迷路〜Maze〜
ぐるぐる
ずっと同じ場所をまわっている
ずっと、ずっと、ずっと
進む道を見失ってしまった者の末路
此処で同じ道を同じ距離だけ同じ速さでまわっていく
今日も同じことの繰り返し
早起きして髪を整え化粧をして会社に行って残業で遅くまで仕事して、
同僚は早くに帰って合コン、別に男が欲しいからって行ってる訳ではなく単なるお遊び。
自分はどれ位の男を捉えることが出来るのかという女の意地。
そんな事よりも仕事をしてほしいものだ。
やっとの事で仕事を終え帰宅中、道端には酔っ払ったオヤジと部下や上司の愚痴をマシンガントークで話していくオヤジ。
こういうオヤジを見ていると自分も酔って今思っていることを洗い浚い喋ってしまいたい。
私はこのまま「仕事をするだけの女」で終わってしまうのだろうか。
そんなのは嫌だ、一体私はどうすればイイのだろう?
何時もどおりに朝は満員電車で押されながら帰りは人の少ない電車で帰っていく。
こんな退屈なものが私の人生??
そして、私は辿り着いた、この男の元へ………−−−−
その男は黒髪で瞳が翡翠のように綺麗な男だった。
腰まである長い髪を後で一つに結い、椅子に座って私を見上げていた。
【また迷いし者か…?】
「迷った??」
【此処に辿り着いた者は全て迷いし者】
「私は…迷っているの??」
【さよう、さて心当たりは??】
「迷いは……−−−−」
全てに迷っています、つまり優柔不断というのもです。
私は全てに迷っています、一番の悩みは此れからの進むべき道です。
その答えに辿り着こうと彷徨っていたら此方に辿り着いたのです。
教えて下さい 私は悩みをなくしたい 自分の事なのに分からないのが嫌なんです
【悩みをなくしたければ己が無くなればイイのだ】
「己を…?」
【つまり、消えてしまえばイイのだ】
「死ねばイイと言いたいのですかッッ?!」
【誰が『死ね』など言ったのだ、勝手な解釈をするな】
「だったら…消すって…?」
【つまり今の己を消し去ればイイのだ『心』を】
「心って…どうやって消せって言うのよ!!」
【我には出来る、この空間に居さえすれば…消したいのか??】
「…本当に出来るの??」
【此処は我が作り出した空間、此処では我がルールだ、不可能などない】
今の自分を消すというものがどういったものなのか理解できない。
だが、この男のいうとおりに今の自分を消せるのだとしたら、きっと今の自分とは正反対の人間だろいう。
仕事もせず、遊びまくって、今見ないな4LDKには住んでいない。
【どうするのだ??消すのか?消さないのか??】
「消したら、今の私はどうなっちゃうんですか??」
【この世から消え去り、世界中の人間の記憶から消え新しい自分がインプットされる】
「誰一人…覚えてないんですか??」
【ああ、どうだ??消すのか??】
「……一晩考えさせてくれませんか??」
【良かろう、但し消さないという決心が付いたのなら、もう此処には来れまい】
「えッ?!」
【だが再び悩み出したのなら再度出会えるだろう、ついでに悩める子羊を見つけたら此処の宣伝を頼むぞ】
「…わかりました」
そして家に帰って考える、でも決まっていた、私は今の自分から逃げていただけ。
だったら消してもらう必要は無い、コレからは今の自分を理解していきながら、その自分に合わせて生きていけばイイ。
【迷える子羊を見つけた宣伝を頼むぞ】
きっと、あの男は私が消さないというのを知っていて宣伝を任せたのだろう。
「あの人は一体なんだったのかしら…」
ぐるぐる
ずっと同じ場所をまわっている
ずっと、ずっと、ずっと
進む道を見失ってしまった者の末路
此処で同じ道を同じ距離だけ同じ速さでまわっていく
「先輩…私、此処で仕事をしていく自信がありません」
「どうして?」
「今の自分では…ダメな様な気がして…」
涙を浮かび上げながら必死に私に頼ってくる、まるで何時ぞやの自分の様だ。
「だったら良い事教えてあげる♪」
「え…」
「今の自分に不満があるのなら、自分を消す勇気があるのなら…今から説明した道を進んでみて…其処に男が居るからソイツに頼ってみて」
【迷える子羊を見つけた宣伝を頼むぞ】
宣伝してあげたわよ…
アナタに悩みはありますか??
そんな自分に不満や苛立ちを感じたりしませんか??
そんなアナタに良い店を紹介しましょう。
どうです??自分を変えてみませんか??