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沙耶、興味が湧く

マリアさんの声に、私を含めみんながマリアさんの方を向く。

何事かと思ったら「サーシャの服や生活用品揃えないとねぇ」とのんびりと言った。

…忘れてた。私、今着てるチュニックワンピースしか持ってない…。

そこに気づいたラル君も「そうですね…。俺の服着せる訳にもいかないし…」と困ったように呟いている。

…いやね、ラル君。服の心配じゃなくてさ、下着とか…ねぇ?

男の子とは買いに行きづらい…

きっとそこまで頭回ってないんだろうなぁ、18歳だもんねぇ。

そう私がラル君を生温かく見つめいてると、おばさんがズバッと「いや、服より下着だよ。あんた、サーシャと一緒に下着屋入れるのかい?」と核心をついた。

ラル君は一瞬止まった。言葉の意味をかみ砕いているのだろう。

そして…ボンッと音がするんじゃないかと思うほど、顔が真っ赤になった。

あー…想像したんだろうなぁ。うん、18歳の反応ぽいわ~

ていうか、肌白いから目立つなぁ。…あぁ、耳まで赤くして…

何だか年相応のラル君の姿に、ちょっと可愛いなと思ってしまった。

「…行ける気がしません。」と下を向きつつ小さく呟くラル君。

「だろうねぇ。あんたには刺激が強いだろうしね~。…でも、困ったね。あたしもまだ仕事があるし…」

マリアさんは困った顔でどうすればいいか考えている。

するとダイさんが「あっ、良い奴がいるじゃねえか!今日休みだから多分家にいるだろ!」とマリアさんに声をかける。

その声に「あぁ!いたね、ちょうど良いのが!」とマリアさんも明るく頷いた。

合点がいったであろうラル君だけ、ものすごく嫌そうな顔をしている。

「…あれに頼むんですか?」

ものすごく忌々しげなラル君の声。

え?そんなに変な人なの!?

私は不安そうな顔でラル君を見上げる。

ラル君は私が見ていることに気づき、バツが悪そうに一度宙を仰いでから私に視線を戻す。

「ごめんね、不安になっちゃったよね?大丈夫だよ、怖い人ではないから」

一度宙を仰いでから戻されたラル君の表情は、私を安心させようとする笑顔だった(かなり弱弱しかったが…)

「ラルはフィンが苦手だもんなぁ。いっつも良いように遊ばれてさぁ」

「そうだねぇ。そんなラルがこんな可愛い子の面倒をみるなんて知ったら、絶対からかわれるもんねぇ」

と2人は笑っている。

ラル君はまた複雑そうに顔を(しか)めた。その場面を想像しているのか…

ここまでで分かったことは、これから会う人はフィンという人で、ラル君が苦手な人物らしい。

「あの、フィンさんってどんな人なんですか?」

恐る恐る私は口を開いた。

…だって気になるじゃん?ここまでラル君が嫌そうにする人物なんてさぁ。

それにこれから(主に下着の意味で)お世話になる人だし?

「あぁ、ごめんね。これから会うのはフィンティアメル。あたしとダイの娘さ。いつもはこの店で働いてるんだけど、今日は休みでね。年もわりと近いし、好みも似てるんじゃないかと思ってさ。丁度良いだろ?」

とマリアさんが答えてくれる。

…薄々気づいてたけどこの2人夫婦だったんだなぁ。

しかも、子供って…

確か、私が年齢を言ったときに「それじゃうちの娘と同じだ」とか言っていたような…

…タメかっ!

ものすごく会いたくなってきた!!

…この世界の21がどんなものか拝んでやろうじゃないか…!

「…すぐに会いたいです…!」妙に据わった声が出た。

さぁ、すぐにでも!!と「どこにいますか?2階とかですか!!?」と私は部屋の隅にある階段を指さす。

マリアさんはそんな私をおかしそうに見つめながら

「ごめんねぇ、この家にはいないんだよ。ちょっと歩くけどラル坊と一緒に行っておいで?」

と私の頭を撫でる。

…ん?おかしくないか?

「えっと…一緒に暮らしてないんですか?」

自分の子供で、同じ職場で働いているのならば、当然同じ家に住んでいると思っていた。

それから、一緒に住んでいない理由を探し、妥当な理由を見つけたので「ご結婚されてるんですか?」と続けて聞いた。

一緒に働いてるのに、一緒に住んでいないとなれば結婚以外私には考えられなかったからだ。

…21で結婚。

まぁ…無くはないよな。

日本は晩婚化してたから中々私にはピンとこないが…

それを聞いて、マリアさんはキョトンとしか顔をしてから合点がいったように「あぁ、そうだったね。あんたは知らないのか」と呟いてから、教えてくれた。

この世界では成人する18歳になったら親元を離れ、1人で暮らすことが義務付けられている。

たとえ、親の後を継ぐため同じ仕事をしていてもそれは変わらないということ。

1人暮らしが終了するのは、結婚するか未成年者を養う場合のみ。

なので、1人暮らしをしている者と言えば、未婚の成人してる者を指すこと。

「…もう21だから、早く身を固めてほしいんだけどねぇ」

とマリアさんはため息を吐く。

「…俺はあいつが行き遅れないか本当に心配だ…。上げ足を取るのばっかり上手くなって可愛げが足りないんだよなぁ…。」

と少し遠い目をして、ボソッと呟くダイさん。

…21で身を固める?…行き遅れ?

なんか、ものすごく聞き捨てならないセリフが…

「21歳って結婚する歳なんですか?」と聞いてみる。

「あぁ、女は19~21が適齢期でねぇ。本当心配だよ。」

はぁ~と深いため息を再び吐くマリアさん。

…私、この世界では適齢期なのか(いや、ここでは15だが)

ぼんやりとそう思っていたら、ラル君が手を握ってきた。

驚いて見上げると、どこか戦地に赴くような真剣な面持ちのラル君が「…とりあえず、フィンの家に向かおうか」と私に向かって笑う。(若干引きつってるが…どこまで会いたくないんだ)

「あぁ、そうだね。いっておいで」と我に返ったマリアさんが笑う。

ダイさんは「あぁ、誰かあいつをもらってくれるやつは…。器量は悪くないんだ…」とまだ呟いている。

「じゃあ…行ってきます」と硬い声のラル君に引っ張られながら「いってきます!」と2人に向かって、ちょっと大きめな声で外出の挨拶をする。

マリアさんは笑って「いってらっしゃい」と手を振り、ダイさんは私の声で我に返ったのか「おぉ、いってこい!」と笑って言ってくれる。

…挨拶をすれば返ってくる挨拶。

久しぶりに感じる感覚。

私はこの世界に帰る場所があるのだ



次回、新しい新キャラ登場です~!

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