第12話「瞬間の選択」
空は淡い蒼から光を帯び始め、夜明けの気配を帯びていた。
だが、機内の空気は静かではなかった。悠翔の直感は、秒単位で刻まれる異変を告げていた。
計器の針は微細に揺れ、窓の外の光もわずかに変化する。
幼い兄弟が母親にしがみつき、母親は落ち着いた声で諭す。
しかし、その小さな安心感は、空の上の心理戦の前触れに過ぎなかった。
天音は悠翔の手を握り、目を真っ直ぐに見つめる。
「怖くても……私たちがいる」
その言葉が、彼の心に深く届く。
小さな勇気と信頼が、今まさに試される瞬間を支える。
悠翔は深呼吸し、全員の心理と周囲の状況を瞬時に把握する。
誰が動揺しているか、誰が冷静で、誰が助けを必要としているか——
すべてを考慮し、最適な行動を選択する瞬間が訪れていた。
通路を歩く佐伯は、静かに乗務員に指示を伝える。
微妙な声、手の動き、視線——
秒単位で変わる状況を読み取り、全員に影響を与える。
悠翔は目を窓の外に向け、かすかな光の揺れを確認する。
「今……動くしかない」
心理の揺れ、恐怖、勇気、信頼——
すべてが一瞬にして交錯し、彼の決断を促す。
瞬間の選択——
それは、空の上で起こる誰も予測できない結果の始まり。
小さな勇気が連鎖し、心理戦は極限に達する。
光、音、振動、心拍——
すべての感覚が研ぎ澄まされ、読者もまた、機内の一員としてその瞬間を体感する。
悠翔は天音を守り、乗客を守るために、すべての判断を胸に刻む。
そして、空の上での物語は、ここから新たな局面へと突入する——。




