第16話「軌道の先」
機体は依然として穏やかに飛行していたが、悠翔の感覚は緊張の連鎖を見逃さなかった。
微細な振動、計器のわずかな揺れ、窓の外の光の残像——
すべてが秒単位で心理に影響を与える。
天音は静かに横で観察し、悠翔にそっと囁く。
「悠翔さん……この空間、何かが隠されていますね」
その言葉に、悠翔の心はさらに鋭く研ぎ澄まされる。
「隠された何か……これを見逃すわけにはいかない」
幼い兄弟は母親に抱きつき、目を見開く。
母親は静かに背中を撫でながら、恐怖を和らげようと努める。
小さな勇気が、心理の揺れをわずかに鎮める。
佐伯(乗務員)は通路を慎重に進み、微妙な動作で乗客を安心させる。
その様子を見た悠翔は、小さな行動が心理の流れを変える力を再確認する。
窓の外に、光の揺れが再び現れる。
計器の針は一瞬だけ赤く点滅し、微かな異常を示す。
それは、単なる偶然ではない。
悠翔は息を整え、次の行動の準備をする。
心理の揺れ、恐怖、信頼、勇気——
すべてが秒単位で交錯し、次の瞬間に向けて一つに収束し始める。
天音の手の温もりが、心理の中心に微かな安定を生む。
そして悠翔は決意する。
「この軌道の先に待つもの……必ず乗客全員を守る」
空の上に漂う緊迫の影。
心理戦の局面は、新たな局面へと突入していた。
秒単位で交錯する感覚、光、音、振動——
すべてが、これから起こる運命の瞬間を告げていた。




