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第21話

「では、試験内容の発表を行います。今回の試験は、試験官との戦闘。戦闘中の判断力、動作、魔術等の精度や正確さが成績となり、それが合格点を超えれば合格となります。成績表は試験終了時に渡します。戦闘での明らかな負け、もしくは勝ちを以って試験終了とします。戦闘に勝った時点で実技合格は決まりますが、負けたからと言って不合格ということはありません。以上です」

 試験官の言葉に頷いたトキは、己の心臓を宥めるように、胸に手を当てた。

 口上を述べた試験官が退くと、対戦相手である試験官が代わりにやってきた。長身の男性で、体格は筋骨隆々までいかなくとも、それなりにがっしりとしていて、無駄のない体つきをしていた。

「受験者ナンバー1は前へ」

「はい」

 トキも進み出て、お互いに挨拶を交わしてから間を取る。審判が二人を交互に見て、声を上げた。

「始め!」



(わわわわどうしようどうしよう。えー、と、まずは防御力を上げる魔法を……ってもう来た!)

 トキが試験の緊張に混乱していると、試験官は彼女に向かって一気に間を詰めた。掌をトキに向けて、そこから魔力を放出する。

(わっ!)

 トキはとっさに魔力の膜を作り、それを防いだ。

(ふぅ……。やっぱり緊張する。……ん?)

 そこでトキは、異変に気付く。

(私、今、考えてる? 今、一呼吸、置いた?)

 カエンとの鍛錬では、まずないことだった。彼女は一呼吸置かせるほど、そして考えられる余裕があるほどの生易しい攻撃はしない。

(もしかして……)

 トキは自分の攻撃に集中することにした。目の前の相手に注意を向けて、彼が踏み出したところに合わせて自分も飛び出す。

「せー、のっ!」

 手を突き出すと、試験官の彼は何かにぶつかったように弾け飛んだ。



「今、何したんだ?」

 ルクがカエンに聞くと、カエンは「これだから魔法を知らないお坊ちゃんは」と言いながら彼に説明した。

「トキは今空気を扱ってる。魔法は自然界にあるものを操れるでしょ? 火とか水とか、雷とか。それが、今あの子が使ってるのが空気なの。押し固めた空気の塊を、衝撃波として相手にぶつけたのよ。多分、車と正面衝突したくらいの衝撃だったはずよ」

「それは……痛いな」

「あの子、まだ素人だから力がセーブできないのよね~」

「お前が楽しそうに見えるのは俺だけか?」

「アンタだけよ」



(やっぱりだ……)

 今の攻撃を繰り出したトキの中では、疑念が確信に変わった。

(この人、カエンさんよりも弱い。鬼みたいな攻撃してこないし、般若みたいな気迫もないし。これなら、勝てるかも!)

 試験官は、何とか起き上がり再び構えをとった。

(次で決めよう!)

 トキは魔法の呪文を心の内で唱えた。すると試験官は、宙に舞った。竜巻を作り、そこに相手を乗せたのだ。

 そしてすぐさま、足に魔力を溜めて跳躍力を強化する。空中で身動きが取れない彼と同じ高さまで跳んだトキは、魔力を放つために掌を向けた。

「そこまで!」

 その時、下から審判の声が聞こえた。そちらに気を取られ、トキはついつい自分の足の魔法を解除してしまう。高く跳んでいたにもかかわらず普通の脚力で地面に戻ってきたため、凄まじい衝撃が彼女を襲った。

「あうう……! いったい……!」

 体の芯まで伝う痛みを我慢して前を見ると、試験官がよろよろと立ち上がってこちらに向かってきた。最初はやりすぎたせいで怒られるのかと思ったが、握手を求めてきただけだった。

「これからも、頑張って」

「あ、ありがとうございます!」

 トキはすぐさま手を握り返して、頭を下げた。

 相手が去って行くのを見て、トキはふと思い出した。戦闘での勝利を以って、合格になるという、先程受けた説明。

「受験ナンバー1、戦闘での勝利により、実技試験合格とします!」

 試験官が、高らかに宣言した。

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