まっている大公代理が言う。ただし、声に不機嫌な様子は微塵もない。

 ここが猫の集会所であるから、自身の命の危険を思って……という感じでもない。

 つまり、腹の読めないネズミなのだ。


 もっとも、そんな大公代理の腹の中などさして気にしないヤクモ。

「シュタイン・ゲーテ大公代理。今日君をここに連れてきたのは、頼み事や親睦を深めるためではない」

「では、どのようなことでしょう?」

「叱責するためだ」

「叱責……ですか?」

 白々しい声を出す大公代理。


「大公代理が、血縁関係にある甥っ子を殺すなんてことに関わると困るんだがな?」

「はて、一体ヤクモ様が何を申されているのか、私にはわかりかねます。甥の命を狙うなどとは……」

「まあ、君としてはそう答えるしかないわけだ」

「……」

 大公代理は心中を見透かされていることに気付いて、黙り込んだ。


 ただし、黙っていたのはわずかな時間のこと。

「では、言葉を代えます。甥を殺していただけないでしょうか」

「そして自分はネズミの国の正式な大公になりたい……だろ」

「はい、以前にも似たような話をいたしましたな」


 以前にも同じようなことを話した。

 シュタイン・ゲーテ大公代理は、甥の大公が死ねば、代理の文字をつける必要がなくなって、晴れてネズミの国の正式な大公として君臨することができる。

 一方のヤクモは、そんな大公代理のことが分かっていて、甥の大公を捉えている。ヤクモが大公の身柄を解放すれば、それは大公代理にとって、政治権力の危機となるからだった。

 つまり、ゲーテ大公を生かしているのは、叔父の大公代理を常に脅迫するため。


 生臭い政治権力の争いを、この場で話し合うヤクモとネズミの大公代理。


 ――フアアアッ、眠いですわ。

 あまりにも退屈なので、ヤヌーシャは欠伸をした。


 ただし声には、「グワワワアアアッ」と、黒豹が大きく口を開けながら鳴くことになる。


 捕食者である猫の集団の中でさえ肝の座った態度を見せていた大公代理も、これにはさすがに全身の毛が逆立って驚きを隠せない。


「大公代理、あまり俺に逆らわないことだ。でないと、君の体があの口の中に放り込まれてしまうからな」

「……心得ました」

 所詮ネズミでは、人間や猫、あまつさえ黒豹までいる相手に勝つことはできない。悔しさをにじませつつも、大公代理は、ヤクモの言葉に従った。


あとがき



 さあ、本編の読後感とか、いろんなものをぶち壊す時間を始めましょう(そう言うのが嫌な人は、あとがきを読まずにスルーすることを強く推奨します)。



 今回ネズミの話とはいえ、政治権力の生臭い話を書こうと思いました。

 ただ書いてるうちにものすごくどうでもいいな~って感じで、モチベーションがグッテングッテンとだだ下がり。

 面白味がないので、途中で適当な感じて切り上げて終わらせちゃいました。

(ヤヌーシャがあまりのつまらなさに欠伸をした途端、全ての駆け引きが吹き飛んでしまったのです)


 てなわけで、今回はいつもより短めです~

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