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王子の婚約者である私ですが、ヒロインを全力で支援します  作者: 幸イテ(旧名:kouta)
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第十七話 ソフィアの帰還

第2部開始です!


 ソフィアのお披露目が無事に終わった後、私達はセイファート家へ帰ってきた。

「今日はご苦労様ソフィア」

「ナタリア様も」

 想定しうる最高の結果だったように思う。あの場にいる皆がソフィアと言う存在に圧倒されていた。これもソフィア自身が必死に己を磨き続けた結果だ。公爵令嬢の末裔であるのは嘘であるが、ソフィアの美しさは決して嘘ではない。

「お腹すいちゃいましたね」

「主催者側は食べている余裕がないからね。時間も時間だから、ナンシーに何か軽いものを用意してもらいましょう。エル」

「分かりました」

 空腹を訴えるソフィアはなんとも可愛らしいが、気が抜けたのは私も一緒だ。やり切った感がある。これからが大変なわけだけど。ゆるんだ心を引き締めるため私は今後の課題を口にする。

「後は結婚式までに妨害が入らないか、ね」

「……一年間貴族について学んできましたけど、私はまだ貴族の考え方のすべてを理解していません。やはり妨害の可能性は高いのですか?」

「ソフィアがこれまで出会っていのは高位貴族だったからね」

「となると下位貴族の方々が?」

 ソフィアは苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべる。きっとウェンディ達の事を思い出したのであろう。

「無論すべての下位貴族が愚かというわけではないわ。ただあなたは平民から一気に飛び越えて頂点まで行った。それが面白くないのは当然の事よ。故に」

「私はこれから下位貴族の方々からも支持を集めなければならないわけですね」

「ふふ、正解よ」

 最後まで説明しなくていいのは話しが早くてありがたい。ソフィアは支持を集めると言った。すでに彼女は施政者の考えになっている事に私は微笑んだ。

「ナタリア様、ソフィア様、お夜食をお持ちしました」

 ただ今日に限っては真面目な話はこれまでだ。今後の目的を確認出来ただけでも十分。私はソフィアに合図をすると彼女も心得たとばかりに公爵令嬢モードを解いた。

「さあ、ナンシーは何を持ってきてくれたかしら?」

「楽しみです」

 華やかなパーティーの後にあったのは温かくて静かな夜であった。


 

 翌日、私達は馬車に乗り込み、学校へと向かっていた。

「ソフィア、久々の登校となるけど気分はどう?」

「特待生として始めて来た時よりも緊張しているかもしれません」

 ソフィアは苦笑して答えた。

「それはそうでしょうね。今のあなたは立場が違う。勉強と言う意味では我がセイファート家の方が優れているし、学校に来る必要はなかったのだけど」

「私の顔見せなんでしたよね」

 ソフィアに必要なのは勉学だけではない。

「そう、昨日は大会場だったから誰もソフィアと話す事は出来なかった。でも皆はソフィアの事を知りたがっているわ。最初は様子見でしょうね。でも一人でも口火を切ったら……」

「一気に、ですか」

「ええ、そうなるでしょうね」

 その際は善意、悪意、両方入り乱れるだろう。単純な2択に分けると、ソフィアに味方しようとする者達と、粗を探して落とそうとする者がいる。しかし実際はより複雑だ。気を付けなければならないのは真意がどこにあるかだ。

「何が大事か覚えているわねソフィア?」

「はい、気を付けるべきは私を利用しようとする味方と、国を真剣に思う故の敵対者ですね」

「ええ、無能な味方は一番怖ろしいわ。中から瓦解させられるから。逆に危険な相手は有能だからこそ危険なの。彼らを懐柔出来れば」

「絶対裏切らない忠臣となる、でしたよね」

 私は頷いた。

「セイファート家でもない。王家でもない。あなただけの味方を得る。それが残りの短い学園生活で貴方がすべき事よ」

 ソフィアに残された時間は一ヶ月。その理由は一ヶ月後の卒業式で私とアルベルトが卒業するからだ。本来ソフィアはあと一年あるが、そんな状況で一人だけ残すのはリスクが高い。

 だからソフィアも一緒に卒業し、そのまま婚約という流れとなっている。

「クラスは元のままなんでしたよね?」

「あえてそうしているわ」

「久しぶりに皆と会えるのは嬉しいのですが、色々説明するのが面倒ですね」

 ソフィアは面倒と言いつつも、それでも喜びは隠しきれないようであった。願わくばソフィアのクラスの友人達が彼女の力になってくれますように。

「着きましたよ」

 エルの言葉を受けて私とソフィアは馬車を降りる。そこにはすでにアルベルトの姿があった。

「おはようソフィア、ナタリア。昨日はよく寝れたかい?」

「ぐっすりとはいかなかったけど、まあまあってとこかしら」

「私はベッドに入ったらすぐに寝ちゃいました」

 それを聞いた私は呆れてしまった。

「あなた、今日は緊張しているって言ってたじゃない」

「緊張は屋敷の外に出てから感じたんです!」

 私ですらちょっと今日の事を気にしてたのに爆睡していたなんて。言葉にならない私を見てアルベルトが笑う。

「ははは、我が姫君は実に頼もしいな」

「昨日と比べれば今日はまだって感じです。それに十分な睡眠が取れないといざという時にヘマしちゃいますから」

 昨日の目的が予め決められた事を完遂するであれば、今日必要なのは聞かれる事に対応するアドリブ力。ソフィアの言っている事は正しい。

「かちかちに固まるよりは良いけどもねぇ」

「大丈夫です。1年前ならともかく、私はあのセイファート家の教育を受けたんですよ?」

「本当に口が上手いんだから」

 自信があるのは間違いない。きっと陽気に振る舞う事で己を鼓舞している部分もあるのだろう。

「でも、無茶は禁物よ。今日はエルをあなたにつける。答え方で悩むような事があればエルに振りなさい」

「ナタリア様、ありがとうございます。あ……」

 私がソフィアの視線の先の方を見ると、そこには女生徒達がこちらの様子を伺っていた。ソフィアのクラスメイト達だ。かつてのソフィアと同じ特待生のモルガンの姿も見える。ソフィアを見つけたはいいものの、どうすればいいのか分からないのだろう。私はソフィアの肩をそっと押す。

「さあ、いってらっしゃい」

「……はい!」

 ソフィアは頷くと、一人級友達の方へと向かっていった。

「最初が知人とは運が良いのか悪いのか」

「後回しにするよりもいいんしゃない?」

 私達が見守っていると、ソフィアが合流した輪から笑い声が聞こえてくる。その和やかな空気にアルベルトは安堵のため息をついた。

「問題なさそうだな」

「ええ」

 私達が安心するや否や、それまで裏で控えていたエルがやってくる。

「では私も」

「ええ、よろしく頼むわ」

 エルは己の任務を果たすため、談笑するソフィアの元へと向かっていった。彼女らに気づかれる事もなく。

「フレデリックもそうだが、あれだけはどうやっても真似できる気がしない」

「王子様なら目立たない方が問題よ」

「それもそうか」

 こうして軽口を叩き合うようになったのはいつからだろう? 元から仲が悪かったわけじゃないが、前はもっと義務的な会話だったように思う。変われば変わるものだ。

 そう感慨深くなっていると、ふとアルベルトが言った。

「ところでナタリア、君の方は大丈夫か?」

「あら? 案外冷静ね」

 私はアルベルトが思ったよりも浮かれていない事を評した。

「ソフィアとナタリア、どっちかというと大変なのは君のはずだ」

 実はそうなのだ。円満の解消とはいえ、私はもうアルベルトの婚約者ではなく、ただの侯爵令嬢に戻った。

 その事実をもって馬鹿にしてくる、あるいは同情してくるなど、何かしらの反応を受けるのは避けられない。フリーになった事から私を欲しがるところも出てくる可能性だって。

 自慢になるかもしれないが、私はこれまで王妃教育を受けていた実績があるのだ。

「正直面倒だけど、まあ何とかなるでしょう。とりあえず卒業するまでのこの一ヶ月は、ソフィアへの引き継ぎで忙しいって事で乗り切るわ」

「ナタリアも無理しないように。君に何かあったらソフィアが悲しむぞ」

「そのソフィアの使い方は卑怯じゃない?」

「だが一番効果的だろ?」

「まったく……その通りよ」

 吹っ切れた後のアルベルトはなかなかに曲者だ。

「ええ、分かってる。ソフィアを悲しませる事はしないわ」

 だってソフィアは私に言ったのだ。あの子が王妃になった道に私はいるのかと。その約束を破るわけにはいかない。

「私が他の貴族と結婚したら、ソフィアから離れないといけないからね。それは絶対避けないと」

「君はソフィアを育て上げだ実績で、高位貴族、特に公爵家から評価が上がっている。もしも君より爵位が上の者から動きがあったらすぐに知らせてくれ。私から行動する方が最も確実だからな」

 ソフィアに無茶するなと言った矢先に私も無茶するなと言われる。アルベルトの言っている事は間違いないのであるが、さながら保護者と子供のようで何とも言えない気分になった。

「はぁ、なんだか私がソフィアになったみたいだわ」

「なんならナタリアも白銀の髪と真紅の眼でクアラルンになってみるか?」

「ふふ、生き別れた姉妹ってのもドラマディックね。でも両親が悲しむから遠慮しておくわ。しかしながら高位貴族から男女別というのは正直助かるわ」  

「それも家同士で決められた婚姻以外を防ぐため、私達が問題としている血の濃さの理由の一つだが」

「不思議と助けられているわよね」

 同じ教室の令嬢から男兄弟を打診される事はあるかもしれないが、公爵令嬢はソフィアを除いて存在しない。故に授業を受けている間は上からの婚約の打診はほぼ来ないはずだ。

 問題があるとすれば昼休憩の時だろうか。直に教室へ来られる可能性もゼロではない。自由時間はなるべくアルベルトとソフィアと一緒にいた方が良いだろう。

 頭の中を整理し終えると私はアルベルトへと向き直る。

「では後ほど。休憩時間になったら私の方から迎えに行く。ソフィアも真っ先にナタリアの方へ行くはずだ。彼女の場合は自由になれたらだが」

 ソフィアにはソフィアの仕事がある。自分という存在を知らしめる大事な仕事が。故に訪ねてくる人を無視して私の元へ来るのは悪手だ。

「となると私がアルベルトと合流した後、ソフィアの元へ向かうのが確実かしら」

「そうなるだろうな。とにかくだ。この一ヶ月はなるべく固まって行動しよう」

「分かったわ。それじゃあ後ほど」

 やる事を確信し終えた私達はそれぞれの教室に散っていく。こうして私達の新たな日常が始まった。



無事出張から帰ってきました。と言っても急遽また来週行く事になったのですが(汗)

それでも今度は国内なので、週2~3回を目標に更新していけたらと思います。

第2部も引き続きお付き合いいただけたら幸いです。

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