沙耶、魔法を知る
アルさんは、自分が使っていたスプーンをじっと見つめ始める。
そして、手を離す。
そのスプーンは落下すると思ったが…手を離した状態で止まった。
そして、アルさんは手を触れていないのに左右に動き始める。
すごい!!
思っていたものとは違うがすごいものはすごい。
食い入るように見つめながら「すごいです!」と興奮気味に口を開く。
そんな私を見ながら「これくらい、初歩中の初歩だよ」と何でもないように笑うアルさん。
そんな手品のような魔法を見た後に、アルさんが魔法について教えてくれた。
この世界の魔法…つまり、魔力持ちの持つ能力はイメージを実現させられることらしい。
自分の思い描いた様に対象を操れる。
対象物がはっきりしているものほど扱いやすく、対象が曖昧なものになればなるほど強い力が必要になるらしい。
「じゃあ、手から光とか火とかも出せるんですか…!?」とさっきの興奮が冷めない私はそう口にする。
「それは個人の能力の差…想像力の高さの違いで変わるな。俺はできないけど、探せばいると思うぞ?曖昧なものほど、自分の中の想像力の力が必要になる。それに向き不向きもあるしな。火は出せないけど、大岩をぶっ壊せる奴もいるし、その逆も…ってパターンもある。」とアルさんは丁寧に説明してくれる。
それは想像力で無限に可能性が広がるって事ですね!!
じゃあ、探せばどこぞのファンタジー世界の魔法使いのような人もいるってことですね!!
すごすぎる!!
そして、この話を聞いて気になることが…
「アルさんはどんな能力が得意なんですか?」
スプーン浮かすのは初歩って言ってたから、そっち系なのかな?
それとも、違う能力??
火は出せないって言ってたけど…気になる!!
期待に胸を膨らませる私の顔を見て、アルさんはちょっと考えてからニヤリと少し意地悪そうな顔で笑った。
…この顔はなんだろう、嫌な予感がする…。
え、地雷踏んだ私?
私が若干アルさんとの距離を離れようとしていると、ぐっと私の腕を掴み「いいぜ、見せてやるよ」といつもの人懐っこい笑みでそう告げる。
うん、その顔を先に見せてくれたらすぐにでも頷いたけど…
「いや、ムリには…」と小さく呟く私。
「遠慮すんなって!」と笑っているが有無を言わせぬ雰囲気を纏ったアルさんが私の腕を引く。
それから「良い場所に移動すんぞー」と連れられた先は私達が休憩していた場所から近い…崖の上。
何故、崖?
下を見るのも怖い崖の上で、いつもと同じように笑うアルさんと青ざめる私。
…嫌な予感しかしない。




