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第2話「微かな異変」
離陸から数分。機体はゆるやかに高度を上げ、窓の外には夜明け前の蒼い空が広がっていた。
悠翔は席で腕を組みながら、計器の小さな揺れを再び確認する。わずかに異常を示す表示に、直感がざわついた。
「これは……」
心の中で独り言が漏れる。過去の記憶がフラッシュバックし、彼の呼吸は少し速くなる。
天音は、何も知らずに隣で書類を整理していたが、ふと手を止めて悠翔を見つめる。
「大丈夫ですか?」
悠翔は微笑みながら首を振る。
「少し気になるだけだ。問題ない」
だが、幼い兄弟が窓の外の光に驚き、母親にしがみつく。
「ママ、光が動いたよ……」
その声に、機内の空気が一瞬だけ揺れる。
地上管制との無線が、微かな途切れを見せる。
「こちら管制塔、確認を……」
言葉の切れ間に、わずかなノイズが混じる。悠翔は耳をそばだてる。
ふと、機内の照明が一瞬だけ点滅した。
誰も口には出さないが、微かな違和感が全員の意識を揺らす。
天音はそっと悠翔の手を握り、微笑む。
「こういう時は……深呼吸しましょう」
悠翔はゆっくり息を吸い、吐く。振動と光、微かな音のすべてを感じながら、心を落ち着ける。
しかし、胸の奥では、まだ小さな不安の波が静かに広がっていた。
わずかな異変。それは、この空の旅がただのフライトではないことを、まだ誰も知らないままに告げていた。




