沙耶、憂鬱になる
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食事にしようと連れて行かれた場所は、食堂のような場所だった。
でも、大人数を囲うテーブルとかはなくて、すべてが個室。
落ち着いてご飯が食べれそうな、静かな雰囲気のお店だ。
色々、目新しいものを見つめる私をテーブルの奥に座るようにアルさんが進め、大人しくそれに従う。
そして、アルさんが手前の席に腰掛けた。
キョロキョロ私が辺りを見回してる間に、アルさんがテキパキと注文をしている。
そして少しの時間が過ぎて、料理が運ばれてきた。
…失念していた。
そうだった…シーガ村の料理事情は私が軌道修正をかけたので忘れていたが、この世界って基本パンとスープのみだったんだ!!
決して不味くはない。
このお店のスープもパンもきっと美味しいことだろう…。
でもね…絶対また飽きる!!
今度は3日で飽きるね!
5日も我慢できないよ!!!
…でもせっかく連れてきてもらったし、文句言わずに食べないと…
少し億劫な気持ちでスプーンを持ち、スープを口に運ぶ。
野菜は甘く煮られてて、お肉も口の中でホロっと溶けるほど柔らかく、スープも濃厚でとっても美味しい。
…美味しいけど
………スープだ。
これからの道中の食事を考えると「ふぅ」と小さくため息が落ちた。
そんな私を見てアルさんが、「どうした?」と声をかけてきた。
はっとして、アルさんの方を見ると不思議そうな顔で私を見つめていた。
「口にあわなかったか?この店の料理上手いと思うんだけど…」
と、アルさんも一口スープを飲み「うん、うまい」と呟いた。
私は慌てて「違うんです!美味しいです。」と否定してから、小さな声で「…でも、またスープ生活が続くと思うとちょっと…」と呟いた。
その言葉を聞いて、アルさんは一瞬だけ目を瞬かせ合点が言ったという様に「…あぁ」と納得の声を上げた。
「確かに…あんたの作る料理に比べたら、これから寄るであろう店の料理は全部単調かもなぁ。基本、似たような料理だし」
と、自分のスープをかき混ぜながらアルさんは呟いた。
…似たようなというよりは、全て同じです。
「でも大丈夫です、全部食べます。せっかくアルさんに連れてきていただいたし、文句言いません。」
と、アルさんに笑顔で伝えパンを千切る。
…本当は、自分で料理しますって言いたいんだけどなぁ。
でも、現実問題として無理だと、流石の私も分かる。
基本、一つの村や街には一泊しかしないはずだ。
目的地は王都。
それまでに寄る所は中継地点に過ぎないのだから。
そんな一泊しか泊まらないような宿に、キッチンなんかありはしないだろう。
今回の宿もなかったし。
そうなったら必然的に、食事はこういった食堂でとることになる。
…分かってる、分かってるのだ。
でも…自分の思い通りのものを作れるようになって食事がまた楽しく、人に食べてもらう喜びも知ってしまった私の気持ちとしては…残念だ。
ワガママなんか言うつもりは毛頭ないが、純粋に残念で「ふぅ」と、また小さくため息が落ちた。
…しまった!
ため息なんか吐いたら、アルさんが心配するじゃん私!!
「あの、違うんです!」と慌ててアルさんに顔を向ける。
そこには、心配したアルさんはいなかった。
そう、心配なんて微塵もしていなかった。
だってアルさんは…ものすごく、面白い事を思いついたような顔で私を見ていたのだから。
そしてそのまま、「良いこと思い付いた」と楽しそうに笑った。
…良い事?
「あの、何を…」
「そうと決まれば善は急げ!」
私の言葉に被せる様に、アルさんは立ちあがる。
そして、「ほら、行くぞ」と私の手を取り立ちあがらせた。
急の事で「え!?」と間抜けな声を私が出してる間に、瞬く間にアルさんはお会計を済ませ食堂を後にした。
…ものすごい早業だな!
って、感心してる場合じゃないよ!
私、ご飯一口ずつしか食べてない!!!
「あの、どこ行くんですか!?」
私の腕を引きながら、アルさんは人通りの多い通りをどんどん歩く。
少し小走りになりながら、私がかけた言葉にアルさんは目線だけ私に向けて「着けば分かるよ」と悪戯する子供のように、にやりと笑った。
まぁ、ここまでくればアルさん何するか分かりますよねw




