第二章「雪山レクイエム」(鎮魂歌)2
長い空白が続き、不思議に思いながら次の頁をめくってみると、そこには英語が記されてあった。
(あんなに苦手だったはずの英語が判読できるとは! もっと早くに、この才能が欲しかったな)
親愛なるミスター・クロワへ
とても長い日記で、さぞかしお疲れの事とお察し致します。そこで、提案させていただきたく、この文章を書いております。
この辺りで、少しばかり休憩を取られてみては如何なものでしょうか? ブラックコーヒーを飲むのも良し、煙草を一服されるのも良し……一度、脳細胞をリフレッシュしてみて下さい。
それでは、あなた様の実のある推理を期待しつつ、明日お待ち申し上げます。
シンシア・フェイスフル
P.S.まだ五合目辺りです。頑張って下さい、ご健闘をお祈りいたします。
アメリカ人が書いた手紙でも、こうして、ちゃんとした日本語に訳されるのか。便利と言うか、恐ろしいと言うか。
(それにしても、何とまだ五合目ってか! とにかく長すぎるぞ、この日記は!)
私は、指示通りに早速点けたヘブンスターの紫煙と共に、深い溜息を吐き出した。コーヒーも全て飲み干して落ち着いた後、私は先を続ける事にした。
そう、ミス・フェイスフルの期待に沿うためにも……