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僕と闇夜と殺戮美人

夜9時 市内公園



帰宅途中に通る事も多い市内の公園を、良人は通っていた。

毎度の事であり、夜でも外灯で足元は照らされている。

近くには民家やマンションが在り安全である。

でが、流石に時間が時間なので家に電話をする事にした。


プルル・・・プルル・・・っと機械音が数度流れガチャっと受話器を取る音がした。


『はい、もしもし高崎です。』

「あぁ、母さん僕だけど・・・」

『はぁ~なんだ良人かい。』

「何で溜息!?」

『こんな時間まで外に居る馬鹿息子に何を期待するの?』

「いや、これには深い訳がありまして・・・」

『三十秒以内に弁解してみなさい。』

「6年前当時小学生だった女の子の遺体を発見したので警察に通報したら先程まで事情聴取されてました。」

『はい嘘。』

「即答!?」

『馬鹿言ってないで早く帰ってきなさい!聞いてるの・・・?』

「・・・・・・」


電話をしながら歩いていた良人の目には、“見慣れた制服を着た”顔も知らない女の子が、“6人の男”に囲まれているのが見えた。

とても儚げな、憂い顔の少女。

血走った、充血した目の男たち。

視力が2.0の良人には公園の影で何が行われてるのか見えていた。

電話から発せられる母親の声が耳に入ってこない。

とても綺麗な顔立ち、綺麗な漆塗りの様な黒髪、後ろに束ねられたポニーテール。

身長は165cm位だろうか・・・?

スタイルも抜群に良く、モデルでも通じるかも知れない。

むしろ、スカウトしないスカウトマンには「仕事しろ!」と言ってやりたい。


(じゃない、こんな時間に何が行われるんだよ!!止めた方が良いのか!?)


そんな事を考えている内に体は既に動いていた・・・

男達と少女の合間に割って入ろうとしていた。


「待てよ、こんな少女相手に・・・」


言葉を発して出て行こうとした瞬間、男達は一斉に少女の方へ飛び掛って行ってしまった。

だが、少女はソレを難なくすり抜け、持っていたナニかで次々と斬裂いてしまった。

凄いスピード、光の如き一閃で男達を斬り殺してしまった・・・

割って入ろうとした良人は愕然(がくぜん)とした感じで両手をダランと下げ、絶句していた。

文字通り、言葉を一言も発せ無いまま棒立ちと成っていた。

少女が切り裂いた男達は動かなくなっていた。

その後、体はブクブクと内側から膨れ上がり風船が爆発するように破裂してしまった。

無音のまま破裂し撒き散らされた血が良人の全身に飛び散った。

良人は無言のまま立ち尽くしている。

電話からはツー、ツーと切れた音がしている。

間も無くし外灯がチカチカっと切れ始めた・・・

ようやく状況に思考が追い付き始め、良人はヘタッと地面に腰を付けた。

否、腰が抜け否応無く強制的に地面に付けるしかなかったのだ。

様々な体験をしてきた彼だが、今回は本当に死を覚悟した。

歯がガチガチと小刻みに震え、ろくに動く事すら出来ない。


怖い・・・恐い・・・コワい・・・?


「あぁ~あ、見ちゃったんだ・・・」

「僕・・・は、・・・」

「まぁ、しょうがないか・・・」


クスクスと笑う。

邪悪な笑みにしか見えない。

どんなに優しく微笑まれ様が、先程の姿を見てしまえば悪魔の様にしか見えない。

俺はたぶんココでアイツ等の様に奇妙な殺され方をするんだ。と、諦め目をつぶった・・・

だが、予期した痛みは何時まで経っても訪れなかった。

薄っすら目を開くと、そこにはもう彼女の姿は無くなっていた。

残された物など無かった。

体に付着したはずの血痕さえも跡形無く消えてしまっていた。


五分後、ようやく立ち上がる事の出来た彼には五分前は夢か幻か妄想としか思えなかった。

むしろ、そう思い込みたかった。

世界から人が消えた事自体が絵空事である。

有り得ない、つまり《起こる事が無い》事なのだから・・・


なんとかアレが偶々(たまたま)見た幻覚だと言い聞かせ家路に着いた。










結局、帰宅するまでに人ならざるモノに付き纏われ途中からいつも通りの帰宅と成ってしまった。

だが、それが良人にとっては、最高に幸せであった様に思えた。




翌日 4月8日(木)


9:15 体育館


今日は雲一つ無い晴天である。

入学式には相応しき良き日、彼の中等部の後輩が編入してくる日である。

そして、昨日見た制服は中等部女子の物であった。

彼なら多少は知っているかも知れない。

いや、関らない方が無難なのは彼の経験上も明白なのではあるが、法的手段により罪を償わせるのは常識。

そして、全てを忘れる為の打開策である。

昨日と今日の狭間で見た夢は最悪そのもの。

気分が悪くなる程度ではない、死んだかと思うほどの悪夢。

夢に出てきたあの女に、ゆうに100回以上殺された。


復讐を胸に誓い、入学式に挑んだのだ・・・





12:30 屋上


「で、高崎先輩はどうしてこンな所に僕を呼び出すンです?」

「久々に可愛い後輩と昼食を摂ろうかと思ってね。」

「それは有難(ありがた)いンですが、どうしてまだ少し寒さが残るこの時期に屋上なンすか?と聞いてるンです。」


後輩の不満も最もではあるが、良人には誰にも聴かれたくなかったのである。

高校生になって腰を抜かした現実を・・・



「なんだが、ポニーテールのスタイル抜群美人を知らないか?」

「それなら、俺と同じ1年の“伊藤燐火(いとうりんか)”じゃねェ~ッすか」

「随分普通な苗字だな、名前はともかく・・・」

「ンな事知りませんよ。でも先輩の不幸体質もそこまで来ればヘタレ体質じゃないンすかァ~?」


プププッと笑い先輩である良人を茶化す。


「だがな、マジでアレはヤバかった。いくらなんでもビビるって!お前も一度体験して見やがれ吉瀬(きちせ)!」

「えェ~嫌ッす、そンな超常現象。でも伊藤さンは虚弱体質で中等部時なンて教室の隅で読書してる様な人ですぜィ?」

「やっぱモテてたのか・・・?」

「そッすねェ~でも付き合ッてるッて噂は無いッす。ッてか断ッてるみたいッすねェ~」

「ふぅ~ん・・・」


会話をしながら箸を動かす。




12:55 変わらず屋上


「ンじゃ、もう教室に戻ります。」

「あぁ、ワリィ~な入学式に呼び出して」

「嫌、気にしてませンから。」

「じゃぁ~なぁ~」


「うィ~ッす」


スタスタ去り行く後輩を眺め地面へ寝そべった。

日差しが遮られた日陰。

気持ちの良い風が通り行く。

快晴の空の下、アヤカシの類が皆無。


気を抜き、目を瞑ろうとした瞬間不意に声を掛けられた。

どこかで聴いた声に・・・


「すいません、ちょっと良いですか?」


声の方向へ目を向けると、綺麗な制服を着た“彼女”が立っていた。

昨日の怪奇殺人を行った彼女、伊藤燐火が睨む様に立っていた・・・


「・・・昨日の・・・」

「高崎先輩・・・でしたっけ?」

「・・・そうだ。」

「私に興味津々ですね。」

「そりゃそうだろ!昨日君は・・・」

「人を殺した?」

「・・・あぁ、そうだな。君は人を殺した。そして、目撃者の俺を生かした。それで興味が無い方が不思議だ。」

「はぁ~・・・先輩は、人では無い存在を信じますか?」

「信じたらどうなる?信じなかったらどうなるっ!?」

「どうも成りませんよ、ただ・・・この世界に居るモノは居るし、存在するモノは存在するんですよ。」

「・・・・・・」

「と、言っても一般人には通じませんよね。でも彼方は既に怪異に巻き込まれてしまった。」

「怪異に・・・巻き込まれた・・・?」

「はい、昨日私が殺したのは人では無いモノ。吸血鬼です」

「・・・吸・・・血鬼?」

「信じられませんか?でも、存在するんですよ吸血鬼・ヴァンパイア」

「そうだな・・・アヤカシが居るんだ、吸血鬼も信じていい。でも、どうして君なんだ?」

「はい?」

「この学校の高等部、生徒指導部の皆中は陰陽師の家系の末裔。お前じゃなくても良かったんだろ?」

「・・・陰陽師?」

「あぁ、陰陽師。そして俺には人ならざるモノを見て触れて、血にはアヤカシや不幸やその他諸々を惹きつける体質。お前や吸血鬼もたぶんその血のせいか・・・」

「・・・・・・」


コイツ何言ってんの?顔でダンマリしている伊藤を無視し喋り続ける。


「頼むから俺に不幸を押し付けないでくれ。」

「・・・ごめん、それ無理。先輩は昨日吸血鬼の血を浴びましたよね?」

「・・・やっぱり浴びてたのか・・・」

「アレで先輩は吸血鬼に最優先で狙われます。吸血鬼根絶やしにする為の小さな犠牲ちゃんですね★」

「フザけんな、何とかしろ。お前を助けようとした俺の心を踏み(にじ)るつもりかぁ~!?」

「死ぬか時が経つのを待つしかないですよ。まぁ、私が先に殺し回りますから彼方は私の邪魔に成らない様にしてください。」

「断るッ!俺は俺なりに悪足掻(わるあが)きしてやる。皆中の力を利用してでもこの目や血や体質を変えてみせる」

「厨二・・・」




「ついに私登場ね、この話のヒロイン:伊藤燐火様」

「誰がヒロインだ?」

「私ですよ、先輩」

「不幸だ、こんな奴がヒロインだなんて・・・」

「なんかもの凄く嫌そうですね?」

「あぁ、最悪だ。この作品書いてる作者に物申したいね。」

「作者批判ですか」

「誰得な小説書いてる暇が有るなら勉強して欲しいね。」

「駄目ですよ、私の美しくカッコいい戦闘シーンを全国規模で読んで貰いたいですから」



なんて、作品キャラにコメントして貰うのも楽しいかな・・・

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