沙耶、王都に着く
そうしてアルさんとの11日間の旅の末、私は王都エディルガルドに足を踏み入れた。
さすが、王都というだけあって今まで通ったどの街よりも賑わっていてる気がしたし、行き交う人達もなんだが華やかな印象があった。
うわぁぁぁ!
お伽噺の城下町見たい!!!(あくまでイメージです)
どこまでも続きそうな石畳の絨毯、レンガ造りの家。
その最終地点には、王都というだけあってお城が佇んでいる。
恐らくキラキラした目で王都の街並みを見ているであろう私にアルさんは「どうだ?初めての王都に来た感想は?」と問われ「すごいです!まだ何にもわかんないけど、スケールが違いすぎる!!」と興奮気味に答えた。
そんな私の返答にアルさんはちょっと苦笑いを零した後、すっと居住まいを正した。
私はアルさんのいきなりの変化になんだろ?と首を傾げる。
「ようこそ、王都エディルガルドへ。王都はサーシャ、貴女を歓迎します。王都でのこれからの貴女の生活が幸多からんことを願います。」とアルさんは舞台役者が口上を述べるように言葉を並べ、恭しく頭を下げた。
どこか芝居がかっているのに、その立ち姿はとっても綺麗でカッコ良くて。
いつものアルさんとは違うその姿にしばらく私は息を飲んで見つめてしまった。
アルさんは視線だけこちらに向けて「なかなか様になってただろ?」と言ってにやりと笑った。
「はい…カッコ良かったです…」
私はぽーとしたままそう呟いた。
ん?
私、今カッコ良かったって言ったか…?
本人目の前で…?
そろそろとアルさんを見つめると、キョトンとした顔をしている。
…恥ずかしい!!!
あんまり、本人目の前でカッコいいとか言わないよね!!
いや、俳優さんとかなら言うけどね!
でも、普通の人目の前でそれはないわ、私!!!
あまりの恥ずかしさに、私の顔にみるみる熱が集まるのが分かる。
アルさんの顔を見てられなくて思わず下を向くと「ぶは!」とアルさんが耐えかねて笑いを零す音がした。
「ほんっ…と…あんた…おも…しろす…ぎっ!!」
可笑しそうに笑いながら、途切れ途切れ言葉を発するアルさん。
相当ツボに入ったらしい。
あぁ…穴があったら入りたいとはこの事だ!!!!
でも、笑われ続けるのも気分が良くないので、私は顔を上げキッとアルさんを睨む。
まだ顔は赤いが構ってられるか!
「…だって!アルさんがいけないんです!!いきなりそんなキチンと喋りだすし!お辞儀も綺麗だったし!!普段のアルさんと違ったから思わず、言っちゃっただけです!!」
言ってる事は難癖つけてるだけだし、結構いつものアルさんケチョンケチョンに言ってるが、悔しい気持ちが強いのであえてスルーの方向で。
でも、そんな私に言葉にも「あんたひでぇ!!」とまだケタケタ笑ってるから良いだろう。
本人気にしてる様子ないし。
「で、結局なんであんな挨拶したんですか?」
腰に手を当てながら、私はアルさんを見る。
いきなりすぎた。
何か意味があるのか。
それともアルさんの気まぐれなのか。
こんなに私が恥ずかしい思いをしたのだから、気まぐれだったらアルさんに一発かましてもいいだろうか?
ようやく笑いの波が去ったアルさんが「あぁ」と涙をぬぐいながら息を整える。
「慣例だよ。初めて王都に来た人間に王都の祝福をって言う。本当はそういうの専門にやってる人間もいるんだけど雇うと金かかるから経費節約で俺が代役をって事でいつもやってるんだよ。本当はもっと長い口上があるんだけど、そこは略式で。要は言いたい事伝わればいいわけだし。」
なるほど、ちゃんと意味があったのか。
私が納得していると、その姿を見ていたアルさんが私の頭をポンポン軽く叩いた。
「疑問も解決したみたいだし、とりあえず今日は旅の疲れをとろうぜ。あんた歩きっぱなしで疲れたろ?」
そう言われると、ここ数日歩くか街で寝るかだけで、まともに気が休まっていないのを思い出した。
なので素直に「確かに、疲れました」と答える。
その私の言葉で「じゃあ、行くか。」とアルさんは歩き出す。
ここから、私の新しい一歩になるのだ。
魔術師名簿に登録。
自活への第一歩。
…不安が募るがアルさんが「大丈夫」って言っていた。
それを信じて進まなくては。
アルさんの広い背中を見上げながら、私は歩き出した。




