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幸福な食卓

作者: 吉成 けい

 今年も私へのプレゼントは無し。もう十年はもらっていないと思う。最後にもらったのは、確かリオがまだ三歳の頃。翌年はリクが産まれたばっかりでクリスマスどころじゃなかった。


 あれから何ももらってないのか。


 私が夫の弁当作ったり子供のご飯を作ってるというのに世間はきっと朝から晩までラブしているのだろう。みんな浮かれやがって。ばかばかしい。


 いや、そんなことどうでもいい。


 本当に腹が立つのは夫はリオには梨社から出ている最新スマートフォンnPhone5pを買い与えリクには最新タブレットnPadPearを買い与えたことだ。特別裕福でもないのに高額商品ばかり。それなのに私には感謝の言葉もなければ、帰ってくれば当たり前のようにご飯を待って、服も脱ぎ散らかしておけば私が片づけてあげるとでも思っているのか。


 まぁ実際私はごはんも作るしお風呂も沸かす。シャツはアイロンをあてておくし革靴も時々磨いてあげている。そうだ、別にプレゼントが欲しいわけではない。一言でいい、ありがとうって言ってもらえればそれで良かったんだ。それで良かったんだけど、もう戻れないよね。私知っているのよ、あなたがカルティエのネックレスを買っていたこと。そしてそれが私以外の女のためにだということを。無駄遣いをして。そんな余裕があるなら、私にも何か買ってよ!


 ふぅー。落ち着け私。そのためにあなたを高額な保険に入れておいたのよ。そう、私はあなたを殺すの。ただここ一年どうやって殺すか考えていたけど、まったくいいアイディアが浮かばないわ。とりあえずあなたの食事だけ塩分多めにしている。でも、今のところ変化なし。しいていうなら、秋の健康診断では少し血圧が高いという結果が出ただけ。高血圧って死因になるのかしら?こういうのってネットで検索すればすぐわかるのだろうけどそれも簡単にばれてしまうから困ったものよ。


 私が情報を得ることができるのはサスペンスドラマだけ。今のところ使えそうなのは、いくつかある。まず殺し方。首つり自殺に見せかけるように殺すには相手を背負い投げをするようにネクタイやロープで引っ張って殺すこと。ただ、どれだけ暴れるかわからないから泥酔した時しか使えそうにない。あと自殺する理由も必要。簡単そうで実はハードルが高い。


 次に死亡推定時刻の改ざん。冬場であれば外からの侵入者を装えば遺体をある程度保存できる。でもそれだけじゃごまかしがきかないから直腸に氷の棒を入れる。体温を直腸で計測するらしいのでこれで死亡推定時刻をごまかせる。この二つはいつか使えそうだけど、果たしてその時きたらこのようなことを冷静に考えられるのかな。無理かもしれないけど、知識は貯めておくにこしたことはない。


「ご飯できたわよ。食べよ。」


 いつか転がり込むはずの大金を夢見て、今夜も私はご飯を作る。愛する家族のために。

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