沙耶、恥ずかしがる
…話の流れからして、魔法の実践だってのは分かってたけどさ!
でも、いきなり崖の上ダイビングとか怖いものは怖い!!
私の疲れた声を聞いて楽しげに笑うアルさんをジロリと睨む。
それを見てアルさんは「悪い悪い」と私の頭を撫でながら微笑む。
悪いって思うのなら、もうやらないで欲しいな…!
そこから、アルさんは能力の説明をしてくれた。
アルさんの得意な能力はやっぱり物体や物質を“停止”させることだった。
小さいものはスプーンから、大きなものなら自分の体まで。
ありとあらゆるものを停止させることが出来る。
やろうと思えば雨粒を自分の身体に触れない様にも出来るらしい。
…すごいな!
今回の崖の落下も一歩出たところで、すぐ停止することも出来たけど私の反応を見たくてああしたらしい。
理由は簡単。
「だって楽しくて面白いだろ?」だった。
…この人は楽しい事に貪欲のようだ。
主に自分の思う楽しい事。
…はた迷惑な性格だな。
殴ってもいいだろうか?
殺意がふつふつと沸いてる私の事を知ってか知らずが「いい経験になっただろ?」といい感じの笑みで締めくくろうとするアルさん。
ムッとアルさんを見つめると少し困ったような顔をし「怒ったか?あんたがすごい興味深そうな顔してたから、少し調子に乗った。本当にごめんな?」と謝られた。
そんな風に素直に謝られたらさ…「大丈夫です」としか言えないよ。
もとは私が言いだしたことだし…
「でも、次からこういうのは止めて下さい。心臓に悪いです。」とアルさんに言えば「おぉ」と笑って頭を私の撫でる。
自分の楽しい事優先のくせに、私が本気で怒ると素直に反省し謝ってくれる。
…不思議な人だと思った。
そして憎めない。
…そして冷静になり私は気付く。
「おろしてください…!」
まだ、私はアルさんに抱きかかえられていると言う事を!
恥ずかしいよ、この体勢!!
15って言っても中身は21だからね!
メンタル的にこの体勢キツイ!!
「ん、俺は別にこのままでも良いぞ?つーかあんた軽すぎ!ちゃんと飯食ってんのか?」と私を高い高いするアルさん。
心配そうに眉を寄せながら、私の体重を量ってるようだ。
…恥ずかしい!!!
本当勘弁して下さい!
まるで子供扱いだよ!いや、アルさんにしたら15なんて子供なのかもだけどさ!
でもね、この世界でも15の女の子って微妙なお年頃だと思うの!そういうこと軽々とやっちゃダメだと思うの!
「食べてます!食べてますから、早くおろしてください!!」
必死に懇願する私の様子に首を傾げつつ「わかった」と私をおろしてくれるアルさん。
「子供ってこういうの好きなんじゃないのか?」とアルさんものすごく不思議そうにしている。
…幼児は好きだと思うよ?でもね、年頃の女の子は喜ばないと思うな!!
無言でブンブン首を振る私に「そっか」と、どこか寂しそうに呟くアルさん。
一瞬不思議に思ったが、次の瞬間にはいつもの人懐っこい笑みを浮かべ「次の街に行ったら、サーシャは能力開花の特訓な」と言い放った。
…そんなの無理だってば!!




