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第17話

「……え?」

 言ったのはトキではなく、カエンだった。

「ちょっとルク! アンタ何馬鹿なこと言ってんの!? トキはまだ魔術を始めて一ヶ月よ? 普通魔術学校に通ってる生徒は二年の鍛錬を積んで受ける試験なのに、後一ヶ月で受けさせるなんて……!」

「問題があったんだ」

「何よ?」

「お前を助けるためにトキは魔術を使ったそうじゃないか」

「知ってるの?」

「上の方がそんな情報を掴み始めてる。トキが使った魔術の威力は、仮免許で許される範囲を超えていたとして、免許剥奪の話も出たんだ」

「どこからそんな情報を……」

「捜査局の目は至るところにある。どんな情報を持ってこようが不思議じゃないさ」

「それで? もしかして……免許剥奪が嫌なら魔術師の試験に受かれって? 不合格なら仮免許を剥奪されるとか?」

「お前の勘の良さは相変わらずだな……」

「本当に!?」

「ああ。俺のことが嫌いな上の考えそうなことだ。俺を失脚させるために、無理な試験を課せて不合格にし、トキに魔術を使えなくさせる。そうすれば、そもそも魔導書を奪取できなかった俺のミスとして処理できる」

「でも、その後はどうするのよ? この魔導書はトキのことを認めているし、本の力を抑えられる魔術師でないと、本は敵の手に渡ってしまうわ」

「上はあくまで俺のことが気に入らないだけさ。俺をどん底に落としたら、何か理由をつけてトキに免許を渡し、この世界を守らせるべく戦いに出向かせるだろう」

「じゃあ何? つまりはアンタが嫌われてるからいけないってこと?」

「それを言うな……」

 がっくりと肩を落とすルク。カエンはそんなルクの胸倉を掴んで顔を近づけた。

「アンタのせいでそんな話になってんの!? それに、上の奴らにトキを預けたらどんな危ない戦闘に駆り出されるかわかんないわよ!?」

「わかってる!」

「何をわかってんのよ!」

「そもそもお前がトキに助けてもらうような戦いをしなければ!」

「何ですって!」

「あの~……」

 カエンの平手が降り上がったところで、トキの声が二人の間に割って入った。

「つまり、私が試験に受かればいいんですよね? そうすればルクさんはクビにならないし、私はちゃんとした免許をもらえるってことですよね」

「いや、そうだが……」

「私、頑張ります。だから、喧嘩はやめましょ? ね?」

 何とかこの場をまとめようとするトキ。それを見たカエンはルクから手を離した。

「すまなかった、言い過ぎた」

 ルクも俯いて謝罪の言葉を口にする。

「まだ時間は一ヶ月あるわけですし、何とかならないことはないですよ、きっと」

「でもねぇ、トキ……」

「それに、カエンさんが教えてくれれば落ちることなんてないと思います!」

 何も混じり気のない純粋な言葉。カエンは自分に苦笑して、トキに笑顔を向けた。

「それもそうね」

「すまない、トキ、カエン。俺がもっとしっかりしていれば……痛っ!」

 カエンが指でルクの鼻を弾いた。ルクは鼻を押さえながら彼女を睨む。

「アンタは私達を信じて自分の仕事をこなしなさい。大丈夫。トキなら、大丈夫」

 自信に満ちた表情で妖艶に微笑むカエンは、今までルクが何度も見てきたものだった。この表情をした彼女は、何事も有言実行してきた。

「……わかった。後は、頼んだ」

「任せなさい。ね、トキ?」

「はい!」


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