第6話
「そうだな、まずは君が魔術を使えないと話が始まらない」
二人だけになった店内で、ルクが口を開いた。四人の男が立ち去った店内は一気に広く感じられ、静かになった。外で降っている雨の音が微かに聞こえる。
「君も知ってるとは思うが、魔術を使うには免許がいる。勝手に使うことはできない。つまり、魔術師にならなければいけないということだ」
「はい……。魔術師になるには、学校に通わなきゃいけないんですよね? それで、試験をパスしなきゃいけないって、聞いたことあります」
「確かに、それが一般的な方法だ。だが、実は方法は他にもあるんだ」
「え、そうなんですか?」
今までに魔術に触れることがなく、その方面に明るくないトキは学校に通って魔術を教わる方法しか知らなかった。だが、他の方法があるという。
「魔術師になるには、要するに試験に合格すればいいんだ。つまり、試験合格までの道のりは、問われない。独学でやっても良し、誰かに教わるも良し。スタンダードなやり方が、学校に通うというだけで、通わなければいけないわけじゃない」
「へぇ~、そうなんだ」
「そこで君には、家庭教師をつけようと思う」
「家庭教師、ですか?」
「そうだ。捜査局で腕利きの魔術師を一人つけよう。その人から魔術を学び、試験に合格すればいい」
「なるほど」
「仮免許だが、それもこちらで用意しよう」
魔術は実技試験もあるため、いくら免許を持っていない人間でも魔術を使わざるをえない。そこで、学徒のために仮免許が発行され、限定的に魔術の使用が許可される。仮免許は学校に入学すればもらえることができる。そのため学校に通うのがスタンダードな方法なのだ。
「そんなにしてもらって、いいんですか?」
「君は世界を救うヒロインなんだ。これじゃ足りないくらいさ」
困ったように笑うルクに、トキは少し心に痛みを覚えた。自分のわがままで彼を巻き込んでしまったことは事実だ。
「ルクさん……あの、私が世界を救ったら、ルクさんのこと言いますから。ルクさんのおかげで世界が救えたって、ちゃんとルクさんの上司に言いますからね!」
力強くトキが言うと、ルクは小さく吹き出した。
「じゃあ、俺を昇進させてくれ」