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沙耶、道が開ける

「…どういう事ですか?アルさん」

アルさんの言葉の意味を量りかねて、怪訝な声が出た。

そんなアルさんはまるで悪だくみを話すように、私に顔を近づける。

「だから、あんたを登録させてやるんだよ。俺なら、それが出来る」

と楽しそうに話すアルさん。

…アルさんなら私を登録させることが出来る…?

「どういう事ですか?」

もう一度私は問いかける。

…なんだか、嫌なキャッチセールスのようだ。

気味が悪い…

私の心情を察したのか、アルさんが困ったように笑う。

「別におかしな方法は使わねーよ?ただ、お前の大好きなラル君には出来なくて俺には出来る事があるだけだ。…俺は王宮魔術師。そして俺の仕事は…未登録の魔力持ちを1人でも多く登録させることだ。多少のイレギュラーは許される。」

その言葉に私は驚いた。

未登録の魔力持ちを登録させることが…アルさんの仕事?

「…初耳です」

そう呟く私に「まぁ、言ってなかったからな」と笑う。

「じゃあ、見聞を広めるってのも嘘…?」

「…嘘ってわけでもない。でも、色んな村や街で見聞を広めつつ、魔力持ちの噂を仕入れ魔力持ちの保護者の説得をするっていうのが仕事なんだよ。…なかなかうまくいかないけどな」

と説明してくれる。

私は思い出していた。

初めて会った時の事を。

あの時の言葉を

“守られることが当たり前で、自分からは何もしない。その生活に満足すらしている。そんな奴らばっかり見てきたから”

アルさんはそう言っていた。

文字通りその通りなんだろう。

半ば監禁されている魔力持ち。

でも、そこに自分の自由はなく、それが不自由だと思うことなく与えられるものを受け入れるだけの魔力持ち。

そんな所にアルさんが説得したところで、良い返事はもらえないだろう。

親は頑なに反対するだろうし、魔力持ちに関しては自分で考える力もない。

「…どうして、アルさんはそんなお仕事されてるんですか?」

私の言葉にアルさんは、薄く笑う。

「理由としては魔力持ちの登録者数を1人でも増やすことが王宮魔術師としての理由。でも一番の理由は…俺も実は未登録から、登録者になったんだ。世界に出て初めて知った事がいっぱいあった。だから、他の魔力持ちにも知ってもらいたかった。自由ってどんなものか。掴み取る幸せを、知ってもらいたかった…かな?」

と答えてくれる。

…驚いた。

アルさんも未登録者だったなんて。

…そうなるまでにも、色んなことがあったんだろう。

本当の未登録者なのだから。

きっと、アルさんだって他の未登録者と同じ生き方をしていたはずだ。

それでも、外に出たのだ。

何か事情があるのだろう。

でも、外に出てアルさんは良かったと思ってるのだろう。

だから、今こうやって活動しているのだろう。

どんなに拒否されようとも、アルさんは世界をまわっているのだ。

「…で、どうする?俺はあんたを、登録させることが出来る。あんたは働けるようになる。悪い話は何もないだろ?」

と問いかけてくる。

もちろん即答…と言いたいところだが

「…少し、時間をください。ラル君に話をします。」

と答えた。

アルさんは驚いだように目を見張る。

「本当の保護者でもない奴に、言う必要あるのか?これはあんたの問題だろ?」

「本当の保護者でなくても、ラル君にはずっとお世話になりました。それこそ、本当の兄妹のように…。だから、ラル君にも分かってもらいたい。話せば分かってくれるから。一方的に出ていくわけにはいきません。何も分からなかった私を、根気よくお世話してくれたこの村の人たちにお礼も言いたいです。」

と私が言うとアルさんは、面白そうに笑って「義理堅いな~」と私の頭を撫でてくれる。

「じゃあ…明日朝、ここで待っている。それまでに、この村とお別れしときな」

…お別れ。

そうだ、アルさんと一緒に行くならば私はこの村には帰ってこられないのだ。

アルさんの住まいは多分王都だろうから、そこに行くのだろう。

もう帰ってこられないかもしれない。

優しくしてくれた人たち。

のどかで平和な暮らし。

…でも、ここでお別れしないと私は前には進めない。

この一歩がもしかしたら、もとの世界に返るきっかけになるかもしれない。

当初の目的だったはずだ。

…私に感傷に浸ってる時間はないのだ。

「…わかりました。それでは明日。」

と私は、アルさんの目を見て答える。

私の顔を見て、アルさんは満足気に頷く。

そして「やっぱりあんたは面白いよ」と呟いた。

沙耶が決断しました!

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