第13話「揺れ動く思惑」
空は淡い朝焼けに染まり始め、窓の外には静かな蒼のグラデーションが広がっていた。
だが、機内の空気は静かではなかった。悠翔の視線は計器に、そして周囲に常に巡らされている。
微かに揺れる機体、わずかに異なる光の反射、聞こえないかすかな囁き——
秒単位で揺れる心理を読み取りながら、悠翔は瞬時に状況を分析する。
天音は隣で、悠翔の視線を追いながらも乗客の様子を観察している。
「悠翔さん……あの方、少し動揺しています」
彼女の指先が微かに震えた。その動作すら、心理の波として悠翔に伝わる。
幼い兄弟は母親の腕にしがみつきながら、緊張で顔をこわばらせる。
老人カップルも互いの手を握り直し、呼吸を整える。
全員の心理が、微細に揺れ動き、互いに影響し合う——
その交錯する思惑は、まるで空間に見えない波紋を広げるかのようだった。
佐伯(乗務員)は通路を慎重に歩き、乗客に目配せをする。
静かだが確実に影響を与える小さな行動。
心理の連鎖を理解する悠翔は、微細な動作から全体の流れを把握する。
悠翔は天音の手をそっと握り、深呼吸する。
「今、誰かを守るためには、迷ってはいけない」
天音の微笑みが、揺れる心理の中心で小さな安定を作り出す。
窓の外には、わずかに光が揺れる。
それは偶然かもしれない。だが、悠翔の直感は告げる。
「この揺れ動く思惑の中に、次の局面の鍵が隠されている」
秒単位で交錯する心理と小さな勇気の連鎖——
空の上の物語は、まだ静かに見えるが、その裏では次なる緊迫の波が押し寄せていた。




