第11話「交錯する心」
機内の静寂は、一瞬たりとも安らぎを与えなかった。
悠翔は席に座ったまま、周囲の心理を探る。微細な呼吸、視線の揺れ、手の動き——
すべてが秒単位で情報となり、彼の胸に緊張を刻む。
天音は書類を閉じ、悠翔の隣で小さく肩を揺らした。
「悠翔さん、心配している乗客がいます」
その言葉に、悠翔は軽く頷く。
「わかってる……だが、焦らずに一つずつだ」
幼い兄弟は母親に抱きつき、震える声でささやく。
「ママ……怖いよ」
母親は強く抱きしめ、優しく答える。
「大丈夫、私たちが守るから」
小さな勇気が、空間に微かな波紋を生む。
その波紋は、他の乗客の心理にも伝わり、恐怖や不安の渦の中で微かに安心を生む。
佐伯(乗務員)は通路を歩き、落ち着いた声で安全確認を行う。
その行動は、目立たずとも、全体の心理に安心の種を植える。
だが、悠翔の目は計器と窓の外を交互に見つめる。
かすかな光の揺れ、微妙な機体の振動、耳に残る遠くの声——
心理の交錯は、物理的な揺れ以上に、機内の心を揺さぶる。
天音がそっと悠翔の手を握る。
「怖くても、私たちが一緒なら大丈夫」
その温もりは、心理の揺れをわずかに鎮め、信頼と絆の力を生む。
そして悠翔は、心の中で誓う。
「この空で、誰も失わせない」
視線、呼吸、心拍——
すべてが交錯し、緊張と安堵が交互に重なる瞬間。
空の旅は、まだ静かに見えるが、心理の連鎖はすでに加速していた。
誰も知らない、この先に待つ大きな試練の影が、わずかに揺れる光の向こうに潜んでいる。




