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沙耶、特訓する

日も傾き始め、本日の宿に無事到着した。

そしてアルさんは、言葉通りに特訓を開始した。

私が何の能力がむいているか分からないと言って、アルさんは色んな方法を試してくれた。

何も描いてない紙に手を使わずに絵を描くとか、ボールを何もない状態からバウンドさせるとか、蕾の花を咲かすとか。

全部子供向けの方法らしいけど、魔力持ちはこんなこと出来るのかぁと感心する。

アルさんが最初お手本を見せれくれてレッツチャレンジ!なんだけど

結果…出来るはずないよね!

全部無情な結果で終わった。

アルさんは無言で頭を抱えている…

もともと魔力持ちの子は、小さい頃から何らかの力の発現があるから、それを見て能力を伸ばしてくらしいけど、私に出来るはずないよね。

本当は異世界トリップしたから、なんかチートな能力あるかなとかちょっと思ってたけど、やっぱり無理でした…。

私は一般人なの…

「…私、魔術師登録出来ますかね…?」

不安げな声が漏れる。

頭を抱えてたアルさんがはっと私の方を向く。

だって、何もできないしさ。

能力測定とかあるって言ってたし…

これで登録できなかったら私、何のために村を出たの?

そもそも働かずにどうやって生きていくの?

ちょっとずつ不安は膨らむ。

マイナスな想像をする私の思考を止めたのは、アルさんの「大丈夫だ」という言葉。

強く強く私を勇気づけるような声色だった。

「俺が何とかする。だから、そんな顔すんな。サーシャは笑って構えてろ。絶対に登録させてやるよ」

と笑ってくれる。

人懐っこい、この笑顔を見るとほっとする。

大丈夫なんだって思える。

私の体からゆるゆる力が抜ける。

「はい、よろしくお願いします」と言って私も笑った。

アルさんが大丈夫って言うんだ。

だから大丈夫。

「でも、これから発現するかもしれないから、毎日サーシャは特訓だな」

と爽やかにアルさんは言い放った。

…諦めてなかった!!!


それから特訓がひと段落し、アルさんに疑問に思ってた事を問いかけた。

「魔術師名簿に登録すると、どんな職業に就けるんですか?」

常々思ってたことだ。

この世界の雇用制度が分かってないから、疑問で仕方なかった。

自分の好きな職業に就けるのか、それとも魔力持ち専用の職を与えられるのか。

後者の場合私は魔力ゼロなので、働いていけるか謎すぎる…

「ん~…ほとんどは王宮の研究員になるかな。王宮のために自分の能力を磨いて何か王宮で役に立つことをしてる。でも、普通に働くやつもいるぜ。数は少ないけど。」

とアルさんは答えてくれるのでほっとした。

良かった…普通に働く道もある見たい。

でも、その話を聞いてまた疑問が浮かぶ。

ほとんどが研究員…。

「アルさんは王宮魔術師って言ってましたよね?それは研究員とは違う職業なんですか?」

アルさんが研究員にはどうしても見えない。

さすらいの旅人?って雰囲気なんだよね。

仕事は未登録者を登録させることって言ってたし、違うのかな?

「…俺?俺は…王宮仕えではあるけど、研究員ではないな。まぁ、似たようなもんだよ」

私の疑問にアルさんは歯切れ悪く答える。

いつもハキハキと何でも喋ってくれるので、ちょっと不思議だ。

言いたくないようなことなのだろうか?

「ま、今は旅をして見聞を広げつつ、あんたみたいな魔力持ちを保護、登録するのが仕事。まだまだ駆け出し中の身だよ。」

とアルさんは締めくくり「腹減ったから、何か食いに行こうぜ」と、いつもの笑みを浮かべて立ちあがった。

この話はここで終了みたいだ。

残念だが仕方ない。

私にも言えない事情がある様に、アルさんにも触れられたくないことがあるのだろう。

そう思って私も立ちあがる。

いつも明るく気さくなアルさんの、違う一面に触れてしまった…そんな気がした。

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