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沙耶、王子に出会う

真っ暗な穴の中を落ちて行く。

なに、なになの!?

何で玄関が大きな穴になってんの!!?

なんかの事故かなんかで玄関陥没した!?(そんなことあり得るのか!?)

というかこのまま落ちたら…!

わたし

死にますよねー!!!!


真っ暗な世界に光が見えてきて…

あ、ダメだ。

死ぬ!!!!

と目をつむる。

しかし、私を襲ったのは硬いコンクリートの硬い感覚ではなく…

ボフッ

という柔らかな感触。

…ついでに何か頬をくすぐるような感覚…

いや、チクチクする…?

恐る恐る目を開けるとそこは…



一面の黄金色の稲穂を揺らす麦畑。


…はい、おさらいしましょう。

私は会社が終わり、家に帰宅。

そして、家のドアを開けたら落とし穴。

そこに「あ~れ~」と落ちて着いた先は麦畑のど真ん中。

おさらい終了。


意味分からん!!!!


どういうこと!?

ここは一体どこ!?

私の家は!?

ていうか手に持ってた鞄がない!!!

あそこには私の全財産と今日の食糧が!!!


あり得ない展開に、私の頭はパンク寸前。

色んなことを考えながら、麦畑の真ん中で頭を抱えていた。

すると…


「誰か、そこにいるのか?」


少し訝しむような声音の男の人の声が…

えと、今の状況まずくない?

私、麦畑の真ん中で悶々としてる危ない人ですよ。

しかも、この麦畑の持ち主さんとかだったら、どこから入った!!ってなるよね!!?

でも、ここかどこか教えてもらえるチャンス!?

あぁどうすれば…!!

そんなことを考えていると、徐々に近づく足音。

色々聞きたいこともあるけど、不法侵入でお巡りさんのお世話になりたくないな。

…逃げたほうがいいのかな…

そう思って、ちょっと後ろに後ずさる。

ガサッ

はい、逆効果~

今ので確実にここにいるってバレましたよね。

ここの稲穂、背が高いから中腰のままうまく退路を確保できれば、気づかれずに済んだんだけどね。

「ん?こっちか?」

微妙にずれていた、男の人の足音が確実に私のいる場所に近づいて…

ガサッ

長い稲穂をかき分けるように、男の人と私は

出会った…


頭の形にそって整えられた短髪の銀色の髪。

その銀色が光に反射して稲穂と同じ黄金色に映る。

綺麗な二重に縁取られた瞳は澄んだ青空のような碧眼。

シャープな頬のラインに綺麗な薄い唇。


「…王子様…?」

私は呆けて間抜けな声だったに違いない。

でも、そう評価するしかないほど彼は、綺麗な人だった。

整ったその容姿を表現するなら、そう…

お伽噺の王子様そのものだった。


…たとえその王子が軍手をはめ、雑草を刈るための鎌を手にしていたとしても…


「えっと…君、ここで何してるの?」

ぼんやりしている私を若干戸惑い気味に見つつ、王子は幾分柔らかな声音で話しかけてきた。(私の中で彼は王子確定だ)

「あ、えっと…私…その」

いけない。こんなイケメンお目にかかったことのない私は、しどろもどろになりながら言葉にならない声を発する。

そんな私の心中を察してかそうでないかは定かではないが、ふっと王子が笑ったような空気がし、同時に私の目の前に膝をついた。

「どこから来たの?迷子かな?」

綺麗な碧眼の眼が優しく細められ、まるで幼子に話しかけるようにゆっくりと言葉を発する。

…恥ずかしい!!

綺麗な人だけど、笑うと可愛さもプラスされて破壊力半端ない!!

私は顔を真っ赤にしながら

「えと…私、東京から…き、来ました。ここ、どこですか?」

若干ドモリつつも、私は王子に向かって答えた。

よし!

第一ミッションクリア!!

ここがどこか分かれば、どうにかして帰れる!!

しかし、王子はきょとんとした顔をしながら「…とうきょう?」と小さく私の言った言葉を反芻している。

ん?

東京を知らない?

そんな馬鹿な。

大都会東京だぞ。

ここがどんな田舎だろうとそれはないだろ…(あえて、落とし穴の先が稲穂畑だったことには触れない)

「えっと、とうきょうがどこだかは俺はわからない。…ごめんね?ここはエディルガルド南部の村。シーガ村だよ。わかるかな?」

わかりません。

即答したい気分です。

なんですか、エディなんとかとかシーガ村とか!!

そんなの世界地図でも習わなかったよ!?

というか日本にいたのに何で外国!!!?

第一村人発見したけど、なんの情報も得られません!

「じゃあ、一回村に行ってみよう?とうきょうのこと分かる人いるかもしれないしね。…はい」

悶々と考えていた私の目の前に差し出される、男の人特有の骨ばった手。

「?えっと…」

困惑している私をみて、また柔らかく笑い(この笑顔、破壊力半端ないので止めていただけないか!)私の手を握る。

「手、繋ごうか?また迷子になったら大変だから…ね?」

水原沙耶、21歳。

こんなイケメンに手を繋ごうと言われた経験はありません!!!

それがこんなに恥ずかしいなんて!!!

…ていうかこの人私のこと幾つだと思ってるんだ?

この人多分私と同い年かちょっと上だよね?

それにしては、さっきから私に対する態度が妙に小さい子に対する反応のような…

「あの…1人で歩けますから…」

この状態の羞恥に負けそうな私はなんとか王子の手を解こうとするが、逆に王子は指を絡めてくる。(これは俗にいう恋人つ…な…ぎ…!?)

「だーめ。この辺の穂は背が高いから、君また迷子になっちゃうよ。」

確かに、稲穂の背は高い。

150センチの私の首元まである。

王子は背高いなぁ…

170後半から180あるよな…

イケメンで高身長。

すごいな、ハイスペック。

気を散らそうと、無駄に色んなことを考えながら黄金の波を後にする。

目指すは最寄りの村。

どうか、そこに家に帰れるヒントがありますように…









お互い名乗るまでいかなかった…

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