第8話「隠された軌跡」
機内の空気は、一見穏やかに見えた。
だが悠翔は座席に座ったまま、微妙な違和感を感じ続けていた。
「どこか、隠されているものがある……」
計器の針や照明、そして窓の外に映る空の揺らぎが、彼の直感を刺激する。
天音はそっとノートを開き、前方の乗客や周囲の様子を静かに観察していた。
「悠翔さん、何か見つけたんですか?」
悠翔は小さく首を振る。
「まだ……でも、誰かが意図的に隠している痕跡がある気がする」
幼い兄弟が母親の腕の中で安心したように寝息を立てる。
老人カップルは手を取り合い、目を閉じて静かに呼吸を整えている。
その周囲の穏やかさと、自分の直感が告げる異変との間に、悠翔の胸は微妙に揺れる。
佐伯(乗務員)がそっと通路を歩き、他の乗務員に何か小声で伝えている。
その行動のわずかな揺れや視線の動きから、悠翔は情報を読み取ろうとする。
心理の微細な軌跡——それが、これから起こる出来事の伏線だ。
窓の外に、かすかな光の残像が映る。
それはただの反射かもしれない。だが、悠翔の直感は告げる。
「これは、偶然じゃない……何かが動いている」
天音はそっと彼の手を握る。
「怖くても、私たちが一緒なら大丈夫」
悠翔はその手の温もりに力をもらい、決意を新たにする。
小さな勇気、微かな兆し、そして心理の軌跡。
すべてが少しずつ交錯し、空の上で静かに、しかし確実に、次なる緊迫の連鎖の布石を築いていた。




